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第2章 俺以外の転生者
第18話 悪魔の力
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俺は慌てて自分の体を弄ってみる。だが、腰に差していたはずの武器はどこにもなく、もちろん服なんて着ている訳もなかった。
ヴェルガさんに無料でもらった武器なのに……こんな短期間で失くすなんて!
大体、マガリイノシシの姿になっていた時点で気付かなきゃいけない事だったのに、何で今まで気付かなかったんだ。
確か、俺が殺されたあの場には俺の武器は無かったはず。そもそも、俺が来ていた衣服もきれいっぱり消えていた訳だし。
もしかしたら、ニルが証拠隠滅のために持っていったのかも……。
まあ、人としての人生が終わった俺にはもう必要のないだろうな……。
『ほう……我を必要ないと申すか、主よ』
「ふぇ!?」
武器をなくした事を嘆いてしたところに、急に誰かの声が聞こえて俺は顔を上げる。
けれど、そこにはフェイス、スラング、カインズ、グリブの四体がいるだけで、他に誰かがいるわけでもない。
四体の誰かが声を発したかとも考えたが、明らかに四体のうちの誰かの声とは思えなかった。
『何を呆けた声を上げておるのだ。よもや我を忘れたと言う訳ではあるまいな?』
「え? いや……え!?」
再び誰かの声が聞こえてくる。
ここで初めて、その声が自分の頭に直接響いているのが分かった。
テレパシーってやつか? 一体誰が?
『なんと嘆かわしい……一度でなく二度も助けてやったというのに、その恩も忘れてしまうとは』
「ちょ、ちょっと待って! 助けたって?」
「お……おい。どうしたんだ?」
俺の様子を不審に思ったフェイスが怪訝な表情を浮かべながら心配そうに声を掛けてくる。
多分、四体には俺が独り言をしゃべっているようにしか見えないんだろう。
「い、いえいえ! 何でもないですよ!」
俺はごまかすように胸の前で両手を振りながら答える。
頭に響く声が誰なのかは分からないけれど、俺がどうなったのかを知っているみたいだ。助けた、なんて言ってたし。
それに、独り言を喋る変な奴だと思われるのも嫌だからな。
「そうか……まあ、いい。襲われたり逃げたりで疲れただろ? 休んだらどうだ?」
「そ、そうですね。確かに疲れました」
逃げたり襲われたりもそうだけど、自分がこんな姿になっている事で混乱してしまった事が疲れた原因としては一番かも。
でも……休める場所なんてどこに?
「でもアニキ。コイツを休ませるようなところないと思うわよ? 言ってしまえばコイツ余所者でしょ?」
「そうか……そういえばそうだったな。うーん。どうしようか」
グリブに言われて、フェイスは腕を組んで考え込んでしまう。
まあ、この四体からしたら俺は余所者だ。そんな都合よく休む場所なんて用意してるはずもないよな。
「あ、あの……」
フェイスが考えている最中、カインズがやや控えめに手を挙げながら口を開いた。
その反応に、他の三体が一斉にカインズの方へ目を向ける。
「僕の住処になら来ても大丈夫だと思う。スラングも一緒に住んでるし、それでもスペースはあるから」
「……まあ、アニキのところは奥さんいるッスから迷惑になるし、グリブに任せたらロクな事ないしな」
「私の事分かってるじゃない。私の住処に住まわそうものなら下僕として扱ってあげてたところよ」
「な? 性悪な女だろ?」
「あ、あはは……」
な? 何て言われても……性悪女なら、あのヤクザメイドが一人いるから間に合ってるし。
あの人に比べたら、下僕になるくらいどうってことはないでしょ。度合いにもよるけど。
「じゃあ、カインズ、スラング。任せて良いか?」
「はい!」
「了解ッス!」
「じゃあ、任せたぞ。俺も後から様子を見に来るからな」
フェイスの問いかけに声高らかに返事をする二人。
それを聞いたフェイスはそれだけを告げて、グリブとともにその場を立ち去った。
「じゃあ、僕に付いて来てください」
「わ、分かりました」
フェイスとグリブの背中を見送った後で、カインズが俺に声を掛けてくる。
二人も自分の住処に帰っていくようで、俺はその後ろから後を追った。
周りの光景を見渡してみると、チラホラと釜倉のようなドーム型の建造物が見えている。
外装を木の葉や木の皮で固めているようで、何で家を造っているのかは分からなかった。
多分、木の枝か何かを骨組みとしてそこに木の葉や木の皮を貼り付けているんだろうと思うけど。
『……おい』
「ひう!?」
急に頭に直接声が響いて、思わず声を上げてしまう。
さっき声を掛けてきた声のようだ。
『我を忘れるな。ほんの数分前に話したばかりではないか』
いやいや……別に忘れていた訳じゃないんだけど、タイミングがつかめなかっただけで。
『……とにかく、主は今の状況が掴めていないのだろう?』
声の主は俺の心を見透かしたかのように言い当ててみせる。
そうなんだよ……さっき助けたとか言っていたけど、それと俺が魔物の姿なっている事は何か関係があるのか?
『肯定。主の体は、あの小娘から受けた傷が深く、通常では傷を癒す事は困難であった。よって、主の肉体を我に取り込んだ魔物の姿へと一時的に変更し、元の主の体の傷を癒す事を選択した。安心するがいい。受けた傷からして、完治までにはそう長くは掛からないはずだ』
頭に響く声は割と簡単に事の顛末を説明する。
まあ、それだけでも十分理解は出来たんだけど……できたんだけどさ。
え? ちょっと待って? それはつまり……アンタは俺が持っていた武器って事? 取り込んだ魔物がどうのこうのって言ってたけど。
『肯定。我は貴様を主と認めた※※※※である』
その声は当たり前のように俺の武器であることを肯定した。
けれど、その声は途中でどもったように聞こえて再びクリアになる。
え? 何だって? 何かとても重要なところが聞こえなかったけれど。
『……なるほど。まだ我の名は届かぬか』
一人で何かを悟ったかのように呟く。
我の名……って、むっくんが言ってた悪魔の名前!?
コイツから聞きだせっては聞いていたけど、聞こえないんじゃ意味がないんじゃ!?
『まあ良いであろう。もう理解しているとは思うが、しばらくはその姿のままだ。言っておくがその姿のまま死ねば、傷が癒えないまま元の姿に戻ってしまう。そうなれば、こんどこそ主は死ぬ事になるであろう。くれぐれも注意しておくことだ』
ちょ!? さっそくさっき死ぬそうになったんだけど!? 回復っていつまで待てばいいの!? ……ねぇ!? 聞いてる!?
悪魔に問い掛けてみるも、それ以上は一言も言葉が返ってくることはなかった。
回復するまで待てっていう事なのか……まあ、人間の姿に戻れるのを知れたのは良かったし、それまで待つしかないか。
……ていうか、そういうの先に説明して欲しいよな。使えない。
『何か言ったか?』
「聞こえてんじゃねぇか!」
ヴェルガさんに無料でもらった武器なのに……こんな短期間で失くすなんて!
大体、マガリイノシシの姿になっていた時点で気付かなきゃいけない事だったのに、何で今まで気付かなかったんだ。
確か、俺が殺されたあの場には俺の武器は無かったはず。そもそも、俺が来ていた衣服もきれいっぱり消えていた訳だし。
もしかしたら、ニルが証拠隠滅のために持っていったのかも……。
まあ、人としての人生が終わった俺にはもう必要のないだろうな……。
『ほう……我を必要ないと申すか、主よ』
「ふぇ!?」
武器をなくした事を嘆いてしたところに、急に誰かの声が聞こえて俺は顔を上げる。
けれど、そこにはフェイス、スラング、カインズ、グリブの四体がいるだけで、他に誰かがいるわけでもない。
四体の誰かが声を発したかとも考えたが、明らかに四体のうちの誰かの声とは思えなかった。
『何を呆けた声を上げておるのだ。よもや我を忘れたと言う訳ではあるまいな?』
「え? いや……え!?」
再び誰かの声が聞こえてくる。
ここで初めて、その声が自分の頭に直接響いているのが分かった。
テレパシーってやつか? 一体誰が?
『なんと嘆かわしい……一度でなく二度も助けてやったというのに、その恩も忘れてしまうとは』
「ちょ、ちょっと待って! 助けたって?」
「お……おい。どうしたんだ?」
俺の様子を不審に思ったフェイスが怪訝な表情を浮かべながら心配そうに声を掛けてくる。
多分、四体には俺が独り言をしゃべっているようにしか見えないんだろう。
「い、いえいえ! 何でもないですよ!」
俺はごまかすように胸の前で両手を振りながら答える。
頭に響く声が誰なのかは分からないけれど、俺がどうなったのかを知っているみたいだ。助けた、なんて言ってたし。
それに、独り言を喋る変な奴だと思われるのも嫌だからな。
「そうか……まあ、いい。襲われたり逃げたりで疲れただろ? 休んだらどうだ?」
「そ、そうですね。確かに疲れました」
逃げたり襲われたりもそうだけど、自分がこんな姿になっている事で混乱してしまった事が疲れた原因としては一番かも。
でも……休める場所なんてどこに?
「でもアニキ。コイツを休ませるようなところないと思うわよ? 言ってしまえばコイツ余所者でしょ?」
「そうか……そういえばそうだったな。うーん。どうしようか」
グリブに言われて、フェイスは腕を組んで考え込んでしまう。
まあ、この四体からしたら俺は余所者だ。そんな都合よく休む場所なんて用意してるはずもないよな。
「あ、あの……」
フェイスが考えている最中、カインズがやや控えめに手を挙げながら口を開いた。
その反応に、他の三体が一斉にカインズの方へ目を向ける。
「僕の住処になら来ても大丈夫だと思う。スラングも一緒に住んでるし、それでもスペースはあるから」
「……まあ、アニキのところは奥さんいるッスから迷惑になるし、グリブに任せたらロクな事ないしな」
「私の事分かってるじゃない。私の住処に住まわそうものなら下僕として扱ってあげてたところよ」
「な? 性悪な女だろ?」
「あ、あはは……」
な? 何て言われても……性悪女なら、あのヤクザメイドが一人いるから間に合ってるし。
あの人に比べたら、下僕になるくらいどうってことはないでしょ。度合いにもよるけど。
「じゃあ、カインズ、スラング。任せて良いか?」
「はい!」
「了解ッス!」
「じゃあ、任せたぞ。俺も後から様子を見に来るからな」
フェイスの問いかけに声高らかに返事をする二人。
それを聞いたフェイスはそれだけを告げて、グリブとともにその場を立ち去った。
「じゃあ、僕に付いて来てください」
「わ、分かりました」
フェイスとグリブの背中を見送った後で、カインズが俺に声を掛けてくる。
二人も自分の住処に帰っていくようで、俺はその後ろから後を追った。
周りの光景を見渡してみると、チラホラと釜倉のようなドーム型の建造物が見えている。
外装を木の葉や木の皮で固めているようで、何で家を造っているのかは分からなかった。
多分、木の枝か何かを骨組みとしてそこに木の葉や木の皮を貼り付けているんだろうと思うけど。
『……おい』
「ひう!?」
急に頭に直接声が響いて、思わず声を上げてしまう。
さっき声を掛けてきた声のようだ。
『我を忘れるな。ほんの数分前に話したばかりではないか』
いやいや……別に忘れていた訳じゃないんだけど、タイミングがつかめなかっただけで。
『……とにかく、主は今の状況が掴めていないのだろう?』
声の主は俺の心を見透かしたかのように言い当ててみせる。
そうなんだよ……さっき助けたとか言っていたけど、それと俺が魔物の姿なっている事は何か関係があるのか?
『肯定。主の体は、あの小娘から受けた傷が深く、通常では傷を癒す事は困難であった。よって、主の肉体を我に取り込んだ魔物の姿へと一時的に変更し、元の主の体の傷を癒す事を選択した。安心するがいい。受けた傷からして、完治までにはそう長くは掛からないはずだ』
頭に響く声は割と簡単に事の顛末を説明する。
まあ、それだけでも十分理解は出来たんだけど……できたんだけどさ。
え? ちょっと待って? それはつまり……アンタは俺が持っていた武器って事? 取り込んだ魔物がどうのこうのって言ってたけど。
『肯定。我は貴様を主と認めた※※※※である』
その声は当たり前のように俺の武器であることを肯定した。
けれど、その声は途中でどもったように聞こえて再びクリアになる。
え? 何だって? 何かとても重要なところが聞こえなかったけれど。
『……なるほど。まだ我の名は届かぬか』
一人で何かを悟ったかのように呟く。
我の名……って、むっくんが言ってた悪魔の名前!?
コイツから聞きだせっては聞いていたけど、聞こえないんじゃ意味がないんじゃ!?
『まあ良いであろう。もう理解しているとは思うが、しばらくはその姿のままだ。言っておくがその姿のまま死ねば、傷が癒えないまま元の姿に戻ってしまう。そうなれば、こんどこそ主は死ぬ事になるであろう。くれぐれも注意しておくことだ』
ちょ!? さっそくさっき死ぬそうになったんだけど!? 回復っていつまで待てばいいの!? ……ねぇ!? 聞いてる!?
悪魔に問い掛けてみるも、それ以上は一言も言葉が返ってくることはなかった。
回復するまで待てっていう事なのか……まあ、人間の姿に戻れるのを知れたのは良かったし、それまで待つしかないか。
……ていうか、そういうの先に説明して欲しいよな。使えない。
『何か言ったか?』
「聞こえてんじゃねぇか!」
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