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第20話 それでも俺は舞奈を助けたい
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「兄さん!?」
「来海……! 何を言って……!?」
異世界に連れて行ってほしいという俺の一言に動揺を浮かべる小鳥と葉子。
俺もどうして自分がそんなことを言い出したのかよく整理できていない。
だけど、今の舞奈を一人にしてはいけないと直感したのだ。
「……ごめん。来海くん。異世界の行き来はそう簡単にはできないの」
「お前をそっちに召喚した人に頼んでもらえないか?」
「……無理だよ。私を召喚したのは王族の人。そんなすごい立場の人と話す権利、今の私にはないから」
“今の”
ということは昔の舞奈ならばそれはできたということなのだろうか。
いや、それよりも今の舞奈が不可ということが気がかりだった。
「じゃあさ、舞奈、お前が俺をそっちに召喚してみてくれないか?」
「えっ!?」
「そっちの世界の召喚獣をこっちに呼ぶことができるのならば……できるんじゃないか? 俺をそっちに呼ぶことを」
「…………」
「どうなんだ?」
「……できないよ」
「「「……!!」」」
舞奈召喚獣は耳元をポリポリ掻きながら気まずそうに返答する。
その仕草を見て俺達3人は確信に至る。
「できるんだな」
「……だからできないんだって!」
「嘘だな」
「嘘だね」
「嘘ですわ」
俺達3人は同時に舞奈の嘘を指摘する。
「ど、どうして、嘘だって……」
「癖だよ」
「えっ?」
俺は耳をポリポリ掻く仕草を舞奈に見えつける。
「この仕草、お前が嘘をつくときに取るポーズなんだ。面白いから黙っていたけど、その癖は治っていなかったんだな」
「なっ——!」
知らなかったのだろう。
しばらく舞奈は『う~っ!』と悔しそうに唸りをあげていた。
やがて観念したように一つため息を漏らす。
「……可能だよ。私程度の力でも来海くんをこっちの世界に呼ぶことは可能だと思う」
「なら——!」
「でも『私の元に』召喚することは……できるかどうかわからない。世界のどこかに一人ぼっちで召喚されてしまう可能性も高い」
「それでもいい」
「ダメ。キミはこっちの世界を甘くみている。町は魔力の壁で囲まれているから安全だけど、外は魔族がウヨウヨと存在しているんだよ。私の召喚獣なんかとは違って本気で殺そうとしてくる化け物が!」
「覚悟の上だ」
「駄目って言っているでしょ! 魔族だけじゃない! 危険な盗賊だって山賊だって暗殺者だって! 魔族以上に厄介な人間だっている! 話し合いで解決できるような甘い連中じゃないんだよ! 襲われたら彼らを殺すしかない! そんな覚悟ある!? ないでしょ!?」
「……覚悟の上だっていったよな?」
「私はキミに人殺しなんてやってほしくないんだよ!! こっちの汚い世界に染めたくないんだよ!!」
「…………」
きっと舞奈の言っていることが正しい。
俺は異世界に行くべきではない。
きっとリアルなファンタジー世界というのは生きるか死ぬかの厳しい現実の上で成り立っているのだろう。
俺が創造したおままごとみたいなファンタジーとはかけ離れた過酷さなのだろう。
それでも——
「俺は——舞奈を助けたい」
「……!!」
その言葉に舞奈ははっきりと動揺を浮かべた。
「助ける?」
「どういうことなの? 兄さん」
小鳥達も首を傾げて不思議そうにこちらを見てきていた。
舞奈はもう戦う必要がないといった。
言葉通り受け取るなら舞奈は安全圏で暮らしていける許可を得たということ。
……あり得るのだろうか?
王族に召喚された舞奈にそんな権利を与えられることなんてあり得るのだろうか?
世界に平和が戻ったのならばわかる。
でも舞奈は言っていた。
街の外には魔族がうようよしていると。
つまり異世界の厳しい現状はまだ終わっていない。
ならば召喚された戦士は休むことなどきっと許されない。
「お前……もう戦えない状況にあるんじゃないか?」
「——っ!!」
「病か……もしくは何らかの理由で異能が使えなくなったのか……そんなところか?」
「ど、どうして——」
「後者はあり得ないか。こっちの世界に召喚獣を寄越せるんだからな。ということは——」
「……舞奈ちゃん……病気……なの?」
「…………」
沈黙。
つまりは肯定ということ。
「どれくらい……悪いの?」
「…………」
「お願い! 教えてください! 舞奈さん!」
「……治る見込みは……もうないって言われちゃった」
「「「…………っ!!」」」
「流行り病だから辺境に隔離されている。こっちの世界には医薬品なんてないし、貧しいから栄養を取れない。いつ死んでもおかしくないの」
死ぬ?
舞奈が?
そんな……そんな……!
「死ぬ前にみんなとどうしても遊びたかった。えへへ。それが叶って、私は幸せだよ」
幸せだと。
ふざけるな。
「ふざけるな! 勝手に死ぬなんて許さない!」
「そうだよ!」
「お願い! 諦めないでください!!」
涙を散らしながら3人で舞奈召喚獣に抱き着いた。
「舞奈。それを聞いて俺は更に決意を固めた。何が何でもそっちの世界に連れて行ってもらうからな!」
「当然、ワタクシも行きますわ」
「私もいく」
「だ、だから駄目だって——」
いくら舞奈が駄目と言おうが俺達の決意は変わらない。
このままだと平行線だ。
なら——
「舞奈。勝負をしよう」
「え?」
「俺達が勝ったらお前は俺を異世界に召喚する。負けたら……俺達は諦めてこっちに残る」
「……勝負の内容は?」
「今までと同じさ。次の魔族——じゃなかった、召喚獣とのバトルで決める」
俺の——俺達の『覚悟』を見てもらう。
そっちの世界でも問題なくやっていけることを証明する。
だから——
「次は俺達を殺す気でこい。それに打ち勝って、お前に認めさせてやる」
「来海……! 何を言って……!?」
異世界に連れて行ってほしいという俺の一言に動揺を浮かべる小鳥と葉子。
俺もどうして自分がそんなことを言い出したのかよく整理できていない。
だけど、今の舞奈を一人にしてはいけないと直感したのだ。
「……ごめん。来海くん。異世界の行き来はそう簡単にはできないの」
「お前をそっちに召喚した人に頼んでもらえないか?」
「……無理だよ。私を召喚したのは王族の人。そんなすごい立場の人と話す権利、今の私にはないから」
“今の”
ということは昔の舞奈ならばそれはできたということなのだろうか。
いや、それよりも今の舞奈が不可ということが気がかりだった。
「じゃあさ、舞奈、お前が俺をそっちに召喚してみてくれないか?」
「えっ!?」
「そっちの世界の召喚獣をこっちに呼ぶことができるのならば……できるんじゃないか? 俺をそっちに呼ぶことを」
「…………」
「どうなんだ?」
「……できないよ」
「「「……!!」」」
舞奈召喚獣は耳元をポリポリ掻きながら気まずそうに返答する。
その仕草を見て俺達3人は確信に至る。
「できるんだな」
「……だからできないんだって!」
「嘘だな」
「嘘だね」
「嘘ですわ」
俺達3人は同時に舞奈の嘘を指摘する。
「ど、どうして、嘘だって……」
「癖だよ」
「えっ?」
俺は耳をポリポリ掻く仕草を舞奈に見えつける。
「この仕草、お前が嘘をつくときに取るポーズなんだ。面白いから黙っていたけど、その癖は治っていなかったんだな」
「なっ——!」
知らなかったのだろう。
しばらく舞奈は『う~っ!』と悔しそうに唸りをあげていた。
やがて観念したように一つため息を漏らす。
「……可能だよ。私程度の力でも来海くんをこっちの世界に呼ぶことは可能だと思う」
「なら——!」
「でも『私の元に』召喚することは……できるかどうかわからない。世界のどこかに一人ぼっちで召喚されてしまう可能性も高い」
「それでもいい」
「ダメ。キミはこっちの世界を甘くみている。町は魔力の壁で囲まれているから安全だけど、外は魔族がウヨウヨと存在しているんだよ。私の召喚獣なんかとは違って本気で殺そうとしてくる化け物が!」
「覚悟の上だ」
「駄目って言っているでしょ! 魔族だけじゃない! 危険な盗賊だって山賊だって暗殺者だって! 魔族以上に厄介な人間だっている! 話し合いで解決できるような甘い連中じゃないんだよ! 襲われたら彼らを殺すしかない! そんな覚悟ある!? ないでしょ!?」
「……覚悟の上だっていったよな?」
「私はキミに人殺しなんてやってほしくないんだよ!! こっちの汚い世界に染めたくないんだよ!!」
「…………」
きっと舞奈の言っていることが正しい。
俺は異世界に行くべきではない。
きっとリアルなファンタジー世界というのは生きるか死ぬかの厳しい現実の上で成り立っているのだろう。
俺が創造したおままごとみたいなファンタジーとはかけ離れた過酷さなのだろう。
それでも——
「俺は——舞奈を助けたい」
「……!!」
その言葉に舞奈ははっきりと動揺を浮かべた。
「助ける?」
「どういうことなの? 兄さん」
小鳥達も首を傾げて不思議そうにこちらを見てきていた。
舞奈はもう戦う必要がないといった。
言葉通り受け取るなら舞奈は安全圏で暮らしていける許可を得たということ。
……あり得るのだろうか?
王族に召喚された舞奈にそんな権利を与えられることなんてあり得るのだろうか?
世界に平和が戻ったのならばわかる。
でも舞奈は言っていた。
街の外には魔族がうようよしていると。
つまり異世界の厳しい現状はまだ終わっていない。
ならば召喚された戦士は休むことなどきっと許されない。
「お前……もう戦えない状況にあるんじゃないか?」
「——っ!!」
「病か……もしくは何らかの理由で異能が使えなくなったのか……そんなところか?」
「ど、どうして——」
「後者はあり得ないか。こっちの世界に召喚獣を寄越せるんだからな。ということは——」
「……舞奈ちゃん……病気……なの?」
「…………」
沈黙。
つまりは肯定ということ。
「どれくらい……悪いの?」
「…………」
「お願い! 教えてください! 舞奈さん!」
「……治る見込みは……もうないって言われちゃった」
「「「…………っ!!」」」
「流行り病だから辺境に隔離されている。こっちの世界には医薬品なんてないし、貧しいから栄養を取れない。いつ死んでもおかしくないの」
死ぬ?
舞奈が?
そんな……そんな……!
「死ぬ前にみんなとどうしても遊びたかった。えへへ。それが叶って、私は幸せだよ」
幸せだと。
ふざけるな。
「ふざけるな! 勝手に死ぬなんて許さない!」
「そうだよ!」
「お願い! 諦めないでください!!」
涙を散らしながら3人で舞奈召喚獣に抱き着いた。
「舞奈。それを聞いて俺は更に決意を固めた。何が何でもそっちの世界に連れて行ってもらうからな!」
「当然、ワタクシも行きますわ」
「私もいく」
「だ、だから駄目だって——」
いくら舞奈が駄目と言おうが俺達の決意は変わらない。
このままだと平行線だ。
なら——
「舞奈。勝負をしよう」
「え?」
「俺達が勝ったらお前は俺を異世界に召喚する。負けたら……俺達は諦めてこっちに残る」
「……勝負の内容は?」
「今までと同じさ。次の魔族——じゃなかった、召喚獣とのバトルで決める」
俺の——俺達の『覚悟』を見てもらう。
そっちの世界でも問題なくやっていけることを証明する。
だから——
「次は俺達を殺す気でこい。それに打ち勝って、お前に認めさせてやる」
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