転生未遂から始まる恋色開花

にぃ

文字の大きさ
46 / 62

第46話 女性の服装描写はいつも苦戦気味となる

しおりを挟む

 何度も言ってきたが、雨宮花恋は外見の素材も超一級品だ。
 試しにメンズ服も着せてみたが普通に似合っていた。
 メンズ服とレディース服のキメラも似合っていた。
 白Tシャツ、白ズボンというクソコーデも試してみたがそれすらも似合っていた。
 どうやら素材が整いすぎていると似合わない服を探す方が難しいらしい。

 やべぇ。このドールちゃん理想のドールすぎる。何着ても似合う着せ替え人形とか最強過ぎない?
 ていうか女の子の着せ替えって超おもしれぇ!
 小説の黒井くんがドールちゃんの着せ替えを楽しんでいた理由が今ならすごくわかる。
 半日くらいならずっとこれで遊んでいられる自信がある。
 さすがにお店の人に悪いからやらないけど。

 ていうかさすがに店員さんの視線が気になってきたな。そろそろ本気で決めないと。
 今までドールちゃんに着せてきた中である程度完成系は見えていた。

 まず、最初に選んだ栗色のロングスカート、これは決定。
 だけどスカートに合わせるトップス候補が多すぎて困っていた。

 横シマのボーダー服、黒の薄いニットセーター、スカートと同じ色の栗色トップス。
 この3択に絞るにしてもどれも甲乙つけがたい。

 僕が優柔不断を発揮して頭を悩ませていると、ふとあることに気が付いた。
 表情には出していないがドールちゃんが若干寒そうに腕を押さえていたのだ。
 って、そうか。明日からもう12月。薄手のセーターだけだと寒いに決まっている。

「ドールちゃん。これ」

 僕は自分が着ていたカーディガンを彼女に掛けてあげる。

「正解です。マスター」

「えっ?」

「マスターの作品の女の子達はカーディガンをアウターとして着用していたんですよ」

「なんと!」

 言われてみれば、という感じである。
 ロングスカート、セーター、カーディガン。確かにこの辺のワードには覚えがある。
 なんて無難なチョイスなんだ。もっとキャラを飾ってあげようよ弓野ゆき先生。

「えへへ。暖かーい。マスターの温もりでポカポカします」

 満足げに温んでいるドールちゃんを見て、一つの結論を見出す。

「ドールちゃん。そのカーディガンあげる」

「えっ?」

「偶然かもしれないけど今の格好が一番眩しい感じある。僕のコーデはこれが完成だと思う」

 ドールちゃんが鏡に向き合い、じーっと自分の姿を眺める。

「確かに可愛い。マスターが選んでくれたセーターもスカートも気に入りましたし、カーディガンとの色合いも素敵です。で、でも、カーディガンを頂くわけにはいきませんよ。マスターが寒いです」

「大丈夫だよ。寒さには強い自信あるし、モール内は暖かいからね。でもやっぱり僕が着ていた物の中古なんてもらっても微妙だよね」

「そんなことありません! これ暖かいし、デザイン好きだし、マスターの所持品だったものを譲ってもらえるのであれば光栄の極みです。ほ、本当に良いのですか?」

「うん。喜んでもらえて何よりだよ」

「はい! 大切にしますね。今着ている服も買ってきます」

「一応サイズそれで大丈夫か確認した方が良いかもね。なんかセーターがダボっとしている感じあるよ。それはそれで可愛いけど」

「うーん。そうですね。もう一つ小さいサイズを試着してみます」

「いってらー」

 ドールちゃんが試着室に戻る。
 同時に僕は大急ぎでカウンターに走る。

「店員さん。うちの着せ替え人形が着ている服、着させたまま帰っても大丈夫ですか?」

「うちの着せ替え人形とかいうパワーワードよ。もちろん大丈夫よ。こっちに走って来たってことは会計済ませたい感じ?」

「よくわかりましたね。あそことあそこにあったスカートとセーターです。いくらかわかりますか?」

「今調べるわね。ちょっと待ってて」

「早めにお願いします。あのドール、早着替えなもんだから急がないと――」

    ポンっ。

 不意に背後から近寄って来た何かに肩を叩かれる。
 恐る恐る振り返る。
 予想通り、すでに着替えを済ませたマイドールが笑顔でこちらを睨んでいた。

「な~~~んで、マスターがお会計を払おうとしているのですかぁぁ~?」

 駄目だ目が笑っていない。声も笑っていない。

「ほ、ほら、よく言われているじゃない? 女がトイレに行っている間に男は会計を済ませておくのがイケメンの行動だって」

「私、男女のお会計はピッタシ割り勘じゃないと納得しない派です! それに今日は服のお金は私が出すって言ったじゃないですか! カーディガンまでいただいたのにお洋服代も払う気ですか! マスターは私を『会計は男性が全額払うべき』とか主張する女と一緒にする気ですか!」

「い、いや、一緒にするつもりなんて毛頭ないけど、ほら、ここは男が全額払って僕に格好つけさせてよ。今日はドールちゃんの誕生日なんだから」

「いいえ! こればっかしは譲れません。今日、マスターには財布の中身を出させないというのが私の中での決まり事でしたから。あっ、店員さん。お金これで足りますか?」

「あー! 抜け駆けずるいよ!」

「どっちが抜け駆けですか! 私が着替え中に支払いしようとしていたくせに」

「店員さん。こちらのお金でお願いします」

「何お金出しているんですか! 店員さん、こちらで! 私のお洋服なので私のお金を受け取ってください」

「店員さん。僕の諭吉ピン札ですよ。そんなふにゃふにゃな諭吉よりも僕の凛とした諭吉の方が格好いいです」

「ピン札なんてご祝儀の時くらいにしか活躍しない役立たずじゃないですか。ザラザラして数えづらいですし。店員さんそんな乾燥肌の諭吉さんより、私の艶やかな諭吉さんを受け取ってください」

「だぁぁぁぁぁぁっ! そんな重要なことを私の判断に委ねるなぁぁぁっ!」

 まずい店員さんがキレた。店先で騒ぎすぎてしまったか。
 制止され、シュンっ俯いてしまった僕らを尻目に店員さんはため息を漏らし、僕と雨宮さんの諭吉を一枚ずつ回収する。
 会計を終えると二つのキャッシュトレーに2等分されたお釣りがそれぞれに返却される

「レシートあげるからどっちがお金を出すとかいう話は後でやりなさい」

「「はーい……」」

 結局このまま割り勘みたいになり、どちらがお金を出すか騒動は終着した。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

女子ばっかりの中で孤軍奮闘のユウトくん

菊宮える
恋愛
高校生ユウトが始めたバイト、そこは女子ばかりの一見ハーレム?な店だったが、その中身は男子の思い描くモノとはぜ~んぜん違っていた?? その違いは読んで頂ければ、だんだん判ってきちゃうかもですよ~(*^-^*)

罰ゲームから始まった、五人のヒロインと僕の隣の物語

ノン・タロー
恋愛
高校2年の夏……友達同士で行った小テストの点を競う勝負に負けた僕、御堂 彼方(みどう かなた)は、罰ゲームとしてクラスで人気のある女子・風原 亜希(かざはら あき)に告白する。 だが亜希は、彼方が特に好みでもなく、それをあっさりと振る。 それで終わるはずだった――なのに。 ひょんな事情で、彼方は亜希と共に"同居”することに。 さらに新しく出来た、甘えん坊な義妹・由奈(ゆな)。 そして教室では静かに恋を仕掛けてくる寡黙なクラス委員長の柊 澪(ひいらぎ みお)、特に接点の無かった早乙女 瀬玲奈(さおとめ せれな)、おまけに生徒会長の如月(きさらぎ)先輩まで現れて、彼方の周囲は急速に騒がしくなっていく。 由奈は「お兄ちゃん!」と懐き、澪は「一緒に帰らない……?」と静かに距離を詰める。 一方の瀬玲奈は友達感覚で、如月先輩は不器用ながらも接してくる。 そんな中、亜希は「別に好きじゃないし」と言いながら、彼方が誰かと仲良くするたびに心がざわついていく。 罰ゲームから始まった関係は、日常の中で少しずつ形を変えていく。 ツンデレな同居人、甘えたがりな義妹、寡黙な同クラ女子、恋愛に不器用な生徒会長、ギャル気質な同クラ女子……。 そして、無自覚に優しい彼方が、彼女たちの心を少しずつほどいていく。 これは、恋と居場所と感情の距離をめぐる、ちょっと不器用で、でも確かな青春の物語。

ママと中学生の僕

キムラエス
大衆娯楽
「ママと僕」は、中学生編、高校生編、大学生編の3部作で、本編は中学生編になります。ママは子供の時に両親を事故で亡くしており、結婚後に夫を病気で失い、身内として残された僕に精神的に依存をするようになる。幼少期の「僕」はそのママの依存が嬉しく、素敵なママに甘える閉鎖的な生活を当たり前のことと考える。成長し、性に目覚め始めた中学生の「僕」は自分の性もママとの日常の中で処理すべきものと疑わず、ママも戸惑いながらもママに甘える「僕」に満足する。ママも僕もそうした行為が少なからず社会規範に反していることは理解しているが、ママとの甘美な繋がりは解消できずに戸惑いながらも続く「ママと中学生の僕」の営みを描いてみました。

距離を置きたい女子たちを助けてしまった結果、正体バレして迫られる

歩く魚
恋愛
 かつて、命を懸けて誰かを助けた日があった。  だがその記憶は、頭を打った衝撃とともに、綺麗さっぱり失われていた。  それは気にしてない。俺は深入りする気はない。  人間は好きだ。けれど、近づきすぎると嫌いになる。  だがそんな俺に、思いもよらぬ刺客が現れる。  ――あの日、俺が助けたのは、できれば関わりたくなかった――距離を置きたい女子たちだったらしい。

もう一度、やり直せるなら

青サバ
恋愛
   告白に成功し、理想の彼女ができた。 これで全部、上手くいくはずだった。 けれど―― ずっと当たり前だった幼馴染の存在が、 恋をしたその日から、 少しずつ、確実に変わっていく。 気付いた時にはもう遅い。 これは、 「彼女ができた日」から始まる、 それぞれの後悔の物語。

百合ランジェリーカフェにようこそ!

楠富 つかさ
青春
 主人公、下条藍はバイトを探すちょっと胸が大きい普通の女子大生。ある日、同じサークルの先輩からバイト先を紹介してもらうのだが、そこは男子禁制のカフェ併設ランジェリーショップで!?  ちょっとハレンチなお仕事カフェライフ、始まります!! ※この物語はフィクションであり実在の人物・団体・法律とは一切関係ありません。 表紙画像はAIイラストです。下着が生成できないのでビキニで代用しています。

俺を振ったはずの腐れ縁幼馴染が、俺に告白してきました。

true177
恋愛
一年前、伊藤 健介(いとう けんすけ)は幼馴染の多田 悠奈(ただ ゆうな)に振られた。それも、心無い手紙を下駄箱に入れられて。 それ以来悠奈を避けるようになっていた健介だが、二年生に進級した春になって悠奈がいきなり告白を仕掛けてきた。 これはハニートラップか、一年前の出来事を忘れてしまっているのか……。ともかく、健介は断った。 日常が一変したのは、それからである。やたらと悠奈が絡んでくるようになったのだ。 彼女の狙いは、いったい何なのだろうか……。 ※小説家になろう、ハーメルンにも同一作品を投稿しています。 ※内部進行完結済みです。毎日連載です。

処理中です...