レヴィアとメッフィ 〜婚約破棄されたあげく殺されそうになったから、復讐の為に悪魔を召喚したら溺愛されて困ってます〜

素朧

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第1章

第2話

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 「レヴィア、後は私に任せて暫くの間アドラルへ戻り静養していなさい。」

 そう静かな声で言うのはレヴィアの父、ヴァーン・アドラル公爵だ。

 「はい、わかりました。」

 「なに、心配するな。学園にも連絡をしておこう。 2、3ヶ月羽を休めて来なさい。」

 王都にある公爵家別邸の執務室でヴァーンは優しげに目を細め、娘を気遣う様に声を掛ける。



~~~~~~~~~


 レヴィアは現在、王都にある国立魔法学園、通称バベルとも呼ばれている学園に通っている。

 元々貴族は平民よりも魔力が高い事が多いので、大体の貴族は魔法学園に通っている。

 バベルという通称も、古代の神の住まう場所を目指して建てたという塔の伝承にあやかったものだが、学園の見た目は4階建ての校舎で敷地は広いがとても塔には見えない。だが、学園の中に入るとエントランスは吹き抜けになっており、魔法により最上階が何階なのか分からない程に高い。
 拡張の魔法によるものなのか、次元を超越しているのか未だに誰にも原理は分かっていない。


 数日後、レヴィアは馬車数台で自領であるアドラル領へと向かっていた。

 レヴィアの馬車には専属侍女のココと護衛騎士のクロードが乗り込んでいる。


  暫く進んでいると突然馬車のスピードが上がり、勢いよく走り始める。

 ガタガタととても激しい振動に何かがあったのかと緊張が走る。

 「きゃあっ!」

 「お嬢様! 私に御つかまり下さい!」

 「御者に何かあったのかも知れません、見て来ますのでご注意を!」

 ココがレヴィアの身体を支え、クロードが様子を見ようとキャリッジの窓から御者台を覗く。

 暗くて良く分からないが御者の姿はあるが前に突っ伏している様に見える。

 すると、キャリッジの屋根から音が聞こえ、クロードは咄嗟に頭を中に入れると首があった部分を刃物が通り過ぎる。


 「っ!?」

 これは襲撃されている、と気付いたクロードだが、注意を促す前に馬車が大きく揺れると、強い衝撃があり横転してしまう。


 クロードが目を開けると、幸いキャリッジは丈夫に出来ておりレヴィアもココも意識があるようだった。


 「お嬢様、大丈夫ですか?自分が様子を見ますので決して外には出ませんように。ココもわかりましたね?」

 クロードはレヴィアとココに声を掛けると、警戒しながら外へ出ていく。

 他の馬車がいない。

 おそらく分断されたのだろう。だから最初に御者を狙った。

 馬車の前方を見ると御者と思われる首の無い死体が見える。


 辺りは暗い林のようだが、周囲から数人の足音と話し声が聞こえて来る。


 まいった。クロードは内心とてもビビってしまっていた。
 クロードは剣術も並だし、魔法はからっきし、何故護衛に選ばれたかと言うと、その2メートルに届きそうな巨大な身体だ。
 威圧感があり、それだけでも抑止力になるし、なんなら他の護衛が駆けつけるまでの間、肉の壁にでもなれるようにと。

 他の馬車が見当たらない以上、肉の壁になったところで自分が生きてる間に助けは来なそうだなと、死を覚悟した。

 それでも、お嬢様には世話になったし、ここで見捨てて一目散に逃げるなんて選択肢はない。
 覚悟を決めて腰の剣を抜いて構える。


 ココは男爵家の三女であり、学園にも通っていたので多少の魔法が使える。
 水系統の魔法を得意としていたが、戦闘に使える様な魔法はそれ程多くは覚えていない。

 「お嬢様の事は私が命にかえてもお守りいたしますので、どうかご安心ください!」

 「ココ……」

 レヴィアは自分では気の強い人間だと思っていたが、この非常事態に身体が震えてしまっている。
 今まで、ここまで直接的な悪意、暴力に触れる機会など無かったので当然だ。呼吸が乱れ、痛いくらいに動悸が激しくなる。ココの手をぎゅっと掴み目を閉じる。

 どうか次に目を開けた時には夢であります様にと。




 

 レヴィアは絶望していた。

 「くっくっくっ! チョロい仕事だなぁ?」

 「あぁ、全くだ。しかもこの上玉も好きにしていいんだろ?役得だなぁ!」

 「楽しんでもいいが最後はちゃんと殺すんだぞ。」

 「もったいねぇなぁ、アジトに連れ帰って孕ませてぇなぁ!」

 数人に男達の声が聞こえてくる。

 レヴィアは激しく抵抗したが馬車から引きずり出されている所だ。舌を噛み切らない様に猿轡をされ、両腕を持って引っ張りあげられている。

 キャリッジの外に出て先ず見えたのはココの死体。
 肩から腰近くまで袈裟斬りにされており近寄らずとも絶命しているのが見て取れる。

 クロードもうつ伏せに倒れておりその背には何本も剣が刺さったままだった。

 首の無い死体はおそらく御者だろう。名前も知らないが悪いことをした。

 「この女がターゲットだ!」

 キャリッジの中で震えてる時に聞こえた声だ。

 つまり、私を狙っている。私のせいで……
 ココが、クロードが、御者が……  そして私も辱められ殺されるんだわ……  そう思うと涙が出てきた。

 レヴィアがキャリッジから引き摺り出されると同時に何かが落ちた。

 老婆から買った女神像だった。それを見たレヴィアはお守りでも魔除けでもなく、その像が不幸を運んで来た様に思えた。


 
 女神像は地面に落ちるとひとりでに割れた。

 ピシリと世界に亀裂が走った音が聞こえる

 賊達も違和感を感じたようで辺りをキョロキョロと見渡している。

 すると、倒れている馬車の近くの空間がひび割れてきた。夜の闇よりも黒い亀裂が空間に走る。

 やがて大きくなった闇から絶望が現れる。

 大きな角を持つ山羊頭の怪物。

 モンスターのいる世界だが、明らかに異質。人の身では到底勝てないような禍々しさが溢れている。

 賊達は一目見て、恐慌状態に陥り、レヴィアを放り出し逃げ惑う。

 怪物が腕を振るうと炎の壁が立ち上り、逃げようとする賊を焼いていく。
 
 炎の壁に阻まれて立ち止まる賊に近づくと頭をその大きな手で握りつぶす。とてもよく熟れたトマトのように赤い液体を絞られていく。

 その他の賊も、次々に無惨に殺されていく。

 そして、賊が全て殺された後、山羊頭の怪物はレヴィアに向かいゆっくりと歩く。

 次は私の番だ……

 今日何度目になりかわからない覚悟を決め目を瞑ると、いつまで経っても痛みはやってこない。

 恐る恐る目を開けると、亀裂からもう1人悪魔がやってきた。

 とても整った顔立ち、艶やかな黒髪に蒼い毛束も混じった長髪。角と尻尾さえ無ければ人間にしか見えない姿。


 「お嬢さん、取り引きをしようじゃありませんか?」

 とても心地良い声が聞こえる


 「お嬢さん、貴女の全てをくれるならどんな望みでも叶えましょう。そう、どんな復讐でも」


 人型の悪魔はそう言って美しく微笑む。


 甘い甘い悪魔の囁き。

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