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第2章
10節 勇者捜索隊
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「――えっ……勇者さまの仲間の魔術師が……?」
「うん。最初からそのつもりで潜り込ませてたらしいよ」
日が落ちて真っ暗になった街道は、少し先の地面も見えづらい。
月は出ているが大半が雲に覆われているため、あまり視界がいいとはいえない状況だ。
わたしたちは夜の街道を月明かりと自前の明かり(たいまつやランタンではなく、リュイスちゃんが法術で生み出した小さな明かりだ)を頼りに走り続ける。
走りながらわたしは、隣を走るリュイスちゃんに大まかな経緯を説明していた。
「……今いる勇者を殺害して新しい勇者を擁立する、なんて……そんなこと、本当に可能なんでしょうか」
「どう、だろうね。わたしには分からないけど……でも、本気でやろうとはしてたみたいだよ」
「……そう、ですね。自分の命を犠牲にしてまで……」
リュイスちゃんがわずかに下を向き、沈痛な表情になる。
しまった。ついさっきできたばかりのトラウマを思い出させちゃったみたいだ。
また具合が悪くなるんじゃないかと一瞬心配になったが……
彼女は顔を上げ、前を向く。さっきまで蒼白だったその顔は、今は決意に満ちた力強い表情になっていた。
「……どんな理由があったとしても、今の勇者さまの命を奪うなんてやり方、私は納得できません。絶対に阻止します!」
彼女は走りながらきっぱりと宣言する。
どうやら、余計な心配だったみたいだ。
普段は気が弱そうに見えるが、覚悟が決まった時のリュイスちゃんは本当に強い。
彼女のこの強さがなければ、わたしが今こうして彼女の隣に立っていることはなかったはずだ。
彼女には本当に感謝しているし、彼女自身のことも大好きだ。彼女の望みは出来得る限り叶えてあげたい。
それに、わたし自身も、勇者ということを抜きにしても、アルムちゃんには死んでほしくない。
「そうだね。そのためにも今はまず、アルムちゃんを見つけ出さないと、ね」
「はい!」
わたしたちは、法術のほのかな光を頼りに街道を走り続ける。
夜の街道は暗く、静かで、すれ違う者も訪れない。
やがて前方、街道脇の林の中に、わたしたち以外の光源を発見する。
夜目に明るいそのオレンジ色の光は、わたしたちと同じような旅人が熾したであろう、焚き火の炎だった。
そして同時に、その火のあるあたりから、誰かが叫んでいる声も耳に届いてくる。
「アルムー! エカルー!」「勇者さまー! どこですかー!」
大声で仲間の名を呼ぶ二人の人影。もしやと思い近づいてみると、そのうちの一人はわたしがよく知る人物だった。
「シエラちゃん!」
「……え、先輩? どうしてここに……」
「偶然たまたま、ね。それより、なにかあったの?」
「それが……アルムとエカルに前半の見張りを任せて、私たちは先に眠りについていたのですが、目を覚ました時には二人の姿が見当たらなくて……」
どうやら、あの魔術師くんはもう行動を起こしていたらしい。なにかしら理由をつけて、アルムちゃんを例の砦まで連れていこうとしているのだろう。
いや、さっきリュイスちゃんが見た流れが確かなら、そこに辿りつく前に彼はアルムちゃんに手を出しているのかもしれない。
なんにせよ、いよいよもって猶予がない。
「分かった。シエラちゃん、わたしたちもアルムちゃんを探すの手伝うよ」
「それは……ありがたいですが、いいんですか?」
「うん。せっかく師匠になったんだし、弟子は大事にしないとね」
「先輩……ありがとうございます」
一つ頷いて、わたしは街道に目を向ける。
街道の先には枝分かれするように森に向かうための道が続いている。
ほとんど整備されておらず、下草も生え放題のその道は、遥か昔に例の砦を建造する際に使われた資材の搬入路なのだという。砦に誘導するつもりなら、おそらく二人はこの道の先にいる。
そういえば、シエラちゃんたちを現場に連れていくべきか、少し悩む。
アルムちゃんを探し出せばほぼ確実に、推定裏切り者の魔術師くんと対峙することになる。そうなれば、彼を殺す必要に迫られるかもしれない。
仮にも今まで仲間だった二人を、そんな場面に遭遇させないほうがいいだろうか。
それに、いざ殺す、となった時、彼女たちがそれを阻止しようとする可能性も……いや。それでも今は、人手を優先するべきかもしれない。この暗闇に包まれた森の中から、たった二人の人物を探し出さねばならないのだから。
「それじゃ、こっちとそっちで手分けして探そう。えっと……」
神官ちゃんの名前を呼ぼうとして気づく。この子に名乗られた覚えがない。リュイスちゃんはなんて呼んでたっけ。
「……アニエスです。アニエス・フィエリエ」
「アニエスちゃんね」
「ちゃん……!? ……いえ、まあいいです」
「それじゃアニエスちゃん。アルムちゃんを見つけたら、空になにか法術を撃って知らせてくれるかな。こっちもリュイスちゃんにそうしてもらうから」
「……ええ。承知しました」
「じゃ、そんな感じで探しにいこっか」
「はい。先輩たちも、お気を付けて」
わたしたちは二組に分かれ、夜の森へ足を踏み入れた。
「うん。最初からそのつもりで潜り込ませてたらしいよ」
日が落ちて真っ暗になった街道は、少し先の地面も見えづらい。
月は出ているが大半が雲に覆われているため、あまり視界がいいとはいえない状況だ。
わたしたちは夜の街道を月明かりと自前の明かり(たいまつやランタンではなく、リュイスちゃんが法術で生み出した小さな明かりだ)を頼りに走り続ける。
走りながらわたしは、隣を走るリュイスちゃんに大まかな経緯を説明していた。
「……今いる勇者を殺害して新しい勇者を擁立する、なんて……そんなこと、本当に可能なんでしょうか」
「どう、だろうね。わたしには分からないけど……でも、本気でやろうとはしてたみたいだよ」
「……そう、ですね。自分の命を犠牲にしてまで……」
リュイスちゃんがわずかに下を向き、沈痛な表情になる。
しまった。ついさっきできたばかりのトラウマを思い出させちゃったみたいだ。
また具合が悪くなるんじゃないかと一瞬心配になったが……
彼女は顔を上げ、前を向く。さっきまで蒼白だったその顔は、今は決意に満ちた力強い表情になっていた。
「……どんな理由があったとしても、今の勇者さまの命を奪うなんてやり方、私は納得できません。絶対に阻止します!」
彼女は走りながらきっぱりと宣言する。
どうやら、余計な心配だったみたいだ。
普段は気が弱そうに見えるが、覚悟が決まった時のリュイスちゃんは本当に強い。
彼女のこの強さがなければ、わたしが今こうして彼女の隣に立っていることはなかったはずだ。
彼女には本当に感謝しているし、彼女自身のことも大好きだ。彼女の望みは出来得る限り叶えてあげたい。
それに、わたし自身も、勇者ということを抜きにしても、アルムちゃんには死んでほしくない。
「そうだね。そのためにも今はまず、アルムちゃんを見つけ出さないと、ね」
「はい!」
わたしたちは、法術のほのかな光を頼りに街道を走り続ける。
夜の街道は暗く、静かで、すれ違う者も訪れない。
やがて前方、街道脇の林の中に、わたしたち以外の光源を発見する。
夜目に明るいそのオレンジ色の光は、わたしたちと同じような旅人が熾したであろう、焚き火の炎だった。
そして同時に、その火のあるあたりから、誰かが叫んでいる声も耳に届いてくる。
「アルムー! エカルー!」「勇者さまー! どこですかー!」
大声で仲間の名を呼ぶ二人の人影。もしやと思い近づいてみると、そのうちの一人はわたしがよく知る人物だった。
「シエラちゃん!」
「……え、先輩? どうしてここに……」
「偶然たまたま、ね。それより、なにかあったの?」
「それが……アルムとエカルに前半の見張りを任せて、私たちは先に眠りについていたのですが、目を覚ました時には二人の姿が見当たらなくて……」
どうやら、あの魔術師くんはもう行動を起こしていたらしい。なにかしら理由をつけて、アルムちゃんを例の砦まで連れていこうとしているのだろう。
いや、さっきリュイスちゃんが見た流れが確かなら、そこに辿りつく前に彼はアルムちゃんに手を出しているのかもしれない。
なんにせよ、いよいよもって猶予がない。
「分かった。シエラちゃん、わたしたちもアルムちゃんを探すの手伝うよ」
「それは……ありがたいですが、いいんですか?」
「うん。せっかく師匠になったんだし、弟子は大事にしないとね」
「先輩……ありがとうございます」
一つ頷いて、わたしは街道に目を向ける。
街道の先には枝分かれするように森に向かうための道が続いている。
ほとんど整備されておらず、下草も生え放題のその道は、遥か昔に例の砦を建造する際に使われた資材の搬入路なのだという。砦に誘導するつもりなら、おそらく二人はこの道の先にいる。
そういえば、シエラちゃんたちを現場に連れていくべきか、少し悩む。
アルムちゃんを探し出せばほぼ確実に、推定裏切り者の魔術師くんと対峙することになる。そうなれば、彼を殺す必要に迫られるかもしれない。
仮にも今まで仲間だった二人を、そんな場面に遭遇させないほうがいいだろうか。
それに、いざ殺す、となった時、彼女たちがそれを阻止しようとする可能性も……いや。それでも今は、人手を優先するべきかもしれない。この暗闇に包まれた森の中から、たった二人の人物を探し出さねばならないのだから。
「それじゃ、こっちとそっちで手分けして探そう。えっと……」
神官ちゃんの名前を呼ぼうとして気づく。この子に名乗られた覚えがない。リュイスちゃんはなんて呼んでたっけ。
「……アニエスです。アニエス・フィエリエ」
「アニエスちゃんね」
「ちゃん……!? ……いえ、まあいいです」
「それじゃアニエスちゃん。アルムちゃんを見つけたら、空になにか法術を撃って知らせてくれるかな。こっちもリュイスちゃんにそうしてもらうから」
「……ええ。承知しました」
「じゃ、そんな感じで探しにいこっか」
「はい。先輩たちも、お気を付けて」
わたしたちは二組に分かれ、夜の森へ足を踏み入れた。
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