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しおりを挟む視界の端には彼女。高校の頃から付き合ってるしマジで結婚もみえるくらいの関係だ。
「お腹空いたからパンも食べるわ」
「はぁ?さっきクッキーもらって食べてなかった?」
「あれは間食」
「いや、すげー量食べてたじゃん、芽依ほんと大食い」
細いくせによく食べるところも好きだ。
「ねーえー、陸斗きいてる~?」
うるせー女とか思いながらもテキトーに聞いてあげる。
「今日みんなで飲みにいこーって話なんだけどー、陸斗も来るでしょ?」
「はぁ~?今日飲みかよ、まぁいいけど」
ちらちらと芽依の様子をうかがったけれど目は合わない。
嫉妬してくれたらいいのに。今日は芽依と予定があったし、芽依が行かないでと言ってくれたらソッコーで断るのに。
『今日行けなくなった』
いやだと言えと思いながら送って、スマホをみた芽依が心底うんざりした顔をして既読もつけないままトレーにスマホを置いたのをみて少しさみしくなった。いや、俺のせいなんだけど嫉妬してくれてもよくないか?
「ねぇどのアプリがいい?」
「SNS使えば?サブ垢作ればいいじゃん」
「出会い用?めんどくさー」
「出会いってなに?」
大学のカフェテリア、芽依から既読もつかないから話しかけに行けば、出会い用のサブ垢作るなんて笑えない話をしている。
「新しい出会いほしいなーって話。りっくんに関係なくない?」
「はぁ?出会い用のアカ作ろうとしてる彼女に関係ないとか言われる筋合いねーんだけど」
「りっくん友達と喋ってたじゃん。なんでこっち来たの?今日の約束もなくなったんだから関係ないじゃん」
「なんでそんな喧嘩腰なわけ?いみわかんねー」
新しい出会いってなんだよって言えばよかった。最近は笑顔も向けられないし、なんとか芽依を繋ぎ止めておかなきゃいけない。
「陸斗どうしたの?彼女となんかあった?」
「いや別に」
「まだ別れてないの~?」
「はぁ?誰が別れるなんて言ってんの?」
「みんな言ってるよ。ちょー倦怠期って雰囲気しかないし。あたしが癒してあげよっか?」
「いらねー」
芽依じゃなきゃ意味ないし、男友達と遊びたいのに女がついてくる意味もわかんねー。
『夜、家にいて』
これだけ芽依に送ってから楽しくもない飲みに行っても周りは女、コンパだったなら行かなかったのに。騙された。
ラインをみてもさっき送ったものすら芽依から既読がつかない。怒ってるんだろうな、本当だったら今頃芽依と飯食って芽依の部屋でいちゃつく予定だったのに
「陸斗くん彼女いるの!?」
初対面の女が驚いているが、なんで知らないんだ?
「高1から付き合ってる美人だよなー、気強そうなめっちゃいい女」
「えー?陸斗くんのこと睨んだりしてない?うちらが陸斗くんと話してるだけでめっちゃ睨まれるし、すれ違い様に舌打ちとかされるの~」
「はぁー、美人だからすげー迫力そう。陸斗だって自由に遊びたくね?」
え?芽依がこのブス達を睨んだり?舌打ちしたり?俺のために?嬉しすぎてにやける。俺の前でそんな風にしてくれないのに、見てないところで嫉妬心を出してくれていることが嬉しすぎる。
『なに飲む?いつものでいい?』
芽依の部屋で芽依と飲み直したい。でも既読はつかない。
ビール何本かと芽依の好きな甘いお酒を芽依の家に向かう途中のコンビニで調達したが芽依の部屋に明かりがついていない。
『部屋電気ついてないけどいる?寝てる?』
やっぱり既読がつかないから寝てるんだと思う。会えなかったから拗ねてるのかと思うと早く抱き締めてあげたくなる。
でも芽依の部屋の鍵を開けても芽依はいない。ベッドにもいないし、メイク道具がローテーブルに出ているから朝から帰ってきていない。
『なんで家いないの?早く帰ってこいよ』
と、若干の怒りで送ったけれど、芽依と二人で撮った写真が枕元に飾ってあったからそれだけで気分が少しよくなる。そうか、芽依は怒っているのか。ビールを飲みながら少し冷静になって
『なに怒ってんの?』
とだけ送った。
ぶっちゃけ芽依が何回か浮気したことは知っている。それは俺のせいだし、怒るつもりもなかった。だって一番が俺なのは変わらないし、どうせ体だけだろうってわかってたから。
『家帰ってきたら電話して』
結局芽依は朝になっても帰ってこなかったし、俺は飲んで抜いて寝た。芽依はオールかよ、俺は早めに切り上げて芽依の家で待ってたのに肝心の家主が帰ってこないので、課題もあるから帰ることにした。バカ芽依。
昼になっても返事も電話も来ない。ふと見てみれば送ったメッセージにようやく既読がついた。なのになんのアクションもない。怒らない、怒らないで芽依の話を聞こうじゃないか。
『はいもしもーし』
「なんで連絡よこさねーの?」
申し訳なさそうなかんじもない芽依の声にいらっとしたのか、嫌味な第一声だった。
『電源切れてた』
「夜中から?」
『友達と遊んでたから見てなかった』
「ふ~ん」
面倒そうに言うが、友達が同性なら名前がでてくるのがいつもの芽依なので若干察してしまった。あー、俺なんでこーゆーとこ察しいいのかな?マジでいらんわこの方面の察しのよさ
『りっくんこそ昨日飲み行ってたんでしょ?なんでうち来てたの?』
「いや、えっと」
『先にドタキャンしたのりっくんじゃん、なのになんでりっくんにそんな責められなきゃいけないの?意味わかんない』
「はぁ?なにキレてんだよ」
『りっくんもじゃん。なにあの通知、こわかったんだけど』
「お前が家にいないのが悪いんだろ」
『だからー、約束してたのドタキャンしたのりっくんでしょ?予定なくなった私が何しててもよくない?』
「はぁ?あとで俺が家に行くとか考えなかったのかよ」
『なにそれ、それなら先に言えばよくない?』
「芽依が家にいないのが悪いんだろ」
俺と約束があったんだから、待ってれば来てくれるとか考えないのかよとか色々言ったけど、面倒くさくなってきてるのが声色でもわかった。でも引くに引けない。
「芽依!聞いてんの?」
『聞いてる。つーかお風呂溜まったしお風呂入るから切るね。りっくんほんと意味わかんないよ』
意味わかんないよってキレて切られた。いや、俺は芽依が浮気しても許してやる寛大な男なんだし、芽依が家にいればよかっただけなことじゃん?あーもう今回の浮気も本当に軽い遊びで終わってくれマジで。
あんな言い合いみたいなかんじで通話が終わったからやる気なんて一切でなくて課題は案の定終わらなかった。満員電車に乗る気も起きなかったし朝は苦手じゃないから早めに学校の最寄りに行ってカフェで課題だ。
スマホのロック画面の芽依はめちゃくちゃ笑ってるけど、最近こんな風に芽依が全力で笑ってるとこみてないかも。
「りーくと」
空いていた隣にきたのは別学部の友達だ。あっ、こいつになら相談できるかも。確か社会人の彼女がいるって聞いてたし、芽依と接点もなさそう。
「どうした?そんな暗い顔してスマホみて。つーか早くね?課題忘れた?」
「しゅーうーたぁ~、もう聞いて、マジで話聞いて、あっコイバナだけどいい?課題はさっき終わったからマジで話聞いてくれ。朝飯か学食奢るから」
「いや、朝飯家で食べたし。話くらい聞くって。なんだよ陸斗、芽依ちゃんとなんかあったか?」
芽依って他学部でも名前知ってるんだな。あーっもう!俺の愛が本人にだけ伝わってないのもどかしすぎるだろ。
「だーかーらっ!俺はべつに、浮気はワンナイトとかなら全然許すわけ、わかる?」
「陸斗それ切なくないか?だって陸斗は浮気もなんにもしてないんだろ?」
「そう!神と学長と教授に誓ってしてない!まじで一途」
「でも芽依ちゃんは陸斗のこと浮気してると思ってるんじゃないか?」
「はぁ?ないない、絶対ないって」
女が周りに寄ってくるのだって邪魔だと思ってるし、必要以上に踏み込ませてない。大体芽依が見てるとこ以外で触らせてない。芽依がみてるとこでだけ触られてもはね除けないのは嫉妬して欲しいからであって断じて浮気はしていない。
「でも陸斗の周りはみんな芽依ちゃんが陸斗のこと束縛してがっちがちに依存してると思ってるじゃん?第一俺もそう思ってたし」
「それ女達が勝手に言ってることだろ?ことだま?言ったらマジになるかなって思ってるけどならねー。俺ばっか好きじゃん。あーもう叶うなら芽依の浮気相手とかワンナイトの相手マジで1人ずつ会って俺の愛を伝えたいわ。お前らはこんだけ愛されてる女に手出してんだよふざけんなって」
周大は笑ってる。え?重いって?重さで言ったらオスミウムくらいあるって絶対。理系に教えてもらった重金属。
「それで?なんで陸斗はそれを芽依ちゃんに伝えないの?」
「え?わかってるじゃん?」
「え?」
「え?」
一席挟んだ隣のOLが吹き出した。周大は「やっぱこいつがおかしいっすよねー」って笑いながらOLと話すんだからやっぱ年上彼女持ちはちがうなって実感する。
「芽依ちゃん絶対わかってないから。陸斗の態度じゃわかんないし、芽依ちゃんから別れ切り出されるの時間の問題だよ」
「え、やばくね?」
「やばいって、普通に。今気付いた?」
「浮気されるのももしかして」
「どう考えても陸斗のせいだろうね」
「…終わった」
理解できたところだけまとめよう。俺が『芽依が嫉妬するかも』と自分に気のある女達を放置、芽依を無意味に牽制する奴がいても何のフォローもなし、むしろ芽依の嫉妬心を燃え上がらせると好きなようにやらせていたのは全部失敗。芽依は俺への愛情はすり減る一方でなんとか気を紛らせるために浮気にワンナイトをしていたと。俺はそれを許す寛容な彼氏!と思っていたのも、もう彼女に興味がないだけのクソ男だと思われてるってことだ。
「だめだ…え、俺就職決まったらプロポーズする予定で指輪代金貯めてるんだけど…」
「今時エンゲージリングいらないって子もいるらしいから一方的もだめでしょ。ちゃんと話し合わないと」
「フラれたら俺は生きていけない」
「それも伝えな」
ハリーなんとかは高すぎるからせめて有名ブランドの!と思って価格も調べてめちゃくちゃ貯金頑張ってたのに。
でも伝えるもなにも一人ではちょっとの失言で笑えないくらいマジでフラれそうな予感もするから絶対無理。
「周大ぁ~」
「なんとなく察してるけど、俺芽依ちゃんと絡みないんだけど」
「だからいいんじゃん。第三者委員会委員長頼むよ」
「委員会も何も俺しかいないじゃん。芽依ちゃんがやだって言ったら席外すからな」
「それでいいから!頼む!後生だから!」
「簡単に使うな。そんなんじゃなくても普通に付き添ってやるから安心しろ」
ほんと周大いいやつすぎるだろ!大好き!
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