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しおりを挟む複数の夫を持つことを許されるこの世界でも私は異端だと思う。いや、夫はいる。4人も。しかしその4人とは白い結婚である。なぜなら夫同士でデキているから。同性愛カップル達の隠れ蓑にされているのだ。
私は爵位があると言えども、父が一代限りの騎士爵の娘である。身分が上の家から結婚と言う名の契約を持ち込まれれば断ることは出来なかった。子爵家伯爵家のカップルと子爵家と男爵家のカップルだ。4人と仲が悪いわけではない。年齢も離れているので、夫と言うよりは兄みたいなものだ。彼らの実家も息子達をこのまま独身のままでいさせるより形だけでも結婚をさせたほうが世間からの目が誤魔化せると思っているのか、我が家にとてもよくしてもらえる。
今日も朝食が終ればテラスにあるガーデンテーブルで用意されている高級紙と大衆紙を読む。最近の大衆ゴシップは専ら異世界の花嫁様のことである。女性として大変に魅力的な方であると共に、あの顔だけ第3王子の求婚を何度か断ったという前代未聞の女性である。高級紙は彼女の解読した古代文字に対する称賛の嵐。国はこの女性の話題で溢れている。
しかし私が好きなのは大衆紙に時々載る旅行記である。筆者はこれまた話題になった女性だ。今の異世界の花嫁様の前に異世界より参られた方でもある。旅行記の前に連載されていた、男として貴族の寄宿学園へ通っていた話も好きだった。その時に5人の男性と関係を持ったが結局は初恋である伯爵子息だけとの恋を叶え、今はその方のお仕事に付いて各地を巡っているそうだ。なぜ知っているのかといえば連載開始当時大衆紙はこの話題ばかりだったということもあるし、この方御本人が大衆紙に寄稿していたためである。
「お嬢様、本日はなにか目ぼしい記事はありましたか?」
ティーセットの乗ったワゴンと共に執事がやってきた
「今日もどちらも異世界の花嫁様のことばかりよ。そろそろ例のお手付き御三方ともご結婚なさるのではないかと」
「御三方ともとても立派な御仁ですがね…あの件で結婚からは遠退いてらっしゃいましたから。おめでたいことではありませんか」
「異世界の花嫁様が余り物を宛がわれているようて少し不憫に思えるわ」
あの御三方ではなく先に婚約を結ばれ結婚式も済んでいる御夫君達がおられる。しかも人前であろうと口付けを交わされていたり常に寄り添い、腕を組まれるか手を繋がれていて大変に愛し合っていると評判である。もちろん大衆紙はその様子ばかり載っている。やれどこそこで口付けをしていただの下世話な話ばかりだが。そこに新たに入られる御三方も色々と大変だろうなと他人事ながら思ってしまう。
「元はと言えば第3王子を含めた御三方を婿に貰っていただく為に異世界の花嫁様はこちらの世界に来させられたそうですよ。それがどういった訳か花嫁様がその場にいた筆頭魔術師殿と宰相御子息を望まれたと」
「あなた…執事なのになんでそんな話を知っているのよ」
「風の噂で、とだけ。」
そんなとんでもない噂聞いたこともないし、そもそもそんなことあの噂大好き大衆紙にすら載っていなかった。何故この執事が知っているのかと甚だ疑問である。
この執事は名ばかりの夫の一人である伯爵家の子息がこの屋敷に来た際一緒に連れてきた者である。身分は低くはないそうだが五男だか六男で継ぐような物も何もないので執事として楽しく仕事をしたいと我が家へやってきた。
そもそも我が家は一代限りの騎士爵の家なので使用人などいなかった。それがこの名ばかりの結婚のせいなのかおかげなのか家令や執事、侍従などかなりメンバーが増えた。屋敷も大きく建て替えたし(必要な金銭は全て夫達のお家から)何不自由なく過ごしている。人が増えた家であっても女は私ただ一人。身の周りの世話や洗濯、着替えなどは結局一人でしなければならないから人員が増えたところで私には特に影響はなかった。
「夫達は皆お務めへ?」
「えぇ。皆様朝から」
紅茶のおかわりをサーブしながら夫達の予定を話してくれる。
「この意味のない夫婦生活もする必要があるのかしら?以前ゴシップ紙にまで書かれたのに」
「勿論でございます。大変に愉快な記事でしたね。同性愛者を囲う謎の女、と。」
その謎の女が私のことだ。失礼な記事だ。抗議をしに新聞社へ行こうとしたが夫達の家族から止められた。話が大きくなると恥ずかしいとのことだ。幸い記事もたいして大きくなく、読み飛ばしてしまう人も多かったことだろう。なんせ大衆紙のメインと言えば異世界の花嫁様のことであるし、講読者の大多数がそれを目当てに読んでいるのもわかりきっている。
そんな記事を額縁に入れて玄関ホールへ飾ったのがこの執事だ。
「この家が大衆紙であろうと載るなど大変に光栄なことではありませんか」
と慇懃無礼な態度で言われた。
まぁそもそもこの執事の方が大分家格も上であろうから私もなにも言わない。
「今日は義理母達からお誘いよね」
「えぇ。子爵邸でお茶会だと。」
「御自分の息子のことくらい御自分でお聞きになればいいと思わない?」
「それが出来ないからお嬢様にお尋ねになるのかと」
私はこの家の女主人にあたるのだからお嬢様はちがう気もするが直してもらおうにもまた言いくるめられるのはわかりきっているので甘んじて受け入れている。
なぜ私が女主人かと言えばお母様は基本別の場所にいるからだ。お母様も複数の夫を持っているし、趣味で仕事もしているので一ヶ所には留まっていない。我が家の主であるお父様は現役の騎士で不在なことが殆どなので実質女主人として私がいる。
騎士爵といえども爵位はあるので執務もあるし、家の規模も大きくなり家政も増えた。私でわからないことや手の回りきらないことを家令にやってもらっている。領地がなくてよかったと心の底から思ってしまう。
「本日のお召し物は?」
「デイドレスよね…ウォーキングドレスがいいのだけれど一応義理母様達とのお茶会だから失礼があってはいけないわ」
白のクロシェレースのデイドレスでいいだろう。立体的に編まれているのでコルセットをギチギチに絞めなくても細く見える。
「最近のお気に入りでございますね」
「一点物で安くはなかったのだからたくさん着るわ」
常に流行りのデザインのものしか着たくない、一度着たものは二度と着たくないなどワガママな女性は多いが、私はそんなことはない。ほぼ庶民のようなものだし、毎回買い換えるほど着ていく場所もない。
*****
「ねぇ、うちの息子は本当に貴女に欲情しないの?」
「えぇ。お義母様。私はそもそも対象外なのに夫という立場で優しくしていただけるだけ幸せですわ」
「優しくなくていいから欲情して子を設けてほしいわ…ねぇ皆様?」
この場で一番身分が高いのは伯爵夫人。夫の一人である伯爵子息の母親である。幸いにも伯爵家は長男が継ぐのが決まっているので次男である夫は子を設ける必要もないのだが、世間体を気にして私の元へ婿入りしている。
「うちの息子が悪いのです…伯爵子息ともあろう御方と恋仲など…申し訳ありませんわ」
その伯爵子息の彼氏の子爵子息の母が申し訳なさそうにしている。どっちがタチでネコかわかっているのだろう。私が子爵夫人の立場であればこの場には来ることも出来ないだろう。
「幸いにも私たちの息子達は長子でないから、それだけが救いですわ。孫の顔をみたいと思えば他の子もおりますから」
その通りである。孫がみたいなら夫達の兄弟の子でも見ておけばいいのだ。
「でも貴女は自分の子をうみたいのてはなくて?女として生を受けたなら思ってもおかしくないことだわ」
「私は元庶民ですから、旦那様方の幸せが一番ですの。こうやって身分違いも甚だしい私がお義母様たちとこうやってお茶をしていることだけでも幸せなことなのですから」
本当は嘘。そんなこと思ってすらいない。私も前の異世界の花嫁様みたいに心身共に愛してくれるたった一人の旦那様が欲しかった。でもそんなことを願ってはいけない立場なのだ。
一代限りといえども爵位を持った我が家、爵位に見合ったことをしなければならない。仮に庶民に恋人がいたとしても必ず貴族とは結婚しなければならなかったし、暴力を振るわれたりするよりよっぽとましな環境にいるのだ、感謝する以外ないのだ。
「そう?毎回貴女はそう言うけれど本心は?私は貴女が心配だわ。夜会には?夫の誰かを連れてちゃんと行っている?出会いはあるはずよ」
お義母様達は大衆紙を熱心には読まないから、私達のことが世間ではなんと言われているかはよく知らないらしい。お嬢様育ちの悪いところでもあるが、良いところでもあるのだろう。外聞に惑わされないというのは貴族令嬢としてあるべき姿なのかもしれない。
夜会なんて参加していない。どうせ下位貴族からしかお誘いはこないし、毎回同じ顔しかいない夜会へ行ってもむなしいだけだ。
「私のような庶民上がりに貴族の風が合わないのかもしれませんわ。お義母様達のおうちのものでしたら参加致しますのに」
一番嫌な夜会だからできれば催すこともやめてほしいくらいだが。私に一夜だけでもいいので相手を探そうとする義母、そんな義母達を止めたくても止められない義母の夫達、心底めんどくさそうにしながらも愛想笑いだけは欠かさない夫達、そして色々や噂話を知っている参加者達、こんな居たたまれない夜会は他にはないのだ。絶対に嫌だ。
「お嬢様、そろそろ」
そんなときに助け船を出してくれたのはやはり我が家の執事。
「あら、もう少しいいんじゃない?まだお菓子も残ってるわ」
「いいえ、旦那様が遠征からお帰りになられる御予定ですので。お嬢様は御迎えをしたいと前々から仰ってましたから。ご令嬢には準備も御座いますでしょう?」
「そ、そうね。ではまたねファビエンヌ」
ほぼ男名なのは父のせいだ。息子にはファビアンとつけたかったようだが、まさかの娘。慌ててeを足して読み方を少し変えてファビエンヌというわけだ。幼少期は兄弟達に混ざって剣術と護身術を習っていたが年頃だからと辞めさせられた。今思えば辞めさせられたのは丁度父が騎士爵を賜るときだったなと。そんな父が久しぶりに帰ってくるとのことだ
「ねぇバスチアン、さっきの嘘でしょ」
帰り道、振り向いて半歩後ろをついてくる執事に言えば笑みを浮かべて
「さすがですねお嬢様。よくおわかりで」
そもそも父は遠征には行ってない。城で騎士団魔術師団の合同訓練に誰よりも鼻息荒く向かっただけなのだからそれが終わるまでは帰ってくることもないだろう。魔術師達の魔術を受けてもピンピンしている不死身の男だと気味悪がられてるのに。
「城に勤めている私の親類から手紙が来ましたので。旦那様は筆頭魔術師殿と手合わせを望んでいるそうですが、なかなか叶わないと荒ぶっておられるようです」
「恥ずかしいからやめてほしいわ…筆頭魔術師様は新婚なのだからあんな粗野な男と手合わせなんてしていられないわ」
「近衛を何人もなぎ倒して異世界の花嫁様のお部屋まで乗り込んだそうですよ。騎士団長に呼び出され叱責をうけたそうですが、近衛が弱々しいのは訓練しているお前達が悪いと啖呵を切って処罰もうけず訓練場で猛威を振るっておられたそうで」
「もういやっ!絶対王城に近寄りたくない。恥ずかしさと申し訳なさで顔から火が出るわ。騎士様や魔術師様なんて絶対顔を合わせられないわよ」
「御夫君にも騎士様はおられるではありませんか」
「アレは別よ。父に心酔しているおかしな同性愛者よ」
「そのように申しては…外ですし、どなたに聞かれているかわかりませんよ」
「いいのよ、知らない人なんてこの辺りじゃ一人もいないわ」
そもそも父が騎士爵を賜ったのも騎士団長のせいだ。あの方は伯爵家の長男として出世は約束されていて、父は平民で体1つでのしあがった男だ。相反する二人なはずなのに何故か意気投合。平民ではなれない地位まで父を上げるために陛下に直談判し爵位を与えられたのだ。平民の私がいきなり令嬢と呼ばれるようになったのも今思えばすべて騎士団長のせいだ。騎士団長の息子は昔から皆武術ばかりの朴念仁ばかりだった。そのうちの一人が異世界の花嫁様の夫になるのだから世の中なにが起こるかわからない
「はぁ~、つかれたわ」
「冷たいお飲み物でもお持ちしましょうか?」
「お願いできる?とりあえず手紙からね」
ペーパーナイフ片手に我が家宛の手紙を開ける。夫達個人宛のものは開けないが父や家宛、私宛のものはすべて管理している。
手触りがいい紙だと思えば封蝋は先程の騎士団長の家紋であった。なんだろう?と開けてみれば息子の婚約が決まったので身内だけの晩餐会を開くので娘と一緒に来いという内容だった。ちょっと待て、息子の婚約とは…次男のロランのことではないか?長男はすでに嫁をもらっている、結婚式に行ったのだから間違いない。三男も四男もだ。五男は会ったことがないし六男はまだ学生のはず。ということは?まさか!
「異世界の花嫁様はその晩餐会にはいらっしゃいませんよ」
「え?」
「ですからディヴリー侯爵の晩餐会でしょう?一応次男の婚約祝いの晩餐会ですがごくごく身内の晩餐会のはずですよ」
「何であなたが知っているの?」
「…なんででしょうね?でもその晩餐会は出席でお返事をしたらどうです?旦那様も来られますし期日もほら、数日後ですから」
「え、えぇ…」
なぜこの執事が招待状を見ただけでそこまでわかるのかは謎だ。いつもそう。この執事は本当に謎である。
「お嬢様、アイスティーをお持ちしました。焼き菓子は飽きたでしょう?チョコレートムースを厨房から頂いてきましたよ」
「ありがとう」
出席する旨をしたためた手紙に軽く香水を振って封蝋をする。
「バスチアン、これをあとで出しておいてくれるかしら。あと当日のドレスを選びたいから衣装部屋へ来てちょうだい」
「かしこまりました」
この晩餐会が自分の人生を一変させることになるとはこのときまだ思いもしなかった
*****
「ファビエンヌ、俺の可愛い娘!」
侯爵邸の前で私を抱き締めてきたのは父だ。今日のエスコートは夫の一人、伯爵家の三男にお願いしている。お願いしたのは私ではなくバスチアンだが
「義父上、お久しぶりです」
「なんだお前か」
義理の息子に向かってその態度はないのではなかろうか?しかもなんだとはなんだ。崇拝者の夫をつれてくればよかったのか?いや、あの夫はダメだ。父だけでなく騎士団長までいたら興奮でどうにかなってしまう。夫達の中で生家の身分が一番高く変に暴走しないこの夫が一番よかったのだ。
「役立たずの息子達には興味もないんでな」
その息子に2つの意味があるのだろうけどこんなところで父を叱るのもイヤなので夫には申し訳ないが何も言わない。
ところで人の屋敷の前でこんなことをいつまでもしているわせにはいかない。行きましょうと声を掛けようとしたら、この屋敷の執事が声をかけてくれた
「皆様お待ちしておりました。」
この執事も長い付き合いである。私は今17だけど、この家には小さい頃からしょっちゅう遊びと言う名の剣術体術をやらされに来ていたので馴染みである。年上の男相手にやらされた数々の剣術、体術。生傷は絶えず、いつも手当てしてくれて内緒でお菓子もくれたいい人だ。名前は
「セバスチャン!久し振りだな!元気か!」
そうセバスチャン。うちの父が阿呆みたいに大声でセバスチャンさんの肩をバシバシ叩きながら笑っている。
「貴方様は何年経っても何も変わりませんね。お嬢様はこんなにも淑やかになられたというのに…」
「こいつは元からやればできる子だから今は騎士爵のごれーじょーをやってるんだよ。本当なら走り回っていたいだろうに」
「お父様、私もうそのようなことはしませんわよ。夫もおりますのにおやめください」
「夫?貴族のジジイとババア達に押し付けられた役立たずじゃねーか。俺も馬鹿にされたもんだよ。本当いい迷惑だ」
一刻も早く孫が見たい父にとって夫4人は無能の役立たずなのだ。気まずそうにしている夫には申し訳ない。私は兄のような夫達のことは嫌いではないのだ。家族として。
「あまりにも言うのでしたら義母達へ告げ口いたしますわよ。お父様の大嫌いな書類仕事をたくさん回していただけるよう進言してくださることでしょう」
「げっ…やめろよ絶対」
「えぇそうでしょうよ。家の書類も全て家令と私に任せるくらいですもの。セバスチャン様からも言ってほしいくらいだわ」
「ファビエンヌ様、私に敬称をつけているようですとまだ完璧な淑女とは言えませんね」
「…申し訳ありませんわ」
「その謝罪も」
「~~っ!」
そう、このセバスチャンも昔からこうだ。うちのバスチアンにそっくり。いや、バスチアンがセバスチャンに似ているのか?名前も似てる。親子?いや、顔は全く似ていない
「冗談ですよ。立派な淑女となられましたねファビエンヌ様」
昔からこの人に褒められるのがなにより嬉しかった。父を含め周りにはこんな落ち着いた男性がいなかったので、このディヴリー家に行って彼に会えるのはなによりも嬉しかったのだ。でもあまりにも歳が離れていたので恋という感情が芽生えることはなく、ただの憧れであった。
「まだ御子息が全員お揃いではありませんのでお茶でもいかがですか?」
「ロランは?来ているのか?もしくは長男が遅れているのか?」
「ロランお坊ちゃんでしたらもういらっしゃいますよ。ミズキ様、異世界の花嫁様は御都合をつけていらっしゃるかもしれないと伺っております。」
「誰がつれてくるんだ!?筆頭魔術師殿か!?」
「いいえ…宰相補佐様だとロランお坊ちゃんは仰ってました」
「そうか…」
え?異世界の花嫁様がいらっしゃる?聞き捨てならない言葉が聞こえた。私のような平民スレスレの人間が同席していることでイヤな気持ちにならないかしら。緊張してきた。
残念がっている父はおそらく筆頭魔術師様がお越しになるのではと期待していたのだろう、ざまぁみろ、思い通りにはならないとこの場で言ってやりたい。しかし言ってしまえばまたセバスチャンに呆れられてしまう。父は呆れられているというより既に諦められているが。
「本日は久々に坊っちゃん全員がお揃いになるので屋敷の者はそれはそれは楽しみにしていたんですよ」
「6人の息子全員か?」
「えぇ。ロラン坊っちゃんのご婚約ですからね。是非にと」
一緒に来ている夫は侯爵家の遠戚だからか五男には会ったことがあるそうだ。
「彼は…うん…」
普段はおしゃべりが好きな夫であるが、彼については多くを語らない。深く突っ込んで聞いてみたいがセバスチャンがいるのでそれも出来ない。
どんな人なのだろう。でもどうせ筋肉フェチか鍛練フェチだろう。厄介である。一人は侯爵夫人に似たおしとやかな男はいないのだろうか。遺伝子とは謎だ。その五男が侯爵夫人タイプであることを祈るばかりだ。
案内された先は覚えのある場所。この意味不明なくらい長いテーブル。この上を走り回っていた過去を、この場にいる誰も思い出さないことを祈るばかりだ。
「来たか!待っていたぞ!」
主賓席に座っていたディヴリー侯爵が立ち上がってこちらへ来る。カーテシーをとる私と貴族らしいお辞儀をする夫を横に父は侯爵と抱き合って肩を組んで大笑いしている。これでは私達のほうがおかしくみえてしまう。
「ファビエンヌも。随分と令嬢らしくなって…もうこのテーブルには乗らないのか?」
顔から火が出そうだ。誰も思い出さないどころか主賓が覚えているとなるとこの場の全員が覚えているだろう。もう帰りたいけど
特に親しかった三男四男は顔を合わせて笑っている。おにいさまと慕っていたが今は憎い。そして微笑んでいるが目が侯爵を睨み付けているようにしかみえない御婦人が一番怖い。侯爵夫人様は夫は全て侯爵の兄弟で固めているからこの家での権力者は夫人である。恐らく迎え方がなっていないだので、侯爵はあとで叱られるのだろう。
「皆様、どうぞお掛けになって」
父と侯爵が空気も読まず喋っているので礼の姿勢から戻れなかった私と夫を気遣って遂に夫人が立ち上がった。
空いてる席は4つ。父、夫、私と座るが私の隣が空いたままなので誰かが来るのはわかった。しかしここにいる顔ぶれをみる限り全員揃っている気もするが…
「あとはうちの五男だけだが…少し遅れると連絡があったので先に始めようか」
相変わらずこの屋敷の食事は美味しい。さすが侯爵家というべきだろうか。うちも十分美味しいが、ここのはまるでレストランだ。来客があるとはいえ、よくもまぁ家庭の食事でここまでの料理がでてくると感心するばかりだ。
ロランの婚約の話が聞きたいのに、ここの男どもは仕事の話ばかりだ。私が聞きたいのは異世界の花嫁様のことなのに。父が誰をぶっ飛ばしただの、魔獣の話だの食事時にする話ではないのにおじ様方も楽しそうにお話になっている。こわくて夫人をみることはできない。
カシャン
とカトラリーが床に落ちた音がして、音の方を向けば貼り付けたような微笑みの夫人が落としたのだ。カトラリーを落とすなんて絶対なさらないような夫人が。室内の温度が下がったような気がするのは私だけではないだろう。
「ねぇ、ロランの婚約の話をなさるのではなかったの?私大変に楽しみにしていたのに、どうしてあなた達はいつもいつも仕事の話ばかりなのかしら?」
私と夫以外は皆気まずそうにしている。
「ねぇロラン、貴方はどうやって異世界の花嫁様に受け入れてもらったのかしら?」
「いえ、それは…」
「殿下より先だったと言う噂は本当?ダンスのレッスンにお付き合いしたり、先の旦那様達に頼まれて護衛についたときに御護りしたり色々噂は聞いていたのだけれど実際はどうなの?」
「どうなのと聞かれましても…」
「ねぇファビエンヌ、貴女も気になるでしょう?」
「えぇ!!!大衆紙に色々書かれていましたが、どれも信用ならないものばかりでしたのでロランお兄様に直接聞いてみたかったのです」
『異世界の花嫁様、新婚早々不倫か!?』や、『前回の花嫁同様、選ぶ男はやはり同じなのか!?』などおもしろい見出しが躍っていたが、どれも嘘か本当か疑わしいものばかりだったのだ。大衆紙だから仕方ないと言えばそこまでだが本当のことが知りたい。
「ミズキに直接聞いてみないことには…」
「まぁ!もう御名前で呼んでいるの!?彼女もあとで此方へ来るのでしょう?楽しみで仕方ないわ」
「えぇ。研究室へ用事があるそうで、終わり次第ジョエル殿がお連れになってくれるそうです。」
「お食事も御一緒できるのかしら?ドレスもアクセサリーもいつも素敵だから色々お話出来るといいのだけれど…ねぇファビエンヌ、貴女も一緒よ。だって」
嬉しそうにお話なさる夫人を遮るように広間の扉が開いた。私だけが振り返ればそこには我が家の執事がいた。
「バスチアン?」
「父上方、母上、遅れて申し訳ありません」
なぜここにバスチアンがいるの?父上方?母上?え????
「遅かったなバスチアン。もうポワソンが終わるぞ」
「申し訳ありません。仕事を片付けてから此方へ向かいましたので」
「ほら、早く座れ。お前はファビエンヌの隣だ」
横の椅子が引かれ、腰をかけたのはどうみても先程私を送り出してくれた我が家の執事、バスチアンだ。服装はいつもの仕事用の燕尾服より格式高いものを身に纏っているがどうみても我が家の執事、バスチアンだ。他人の空似だろうか?名前まで同じで?確かにバスチアンの家名は聞いたことがなかった。連れてきたのはこれまた隣にいる伯爵子息、身分は低くない、五男か六男、当てはまるといえば当てはまる。ディヴリー侯爵家の五男…盲点であった。
「ファビエンヌ嬢、お隣、失礼しますね」
なんなんだこいつ
気付けば目の前のポワソンが下げられソルベがでてきたがそれどころではない。
「ほら、貴女の大好きなレモンのグラニテですよ」
私が柑橘類を好きなのを知っているのもうちの執事のバスチアンだからではないだろうか?もしやこの場の全員が私を騙していたのではないだろうか?いくらおじ様方が少しずれた方々であろうと、息子が今何をしているかを知らないわけがない。ましてやこの侯爵家で騎士にならず下級貴族の執事をしている息子のことを
「ねぇ」
バスチアンと逆の隣にいる夫に声をかけるが聞こえないフリをされている。
「知っていたの?バスチアンのこと?ねぇ?聞こえてるのわかっているのよ。これ以上無視するなら貴方のお母様に「今聞こえた」
「あら都合のいい耳だこと。ねぇ貴方わかっていたんでしょう?」
「あぁ…すまない…」
「父は?知っているの?」
「当たり前じゃないか。家の中で知らなかったのはファビエンヌとバスチアンに関わりのない下働きの者たちだけだ」
「はぁああ????」
自分と下働きの者たちだけと言われて思いがけず大きな声が出てしまった。なんだ?全員であたしを騙していたのか?信じられない。
「どうしたファビエンヌ?」
「うるさい脳筋クソ親父」
「懐かしいなその呼び方」
ディヴリー家の面々は大笑いしているがそれどころではない。いや、むしろこの家の人間も共犯だ。五男にだけ会ったことがなかったのももしや仕組まれたことだったのではないだろうか。
「もう帰る」
椅子から立ち上がった私の腕を掴んで引き留めたのはバスチアンだった。
「そのような振る舞いをお教えしたつもりはありませんよ」
「なによ!みんなして私を騙して!なにが振る舞いをお教えしたよ!ほんとにもうっ!親父もおじ様たちもお兄さまたちもみんなみんな嫌いよっ!」
「ファビエンヌ」
掴まれた腕を引かれていつの間にか立ち上がっていたバスチアンに抱き留められた。男性の腕の中なんて初めてなのに相手がバスチアンでどうしたらいいか全くわからない。気付けば腕を回されて抱き締められている。
「私はずっと貴女が欲しかった。兄上達と楽しそうにしているのを幼い頃から見ていて心ときめかせておりました」
そもそもここは侯爵家だ。自分の父もいる。恥ずかしくで逃げ出したいのに、この腕と胸から離れることができない。
「兄の婚約祝いの場だとはわかっています…ですが私は貴女、ファビエンヌにここで求婚します。貴女を愛しています。私は貴女の夫達とは違い異性愛者ですし貴女だけを愛すると今この場で誓います」
指笛を鳴らしているのは三男と四男。めでたいじゃないかと侯爵兄弟と父。なにがめでたいのか?私の意思など関係ないというのか!?
「私こちらの五男の方とは初対面と存じます。私、初対面の方と家庭を築いていけるとは思いませんの。失礼しますわ」
貴方のことは知らないと精一杯の虚勢を張って出ていこうとするが「初対面じゃないじゃん」と夫が呟いたのが聞こえたので椅子ごと蹴り飛ばしておいた。
「異世界の花嫁様がお越しになるのを楽しみにされていたではありませんか。あんなにも楽しそうにお支度をされる貴女は初めて見ましたよ」
「あら、貴方様とは初対面ではありませんでした?ディヴリー侯爵家の五男様」
「ファビエンヌ…もう降参です。騙していたわけではありませんが、貴女のことをずっとお慕いしていたのでこのようなことに」
周りはまだゲラゲラ笑っているが本当に笑い事じゃない。目の前の侯爵家五男のくせに我が家の執事なんかやってるこの男と話をしなければならない。一体全体なにがどうなっているのか。
助けを求められる人を探すが、実家に寄り付かない五番目の息子が結婚を仄めかすものだから、喜ぶ夫人も私の味方についてくれそうにもない。セバスチャン!セバスチャンだ。もうセバスチャンしか味方はいない。キョロキョロ見回しても彼の姿が見当たらない。
「貴女の大好きなセバスチャンは異世界の花嫁様を我が家にお招きする支度でそれどころではない」
「じゃあ貴方がお手伝いなさったら?」
「うーん…別にそれでもいいけれど…とにかく話をしましょう。二人で」
「二人で!?嫌よ…い、や…」
嫌とは言ったがこの場の誰が同席してもまともな話し合いになるとは思えない。それならばこの男と二人で話したほうがいいのではないだろうか?
「…わかったわ。でもお食事がまだよ。せっかく用意してくださったのに途中で離席するなんて」
「次はアントレだろ?今日はサラダとチーズはないからそのまま別室に用意してもらいます。デザートも用意するし、お茶は私が淹れますよ」
「アントレはいい…父が私の分も食べればいいわ。」
「かしこまりました。こちらへどうぞ」
バスチアンの立場は執事なのかこの家の五男なのかもうわからない。話し方も敬語なのかなんなのかもうわからない。
そしてアントレを私の分も食べられると大喜びしている父の声が聞こえた。
何度通ったかわからないこの家の廊下を通る。応接間やホールは異世界の花嫁様がいらっしゃるからバタバタしている。とにかくシャンパンを冷やしてくださいとセバスチャンの声がする。異世界の花嫁様がお酒を嗜まれるのは有名な話だ。夜会に行けば毎回最初だけ踊ったあとは旦那様方とずっとお酒を召し上がっているようだから相当にお好きなようだ。
そういえば殿下達とワイナリーに御忍びで向かわれたのも大衆紙にスッ羽抜かれていた。あぁ、ロランお兄様にどこでお気持ちを交わされたのか聞きたかったのに。仮面舞踏会か御忍びのワイナリー視察、宰相補佐様と筆頭魔術師様が御不在時の警護?気になって仕方がなかったのに。
「どうぞ」
通された部屋はまた懐かしい、子供時代にみんなで遊んだり食事をした部屋だった。窓からは庭、いや、訓練場もよく見える。
「私はいつも貴女をここから見ていました」
「なぜ?ディヴリー家の御子息であれば訓練は必須ではなくて?」
「小さいながら私は騎士として身をたてようとは思わなかったのです。名前がバスチアンなのも相まって」
名前で騎士を目指さないとはなんとも理解しがたい理由だ
「父上達も母上もセバスチャンのような男になってほしいとバスチアンと名付けたようなのです。剣術体術もやっていましたが、セバスチャンに付いて回って家の中の仕事を見たりするほうが余程楽しかったのですよ。力でも体格でも勝てない兄達と遊びだろうと稽古は大嫌いでした」
「だから執事をやっていると?」
「えぇ。あとは…あまり言いたくはありませんでしたが、貴女がセバスチャンのことをその、慕っているのを知っていましたから…セバスチャンのようになりたいと思ったのもそれが」
「なんで知ってるのよ!?誰にも言ってないのに!」
「恐らく我が家の人間は全員知っていますよ。まぁそのせいでセバスチャンのようになれば貴女も私を見てくれるかと思いまして本格的にセバスチャンに付いて学んでいたのです。貴女は私の存在に気付くこともなく兄達と楽しく剣を振り回したり走り回っていましたね」
子供の食事のテーブルメイキングを任せてもらうようになってからはずっとこの窓から見ていたらしい。普通に考えて気持ち悪い。窓からみるくらいなら普通に顔をあわせて会話ぐらいはできるだろうに。
「父上達と母上には何度も貴女を嫁に迎えることが出来ないかと交渉しました。しかし叙爵がほぼ決定している男の一人娘と侯爵家ではあるが五男の自分が、数少ない女性を嫁に迎えるなど到底無理だと跳ねられてしまっていたのです」
「なぜそこで諦めなかったの?」
「セバスチャンにも何度も相談していたのです。どうしたら貴女を私だけの妻にできるかと」
「それで…」
なんとなく話が読めてきた。恐らく今の状況もなにもかもディヴリー夫妻達ではなくセバスチャンとバスチアンの企みだと
「同性しか愛せない者と結婚させれば白い結婚のままで貴女が汚されることもない、そこへ私が貴女の信頼を得、求婚し婿へ入れば受け入れられるだろうと」
「なによそれ」
「お互い唯一の男女として愛し愛されたいと願っていることで貴女が前回の異世界の花嫁様に憧れていることも知っていました。それを叶えてあげられるのは私なんです」
「私なんです?なによその自信」
「貴女に執事として仕えてきた私が言うのです。自信があって当然です」
もはやため息しかでない。目の前のデザートがシャーベットやアイスクリームでなくてよかった。一口も進まないのだ、溶けるものでなくてよかった。
ぬるくなった紅茶を口に含むが味がわからない。もうこれはただの水分だ。
「父はなんと」
「旦那様にも幼少の頃から貴女と結婚したいと何度も交渉してきました。その度に吹っ飛ばされていましたが、やはり孫がみたいと了承を得ております。」
「はぁ…」
大体求婚したいがどうして執事として仕えるにかわるのかがまったくもって理解出来ない。正面から堂々と求婚してくれたらまた違っていたかもしれないのに
「ファビエンヌは私が嫌い?」
「嫌いもなにも…執事としてのバスチアンは信頼していたけれど、ディヴリー家の五男としての貴方を私は今初めて知ったのよ?どうしろというのよ」
「はいと頷いてもらえばそれだけでいい。」
さっきっからなんなのよと席を立とうとしたが相手のほうが早かった。椅子に座ったままの私を背後から抱き締めてきたのだ。胸が高鳴る。
「幼いころからファビエンヌ、貴女だけを見つめていた。どうか私と結婚してください」
「そ、そんな…急に…」
「急ではありません。そう、何年も想っていたのですから」
「でも…バスチアンとは数年の付き合いがあるけれど侯爵家の五男が一代限りの騎士爵の娘となんて…」
「異世界の花嫁様と義理の姉妹になれますよ」
「………」
「返事は?」
「…は、い…」
回されていた手が顎にかけられ横を向かされたと思えば目の前にバスチアンの顔があった。唇には今まで感じたことのない感触が
「おやすみになられている貴女には何度かしたことがありますが、起きているときに口付けを交わすのは初めてです」
突然のことに放心していた私にとんでもない言葉がかけられた。おやすみになられているとき?寝ているときってことじゃない!なんでバスチアンが勝手に部屋に入っていたのよ!信じられない!ファーストキスをとても楽しみにしていたのに寝ているときに済ませていただなんて。
「やっぱり結婚は」
「取り消しはききませんよ。貴女の夫4人の同意も取り付けていますから。互いの両親のサインも。あとはファビエンヌのサインだけだ」
魔術ででてきた婚姻証明書には本当に私以外のサインが入っていた
「御希望であれば証人の欄に異世界の花嫁様からのサインもいただきましょうか?記念になりますよ」
「…迷惑でなければいただきたいわ」
「では二人で戻りましょう。下の騒がしさを考えると恐らくもうご到着されているかと」
「本当に!?バスチアン、髪は乱れてないかしら?お化粧は?崩れていない?リップは塗り直さなくちゃ」
「全て私にお任せください」
「ところで貴方は夫になるの?執事のままなの?」
「どちらにも。すべてファビエンヌの望むままですよ」
立ち上がった私を抱き締めて深く口付けをしてくるこの男は執事だったが、今日からは夫となるのだ。
幼少期の憧れ以外恋をしたことがない私が初めて胸の高鳴りを感じたこの男にこれから恋をしていくのだと思う。出来ればいいが。
サロンに続くホールで父やディヴリー家の男達と騒ぎながら飲み比べをしていたのは、ワインレッドのストレートラインのドレスを身に纏い、ロランお兄様に腰を抱かれた異世界の花嫁様だった。もう妖艶かつ可憐な、妖精のような女神のような聖女のような、とにかくこの世の者とは思えないくらい素晴らしい方だった。
「私の部屋に突撃してきた市中騎士隊長の娘さん!?しかもロランの弟の奥さん!?義理だけど妹?うれしー」
少しお話ができたことが一番嬉しかった。長男の妻や三男四男の妻は幼子の育児や妊娠中で食事には同席できなかったが、やはり異世界の花嫁様にお目にかかりたいとサロンへ足を運ばれた。なによりもお酒が好きだと伺っていたが、育児や妊娠中の彼女達の前ではグラスを持ちもせず、立ち話なんて駄目とソファへ座るように促しお話をされていた。
本来であれば身分のある彼女が新たに迎える夫の実家にわざわざ足を運ぶなどないはずなのに、彼女は夫の家族に必ず会いに行くそうだ。
「結婚したばかりの夫より異世界の花嫁様に見とれているのですか?」
「まだ結婚してないじゃない。申請書を書いただけよ」
「先程宰相補佐のジョエル様と転移して陛下の承諾印を頂きましたのでもう正式な夫婦ですよ」
寝耳に水だ。この短時間でこの男は陛下に謁見までしたのか?そしてたかが騎士爵の娘の婚姻承諾書に陛下自ら押印なされたと?
「ディヴリー家ってすごいのね」
「まぁ公爵はすべて王家の血縁ですし、侯爵家が力を持つのは当然かと」
「それよりも私の夫は?」
「異世界の花嫁様に早々に潰されたようです。あとで彼が迎えにくるそうです」
「そう。ならよかったわ」
そのあとも父と異世界の花嫁様はずっとお酒を手離さない。グラスに同じだけ注いで同時に一気飲みをするをもう幾度となく繰り返している。なんでも父は勝ったら筆頭魔術師様と手合わせをさせろと喚いている。しかし皆が楽しそうなのでよかった。
「ところで今日が初夜ですがどうします?この屋敷でも自宅でもなんならホテルやいっそ王宮で一室お借りしても」
「知らないわよ私は父を連れて家に帰るわ!」
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