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5.協力者
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コーデリアはラインヴェルトを代表する商会であるマークソン商会の支部長との会合を終えて帰ってきたところ、受付のメイドからラウルとファムが来ていると聞き、多頭蛇竜討伐のメンバー集めのためにやってきたと察したのだという。
「私の情報網も捨てたものではないわね」
需要がどこにあるかわからないため、巷の噂話にまで広く目を光らせるように命じているのだとコーデリアが胸を張った。
ラウルはまさか昨夜のファムとの会話を派遣騎士隊の誰かに聞かれていたとは思っておらず、驚く。続いて、そういった情報が悪用されないとも限らないとコーデリアに諭され、今後は気を付けようとラウルは胆に銘じた。
「それはそれとして、セシル。あなたが手伝ってあげてはいかがかしら」
「よろしいのですか?」
「ええ。まだまだ入用ではあるけれど、あなたたちが頑張ってくれたおかげで全く余裕がないわけではないわ。もうすぐメイドの派遣も始まることだし、メインチームがしばらく休暇を取っても問題ないわよ」
ラウルが「メイドの派遣?」と小首を傾げている間も、セシルとコーデリアの話し合いはとんとん拍子に進んでいった。
後から聞いた話では、派遣騎士隊は所謂冒険者に相当する騎士だけでなく、メイドの派遣も行うとのことだった。奴隷に限らず、孤児や、手に職を付けたい子供や若者から希望者を募り、メイドとしてのノウハウを学ばせた後に依頼に応じて派遣するのだという。
元々、奴隷騎士隊の女性陣はコーデリアのメイドも兼ねていた者が多く、元貴族の子女でもある副隊長が中心となって指導に当たっているようだ。
「というわけで、セシルを一緒に連れて行ってくださるかしら」
コーデリアが何でもないことのように告げるが、言われた側はそうはいかない。ラウルとファムは顔を見合わせてから、ラウルが代表して恐る恐る口を開く。
「セ、セシルさんが来てくれれば助かりますけど、その、料金は――」
「料金はもらえないわ」
「え……!?」
派遣騎士隊の隊長ともなれば派遣してもらうための費用も高額なのではと戦々恐々とするラウルだったが、返ってきた答えに呆けてしまう。しかも、“安くする”でも“必要ない”でもなく、“もらえない”というのだから余計だ。
「セシルにも事情があって、多頭蛇竜と戦えるのは願ったり叶ったりなのよ」
コーデリアがセシルに顔を向けると、セシルは少しだけ悩む素振りを見せてから、真剣な表情で頷いた。
「私は派遣騎士隊所属でありながら、今のところ派遣対象に入っていないのです。ですので、派遣騎士の業務としてではなく、臨時パーティとして、ぜひご一緒させていただきたく思います」
セシルは派遣騎士隊を立ち上げるための、そして軌道に乗るまで維持するための資金稼ぎを主に行っていて、派遣される騎士のリストには載っていないのだという。
「実は新技を開発中で、その技を試すのに、多頭蛇竜は最適な相手なのです。正直、あまり自信はなかったのですが、コーディー様のおっしゃられるように強敵に通じなければ意味がないですし」
その新技は平時ではほぼ成功していて実戦で試そうとしているところらしく、セシルは同行を許してくれるよう頭を下げる。
「セ、セシルさん……!」
ラウルとファムが慌てて顔を上げるよう告げる。そういう事情であれば、断る理由などなかった。若干強者すぎるのではないかという考えがラウルの頭を過るが、その一方で、一流の冒険者であるセシルをして強敵と言わしめるほど多頭蛇竜が大変な相手だという事実を思い知った。
「よろしくお願いします」
セシルが立ち上がってテーブル越しに握手を求め、ラウルとファムが順に応じる。ラウルは年上の女性かつ憧れの冒険者の手を、緊張しながら握った。思ったよりも小さな手に驚くものの、同時に、頼もしいほどに大きくも感じた。
コーデリアとセシルらの元を辞したラウルとファムが並んで通りを歩く。
「そういえばさ」
ラウルは、ふと疑問に思って顔をファムに向けた。ファムが「うん?」と応じる。
「セシルさんの新技って火魔法のことかな?」
セシルは光魔法を得意としていたが、最近になって火魔法を修得したらしいことは風の噂で知っていた。
「うーん。そうなんじゃないかなー? 新しい属性の魔法を覚えるだけでもすごいけど、それを多頭蛇竜に通じるか試したいっていうことなんじゃないかな」
もし新技が通じなかったときに備えて、もう一人、火魔法を使える人に協力してもらえないか掛け合ってみるとセシルは言っていた。その人も派遣騎士隊ではないとのことで、二人は追加費用なく火魔法使いを確保できたことになる。
もちろん討伐したことで得られる収入は均等に分けるつもりだが、ラウルもファムも、多頭蛇竜と戦うための一つの問題が解決できたことにホッとしていた。
二人は辺りに聞き耳を立てている人がいないのを確認しながら、僅かに声量を落として今後の予定を話し合う。
セシルとは後日、もう一人の火魔法使いに話を通してから一緒に打ち合わせをすることになっているが、それまでの間に二人は二人で準備を進める腹積もりだった。
「とりあえず、鍛冶屋に寄っていい?」
ラウルの提案に、ファムが頷く。手っ取り早く攻撃力不足を補うには武器を新調するのが一般的な解決方法ではある。多頭蛇竜の首を切り落とすのをセシル任せにしないためにも、より強力な、切れ味の良い剣が必要だ。
「絶対成功させないと……!」
ラウルは改めてそう誓う。セシルを巻き込んだことで、もう後には引けないという思いが強くなっていた。とはいえ、元々引く気はない。
「うん。絶対勝とう!」
ファムが、むんっと両の拳を小さく振るって気合を入れる。
一つ一つ問題を解決していけば、その先に目指す未来が待っていると二人は信じている。いや、信じたかった。
本当に倒せるのかという不安の芽が心の底から顔を覗かせていることに気付きながら、ラウルは見ない振りをして、前だけを見つめた。
「私の情報網も捨てたものではないわね」
需要がどこにあるかわからないため、巷の噂話にまで広く目を光らせるように命じているのだとコーデリアが胸を張った。
ラウルはまさか昨夜のファムとの会話を派遣騎士隊の誰かに聞かれていたとは思っておらず、驚く。続いて、そういった情報が悪用されないとも限らないとコーデリアに諭され、今後は気を付けようとラウルは胆に銘じた。
「それはそれとして、セシル。あなたが手伝ってあげてはいかがかしら」
「よろしいのですか?」
「ええ。まだまだ入用ではあるけれど、あなたたちが頑張ってくれたおかげで全く余裕がないわけではないわ。もうすぐメイドの派遣も始まることだし、メインチームがしばらく休暇を取っても問題ないわよ」
ラウルが「メイドの派遣?」と小首を傾げている間も、セシルとコーデリアの話し合いはとんとん拍子に進んでいった。
後から聞いた話では、派遣騎士隊は所謂冒険者に相当する騎士だけでなく、メイドの派遣も行うとのことだった。奴隷に限らず、孤児や、手に職を付けたい子供や若者から希望者を募り、メイドとしてのノウハウを学ばせた後に依頼に応じて派遣するのだという。
元々、奴隷騎士隊の女性陣はコーデリアのメイドも兼ねていた者が多く、元貴族の子女でもある副隊長が中心となって指導に当たっているようだ。
「というわけで、セシルを一緒に連れて行ってくださるかしら」
コーデリアが何でもないことのように告げるが、言われた側はそうはいかない。ラウルとファムは顔を見合わせてから、ラウルが代表して恐る恐る口を開く。
「セ、セシルさんが来てくれれば助かりますけど、その、料金は――」
「料金はもらえないわ」
「え……!?」
派遣騎士隊の隊長ともなれば派遣してもらうための費用も高額なのではと戦々恐々とするラウルだったが、返ってきた答えに呆けてしまう。しかも、“安くする”でも“必要ない”でもなく、“もらえない”というのだから余計だ。
「セシルにも事情があって、多頭蛇竜と戦えるのは願ったり叶ったりなのよ」
コーデリアがセシルに顔を向けると、セシルは少しだけ悩む素振りを見せてから、真剣な表情で頷いた。
「私は派遣騎士隊所属でありながら、今のところ派遣対象に入っていないのです。ですので、派遣騎士の業務としてではなく、臨時パーティとして、ぜひご一緒させていただきたく思います」
セシルは派遣騎士隊を立ち上げるための、そして軌道に乗るまで維持するための資金稼ぎを主に行っていて、派遣される騎士のリストには載っていないのだという。
「実は新技を開発中で、その技を試すのに、多頭蛇竜は最適な相手なのです。正直、あまり自信はなかったのですが、コーディー様のおっしゃられるように強敵に通じなければ意味がないですし」
その新技は平時ではほぼ成功していて実戦で試そうとしているところらしく、セシルは同行を許してくれるよう頭を下げる。
「セ、セシルさん……!」
ラウルとファムが慌てて顔を上げるよう告げる。そういう事情であれば、断る理由などなかった。若干強者すぎるのではないかという考えがラウルの頭を過るが、その一方で、一流の冒険者であるセシルをして強敵と言わしめるほど多頭蛇竜が大変な相手だという事実を思い知った。
「よろしくお願いします」
セシルが立ち上がってテーブル越しに握手を求め、ラウルとファムが順に応じる。ラウルは年上の女性かつ憧れの冒険者の手を、緊張しながら握った。思ったよりも小さな手に驚くものの、同時に、頼もしいほどに大きくも感じた。
コーデリアとセシルらの元を辞したラウルとファムが並んで通りを歩く。
「そういえばさ」
ラウルは、ふと疑問に思って顔をファムに向けた。ファムが「うん?」と応じる。
「セシルさんの新技って火魔法のことかな?」
セシルは光魔法を得意としていたが、最近になって火魔法を修得したらしいことは風の噂で知っていた。
「うーん。そうなんじゃないかなー? 新しい属性の魔法を覚えるだけでもすごいけど、それを多頭蛇竜に通じるか試したいっていうことなんじゃないかな」
もし新技が通じなかったときに備えて、もう一人、火魔法を使える人に協力してもらえないか掛け合ってみるとセシルは言っていた。その人も派遣騎士隊ではないとのことで、二人は追加費用なく火魔法使いを確保できたことになる。
もちろん討伐したことで得られる収入は均等に分けるつもりだが、ラウルもファムも、多頭蛇竜と戦うための一つの問題が解決できたことにホッとしていた。
二人は辺りに聞き耳を立てている人がいないのを確認しながら、僅かに声量を落として今後の予定を話し合う。
セシルとは後日、もう一人の火魔法使いに話を通してから一緒に打ち合わせをすることになっているが、それまでの間に二人は二人で準備を進める腹積もりだった。
「とりあえず、鍛冶屋に寄っていい?」
ラウルの提案に、ファムが頷く。手っ取り早く攻撃力不足を補うには武器を新調するのが一般的な解決方法ではある。多頭蛇竜の首を切り落とすのをセシル任せにしないためにも、より強力な、切れ味の良い剣が必要だ。
「絶対成功させないと……!」
ラウルは改めてそう誓う。セシルを巻き込んだことで、もう後には引けないという思いが強くなっていた。とはいえ、元々引く気はない。
「うん。絶対勝とう!」
ファムが、むんっと両の拳を小さく振るって気合を入れる。
一つ一つ問題を解決していけば、その先に目指す未来が待っていると二人は信じている。いや、信じたかった。
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