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第十話スパイ

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「陛下、ユハイド王国に聖者が現れました」
「何?ユハイドで...だと?」
「どうやらドネ王国で召喚されたものは1人ではなく2人だったようです」
「しかしその聖者は男ではないのか?歴史書に男が光魔法を使えたと言うことは残ってないぞ?」
「ええ、しかしその男が魔法を使えるという事実がある限りその者は聖者なのでしょう」
「そうか...ならばその者をこの国のものにしたいな」
「できるでしょうか?」
「もともとはドネ王国が召喚した。召喚された者はその国のものとなる。しかし、その聖者がドネ王国から追放されたのならどの国が保護してもいいというわけだ。」
「つまりたまたま保護したのがユハイド王国だったわけで、我々の国にも保護する権利があると?」
「そういうことだよアルティ、君はずいぶん頭が働くようだ」
「ありがとうございます陛下」
「さて、お話はここまでにしてここにいる君たちにはその聖者をここに連れてきて欲しい。どんな手を使っても構わない、殺さないならな。もちろん責任は私が負う。いいな?」
1人の陛下の言葉にその場にいた10人が答えた。
「「「了解しました、アーネスト皇国、ケルヴィ・ニア・アーネスト皇帝陛下」」」
そう言うと皇室の暗殺者たちは夜の街へ飛んで消えていった。
残った人たちは不安そうにしていた。
「陛下、本当に10人だけで大丈夫でしょうか?相手は皇国と同じ大国です」
「まあ、そう不安になるのも頷ける。しかし、あいつらは皇国1の暗殺部隊だ。皆頭も働く。つまりちょっとやそっとのことでは想定内だと言うことだ。まあ、あれでも私にはまだまだ劣るんだがな。駒のような者たちだ。使い道が無くなったらすぐ切り捨てればいいだけだ。代わりはいくらでもいる。そう思うだろう?カリーナ」
「...はい。そうですね」
そう答えたのは皇后陛下のカリーナ・ニア・アーネストだった。具合が悪いのか、それともこの話が気に食わないのか浮かない顔をしていた。
「どうしたカリーナ、具合でも悪いのか?」
「い、いえ大丈夫です」
「...いや、休んだ方がいいだろう。誰かカリーナを寝室まで送ってやれ」
ケルヴィがそう言うと何人かの兵士が入ってきてカリーナを寝室へと送って行った。
カリーナがいなくなると話し始めた。
「...どうやらカリーナは私の話に乗り気ではないようだ」
家来たちに動揺が走った。
「な、なんと!?」
「聖者がここに来るまでカリーナは監視をさせて置かないといけないな。いやその必要はないか。どうせ暗殺部隊が明日にでも聖者を連れてくるはずだからな。」
「そ、そうですな!」
家来たちが賛同する中皇帝は笑みを浮かべながら言った。
「もう遅い、明日にでも聖者はくるはずなんだそろそろ休むといい」
そう言い会議は幕を閉じた。
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