レヴィアとメッフィ 〜婚約破棄されたあげく殺されそうになったから、復讐の為に悪魔を召喚したら溺愛されて困ってます〜

素朧

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第1章

第1話

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 「レヴィア・アドラル! 君がそんな低俗な人間だったとは思わなかったよ!」

 柔らかいくせ毛のブロンドの髪、高貴さを感じる金色の瞳。整った顔立ちはまるで絵本からそのまま出て来た王子様の様。

 クライヴ・ガーランドは実際このアズライト王国の第一王子。つまりは王太子殿下だ。

 そんな王太子クライヴが声を荒げて叫んでいる。

 「君はベルを陰で陰湿に虐めるだけでは飽き足らず、彼女の母親の形見だというネックレスまで奪っていくとは! なんたる非道!」

 ビシッと音が聞こえそうな勢いで指差した先には豪奢なドレスで着飾った、15.6歳の少女がいる。

 まだ幼さの残る顔立ちながら意思の強さを表す様な力強い眼をしていた。

 「わたくし、何の事かさっぱりわかりませんわ? その子を虐めた事も有りませんし、このネックレスに至ってはクライヴ様が今夜の夜会に着けてくるようにと、言伝と共に従者の方から渡された物なのですが?」

 「うぅっ、ひどいですわ! 嘘吐いてますわ!」

 そう大きな瞳に涙を浮かべながら、クライヴにくっついているのは、ベル・フライス男爵令嬢だ。
 桃色のふんわりした髪に盛りに盛られた胸元。およそ男受けしそうな要素を詰め込んだ様な存在だ。

 「ふん、口でならなんとでもいえるさ。ベルは君に盗られたと泣いているんだ! 彼女が嘘を吐く必要がないだろう!」

 王太子クライヴの胸にしなだれる様にして顔を埋めている桃色髪の女性はチラリとレヴィアを一瞥すると微かに舌をだしてニヤリと笑みを浮かべる。

 「そんな浅ましい人間とは婚約を継続する事は出来ない! 婚約は破棄する。2度と僕の前に現れるな!!」

 レヴィアは頭が痛くなるのを感じ、嘆息してから短く答える。
 「えぇ、わかりました、直ぐに返しますわ」

 そして、桃色の令嬢ベルの下へ近き、ネックレスを外し右手に強く握り込む。 ベルの鼻先目がけて渾身の右ストレートを放った。

 「ぷげらっ!?」

 可笑しな鳴き声を発して桃色髪のベルは後ろに倒れる。そして、初めて人を殴った手をさすり、ベルの母親の形見らしいネックレスを倒れてるベルに放り投げる。

 「クライヴ様、わたくし婚約を破棄するのは一向に構わないですが、国王陛下の御命令にあたる為、クライヴ様の一存で決める事ではありませんわ。 なので正式な結果が決まりましたらアドラル家までご一報ください。皆様お騒がせして申し訳ありませんでしたわ。 わたくしはこれで失礼させて頂きます。それでは、ごきげんよう。」

 あまりの出来事に呆気にとられているクライヴと衆人に告げるとレヴィアは微笑んで踵を返す。


 「ココっ!!今のうちに逃げるわよ!」

 レヴィアが廊下を早歩きで出口へ向かいつつ、侍女の名前を呼ぶ。

 「はいぃ! お嬢様!」

 ココと呼ばれた侍女は大きな丸メガネを掛けて運動には不向きそうな胸を大きく揺らしながらレヴィアの後ろを一生懸命についてくる。
 

 突然のレヴィのパンチによって呆然としたままの夜会会場を、騒がしくなる前に飛び出て、馬車へと飛び乗る。


~~~~~~~~~~

 「レヴィアお嬢様ぁ、とても吃驚しましたわ!お手の方は大丈夫ですか?」

 ココがレヴィアの右手を握りながら言う。

 「大丈夫よ。思ったよりスカッとしたわ、相手があのピンクだったからかしら。 それより、あなた殴った事を咎めないのね?」

 「咎めるなんてとんでもない! わたしはお嬢様の手があんな女を殴ってケガでもしないかと、そっちの方が心配です。 お嬢様が殴らなければわたしが殴っていましたわ!」

 「あははっ ココが殴ったら大変な事になってるわよ? わたくしなら公爵のお父様が守ってくださるけれど、ね。」

 相手は男爵令嬢、身分的には謝罪程度で済むはず。状況を鑑みれば謝罪すら要らない可能性だってある。
 ただ、あの王太子がどう出るか…… これによって大分状況は変わりそうだなと考えながらレヴィアは馬車の窓から外を見る。

 すると、まだ貴族街だというのに粗末な服でフードを目深に被っている老人が露店を開いているのが見えた。

 「停めて」

 レヴィアが何を売っているのか好奇心から馬車を降りて商品をチラリと見ると、木彫りの何かの像を売っている様だった。

 レヴィアは好奇心を押さえられず、老婆に尋ねてしまう。

 「お婆ちゃん、これは何を売っているの?」

 普段、強すぎる眼力から無駄に威圧感を放ってしまっているレヴィアは、出来るだけ柔和な笑みを作り、孫が祖母に話しかける様な言葉を選ぶ。

 「これは女神様のお守りですよ、お嬢様。」

 「女神様!? これが?」

 レヴィアは思わず驚いてしまう。女神様どころかどう見ても悪魔の姿にしか見えないからだ。  

 「お婆ちゃん、ちなみにこれいくらなの?」

 「5万ゴールドですじゃ」 

 「高っか!?」

 「お嬢様、ぼったくりです。今直ぐ憲兵に突き出しましょう。それに、ここは……  」

 「いいえ、買うわ。ココ10万ゴールド出して頂戴。」

 「……お嬢様2つも買うのですか? もしや一つは私に……」

 「買うのは一つよ。 あのねお婆ちゃん、わたくしがそれを一つ頂くわ。 でもね、ここら辺ではこういった露店を開いてると捕まってしまう事もあるのよ。 倍の10万ゴールドで買うからもうここら辺ではやらない方がいいわよ。」

 「おお、ありがとうございます!優しいお嬢様。きっと女神様のご加護がありますように!」

 そう感謝を述べた老婆は老婆とは思えぬ手つきでパパッと後片付けをしてしまう。

 「あと、これは余計なお世話かも知れないけど女神像のお守りじゃなくて悪魔像の魔除けって言った方が売れると思うわ。」

 
 
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