男の娘を好きに成っても良いですか？

第8話 場所は決まるけど……

「桜坂さん！」
「来月の上旬辺り、本当に逢おうか♪」

　俺がそう送ると、直ぐに桜坂さんから返信が来る。

『……鳥海さんは、せっかちな性格ですか？』
『会いたい気持ちは理解出来ますが、簡単に出会える距離関係では無いですよね？？』

　桜坂さんの少し冷めたメッセージが却って来たが、これでめげては行けない！
　事が急に進んでいるから、桜坂さんが警戒を始めたサインでも有った。

「本当は桜坂さんが気軽に逢える夏休みが理想だけど、俺の世界は平日だし、それに1日でも早く桜坂さんの姿を見たい！」

『この場で言っておきますが……私は、美人では無いですよ！』
『背も高い方では無いし、鳥海さんが私を見た時には、本当にびっくりすると思いますよ！！（汗）』

（逢いたくなければ、こんなメッセージ返さないよな）
（お互いの顔写真の交換でもするか……でも、桜坂さんが嫌がるよな）

　お互い、かなりの交流は深めたが、顔写真の公開や交換はしていない。
　俺は容姿に自信が有ると言い切れないし、桜坂さんは学生の身分で有る。
　それに俺がそれを強要させると、青少年を守る県条例などで、俺の所にお巡りさんが目上目線で捕まえに来る！！

「俺は容姿より、桜坂さん自身を知りたいの！」
「俺も容姿に自信が有る訳では無いし、“オフ会”みたいな感じで気軽に逢おうよ！」
「その日は、ファミレスで食事を楽しむ程度で！！」

『オフ会ですか……』
『二人ですとオフ会では無いです……』
『でも、鳥海さんの熱意には負けました…！』
『申し訳ないのですが、鳥海さんがこちらに来てくれるのですよね？』

「それは勿論だよ。桜坂さん！」
「三○県南部まで、桜坂さんを来させる訳には行かないし、電車代や時間も凄く掛かってしまう（汗）」
「俺の方が岡○県まで出向くよ！！」

『分かりました』
『では、落ち合う、日時や場所は後日で良いですか？』
『私も来月の予定が、まだ決定していませんし……』

（相手はまだ学生だ……）
（無理に話を進めると、桜坂さんが両親に相談するかも知れない）
（ここは1歩引いて、桜坂さんの気持ちを尊重しよう）

「うん！」
「桜坂さんの都合で良いよ！！」
「俺は週末なら何時でも良いから♪」

『でしたら予定を調べて、数日中に連絡をします』
『今晩は、これで失礼します！』
『おやすみなさい☽』

「長い間、話してごめんね！」
「おやすみなさい！　桜坂さんzzz」

　……

　桜坂さんと何時もより長い、Railの時間が終わった。

「こんな簡単に、桜坂さんと逢える段取りが出来るとは、俺自身でも予想外だな！」

　俺は出会いを求めていても、マッチングアプリを使った事が無いし、そもそも女性と気軽に遊べる程の金銭的余裕も無い。

「桜坂さんは背が余り高くないとか言っていたな！」
「桜坂さんが、ゲームに出て来る様なリアル美少女だったらどうしよう！！」

　俺は桜坂さんの容姿を全く見た事無いのに、勝手に想像しまくっていた。

「今流行はやりのVtu○erの容姿をした桜坂さんだとしたら、本当に昇天してしまうな！！」
「これが形容しがたい容姿だったらゾッとするが、それだったらそれっきりにすれば良い！？」

　俺はそんな馬鹿な事を思いながら、その日は眠りについた……
　学生でも健全な付き合いなら、出来るかなと思うように成っていた。

　……

　数日後……

　俺は律儀に自ら連絡はせずに、静かに桜坂さんからの返信を待っていた。
　そして、無事に桜坂さんから連絡が来て、日時と落ち合う場所が決まった。

　場所は、岡○県南部の海沿いの町に有る、地元では有名な個人経営の喫茶店を指定されたが、地図アプリで場所を改めて調べた所、かなり不便な場所を指定された。

「きっと、この付近に桜坂さんの家が有るのかな？」
「でも、それはそれだと不味くないか！？」

　桜坂さんが住んでいると思われる場所は、岡○県南部でも、本当に海沿いの町で有った。

「これは電車では無く、車で行くしか無いが……かなりのガソリン代と高速道路料金が掛かりそうだな…」

　一応クレジットカードは持っているが、ETCユニットは車に装着していない。
　俺の住んでいる地域は高速道路を活用する地域でも無いし、高速道路は俺の町まで来て居るが、無料の高速道路（※）で有る。

（※）　国土交通省や都道府県が整備した高速道路規格の道路。
　　　　新直轄方式や地域高規格道路などと呼ばれている。
　気になられた方は『新直轄方式や地域高規格道路』でweb検索してみてください。

「これも桜坂さんに会う為だ！」
「絶対に、美少女で有る事を祈ろう……」

　俺は独り言を呟いて、岡○県南部に向かうルート検索を始めた。