魔女狩り聖女ジャンヌ・ダルク

白崎詩葉

文字の大きさ
55 / 155
第2章

第4話 水鱗の魔女④

しおりを挟む
 水面から竜巻が発生し、ジャンヌとアキセが地面に落ちる。
 やっと地上に出られたことに喜びたいところだが、背中に刺さった鱗の痛みが続き、うつ伏せの状態で立っていられないところだった。
 その横でアキセが、四つん這いで息を上がっている。
「おい、ここで倒れちゃこっちが困るんだが」
「あんたが・・・招いたことじゃないか」
 苦しみながらも反論する。元はといえばアキセがドジを踏まず、鱗の女たちにジャンヌのことを話したことが今回の元凶だ。
「ヤバいな。もう夕方だ。大分日が傾いているし。早くに日に当てないと」
とアキセがいってもジャンヌは理解していた。
 この場所は、浅瀬の水がクモの糸のように広がっている。さらに、太陽を遮るように木の枝も広がっていた。日差しは、多少届いているが、鱗を浄化するには不十分だった。
「とりあえず、この場から離れるぞ」
 アキセがジャンヌに手を伸ばそうとした時だった。
 ズル!
 アキセが引きずられている。
 ジャンヌは、振り返れば、池から青紫色の手が伸び、アキセの足に掴んでいる。鱗の女だろう。アキセは足を払っても、鱗の女の手が離れることもなく、水の中へ引きずられてしまった。
「もう追い付いてきたのか…」
 ジャンヌはどうにか体を起こすが、
「あら、まだ元気なのね」
 その声に振り返ると、水の上でペグが立っていた。
「聖女はしぶといわね。ゴキブリ並みにね」
 ペグは見下ろす。
「ゴキブリと一緒にしないでくれる」
 弱みを見せないように反論する。
「あなたの彼氏。怪しい術を使って時間稼ぎしたつもりけど。大したことなかったわ」
「ちょっと・・・あれは彼氏でもないわよ」
「ふ~ん。でもまあいいわ。これでじっくりおもてなしできるもの」
 ペグは、不敵な笑みを見せる。
 今、『光』がほどんとないため、背中についた鱗さえ、浄化できず、これ以上『光』を使えば、呪病に侵される。さらにアキセが水の中へ引きずられてしまった。危機的状況を変える方法を必死に考え出す。
 その時だった。
 ビュー!
 池から何かが飛び出してきた。
 あれはアキセの弾。水中でアキセが打ち出しだのだろう。
 その弾は、西の方角へ進み、魔女の横を通り、後ろの木に当たり、陣を発動し、大爆発を起こす。
 顔を上げられないほど、爆風が襲われる。
 風が止んだ。
 爆発に巻き込まれた木が焼け、赤く染まった空を見せる。
西に傾いた日差しが、ジャンヌに当てる。背中の鱗が溶けるように浄化され、力が漲ってくる。
 察したのが、ペグは手を伸ばし、池から鱗と混ざった水がカラカラと鳴らしながら、ジャンヌに向かって放つ。
 ジャンヌは、横に飛び込み、白い炎を打ち出す。
 ペグは、池から水の盾を作り、白い炎が蒸発するように消えていった。
 晴れた時には、ペグが鋭い目つきで睨んでいた。
「あら、元気になったのね」
 ペグは嫌味に言う。
「ええ。これで十分にお返しできるわよ」
 ジャンヌは、疲れ切ったような殺意がある目でペグをにらみつけ、光の刃を作ったロザリオをペグに向ける。
 お互い火鉢がなる中。
「はあ~死ぬかと思った…」
 アキセが池から這い上がっていた。
「よく生きてこられたわね?」
 冷たく言う。
「死ぬところだったぞ!協力してくれてるんだから、心配くらいしてくれ!」
「元凶のあんたがいうか!生きていれば平気でしょ。どうやって逃げ出したんだよ」
「日差しが池の中まで届いて、使い魔が逃げていった隙に」
 アキセは立ち上がるが、二人の間を割るように水が襲いかかる。
 左右に避ける。
 アキセが後ろへ下がった時、ペグがアキセの背後を取り、回し蹴りで、森の奥まで飛ばす。
「小僧をやりな」
 ペグは、池から出できた鱗の女に命令を出す。
 鱗の女は命令に従い、池の中に入り、アキセを追いかける。
「少し回復したからっていい気になるなよ。もう日が暮れたというのに」
 ペグは、表情が何一つ変わらず、悪い笑みを見せる。
 日は、西へ暮れて、空は黒く染まり始めた。
しおりを挟む
感想 2

あなたにおすすめの小説

処刑台の皇妃、回帰して復讐を誓う ~冷酷公爵と偽りの婚約者~ おまえたちは許さない!

秦江湖
ファンタジー
皇妃エリアーナは、夫である皇帝アランと、たった一人の親友イザベラの策略により、無実の罪で処刑される。 民衆に罵られ、アランの冷酷な目とイザベラの嘲笑を「始まりの景色」として目に焼き付けながら絶命した彼女は、しかし、処刑の記憶を持ったまま三年前の過去に回帰する。 「おまえたちは許さない」 二度目の人生。 エリアーナの目的はただ一つ、自分を陥れた二人への完璧な復讐。 彼女はまず、アラン(皇太子)からの婚約内示を拒絶。そして、アラン最大の政敵である「北の冷血公爵」ルシアン・ヴァレリウスに接触する。 1周目で得た「未来の知識」を対価に、エリアーナはルシアンに持ちかける。 「貴方様には帝国の覇権を。わたくしには復讐の舞台を。そのための『契約婚約』を――」 憎悪を糧に生きる皇妃と、氷の瞳を持つ公爵。 二人の偽りの婚約の行く末は……

婚約破棄は構いませんが、私が管理していたものは全て引き上げます 〜成金伯爵家令嬢は、もう都合のいい婚約者ではありません〜

藤原遊
ファンタジー
成金と揶揄される伯爵家の令嬢である私は、 名門だが実情はジリ貧な公爵家の令息と婚約していた。 公爵家の財政管理、契約、商会との折衝―― そのすべてを私が担っていたにもかかわらず、 彼は隣国の王女と結ばれることになったと言い出す。 「まあ素敵。では、私たちは円満に婚約解消ですね」 そう思っていたのに、返ってきたのは 「婚約破棄だ。君の不出来が原因だ」という言葉だった。 ……はぁ? 有責で婚約破棄されるのなら、 私が“善意で管理していたもの”を引き上げるのは当然でしょう。 資金も、契約も、人脈も――すべて。 成金伯爵家令嬢は、 もう都合のいい婚約者ではありません。

【完結】聖女召喚に巻き込まれたバリキャリですが、追い出されそうになったのでお金と魔獣をもらって出て行きます!

チャらら森山
恋愛
二十七歳バリバリキャリアウーマンの鎌本博美(かまもとひろみ)が、交差点で後ろから背中を押された。死んだと思った博美だが、突如、異世界へ召喚される。召喚された博美が発した言葉を誤解したハロルド王子の前に、もうひとりの女性が現れた。博美の方が、聖女召喚に巻き込まれた一般人だと決めつけ、追い出されそうになる。しかし、バリキャリの博美は、そのまま追い出されることを拒否し、彼らに慰謝料を要求する。 お金を受け取るまで、博美は屋敷で暮らすことになり、数々の騒動に巻き込まれながら地下で暮らす魔獣と交流を深めていく。

召喚とか聖女とか、どうでもいいけど人の都合考えたことある?

浅海 景
恋愛
水谷 瑛莉桂(みずたに えりか)の目標は堅実な人生を送ること。その一歩となる社会人生活を踏み出した途端に異世界に召喚されてしまう。召喚成功に湧く周囲をよそに瑛莉桂は思った。 「聖女とか絶対ブラックだろう!断固拒否させてもらうから!」 ナルシストな王太子や欲深い神官長、腹黒騎士などを相手に主人公が幸せを勝ち取るため奮闘する物語です。

【完結】奇跡のおくすり~追放された薬師、実は王家の隠し子でした~

いっぺいちゃん
ファンタジー
薬草と静かな生活をこよなく愛する少女、レイナ=リーフィア。 地味で目立たぬ薬師だった彼女は、ある日貴族の陰謀で“冤罪”を着せられ、王都の冒険者ギルドを追放されてしまう。 「――もう、草とだけ暮らせればいい」 絶望の果てにたどり着いた辺境の村で、レイナはひっそりと薬を作り始める。だが、彼女の薬はどんな難病さえ癒す“奇跡の薬”だった。 やがて重病の王子を治したことで、彼女の正体が王家の“隠し子”だと判明し、王都からの使者が訪れる―― 「あなたの薬に、国を救ってほしい」 導かれるように再び王都へと向かうレイナ。 医療改革を志し、“薬師局”を創設して仲間たちと共に奔走する日々が始まる。 薬草にしか心を開けなかった少女が、やがて王国の未来を変える―― これは、一人の“草オタク”薬師が紡ぐ、やさしくてまっすぐな奇跡の物語。 ※表紙のイラストは画像生成AIによって作られたものです。

欠席魔の公爵令嬢、冤罪断罪も欠席す 〜メイリーン戦記〜

水戸直樹
ファンタジー
王太子との婚約――それは、彼に恋したからでも、権力のためでもなかった。 魔王乱立の時代。 王も公爵も外征に出ている王都で、公爵令嬢メイリーンは“地味な婚約者”として王城に現れる。 だが、王太子は初顔合わせに現れなかった。 にもかかわらず、記録に残ったのは「公爵令嬢の欠席」。 抗議はしない。 訂正もしない。 ただ一つ、欠席という事実だけを積み上げていく。 ――それが、誰にとっての不合格なのか。 まだ、誰も気づいていない。 欠席から始まる、静かなるファンタジー戦記。

黄金の魔族姫

風和ふわ
恋愛
「エレナ・フィンスターニス! お前との婚約を今ここで破棄する! そして今から僕の婚約者はこの現聖女のレイナ・リュミエミルだ!」 「エレナ様、婚約者と神の寵愛をもらっちゃってごめんね? 譲ってくれて本当にありがとう!」  とある出来事をきっかけに聖女の恩恵を受けれなくなったエレナは「罪人の元聖女」として婚約者の王太子にも婚約破棄され、処刑された──はずだった!  ──え!? どうして魔王が私を助けてくれるの!? しかも娘になれだって!?  これは、婚約破棄された元聖女が人外魔王(※実はとっても優しい)の娘になって、チートな治癒魔法を極めたり、地味で落ちこぼれと馬鹿にされていたはずの王太子(※実は超絶美形)と恋に落ちたりして、周りに愛されながら幸せになっていくお話です。  ──え? 婚約破棄を取り消したい? もう一度やり直そう? もう想い人がいるので無理です!   ※拙作「皆さん、紹介します。こちら私を溺愛するパパの“魔王”です!」のリメイク版。 ※表紙は自作ではありません。

【大賞・完結】地味スキル《お片付け》は最強です!社畜OL、異世界でうっかり国を改革しちゃったら、騎士団長と皇帝陛下に溺愛されてるんですが!?

旅する書斎(☆ほしい)
ファンタジー
【第18回ファンタジー小説大賞で大賞をいただきました】→【規約変更で書籍化&コミカライズ「確約」は取り消しになりました。】 佐藤美佳子(サトウ・ミカコ)、享年28歳。死因は、過労。連日の徹夜と休日出勤の果てに、ブラック企業のオフィスで静かに息を引き取った彼女が次に目覚めたのは、剣と魔法のファンタジー世界だった。 新たな生を受けたのは、田舎のしがない貧乏貴族の娘、ミカ・アシュフィールド、16歳。神様がくれた転生特典は、なんと《完璧なる整理整頓》という、とんでもなく地味なスキルだった。 「せめて回復魔法とかが良かった……」 戦闘にも生産にも役立たないスキルに落胆し、今度こそは静かに、穏やかに生きたいと願うミカ。しかし、そんな彼女のささやかな望みは、王家からの突然の徴収命令によって打ち砕かれる。 「特殊技能持ちは、王宮へ出仕せよ」 家族を守るため、どうせ役立たずと追い返されるだろうと高をくくって王都へ向かったミカに与えられた任務は、あまりにも無謀なものだった。 「この『開かずの倉庫』を、整理せよ」 そこは、数百年分の備品や資材が山と積まれ、あまりの混沌ぶりに探検隊が遭難したとまで噂される、王家最大の禁足地。 絶望的な光景を前に、ミカが覚悟を決めてスキルを発動した瞬間――世界は、彼女の「お片付け」が持つ真の力に震撼することになる。 これは、地味スキルでうっかり国のすべてを最適化してしまった元社畜令嬢が、カタブツな騎士団長や有能すぎる皇帝陛下にその価値を見出され、なぜか過保護に甘やかされてしまう、お仕事改革ファンタジー。

処理中です...