デバフ婆ちゃんのお通りです

古里唯一

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こういう時どういう対応すればいいのかわからない

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 前略 祖父母様。
私事で大変恐縮ですが、この度異世界に拉致られました。
守護妖精というフィルギャはとても良くサポートをしてくれ、私もそれなりにこの世界で頑張って生きていこうと思っております。

 さて、話は変わりますが。
男性の急所を誤って杖の握りで殴ってしまった時の対処法を、祖父母様はご存知でしょうか?
 幾分ヤンチャしていた時期が長かったため、爆笑することはできても哀れみの言葉をかけることができません。
 私はどうすれば良いでしょうか?
次お会いできる日までに考えておいていただければ幸いです。

「ぐふっ…うっ…」

「(アキラ…)」

「「……」」

 何故私の目の前で、鎧を身につけた青年が急所を押さえて倒れ込んでいるのか。
フィルギャと私から少し離れた場所にいる2人の少年もまた何故急所を押さえているのか。
 それを説明するにはほんの少し、時間を戻さなければならないがよろしいかな?

 時間を遡ること数分前。
私は残っていた魔核ジュエルに筋力が上がる上昇能力バフが付くように願いながら歩いていた。

「敏捷性が上がる効果が付与されたね」

「敏捷性も嬉しいけど私がほしいのは
筋力が上がる魔核ジュエルだよ」

 付与を施してない魔核ジュエルの残りは2個。
この2個でどうにか筋力が上がるものを!

「いざ!!」

 自分のためのイメージはそれなりにできるようになった。
最初は両手でやってた魔力練りも今では片手で十分できるようになった。
人の成長は早いと言うが、私の順応性ヤバくないか?
異世界に召喚されたラノベの主人公たちって、世界規模で洗脳されてるのではなかろうか。
そう考えてしまうくらい私の脳はこの世界に馴染みつつある。気持ちが悪いな。

「どうだフィルギャ!」

「な、なんと!
赤魔核レッドジュエル!しかも白の渦巻き線!」

「筋力か!?筋力か!?」

「魔法攻撃力上昇効果だー!残念!!」

「こんちくしょうがあああ!!」

 そんなやりとりをフィルギャとしながら進む坂道は次第に傾斜を増し、高齢者にはキツい道になってきている。
杖がなければどうなっていたか…。
 しかし教会へ行く道がこんなに整備されていないなんて思わなかった。
街の方はあんなにきっちり道の整備がされてるのに…。
 あそこの教会ってそんなに祈りを捧げる価値が……。

「ねえフィルギャ」

「んー?」

「もしかしてだけど…
今向かってる教会に祀られてるのって…」

「木の精霊ドリュアスちゃんの像だよ」

 あ。うん。やっぱりか。
信仰者がそこまでいないから山道だって言うのに整備されていないのか…。

「不人気とは聞いてたけど
まさかここまでとは…」

「ちなみにドリュアスちゃんの像を祀ってるのは
こことエルフの国と獣人の国の3ヶ所だけだよ」

 逆にレアじゃね?
各地に何個も何個もあるより数が少ない方がレアっぽいよね。
 でも不人気加護だからなぁ…。

「さて…最後の1つになってしまったな魔核ジュエル

「さっき通ってきた道すがらに
魔核ジュエルは売られてなかったね」

 そうなるといよいよモンスターを討伐しないと行けなくなるのか?
それならちゃんとした防具がほしいところだよ。
 今の私の装備品は先代の聖女様が趣味で作った服のみ。
驚いたことにこの服、防御力補正が付いてた!
ありがとう先代の聖女様!
 そしてフィルギャがくれた冒険者カバンはアイテム袋に分類され、杖は勿論武器装備のカテゴリーになっていた。

 ん?
どこでそんなこと知ったかって?
なんと…ステータスと呟くとゲームのようにパラメーターウィンドウが自分だけに見えるのだ。
ファンタジーものあるある設定で笑うしかなかった。
 さらに笑うことがあり、獲得スキル欄っていうのがあったんだけど私ってばスキルなし。
 フィルギャ曰くスキルは力が発現した際、加護と一緒に授かるのが一般的なのだと言うが、私ってば加護授かった時にスキルを授かれなかったようだ。

あはは… ーー。

 ドリュアスちゃん謝りに来るなら今のうちだぞ…。
今謝りに来るならはたき落とすだけで許してやる。

「筋力ー!筋肉ー!
お婆ちゃんな私に丈夫な
足腰をおくれー!!」

 最後の魔核ジュエルを握りしめ天に拳を掲げるこのスタイル。
周りに人がいたら絶対に白い目で見られていたであろう。
 しかし気合い入れは大事だ!
気合い入れれば神様仏様精霊王様がきっと筋力アップの効果を ーー。

橙魔核オレンジジュエル
白の?マークは知力上昇効果だね」

「私のこの行動がマヌケってかああ!」

 知力上げて出直してこいって言われたみたいでなんか腹立つ!

「ああ…最後の1個だったのにね」

「安く売ってる商人見つけて買い溜めしようよ」

「そのためにはユーリスからの依頼
無事に達成しないとね」

 もう少しで坂道とはお別れだ。
この先どんなボロボロ倒壊寸前の教会があるかわからないけど。
私の冒険はこれからだー!

ー完ー

 なんて感じで終われば元の世界に帰れれるんじゃないかな?
なんて妄想していた時期が私にもありました。

「到ちゃー「離して!離してよー!」

 坂道を登り切った私の視界には、見事なまでにボロボロな教会。
その教会の前で鬼ごっこでもしてるのかな?
鎧を身につけた20代くらいの青年が双子と思わしき少年たちの腕を掴んでいる。

「ア、アキラ!大変だよ!アレ!」

「うん?何がそんなに大変で…!」

 慌てるフィルギャの言葉に妖精眼鏡フェアリーグラスを掛けたままじっと凝視すれば、青年と少年の足元に探していたクローバーが群生していた。

「あれきっとひ「クローバー!見つけたー!」

 フィルギャの言葉を遮り叫んで走り出した私。
どこにそんな体力と筋力が残ってたのかって?
 人間探していたものや大切なものが目の前で踏み潰されてたら、変な力が湧き上がってくるものなんだよ。
 探し求めてきたクローバー!
あんなところでやんややんや遊んでるんじゃない!

「ああ!!踏み荒らすな!!
私のクローバー!!」

 そして私は… ーー。


「退けコラァ!!」


 ヤンチャしてた時代の勢いに身を任せ、杖で渾身のスイング。
下から振り上げ顎に当てるつもりが、青年の急所に杖の握りがヒットしたのだ。

「!?!?!?」

「「!!」」

 掴んでいた少年たちの腕を離し地面に急所を押さえながら倒れ込んだ青年。
 私と青年から少し離れた場所に避難し急所を押さえながら青褪めてる少年たちとフィルギャ。

「ぐふっ…うっ…」

「(アキラ…)」

「「……」」

 うん。我ながら素晴らしいスイングを披露してしまったと思う。
そんなわけで祖父母様…私はこの後どう行動するのが良いのでしょうか…。



 一方その頃。
王都・クリュスタッロスではある人物の話題で持ちきりだった。

「アランドロン団長!
聖騎士団長を辞めるというのは
何かの間違いですよね!?」

 聖騎士団長・アランドロン=シュタットベル。
彼が聖騎士団長を辞め、王都を離れるという話題であった。
 王都で暮らす者たちは誰もが口を揃えそのようなことはない。
これは誰かのデマ話だと言う者もいれば、女性と駆け落ちをするのではないか。
聖女に手を出して騎士団長をクビになったのだろうなど。
あちらこちらで噂が尾鰭をつけて拡散され、囁かれていたのだ。
 それを聞きつけた同じく聖騎士団に所属している若き騎士。
《レオン=ローレンス》は真偽を確かめるためアランドロンを問いただした。

「本当のことだ
皇子様も受理して下さった」

「そんな……!」

 アランドロン=シュタットベル。
最年少で聖騎士団に入隊し、王家に仕え、王家のために尽力してきた功労者。
 若くして騎士団長に就任してからも王家にその身を捧げ続け、騎士団の底上げを成功させ全大陸中に王都・クリュスタッロスの力を示した男。
 そんな愛国精神溢れる男が自ら団長を辞任し、皇子がそれを受け入れたと知ったレオンは驚愕していた。

「レオン…私は長くこの国に仕えてきた
だが聖女様が召喚され結界の力が
強まりを取り戻しつつある今
私がこの国ですべきことはなくなったのだ
騎士団は強くなった
若い者へ世代交代する時期なのだ」

「そんな!我々はまだ未熟です!!
アランドロン団長に教えを乞いたい者たちは
この王都に何百何千と存在しています!
若い者たちは団長に憧れ
騎士を目指す者たちばかりです!」

「ああ…憧れてくれるのは嬉しいが
いつまでも憧れているだけではいられない
憧れているだけではその先はないのだ」

 アランドロンはそれだけ言い広い廊下を進んで行ってしまった。

「……」

 レオンは追いかけられなかった。
彼の背に憧れ騎士になった自分。
色々なものを背負いここまできたアランドロンの背を掴み引き留めることなど、未熟な彼にはできなかった。

「アランドロン団長…」

 その日。
アランドロン=シュタットベルは家を売り払い。
家を売った金と旅道具、愛馬をお供に王都・クリュスタッロスから出て行ったのだった。

「……必ず探し出します…アキラ様」
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