暗殺者の少女、四大精霊に懐かれる。〜異世界に渡ったので、流浪の旅人になります〜

赤海 梓

文字の大きさ
24 / 50
第2章 海を目指して

第24話 別れの挨拶②

しおりを挟む
 モースをギルドマスターに預け、ロッツと挨拶をした後に向かったのはロイロの宿であった。
 部分的に焦げてしまってはいるものの、大きな被害は見当たらなかった。
 そして案の定そこには、お世話になった人の影があった。

「ロイロ!」

「おお! 皆々様、先日は大変お世話になりました……! もうどうお礼を言ったらいいか、ワタクシわかりません……!」

「えー、そんなそんな」

 ロイロさんはきれいな45°に頭を下げる。

「それじゃあ宿代無料でお願い」

「サラマンダー!?」

 唐突なサラマンダーの失言に私は驚く。

「なんだ、そんな事でしたらお易い御用でございます! 皆々様からお金を取れるほどワタクシ薄情ではありません故……!」

「ほら主様。こういう所、取るべきところは取っておかないといけません。社会で上手くやっていけませんよ?」

「………」

 精霊に社会を教えられるなんて……。
 だがそれもそうだ。今まで私はついつい他人に対し遠慮がちになってしまっていた。少しくらいは他人の善意に甘えても良いのかもしれない。

「それで皆様、どう言った御用でワタクシに訪れたのでしょうか?」

「今日中にこの村を出ようと思ってさ。お世話になった人たちに挨拶回りをしてるとこなの」

「なっ、皆様は本日旅立たれると……!」

 ロイロさんは目を丸くし、驚愕の素振りを見せる。

「そうなんだ。ごめんね? 本当は復興作業も手伝おうと思ったんだけどさ」

「だーめルミツ。私早く海に行きたいからー!」

「「あはは……」」

 シルフの潔い我儘発言。ロイロさんは察してくれたようだ。

「という訳でありがとね、ロイロ」

「いえいえ、お礼を言うのはこちらの方です!」

 そうしてロイロはまたも深々とお辞儀をする。

「あはは。それじゃあまたね、ロイロ」

「ええ、大変お世話になりました」

 そうして私たちはロイロに手を振り、次の箇所へと向かうのであった。



 ◇◇◇

 次の所に行く道中、私たちは少し話をする。

「そう言えばウンディーネは? 今朝からずっと見てないけど」

「あぁ、それは……」

「ウンディーネは自分の魔法で消せない炎がショックだったんだよ」

「ふーん……」

 謎の仮面の男。体術、魔力共に素晴らしかったが、奴の最大の武器はあの特殊な魔法だ。
 消えない炎、不治の患い焔インキュアフレイム
 本来炎属性は水属性の魔法に弱い。だからこそ、ウンディーネ程の実力者に消せない炎は無かった。無いはずだった。
 言ってしまえばウンディーネの実力不足が大量の怪我人を産んだ。どれほど擁護しようと、ウンディーネの中のこの事実は消えない。
 幸い死者は出なかった。それこそ4人のお陰だろう。

「ウンディーネはああ見えてしっかりしてるからね。だからこそ背負うものを大きくしがちなんだよ」

「そうなんだ……。まぁ、ウンディーネなら何とかなるとは思うけど」

「まぁアイツは強いですからね。並大抵のことではへこたれませんよ」

「まぁそうかもね。だから今はアイツは魔法の研究をしているんだよ。全ての炎を鎮火させる魔法を作るために」

「なるほど、だから居ないのか……。どこに居るかは知ってる?」

「それは知らなーい」

「僕も知らないです」

「そっか……」

 まぁウンディーネの事だ。危険なことはしないと信じよう。

「それより主様、モースとウンディーネが集まったら話したいことがあるんですけど」

「ん?」

 サラマンダーが神妙な面持ちで話を投げかける。それに対してシルフが答える。

「悔恨の瞳についてだよね?」

「そう」

「あぁ、そうだね」

 悔恨の瞳、目的も強さも上の者も不明。ただ最低でも1人、四大精霊よりも強い実力者が存在する事だけは把握している。

「ルミツはアイツらをこの村に近づけないために、出発を急いでるんだよね?」

「うん」

 さっきはロイロに嘘をついた。シルフの急かし、というのはあくまで表面上の理由だ。本当の理由は、目をつけられたかもしれない私の危機に巻き込まれないようにするためだ。
 その為にはいち早く私がこの村を離れる必要がある。

「まぁ、この話はみんなが揃った時にしたいかな」

「同感です」

「そうだねー」

 こうして私たちは次の箇所へと向かうのであった。



 ◇◇◇

「あっ、見つけた」

「あっ、貴方はあの時の!」

 村の市場。
 私たちはあの時ワイバーンに襲われていた冒険者を見つけた。

「あの時はありがとうございました!」

「いやいや。それよりも仲間のあと2人は?」

「あー、さっきあっちの武器屋に行くって。それでそろそろ帰ってくる頃だと……」

 そう言い終わるや否や、武器屋から2人の冒険者が出てきた。

「あっ、丁度出てきたあれです!」

「おーい、終わったぞー……って、あっ!」

「どうしたんだよ……あぁっ!」

「こんにちはー」

 私が挨拶をすると、2人は全力で私にお辞儀をした。

「「昨日はどうもありがとうございましたっ!!」」

「あっ、私もありがとうございました!」

 3人からのお礼を受け、私は少しむず痒くなる。

「別にそんなに良いのに……。あっでも折角ならみんなの名前を聞いておきたいな」

 そうすると、あのドラゴンの息吹を防いでいた大盾を持つ男が私に1歩近づいてきた。

「自分はクーラと申します!」

「あー、君の防御凄かったな。あのドラゴンの攻撃をよく耐えたよね」

「ええ、この盾が特別製なもんでして……! 自分の命より大事な盾なんです!」

 そうしてクーラは白の大盾を見せる。

「凄いよルミツ! これアダマンタイトプラスだ!」

「アダマンタイト+?」

「知らないの!? 超有名かつ伝説の金属だよ! これを手にした者の剣は全てを穿ち、手にしたものの盾は命の永続が約束されると言われるほどの超超超最強金属だよ!」

「僕も実物を見るのは2回目だ……!」

「そうなんです! これは自分のちっせえ頃に鉱夫のじいちゃんからもらった大事な盾なんです!」

「へぇ……!」

 そんなにすごい盾なんだ……。あんなドラゴンの攻撃すら防げるのかぁ……。

「すごいねぇ」

 私は盾に至近距離まで近づく。そしてその盾をまじまじと観察する。

「貰えないからねルミツ」

「貰わないよ!?」

「主様、見すぎです」

「いやすごい盾だから! ついつい目が奪われるんだよ!」

「へー? まぁそういう事にしとくけど」

「ちょっとー!」

「あの……」

「あっ、ごめんごめん」

 ついつい盾に見入ってしまった。性能だけでなくデザインもまた良い。

「それで、2人の名前は?」

「私はエルファって言います! このパーティの魔法使い担当です!」

「俺はラクルトって言います!」

「エルファにラクルト。いい名前だね!」

「ありがとうございます! こう見えて自分たちはAランクパーティなんですよ」

「へぇ、すごいじゃん」

 ……Aランクパーティがどれだけすごいかわからないけど。

「私たちのパーティの名前は『王帝の響きクラウンビート』って言います! 結構名が知れてるので困ったことがあったらいつでも頼ってくださいね!」

「えっ、そんな都合いいこといいの?」

「ええ! ルミツさんは命の恩人ですから!」

「へへ、それならお言葉に甘えて、いつか頼らせてもらうね」

「はい!」

「それじゃあ、私たちは今日出発するから暫く会えないけど、楽しかったよ」

「えっ、ルミツさんもういなくなっちゃうんですか!?」

「そんなぁ!」

 3人はどよめく。まぁそんな一瞬でいなくなっちゃそりゃあ動揺するか。

「ごめんね、私たちは海に行くってために冒険してるからさ。愛着が湧きすぎても困っちゃうんだよ」

「あー、まぁそうですよね……」

 そんな微妙な空気が流れた中、クーラが頭を下げる。

「自分たちは本当にお世話になりました! 本当にありがとうございます!」

「俺も、本当に助かって、それで……!」

 その流れに乗ったラクルトが頭を下げる。

「ちょっと男どもー。むさ苦しいのが近づいてきたらいくらルミツちゃんでも怖いでしょー。でも、ありがとうございます」

 そしてエルファも

「みんな顔上げてよー! こそばゆいってぇー!」

「ルミツったら悪どい女ー」

「やめてぇ!?」

 辺りに笑いが起こった。なんでや、悪どい女ちゃうわ。

 こうして私たちは挨拶回りを終えるのであった。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

魔晶石ハンター ~ 転生チート少女の数奇な職業活動の軌跡

サクラ近衛将監
ファンタジー
 女神様のミスで事故死したOLの大滝留美は、地球世界での転生が難しいために、神々の伝手により異世界アスレオールに転生し、シルヴィ・デルトンとして生を受けるが、前世の記憶は11歳の成人の儀まで封印され、その儀式の最中に前世の記憶ととともに職業を神から告げられた。  シルヴィの与えられた職業は魔晶石採掘師と魔晶石加工師の二つだったが、シルヴィはその職業を知らなかった。  シルヴィの将来や如何に?  毎週木曜日午後10時に投稿予定です。

大学生活を謳歌しようとしたら、女神の勝手で異世界に転送させられたので、復讐したいと思います

町島航太
ファンタジー
 2022年2月20日。日本に住む善良な青年である泉幸助は大学合格と同時期に末期癌だという事が判明し、短い人生に幕を下ろした。  死後、愛の女神アモーラに見初められた幸助は魔族と人間が争っている魔法の世界へと転生させられる事になる。  命令が嫌いな幸助は使命そっちのけで魔法の世界を生きていたが、ひょんな事から自分の死因である末期癌はアモーラによるものであり、魔族討伐はアモーラの私情だという事が判明。  自ら手を下すのは面倒だからという理由で夢のキャンパスライフを失った幸助はアモーラへの復讐を誓うのだった。

出来損ない貴族の三男は、謎スキル【サブスク】で世界最強へと成り上がる〜今日も僕は、無能を演じながら能力を徴収する〜

シマセイ
ファンタジー
実力至上主義の貴族家に転生したものの、何の才能も持たない三男のルキウスは、「出来損ない」として優秀な兄たちから虐げられる日々を送っていた。 起死回生を願った五歳の「スキルの儀」で彼が授かったのは、【サブスクリプション】という誰も聞いたことのない謎のスキル。 その結果、彼の立場はさらに悪化。完全な「クズ」の烙印を押され、家族から存在しない者として扱われるようになってしまう。 絶望の淵で彼に寄り添うのは、心優しき専属メイドただ一人。 役立たずと蔑まれたこの謎のスキルが、やがて少年の運命を、そして世界を静かに揺るがしていくことを、まだ誰も知らない。

外れスキルは、レベル1!~異世界転生したのに、外れスキルでした!

武蔵野純平
ファンタジー
異世界転生したユウトは、十三歳になり成人の儀式を受け神様からスキルを授かった。 しかし、授かったスキルは『レベル1』という聞いたこともないスキルだった。 『ハズレスキルだ!』 同世代の仲間からバカにされるが、ユウトが冒険者として活動を始めると『レベル1』はとんでもないチートスキルだった。ユウトは仲間と一緒にダンジョンを探索し成り上がっていく。 そんなユウトたちに一人の少女た頼み事をする。『お父さんを助けて!』

転生したら最強種の竜人かよ~目立ちたくないので種族隠して学院へ通います~

ゆる弥
ファンタジー
強さをひた隠しにして学院の入学試験を受けるが、強すぎて隠し通せておらず、逆に目立ってしまう。 コイツは何かがおかしい。 本人は気が付かず隠しているが、周りは気付き始める。 目立ちたくないのに国の最高戦力に祭り上げられてしまう可哀想な男の話。

魔力0の貴族次男に転生しましたが、気功スキルで補った魔力で強い魔法を使い無双します

burazu
ファンタジー
事故で命を落とした青年はジュン・ラオールという貴族の次男として生まれ変わるが魔力0という鑑定を受け次男であるにもかかわらず継承権最下位へと降格してしまう。事実上継承権を失ったジュンは騎士団長メイルより剣の指導を受け、剣に気を込める気功スキルを学ぶ。 その気功スキルの才能が開花し、自然界より魔力を吸収し強力な魔法のような力を次から次へと使用し父達を驚愕させる。

うっかり女神さまからもらった『レベル9999』は使い切れないので、『譲渡』スキルで仲間を強化して最強パーティーを作ることにしました

akairo
ファンタジー
「ごめんなさい!貴方が死んだのは私のクシャミのせいなんです!」 帰宅途中に工事現場の足台が直撃して死んだ、早良 悠月(さわら ゆずき)が目覚めた目の前には女神さまが土下座待機をして待っていた。 謝る女神さまの手によって『ユズキ』として転生することになったが、その直後またもや女神さまの手違いによって、『レベル9999』と職業『譲渡士』という謎の職業を付与されてしまう。 しかし、女神さまの世界の最大レベルは99。 勇者や魔王よりも強いレベルのまま転生することになったユズキの、使い切ることもできないレベルの使い道は仲間に譲渡することだった──!? 転生先で出会ったエルフと魔族の少女。スローライフを掲げるユズキだったが、二人と共に世界を回ることで国を巻き込む争いへと巻き込まれていく。 ※9月16日  タイトル変更致しました。 前タイトルは『レベル9999は転生した世界で使い切れないので、仲間にあげることにしました』になります。 仲間を強くして無双していく話です。 『小説家になろう』様でも公開しています。

この度異世界に転生して貴族に生まれ変わりました

okiraku
ファンタジー
地球世界の日本の一般国民の息子に生まれた藤堂晴馬は、生まれつきのエスパーで透視能力者だった。彼は親から独立してアパートを借りて住みながら某有名国立大学にかよっていた。4年生の時、酔っ払いの無免許運転の車にはねられこの世を去り、異世界アールディアのバリアス王国貴族の子として転生した。幸せで平和な人生を今世で歩むかに見えたが、国内は王族派と貴族派、中立派に分かれそれに国王が王位継承者を定めぬまま重い病に倒れ王子たちによる王位継承争いが起こり国内は不安定な状態となった。そのため貴族間で領地争いが起こり転生した晴馬の家もまきこまれ領地を失うこととなるが、もともと転生者である晴馬は逞しく生き家族を支えて生き抜くのであった。

処理中です...