36 / 77
36
しおりを挟む酒に酔うとろくなことを言わないし思った事がそのまま口から出る。普段ならしない暴言と思われる言葉を吐いたようだ。
「知りませんからね」
魔術に適正があるかもわからない彼女が目の前から消えた。夫の一人である目の前にいる男、ノアールの与えた魔術具のせいだろうが。
その横で呆れているのがミシェル、知らないと怒ってきたのは彼女の講師だ。男だがドレスを着ているがそれどころではない。
「ノアール」
「今怒ってますから。例え殿下であろうと僕の妻にあのような失礼な物言い…」
「ミズキはどこへ行ったんだ?」
「僕のところにいないとなるとジョエル様の元へ。僕に頼ってくれたらよかったのに。それよりもこの場にいたくなかったんだと。転移は僕かジョエル様の元に行けるようになっていますから」
ノアが怒っている様子は知り合って数年経つが初めてみた。どんな理不尽な扱いをされても怒ったりしないこの男が妻のことでは怒るのか。まだ出会って数日なのに
「ジョエルの元へ行くぞ」
「やめたほうがいいと思います」
ロランの発言に全員が同意しているようだ。
「まずは酔いを覚まして御自分の発言を振り返ってみたらいかがです?ノア、頼みましたよ」
体からアルコールが抜けるのがわかる。父である陛下がこの術を気に入ってるのもわかる。一気に抜けるのはこれはこれで癖になる。二日酔いも楽になりそうだ。
それよりも彼女にかけた言葉、どれを振り返ってもあり得ない…泣かせるほどの言葉ではないが、彼女は異世界からやってきて一人なのだ。そこにはやはり優しい言葉をかけるべきだった。
「殿下とミズキが結婚だけはなくなりましたね」
鼻で笑うミシェル。なんだ?自分は結婚がありえるとおもっているのか?恐らく彼女は3人セットだと思っているからお前もミズキと結婚なんてできないことに気付け。ロラン、お前もだ。
「…謝罪に向かう。ノアール、頼んだぞ」
「嫌ですけど仕方ないです。ミズキが泣くところなんて見たくなかったのに」
ノアールの機嫌の悪さは初だ。これを母上や義姉上にみられたら大変なことになる。
宰相執務室へ行ったがミズキもジョエルもいなかった。
「陛下と王太子は大変にご機嫌でありましたが、殿下は違うのですね」
宰相に嫌味を言われているのはわかっている
「御子息とミズキは?」
「さぁ?泣きながらいきなり現れた異世界の花嫁様と一緒にどこかへ転移してしまいましたよ。あぁ、異世界の花嫁様とは他人行儀でしたね。娘になるのに。ノアールも息子のようなものですよ」
本当に息子とそっくりな父だ。
「彼女は時期侯爵夫人ですから。こうがどちらかはわかりませんが」
自分にも可能性がないというわけではないと宰相に言われたのは何故か自信になった。そうか、まだ可能性はあるのか。
転移は使わず歩いて彼女のいる貴賓室の方まで来れば本来であれば扉の前にいるであろう近衛騎士達が扉から距離をとっている
「お前達、なぜそのような位置で」
「あっ…えっと…その…」
顔を赤くして俯く近衛騎士達に何かを察するのはミシェルだ。扉の前に行けば満足そうに微笑んでいる。本当に気持ち悪い。
殿下もどうぞ。とよくわからず扉の前に立てば小さいながらも彼女の声、いやこれは最中だ
「ノアール、魔術はどうした!?」
「今日はみんないないからかけてなかったんですよ。魔術温存しておかないと明日小さくなってミズキのお披露目は嫌だったんです!」
近衛騎士達が扉から距離をとっていたのも今ならわかる。平素であればなんの音も気配もない扉から喘ぎ声が漏れ聞こえれば誰だって動揺する。チラリとでも対象をみたことがあればなおさらだ。想像してしまうのだろう。近衛騎士と言ってもロランの直属の部下だからまだ年若い。妻や婚約者がいればまだしも、いない人間にとっては酷だ。
「ノアール、ここは今は貴方の魔術はなにもかかっていないと?」
「え、えぇ」
「では」
ミシェルの魔術はろくなものがないけれどとんでもなく趣味の悪い魔術を使った。
『ジョエル、すきっ、やぁっ、』
『やじゃないでしょう?…ほら、扉の方を見てみたらどうです?』
扉を透かしたこの執事の魔術は趣味が悪い。室内の様子がすべて見えるのだから。
彼女は扉に手を付いて前屈みになっているが、どうみても後ろの男が突いている。声と動きがその証拠だ。なんでこんなタイミングで好いている女とその夫の情事を見せられなければならないのか。しかもその夫の方は見られているのをわかっているようだ。
「ほら、ハイヒールなのに背伸びをしていますよ。健気な方なんですね。片手で両乳首いじられて喜んでますし」
「あのドレス、ミズキがプリンセスみたいって気に入ってたのに。あと髪も。花落ちちゃって…」
『も、だめ…足、ちからはいんな、ぃ』
『じゃあ終わらせてあげますよ』
好いた女のセックスを見せられているときはどんな反応をしたらいいか忘れた。数年前は当たり前だったはずなのに今は受け入れることができない。目をそらしても声は聞こえてくるし肌がぶつかる音や他の音も鮮明に聞こえる。
ミシェルもノアールも普通に見ているが正直信じられない。ロランは背を向けている。
「ミシェル、やめてやれ」
「いや、出されたあとミズキ様がどうするのかが気になって」
「僕はいつも口でキレイにしてあげるってフェラしてもらえますよ。浄化もあるしシャワー浴びればいいのにミズキは口で舐めとってくれます」
「羨ましい限りですよ。すぐに夫が無理でも恋人、彼氏くらいにならなれますかね?」
「ジョエル様がいいと言えば。僕はミシェル様達が一緒に夫になれたら楽しいと思いますけど、ミズキが…」
扉の透化をやめろと言ったのに聞かない従者はろくでもない。ノアールもノアールだ。増えてもいいのだろうか。いや、此処では当たり前のことか。
ヒナのせいだ、一人を愛して一人から愛されたいなど理解できないことを言うからだ。沢山の夫に愛されてこそ女の価値が上がるものだというのに、今まで生きてきた世界の価値観をすてられなかったのだ。ミズキは夫をいきなり2人も決めたのだからヒナよりはこちらの世界寄りの人間だったのかもしれない。
『口でキレイキレイしてあげる』
『すぐ浴室にいきますよ?』
『してあげたいの』
「おー。本当に躊躇なくいくんですね」
「ミズキの世界だと最後は顔にかけるのが定番のアダルトビデオ?なるものでは普通みたいですよ」
「膣内に出してこそなのに。そういえば魔術はないんでしたね」
「えぇ。いっぱいいっぱいになると『赤ちゃんできたら困るから』って言うのは新鮮でいいですよ」
「それは、なんともいえない興奮要素ですね」
鈍い音がしたから見てみれば顔を赤くしたロランがミシェルを殴っていた。
「見られているのも知らない彼女のことをそんな風に言うな!ノアールもノアールだ、」
『はい、上手にできた?』
『ありがとう。ほら、手伸ばして。浴室へ連れていってあげますよ、お姫様』
セックスが終わったあとは夫が姫抱きをして部屋の奥へと行ってしまった。ノアールも部屋へ入ったと思えばガチガチに魔術がかけられ、ジョエルの魔術では中を窺い知ることもできなくなった。
「はぁ~…」
「ロラン、なんですかその溜め息は」
「溜め息もつきたくなるさ…なんだこの状況は。殿下も殿下ですよ。結局謝ることもできず、ただ見ていただけですよ」
「わかってる。しかし」
そうだ、謝罪をしにきたのだ。驚きすぎて忘れていた。
31
あなたにおすすめの小説
私が美女??美醜逆転世界に転移した私
鍋
恋愛
私の名前は如月美夕。
27才入浴剤のメーカーの商品開発室に勤める会社員。
私は都内で独り暮らし。
風邪を拗らせ自宅で寝ていたら異世界転移したらしい。
転移した世界は美醜逆転??
こんな地味な丸顔が絶世の美女。
私の好みど真ん中のイケメンが、醜男らしい。
このお話は転生した女性が優秀な宰相補佐官(醜男/イケメン)に囲い込まれるお話です。
※ゆるゆるな設定です
※ご都合主義
※感想欄はほとんど公開してます。
【完結】異世界に転移しましたら、四人の夫に溺愛されることになりました(笑)
かのん
恋愛
気が付けば、喧騒など全く聞こえない、鳥のさえずりが穏やかに聞こえる森にいました。
わぁ、こんな静かなところ初めて~なんて、のんびりしていたら、目の前に麗しの美形達が現れて・・・
これは、女性が少ない世界に転移した二十九歳独身女性が、あれよあれよという間に精霊の愛し子として囲われ、いつのまにか四人の男性と結婚し、あれよあれよという間に溺愛される物語。
あっさりめのお話です。それでもよろしければどうぞ!
本日だけ、二話更新。毎日朝10時に更新します。
完結しておりますので、安心してお読みください。
残念女子高生、実は伝説の白猫族でした。
具なっしー
恋愛
高校2年生!葉山空が一妻多夫制の男女比が20:1の世界に召喚される話。そしてなんやかんやあって自分が伝説の存在だったことが判明して…て!そんなことしるかぁ!残念女子高生がイケメンに甘やかされながらマイペースにだらだら生きてついでに世界を救っちゃう話。シリアス嫌いです。
※表紙はAI画像です
旦那様が多すぎて困っています!? 〜逆ハーレム異世界ラブコメ〜
ことりとりとん
恋愛
男女比8:1の逆ハーレム異世界に転移してしまった女子大生・大森泉
転移早々旦那さんが6人もできて、しかも魔力無限チートがあると教えられて!?
のんびりまったり暮らしたいのにいつの間にか国を救うハメになりました……
イケメン山盛りの逆ハーレムです
前半はラブラブまったりの予定。後半で主人公が頑張ります
小説家になろう、カクヨムに転載しています
【完結】甘やかな聖獣たちは、聖女様がとろけるようにキスをする
楠結衣
恋愛
女子大生の花恋は、いつものように大学に向かう途中、季節外れの鯉のぼりと共に異世界に聖女として召喚される。
ところが花恋を召喚した王様や黒ローブの集団に偽聖女と言われて知らない森に放り出されてしまう。
涙がこぼれてしまうと鯉のぼりがなぜか執事の格好をした三人組みの聖獣に変わり、元の世界に戻るために、一日三回のキスが必要だと言いだして……。
女子大生の花恋と甘やかな聖獣たちが、いちゃいちゃほのぼの逆ハーレムをしながら元の世界に戻るためにちょこっと冒険するおはなし。
◇表紙イラスト/知さま
◇鯉のぼりについては諸説あります。
◇小説家になろうさまでも連載しています。
私は5歳で4人の許嫁になりました【完結】
Lynx🐈⬛
恋愛
ナターシャは公爵家の令嬢として産まれ、5歳の誕生日に、顔も名前も知らない、爵位も不明な男の許嫁にさせられた。
それからというものの、公爵令嬢として恥ずかしくないように育てられる。
14歳になった頃、お行儀見習いと称し、王宮に上がる事になったナターシャは、そこで4人の皇子と出会う。
皇太子リュカリオン【リュカ】、第二皇子トーマス、第三皇子タイタス、第四皇子コリン。
この4人の誰かと結婚をする事になったナターシャは誰と結婚するのか………。
※Hシーンは終盤しかありません。
※この話は4部作で予定しています。
【私が欲しいのはこの皇子】
【誰が叔父様の側室になんてなるもんか!】
【放浪の花嫁】
本編は99話迄です。
番外編1話アリ。
※全ての話を公開後、【私を奪いに来るんじゃない!】を一気公開する予定です。
【完結】赤ちゃんが生まれたら殺されるようです
白崎りか
恋愛
もうすぐ赤ちゃんが生まれる。
ドレスの上から、ふくらんだお腹をなでる。
「はやく出ておいで。私の赤ちゃん」
ある日、アリシアは見てしまう。
夫が、ベッドの上で、メイドと口づけをしているのを!
「どうして、メイドのお腹にも、赤ちゃんがいるの?!」
「赤ちゃんが生まれたら、私は殺されるの?」
夫とメイドは、アリシアの殺害を計画していた。
自分たちの子供を跡継ぎにして、辺境伯家を乗っ取ろうとしているのだ。
ドラゴンの力で、前世の記憶を取り戻したアリシアは、自由を手に入れるために裁判で戦う。
※1話と2話は短編版と内容は同じですが、設定を少し変えています。
人狼な幼妻は夫が変態で困り果てている
井中かわず
恋愛
古い魔法契約によって強制的に結ばれたマリアとシュヤンの14歳年の離れた夫婦。それでも、シュヤンはマリアを愛していた。
それはもう深く愛していた。
変質的、偏執的、なんとも形容しがたいほどの狂気の愛情を注ぐシュヤン。異常さを感じながらも、なんだかんだでシュヤンが好きなマリア。
これもひとつの夫婦愛の形…なのかもしれない。
全3章、1日1章更新、完結済
※特に物語と言う物語はありません
※オチもありません
※ただひたすら時系列に沿って変態したりイチャイチャしたりする話が続きます。
※主人公の1人(夫)が気持ち悪いです。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる