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第十三話皇帝

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「ここだ」
言われた部屋のドアはこれ以上ないほど豪華に製織されていてものすごくでかかった。
なんだ?この部屋の扉。まるで国1番のお偉いさんが使うような...
そう考えていると部屋の扉が開いた。家が一軒ほど入りそうな部屋の奥にはいかにも王様というような人とルイがいた。
「ルイ!?」
「幸輝...無事で良かった」
心なしか、元気がなさそうだった。
「待っていたよ聖者殿」
玉座に座っている人が言った。
「私はこのアーネスト皇国の皇帝であるクライヴだ」
名前だっさ。
「一国の皇帝が俺になんのようですか?」
「いやぁ?ちょっとユハイド王国に聖者を譲って欲しくてね、王太子と話をしていたんだよ」
クライヴがそう言った時横にいたルイが俺にしか聞こえない声で言った。
「大丈夫だよ幸輝。帝国に幸輝を行かせないから」
「...なぜ俺が帝国に行かなければならないんですか?」
「貴殿はドネ王国に召喚された。本来ならばドネ王国のものとなるのだが、ドネ王国は貴殿を捨てた。つまり貴殿の所有権はユハイド王国のものだけではないということだ」
俺は物かな?
「それは俺の意見ももちろんありますよね?」
皇帝は余裕の笑いで言った。
「ありますとも!だから貴殿に来てもらっている」
「少々強引では?」
「私は自分が欲しいものはどんな手を使ってでも手に入れるんでね」
クライヴがそう言った瞬間、物陰に潜んでいたであろう者たちが一斉に飛び出し、俺とルイを囲んだ。それを見たルイは覚悟を決めたような顔になった。
「...いいかい幸輝。俺が持っているこの指輪は持ち主に危険が迫った時、決まった人物に知らせがいくように設定してある。つまりもうすでに父上たちには知らせが届いている。と、同時にこれは持ち主が強く願った時1番近くにいる仲間のもと、もしくは安全な場所へ転移ができる仕組みになっている」
俺はその話を聞いた瞬間ルイが俺だけを逃がそうとしていることがわかった。
「ま、まさか」
「そうだよ。幸輝は早くここから逃げるんだ。ほら、これを持って」
俺はいつの間にかルイに指輪を握らされていた。
「だめだ!ルイ!」
その言葉と同時にルイが転移と叫んだような気がした。そしてあたりが強く光った。
気がつくとどこかの路地に倒れ込んでいた。
「ルイ!」
俺は辺りを見回したがルイらしき人がどこにも見当たらなかった。
「ルイ...」
...いや、こんなところで諦めていても何も変わらない。早くルイを助けに行かないと!
そう決心し、俺は城がある方へと走っていった。
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