上 下
12 / 27

第十二話誘拐

しおりを挟む
俺は満足げに言った。
「ふぅ~、食った食った。うまかった~」
ルイは笑いながら答えた。
「ね、美味しかった。久しぶりだよ、街のご飯は」
久しぶり?
「前にも来た事があるのか?」
「うんちょっと調査の時にね」
「へぇ~」
なんの調査だろうと思っていると、一つのボロボロな店が目に入った。
「なぁ、あれなんの店だ?」
「ん?あぁ、あれはネックレスとか指輪とか売ってるところだよ」
「宝石店みたいなものか...」
俺は少しだけ気になった。
「入ってみる?」
「え?いいの?」
まさか入れるとは思っていなかった
「気になるんでしょ?」
「じゃあ入ろう!」
俺たちは早速宝石店へと足を運んだ。中に入ると大中小さまざまなネックレスや指輪が店いっぱいにあった。
「はぁ~~、俺人生で初めてこんなに宝石がある店入ったわ」
俺が冗談抜きで言うとルイは笑った。
「あはは、何言ってんのさ、こんなの全然少ない方だよ」
...これで?
もう一度見回すと隙間なんてないんじゃないかというくらいの量の宝石がずらりと並んでいる。この宝石の量を見ても全く驚かないルイを見て俺は思った。
...これが王族と平民の差か...
しばらく経って店の宝石を見回していたが、これだけの数の宝石があっても俺は気に入った宝石がひとつもなかった。
「幸輝、気になる宝石とかあった?」
「いや全く」
「そっか、じゃあまた今度別の店行こうよ、ここの店よりも品数多いから」
「これよりも多いって...」
俺はその先の言葉が出てこなかった。
「じゃ、そろそろ帰ろう。王宮のみんなも探し出す頃だろうし」
「そうだね」
そうして俺たちは店を出た。その直後視界が真っ暗になった。
「う...」
目が覚めると頭に激痛が走った。
「いっっっ!?」
血は出ていないようだったがいくつか血管が切れていそうだ。そう思いながら辺りを見回すと牢屋のような場所にいた。
...ここどこだ?確か宝石店から出て城に帰ろうとしたところで...だめだ、その後の記憶がない...。それにルイは?
俺が半分パニックになりかけていると誰かが入ってきた。
「目が覚めたか聖者よ」
そう言ったのは武装していて顔が見えなかったがおそらく体の大きさや声からして男だろう。
「...お前は誰だ?ここはどこだ?ルイはどこにいる?」
「俺はエグバード、そしてここはアーネスト皇国の地下だ。ルイとはユハイド王国の王太子殿下のことかな?そいつなら皇帝陛下のところにいるだろう。鎖に繋がれてな!はっはっはっ」
エグバードの笑い方に俺は嫌気がさした。
「目的はなんだ?」
「くくっ、まあそう焦るな、じきに分かるだろう。来い!」
そう言われ俺はどこかへ連れて行かれた。
しおりを挟む

処理中です...