単身赴任しているお父さんの家に押し掛けてみた!

小春かぜね

文字の大きさ
17 / 167

第16話 それぞれの平日 その1

しおりを挟む
 朝6時……

『ピピピ……』

 朝から目覚まし時計だけは、規則正しく元気に鳴る。夢の世界を壊す悪魔で有る。
 俺は寝返りを打ちながら、その目覚まし時計の頭(上部)を手でパンと平手打ちする。
 目覚まし時計の音が止んだ事を確認してから、また寝返りをして上向きに成る。
 体が上向きに成ると、照明の常夜灯がほぼ真上に見える。

(今日から仕事だけど、疲れが残っているな……)

 週末の3日間は、遊びに来てくれた咲子の対応に追われた。
 普段の気の抜けた休暇と比べれば、張り切って旅行に行った後の休暇明けの状態だ。

(ずる休みする訳にも行かないし起きるか……)

 横で寝ている咲子を起こさないようにそっと起きる。
 咲子は『ス~、ス~』と寝息を立てている。

(そう言えば、咲子が寝たのに気づかなかったな…)

 昨夜は色々と考えていた割には、直ぐに寝てしまったようだ。
 俺は体起こし、咲子のはだけたタオルケットをかけ直して朝の準備を始める。

 ……

 今朝の朝食は今までと打って変わって、炊き上がったばかりのご飯とインスタントの味噌汁と納豆。
 平日の朝はこった物は作れないし、俺の普段の朝食は、菓子パンがメインで有る。しかし、今は咲子がいる手前、ほんの少しだけ見栄を張る。

 インスタントの味噌汁の素をお椀に開けて、電気ポットからお湯を適量注ぐだけで完成である。
 納豆をかき混ぜてご飯に乗せてそれを掻き込み、味噌汁で簡単に朝食を取る。

 新聞は取っていないので、スマホでニュースサイトを見て、軽く時事状況を把握する。
 出勤時間が近づいたら出勤するのだが、咲子の朝食の事と、昼食の事を書き置きしてから出勤する。

「行ってきます…」

 俺は小声で言い家を出る。
 今日は珍しく咲子は起きて来なかった。
 この生活に慣れてきたのか、それとも夜更かしでもしていたのか?
 まあ、余計な詮索はしないで置こう……

(今日は少し曇りか…)

 天気予報では雨は降らないらしいが、1日を通して曇りらしい……
 この地域特有のジトッとする湿気と、熱気が体にへばり付くのを感じながら、車に乗り込み仕事場に向かった。

 その頃の咲子……

(お父さん出掛けたか…)

 実はお父さんが起きた後、私は直ぐに目が覚めた。
 今までみたいに起きようかなと思ったが、あまり早く起きてもやる事も無いし、少し様子も見たかったら、そのまま狸寝入りする事にした。

 お父さんが出掛けるまでの間、適当に寝返りをして時間を潰した。
 お父さんらしいと言うべきか、お父さんなのか、何もアクションを起こさずに会社に行ってしまう。

にキスの1つでもするかなと思ったが、何も無しか…)

 親子だから当然だと言えば当然だが、何だか少し寂しい。

(今日が月曜日だから、まだ1週間近く有るな…)

 私の帰る予定は来週の日曜日。時間まだたっぷり有る。

(まあ……これ以上、関係を深くするつもりは無いんだけど…)

 この3日間で、私とお父さんの関係は大分変わってきた。
 最初の頃は娘と言っていた割には時々、私を女として見ている時も有る。
 私もお父さんの事は好きだけど、お父さんを異性としては私は見ていない。
 お父さんを独り占め出来た私は、軽いつもりで誘惑したらどうなるかと試してみたら、まんまと誘惑された。

(今日からは別々で寝るべきかな?)

 こんなに簡単に誘惑されてしまうと、本来なら嬉しいはずなのだが恐い所も有る。
 今は、お父さんと2人での生活……。私は心と心の触れ合いを求めているだけで、それ以上は求めていないはずだ!

(取り敢えず、朝ご飯でも食べるか…)

 私は布団から起き上がり、寝間着から室内着に着替え、部屋から出る。
 台所にはメモ用紙が置かれており、私はメモを取り上げ、それを読む。

『咲子。おはよう』
『朝ご飯は、横に置いてある味噌汁の素と、ご飯は炊飯器に有るよ。おかずは納豆だけど、冷蔵庫の中ので好きに食べてね』
『昼食も同じように、冷蔵庫や戸棚の中の食材を好きに使って良いから!』
『それでは、行ってきます』

(ふむ……)

 メモを軽く読んで顔を洗いに行く。普段ならこの時に髪をまとめるのだが、私一人だしそのままにする。
 顔を洗い終わって台所に向かい、炊飯器から茶碗にご飯を装い、味噌汁も準備して、冷蔵庫から納豆を取り出して朝ご飯を食べる。

「いただきます!」

「……ごちそうさま!」

 あっという間に朝食も食べ終わり、茶碗とお椀を洗う。

(さて、これからどう過ごそうかな?)

 今は私だけの部屋……。部屋から見える空は、どんよりの曇り空だ。
 カーテン越しから見える空を見ながら、今日の一日を考える事にした。

 ……

 何時もは必ず渋滞する通勤路だが、渋滞は殆ど無く、何時もより10分以上早く会社に着いてしまう。

(やっぱり、世間はお盆休みなんだな…)

 そんな事を思っても仕方無いので、更衣室で作業着に着替え、今日の作業予定を見に詰所に行く。

(急な予定の変更が無ければ、今日はステージのはずだが…)

 詰所内に有る、ホワイトボードに掲示されている作業予定表を見ると、やはり今日の担当はステージだった。

(今日もムシムシして厳しい日に成るだろうな…)

 ステージ……
 ステージの主な仕事の役割は、搬入車両の受け入れとそれの誘導で有る。
 搬入物(荷)を積んで来た車両を、搬入物を下ろしたい場所に車両を誘導して、搬入物を下ろして貰い、車両を出口の方に誘導させる。

 簡単に説明するとこんな感じだが、もちろんそれだけの仕事では無くて、細かい仕事も有る。
 しかし、搬入車両は不定期にやってくるため、精神的なストレスも有るし、纏まって搬入車両が来る時も多い……

 有る程度の情報は、携帯しているトランシーバーで連絡は来るが、基本はワンマンのため結構大変な担当で有る。

(大変だが今日も頑張るか…)

 何時もより早く会社に着いているので、始業時間まではまだ時間有る。

(時間までのんびりするか!)

 始業時間までは、所内の休憩所で時間を潰す事にして、俺は休憩所に向かった。

 ……

 始業時間のチャイムが鳴り、直ぐにラジオ体操の音楽が構内のスピーカーから流れてくる。
 ラジオ体操をして、その後に所内の全体朝礼が行われて、それが終わると部署内の朝礼が始まる。

「―――でお願いします。今日もご安全に!」

 部署内の朝礼も終わり、いよいよ今日一日の作業が始める。
 俺は家族のためにも、気合いを入れて持ち場に向かった。

 ……
 …
 ・

 時間はあっという間に過ぎ、お昼の休憩時間に入る。
 大変な仕事では有るが、大きなトラブルは発生せずに午前中は終わった。
 詰所に置いて有るスマートフォンを操作して、メールや通話着信の確認をする。

(あれ? メールが来ている)

 メールの確認をすると咲子からだった。

『お父さん。お仕事中だと思うけど、連絡するね』
『今日の晩ご飯だけど私が作るね!』
『何かは? ……お楽しみに!』
『お仕事頑張ってね!』

(……別に気を使わなくても良いのに)

 しかし、仕事を終えた後の晩ご飯作りも決して楽では無い。
 作るのと作ってくれるのでは、気分も気持ちも全然違う。

(ここは甘える事にするか)

 メールの返信を打ち込んで『ありがとう!』と送った。
しおりを挟む
感想 1

あなたにおすすめの小説

【完結】異世界転移したら騎士団長と相思相愛になりました〜私の恋を父と兄が邪魔してくる〜

伽羅
恋愛
愛莉鈴(アリス)は幼馴染の健斗に片想いをしている。 ある朝、通学中の事故で道が塞がれた。 健斗はサボる口実が出来たと言って愛莉鈴を先に行かせる。 事故車で塞がれた道を電柱と塀の隙間から抜けようとすると妙な違和感が…。 気付いたら、まったく別の世界に佇んでいた。 そんな愛莉鈴を救ってくれた騎士団長を徐々に好きになっていくが、彼には想い人がいた。 やがて愛莉鈴には重大な秘密が判明して…。

理想の男性(ヒト)は、お祖父さま

たつみ
恋愛
月代結奈は、ある日突然、見知らぬ場所に立っていた。 そこで行われていたのは「正妃選びの儀」正妃に側室? 王太子はまったく好みじゃない。 彼女は「これは夢だ」と思い、とっとと「正妃」を辞退してその場から去る。 彼女が思いこんだ「夢設定」の流れの中、帰った屋敷は超アウェイ。 そんな中、現れたまさしく「理想の男性」なんと、それは彼女のお祖父さまだった! 彼女を正妃にするのを諦めない王太子と側近魔術師サイラスの企み。 そんな2人から彼女守ろうとする理想の男性、お祖父さま。 恋愛よりも家族愛を優先する彼女の日常に否応なく訪れる試練。 この世界で彼女がくだす決断と、肝心な恋愛の結末は?  ◇◇◇◇◇設定はあくまでも「貴族風」なので、現実の貴族社会などとは異なります。 本物の貴族社会ではこんなこと通用しない、ということも多々あります。 R-Kingdom_1 他サイトでも掲載しています。

「25歳OL、異世界で年上公爵の甘々保護対象に!? 〜女神ルミエール様の悪戯〜」

透子(とおるこ)
恋愛
25歳OL・佐神ミレイは、仕事も恋も完璧にこなす美人女子。しかし本当は、年上の男性に甘やかされたい願望を密かに抱いていた。 そんな彼女の前に現れたのは、気まぐれな女神ルミエール。理由も告げず、ミレイを異世界アルデリア王国の公爵家へ転移させる。そこには恐ろしく気難しいと評判の45歳独身公爵・アレクセイが待っていた。 最初は恐怖を覚えるミレイだったが、公爵の手厚い保護に触れ、次第に心を許す。やがて彼女は甘く溺愛される日々に――。 仕事も恋も頑張るOLが、異世界で年上公爵にゴロニャン♡ 甘くて胸キュンなラブストーリー、開幕! ---

【完結】モブのメイドが腹黒公爵様に捕まりました

ベル
恋愛
皆さまお久しぶりです。メイドAです。 名前をつけられもしなかった私が主人公になるなんて誰が思ったでしょうか。 ええ。私は今非常に困惑しております。 私はザーグ公爵家に仕えるメイド。そして奥様のソフィア様のもと、楽しく時に生温かい微笑みを浮かべながら日々仕事に励んでおり、平和な生活を送らせていただいておりました。 ...あの腹黒が現れるまでは。 『無口な旦那様は妻が可愛くて仕方ない』のサイドストーリーです。 個人的に好きだった二人を今回は主役にしてみました。

辺境のスローライフを満喫したいのに、料理が絶品すぎて冷酷騎士団長に囲い込まれました

腐ったバナナ
恋愛
異世界に転移した元会社員のミサキは、現代の調味料と調理技術というチート能力を駆使し、辺境の森で誰にも邪魔されない静かなスローライフを送ることを目指していた。 しかし、彼女の作る絶品の料理の香りは、辺境を守る冷酷な「鉄血」騎士団長ガイウスを引き寄せてしまった。

公爵様のバッドエンドを回避したいだけだったのに、なぜか溺愛されています

六花心碧
恋愛
お気に入り小説の世界で名前すら出てこないモブキャラに転生してしまった! 『推しのバッドエンドを阻止したい』 そう思っただけなのに、悪女からは脅されるし、小説の展開はどんどん変わっていっちゃうし……。 推しキャラである公爵様の反逆を防いで、見事バッドエンドを回避できるのか……?! ゆるくて、甘くて、ふわっとした溺愛ストーリーです➴⡱ ◇2025.3 日間・週間1位いただきました!HOTランキングは最高3位いただきました!  皆様のおかげです、本当にありがとうございました(ˊᗜˋ*) (外部URLで登録していたものを改めて登録しました! ◇他サイト様でも公開中です)

出逢いがしらに恋をして 〜一目惚れした超イケメンが今日から上司になりました〜

泉南佳那
恋愛
高橋ひよりは25歳の会社員。 ある朝、遅刻寸前で乗った会社のエレベーターで見知らぬ男性とふたりになる。 モデルと見まごうほど超美形のその人は、その日、本社から移動してきた ひよりの上司だった。 彼、宮沢ジュリアーノは29歳。日伊ハーフの気鋭のプロジェクト・マネージャー。 彼に一目惚れしたひよりだが、彼には本社重役の娘で会社で一番の美人、鈴木亜矢美の花婿候補との噂が……

眺めるだけならよいでしょうか?〜美醜逆転世界に飛ばされた私〜

蝋梅
恋愛
美醜逆転の世界に飛ばされた。普通ならウハウハである。だけど。 ✻読んで下さり、ありがとうございました。✻

処理中です...