暗殺者の少女、四大精霊に懐かれる。〜異世界に渡ったので、流浪の旅人になります〜

赤海 梓

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第2章 海を目指して

第24話 別れの挨拶②

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 モースをギルドマスターに預け、ロッツと挨拶をした後に向かったのはロイロの宿であった。
 部分的に焦げてしまってはいるものの、大きな被害は見当たらなかった。
 そして案の定そこには、お世話になった人の影があった。

「ロイロ!」

「おお! 皆々様、先日は大変お世話になりました……! もうどうお礼を言ったらいいか、ワタクシわかりません……!」

「えー、そんなそんな」

 ロイロさんはきれいな45°に頭を下げる。

「それじゃあ宿代無料でお願い」

「サラマンダー!?」

 唐突なサラマンダーの失言に私は驚く。

「なんだ、そんな事でしたらお易い御用でございます! 皆々様からお金を取れるほどワタクシ薄情ではありません故……!」

「ほら主様。こういう所、取るべきところは取っておかないといけません。社会で上手くやっていけませんよ?」

「………」

 精霊に社会を教えられるなんて……。
 だがそれもそうだ。今まで私はついつい他人に対し遠慮がちになってしまっていた。少しくらいは他人の善意に甘えても良いのかもしれない。

「それで皆様、どう言った御用でワタクシに訪れたのでしょうか?」

「今日中にこの村を出ようと思ってさ。お世話になった人たちに挨拶回りをしてるとこなの」

「なっ、皆様は本日旅立たれると……!」

 ロイロさんは目を丸くし、驚愕の素振りを見せる。

「そうなんだ。ごめんね? 本当は復興作業も手伝おうと思ったんだけどさ」

「だーめルミツ。私早く海に行きたいからー!」

「「あはは……」」

 シルフの潔い我儘発言。ロイロさんは察してくれたようだ。

「という訳でありがとね、ロイロ」

「いえいえ、お礼を言うのはこちらの方です!」

 そうしてロイロはまたも深々とお辞儀をする。

「あはは。それじゃあまたね、ロイロ」

「ええ、大変お世話になりました」

 そうして私たちはロイロに手を振り、次の箇所へと向かうのであった。



 ◇◇◇

 次の所に行く道中、私たちは少し話をする。

「そう言えばウンディーネは? 今朝からずっと見てないけど」

「あぁ、それは……」

「ウンディーネは自分の魔法で消せない炎がショックだったんだよ」

「ふーん……」

 謎の仮面の男。体術、魔力共に素晴らしかったが、奴の最大の武器はあの特殊な魔法だ。
 消えない炎、不治の患い焔インキュアフレイム
 本来炎属性は水属性の魔法に弱い。だからこそ、ウンディーネ程の実力者に消せない炎は無かった。無いはずだった。
 言ってしまえばウンディーネの実力不足が大量の怪我人を産んだ。どれほど擁護しようと、ウンディーネの中のこの事実は消えない。
 幸い死者は出なかった。それこそ4人のお陰だろう。

「ウンディーネはああ見えてしっかりしてるからね。だからこそ背負うものを大きくしがちなんだよ」

「そうなんだ……。まぁ、ウンディーネなら何とかなるとは思うけど」

「まぁアイツは強いですからね。並大抵のことではへこたれませんよ」

「まぁそうかもね。だから今はアイツは魔法の研究をしているんだよ。全ての炎を鎮火させる魔法を作るために」

「なるほど、だから居ないのか……。どこに居るかは知ってる?」

「それは知らなーい」

「僕も知らないです」

「そっか……」

 まぁウンディーネの事だ。危険なことはしないと信じよう。

「それより主様、モースとウンディーネが集まったら話したいことがあるんですけど」

「ん?」

 サラマンダーが神妙な面持ちで話を投げかける。それに対してシルフが答える。

「悔恨の瞳についてだよね?」

「そう」

「あぁ、そうだね」

 悔恨の瞳、目的も強さも上の者も不明。ただ最低でも1人、四大精霊よりも強い実力者が存在する事だけは把握している。

「ルミツはアイツらをこの村に近づけないために、出発を急いでるんだよね?」

「うん」

 さっきはロイロに嘘をついた。シルフの急かし、というのはあくまで表面上の理由だ。本当の理由は、目をつけられたかもしれない私の危機に巻き込まれないようにするためだ。
 その為にはいち早く私がこの村を離れる必要がある。

「まぁ、この話はみんなが揃った時にしたいかな」

「同感です」

「そうだねー」

 こうして私たちは次の箇所へと向かうのであった。



 ◇◇◇

「あっ、見つけた」

「あっ、貴方はあの時の!」

 村の市場。
 私たちはあの時ワイバーンに襲われていた冒険者を見つけた。

「あの時はありがとうございました!」

「いやいや。それよりも仲間のあと2人は?」

「あー、さっきあっちの武器屋に行くって。それでそろそろ帰ってくる頃だと……」

 そう言い終わるや否や、武器屋から2人の冒険者が出てきた。

「あっ、丁度出てきたあれです!」

「おーい、終わったぞー……って、あっ!」

「どうしたんだよ……あぁっ!」

「こんにちはー」

 私が挨拶をすると、2人は全力で私にお辞儀をした。

「「昨日はどうもありがとうございましたっ!!」」

「あっ、私もありがとうございました!」

 3人からのお礼を受け、私は少しむず痒くなる。

「別にそんなに良いのに……。あっでも折角ならみんなの名前を聞いておきたいな」

 そうすると、あのドラゴンの息吹を防いでいた大盾を持つ男が私に1歩近づいてきた。

「自分はクーラと申します!」

「あー、君の防御凄かったな。あのドラゴンの攻撃をよく耐えたよね」

「ええ、この盾が特別製なもんでして……! 自分の命より大事な盾なんです!」

 そうしてクーラは白の大盾を見せる。

「凄いよルミツ! これアダマンタイトプラスだ!」

「アダマンタイト+?」

「知らないの!? 超有名かつ伝説の金属だよ! これを手にした者の剣は全てを穿ち、手にしたものの盾は命の永続が約束されると言われるほどの超超超最強金属だよ!」

「僕も実物を見るのは2回目だ……!」

「そうなんです! これは自分のちっせえ頃に鉱夫のじいちゃんからもらった大事な盾なんです!」

「へぇ……!」

 そんなにすごい盾なんだ……。あんなドラゴンの攻撃すら防げるのかぁ……。

「すごいねぇ」

 私は盾に至近距離まで近づく。そしてその盾をまじまじと観察する。

「貰えないからねルミツ」

「貰わないよ!?」

「主様、見すぎです」

「いやすごい盾だから! ついつい目が奪われるんだよ!」

「へー? まぁそういう事にしとくけど」

「ちょっとー!」

「あの……」

「あっ、ごめんごめん」

 ついつい盾に見入ってしまった。性能だけでなくデザインもまた良い。

「それで、2人の名前は?」

「私はエルファって言います! このパーティの魔法使い担当です!」

「俺はラクルトって言います!」

「エルファにラクルト。いい名前だね!」

「ありがとうございます! こう見えて自分たちはAランクパーティなんですよ」

「へぇ、すごいじゃん」

 ……Aランクパーティがどれだけすごいかわからないけど。

「私たちのパーティの名前は『王帝の響きクラウンビート』って言います! 結構名が知れてるので困ったことがあったらいつでも頼ってくださいね!」

「えっ、そんな都合いいこといいの?」

「ええ! ルミツさんは命の恩人ですから!」

「へへ、それならお言葉に甘えて、いつか頼らせてもらうね」

「はい!」

「それじゃあ、私たちは今日出発するから暫く会えないけど、楽しかったよ」

「えっ、ルミツさんもういなくなっちゃうんですか!?」

「そんなぁ!」

 3人はどよめく。まぁそんな一瞬でいなくなっちゃそりゃあ動揺するか。

「ごめんね、私たちは海に行くってために冒険してるからさ。愛着が湧きすぎても困っちゃうんだよ」

「あー、まぁそうですよね……」

 そんな微妙な空気が流れた中、クーラが頭を下げる。

「自分たちは本当にお世話になりました! 本当にありがとうございます!」

「俺も、本当に助かって、それで……!」

 その流れに乗ったラクルトが頭を下げる。

「ちょっと男どもー。むさ苦しいのが近づいてきたらいくらルミツちゃんでも怖いでしょー。でも、ありがとうございます」

 そしてエルファも

「みんな顔上げてよー! こそばゆいってぇー!」

「ルミツったら悪どい女ー」

「やめてぇ!?」

 辺りに笑いが起こった。なんでや、悪どい女ちゃうわ。

 こうして私たちは挨拶回りを終えるのであった。
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