別れたい女と別れたくない男

そいみるくてぃー

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「うっわ地獄」

彼氏に話があると昼休みに学校のカフェに呼び出された私が目にしたのは、彼氏とこの前ヤった男が一緒にいる所だ。え?話があるってなに?しかもそこにいけって?うわー地獄って思ったらDMの通知。しゅーたくんだ。

『陸斗なんにも知らないから安心して』

私が近くにいるってわかってか。いや、マジで気遣いできるな、だから彼女がいても簡単にセックスに持ち込めるくらいの対応もできるのねおけおけ、理解理解。

「芽依」

今度はりっくんが気付いた。顔好き

「話ってなに?ってか連れいるの?きいてないんだけど」

素っ気なくなるのも仕方ない、なんてったって一昨日一夜を共にした男が彼氏の横にいるんだから。あわよくばというか席を外してほしい。

「友達」

それだけで通じると思ってんのかよこの顔だけ男。でもそれを口にしても面倒だしとりあえずさっさと話だけきいて逃げよ。
円卓でよかった。りっくんの前に座ってさっさと話してもらうに限る。 
暫しの沈黙のあと口を開いたのはりっくんだった。

「ごめんっ」

え?浮気に気づいた?ちがう、それならりっくんは責めてくるはずだし、なんか頭下げてるからもしかしてりっくんが浮気した!?やばっ想像だにしない展開!?

「もう芽依と約束ドタキャンしないし、もっと愛も伝える。芽依のこと本当に真剣に大好きだから別れないで!おねがいっ」

テーブルに頭つけてるからこっち見えないよね?しゅーたくんに目線を向けてみたけどわからなさそうな顔してるからバレたわけではなさそう。それより周りの視線よ…

「りっくん、恥ずかしいから顔あげて」
「別れるなんて言わない?」
「言ってないじゃん」

りっくんの顔をなんとか上げさせることには成功したけれど、周りからの視線よ…衆人環視?もうやばすぎ。なんでこんな時間にこんな場所選んだの?って責めたいけど無理。私の友達は堪えながらもめちゃくちゃ笑ってるの視線の端にいてもわかる。すっごいとんでもない目線を向けてくるやつは恐らくりっくん狙いの女、面白そうにこっちを見ているのは野次馬的な人達というかこっちが目立ってるからそちらに目を向けてるだけなんだろうけど、まぁ痛いわ視線が。

「芽依に嫉妬してほしくて…やめてとかしないでって言われたら思いっきり芽依のこと愛してるって伝えて一生離さないってする予定だった」
「私があんまりそうしないから?どんどんエスカレートした、と?」
「…はい。」
「ばっかみたい」

嫉妬してほしかった?もうそんな気も失せてるし、そんなエネルギー使いたくもない。なんで、どうしてなんて高校生の頃で終わってる。
いっつも友達と言う名のどうみてもりっくん狙いの女が横にいてもなーんにも考えてないこの男には申し訳ないがほとほと愛想は尽きている。嫉妬して欲しい?バカかよ、もうそんな気とっくに失せてるんだから。
就活が始まればそのまま疎遠になって社会人にでもなれば自然消滅でって考えてたのに、こんな公衆の面前で好きだ、愛してるって言われたり、女といるのは嫉妬して欲しいからだなんて言われたら今すぐにでも別れを切り出すことも出来なくなった。ほんとこーゆーところ、りっくんの無意識あざと的なところ。それが人に好かれるってずっとわかってるけど私はぶっちゃけりっくんの嫌いなところリストに入るくらいあきれてる。

「なーに?陸斗、お前なんかやらかしたのか?」

いきなり陸斗に話しかけてきたのは見たことある先輩。私はあまり関係はないけど陸斗は仲がよかったはず。
よくこの空気の中話しかけてくるなって思うけど本当に今来たところで知り合いに話しかけてる感覚なんだろうな。

「いや、なんもしてないっす。ただ誤解されるようなことあったから謝ってて」
「マジかよ、彼女ちゃん誤解くらいするよなー。こいつ周りにいつも女の子いるから彼女いい気分しないって。おまえもよく遠ざけないよなーって疑問だったわ」

先輩、空気読まないくせにまともだった。一瞬うぜーやつ来たって思ったけどちがいそう?

「彼女ちゃんもこんなやつじゃなくて俺みたいなやつにしようぜ。なぁ、周大もそう思うだろ?」
「俺彼女一筋なんでその気持ちわかんないっす」
「あー、周大は年上のお姉さん彼女一筋だわー。忘れてたー。」

先輩ゲラゲラ笑ってるけど、私一昨日その彼女一筋男とヤリモクアプリで出会ってセックスしてます。

「もーっ!とにかくっ!俺は芽依と結婚もちゃんと考えてるから邪魔しないでくださいっ!」

結婚まで!?はぁ?って今は先輩の方向いちゃってるりっくんじゃなくてしゅーたくんを見たけど苦笑いしてるだけだった。くっそ、バラすぞ私とセックスしたこと。

先輩がちょっとりっくんとしゅーたくんに絡んだあと「ごめん、大事な話っぽいの邪魔して」っていなくなったけど、いっそ目の前の二人を連れてってほしかった。それよりも

「結婚ってなに」
「いや、ちゃんとプロポーズはするつもりだった!ごめん!こんなところで言うつもりはなかったというか」

周りも色んな意味のキャーが聞こえる。普通に羨ましいのキャーとびっくりのキャーと、りっくんのこと好きな女の悲鳴みたいなキャーと。私もキャーって言ったら逃げていいかな?

「とにかく!なにがあっても大好きだから!それをわかってほしくて」
「こんな人目しかないところで?信じらんない。もっと場所とかタイミングとかあったじゃん」
「芽依は俺が他のやついるのが面白くないだろ?だから」
「面白くないなんて言ったことないし、お互い付き合いだってあるじゃん。今りっくんがここで私に謝ったり好きだって言ってるのも自己満。すれ違い様に悪口言われたり散々なの。わかる?わかんないよね、だってりっくんは私に嫉妬して欲しいだけでしょ?」

なんかもうイライラがMAX。自分勝手すぎるりっくんにも、りっくんの味方ヅラしてるしゅーたくんにも、周りのかんじもなんかもうやばい。アンガーマネジメントって習った気がするけど6秒深呼吸とかしてらんない。

「芽依」
「今は話したくないし顔もみたくない。りっくんのバカ」

こんな日に限ってこのあとも講義あるから帰ることもできない。コーヒー飲んでって思ったけどここがカフェテリアだから終わった。場所も最悪。なんでコーヒーショップ近くないの最悪って思いながら自販機でコーヒー買ってベンチに座って一気飲みした。室内がよかったけど仕方ない、外気に晒されてる方が好奇の視線に晒されるより全然まし。

スマホを見れば結構な通知。まず美羽のラインは『ウケる』とか楽しんでたのから実況始まってたけど、最新のは心配してくれてる。同じ講義だから席とっとくし、来なければ代返するよなんて優しいものでちょっと鼻の奥が痛くなった。
りっくんのは見ない。今見ても精神衛生上よくない。
DMは案の定しゅーたくんからも来てた。

『色んなやつのストーリーで祭おきてる』
『陸斗が芽依ちゃんのこと好きなのは本当だから信じてあげて。俺らのことには気付いてないからまた会おう』

こいつ強メンタルすぎて引く。でもそれくらいじゃなきゃ友達の彼女と遊びなんてできないかって思ったらちょっと気が軽くなった。そうだ、悪いの私じゃん。りっくんのほうが被害者じゃんって思えた。

コーヒー飲み干してメイク直しのために近くの化粧室行ったけどひそひそ言われてる。でも知らない。暫くは噂の女になってやるわくらい吹っ切れてるから私も意外とメンタル強め?なんて思いながら粘膜ライン引き直してたら何度目かわからないりっくんからの着信で、今強メンタルな私はふつうにとった。

『芽依…』
「なに?」

ぐずぐず聞こえる。美羽の実況みたかんじあのあとりっくんは茫然自失?で、そのあと泣いてたらしい。まだぐずってるのか。もう30分くらい経ってるけど。

『ごめん』

一応悪いとは思ってるらしい。

『周大、あっ、一緒にいてもらった友達にもお前が悪いって』

いや、そいつ浮気の共犯者です。

『だから芽依、会って話したい』
「…さっきみたいにならない?」
『家がいい。俺のでも芽依のでもいいから。一緒にかえろ。待ってるから』

私に有無を言わせないためかりっくんの方から切られた。そーゆーとこだよほんとにもう…
しかし私もつくづくりっくんには甘いのだ。はぁ…いつ別れられるんだろ






「きたきた、めーいー!」

講義の始まる数分前に講義室に入ったら美羽がいた。スマホを見せられて、その場にいたであろう人達のストーリーをスクショしまくってたのを見せてくれた。いや、どんだけ晒されてるんたって昨今のネットリテラシーのほうが怖くなったけど。

「美男美女とかうれしくない?」
「でもバカップルって書かれてる。絶対ちがうんだけど」
「くそ女って書いてるのは絶対陸斗狙いの女だねー」
「好きな男も晒しちゃうってのがまずないわー。彼女だからとか置いといてこんな女には靡かない」
「ってか陸斗だけ顔隠されて芽依晒されてるのウケるんだけど」
「通報通報(笑)」

笑ってる私と美羽をみて化け物見るみたいな目でみてくるやついるけどそれでいい。引きずってないし笑い話にできるくらいメンタルは安定してる。

「別れたい女と別れたくない男ってタグうけるんだけど。まさしく芽依と陸斗だね」

なにそれーって笑ってたら講義が始まったので真面目に受ける。スマホ?サイレントだから全く気にもとめないで90分が経った。

「ダーリンお迎えにきてるよー」

美羽とは別の友達に言われた。いやもうからかってんじゃんって美羽と大笑いしとた。確かに講義室から出たらりっくんが壁にもたれて待ってた。

「美羽、芽依返して」
「私のでも陸斗のものでもないんですけどー」

りっくんに手を引かれて

美羽にバイバイだけ言ってエレベーターにも乗らないで階段で1階まで降りる。よかった、10階とかのときじゃなくて。

「デリ買って帰ろ。お腹すいてるでしょ?」
「…うん」

ごはんを食べていないことは気付いてくれてたらしい。こーゆーとこだよ、だから嫌いになれないんじゃん。

手繋いだまま駅ビルでデリ買って電車に乗ってナチュラルに私の家だった。エレベーター乗って玄関あけたらりっくんに抱き締められた。

「なぁに?」

何も言わないから聞いたのに答えてはくれない。でも抱き締めてくる腕にはどんどん力が入ってるのがわかる。

「りっくん」
「別れたくない」
「別に言ってないけど」
「他の男のところにいかないでほしい」
「行ってないよ」

ぎゅーってさっきより力強く抱き締められた。
結局私はりっくんにきっぱり別れるなんて言い出せない。ほんとつくづくこの男には甘いのだ。







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