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294話 調査報告(3)
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テレンスから教えて貰った子供の名前は『ネル』と『ティナ』という。どちらも女の子でネルが14歳、ティナが12歳。テレンスと同じ養護施設出身であり、リアン大聖堂の敷地内で簡単な仕事の手伝いをしてお金を稼いでいるそうだ。
「情報提供をしてくれたテレンスの話ですと、ふたりの少女が聴罪の代理を行っていた期間は……かれこれ一年以上にもわたるそうです」
「一年!? そんなに長期間ですか!!」
ミシェルさんとセドリックさんが驚きの声を上げた。これほど長い期間だと代理は数回程度の話ではなく、常習化していたということになるのだ。
「テレンスから見た少女たちの印象になりますが、悪い事をしているという感覚は無さそうだったと……。悩みを聞いてるだけでお金が貰えるから楽な仕事だと語っていたらしいです」
「はぁ……マードックが聞いたらブチ切れそうだな」
「ちなみにテレンスは少女たちから聴罪の内容や訪れた信徒についての詳細は教えて貰えなかったとの事でした。その辺りはバルカム司祭がちゃんと口止めをしていたみたいですね」
「代理をしていること自体も口止めしとかなきゃダメだろ。司祭はアホなんかな。あっ、でもマードックはこの件については知らなそうだったな。知っていたのは一部の子供たちだけだったのか」
「守秘義務の重要性なんて、神官ではないその少女たちには分からないでしょうからね。仲の良い友人間ではついうっかり喋ってしまったというところでしょう」
私もこの話を聞いた時、レオンと同じことを考えた。少女たちは神官ではない。こちらもテレンスのように交渉のやり方によっては、情報を提供をしてくれるだろうと思っている。
「レオン。この少女たちがもしニコラさんと関わっていたとしたら、後に罪に問われることはあるのでしょうか?」
「そうだな……ニコラ・イーストンとどのようなやり取りをしていたかにもよるが、現在判明している事柄だけなら罰するのは難しいんじゃないかな」
「悪いのは代理をさせていた司祭になるだろ。子供たちにはそれが違反であると判断する能力はなかった。あったとしても立場上断ることが出来なかったと見なされる可能性が高いね」
聴罪の代理だけなら子供たちは咎められない。レオンもルーイ様もクラヴェル兄弟と同じ見解だ。
「まさか子供がニコラさんを誑かしたとは思えませんしね。クレハ様の仰る通り、懺悔室での様子を探るならバルカム司祭本人を突くよりは代理をしていた少女たちの方から攻めるのがいいかもしれません」
『子供はないだろう』……私も死に戻りを経験してなかったら、きっとミシェルさんと同じ意見だったと思う。でも、私とルーイ様はその少女たちもしっかり黒幕の候補として疑っていたのだ。寧ろ子供が一番怪しいとすら思っている。しかし、この少女たち……ネルとティナに関しては、テレンスに色々と話をしていたことからその可能性が低くなってきている。
もし、ネルとティナがニコラさんを焚き付けた犯人ならば、彼女と接点を作る場であった懺悔室での仕事を、テレンスに漏らすはずがないのだ。自分たちに疑いの目が向けられるかもしれないのに、そんな危険をわざわざ冒す必要がない。
「それじゃあ、次にリアン大聖堂に行く時はその女の子たちをメインに調べてみるってことで……」
「ルーイ先生。バルカム司祭が不在の今、聴罪は別の神官が担っているのですよね? つまり、代理の仕事はありません。それでも少女たちは聖堂に来てくれるのでしょうか。さすがに養護施設まで押しかけるわけにはいきませんし……」
「あー….…そうか。タイミングが大事になるな」
「少女たちは聖堂内で複数の仕事を掛け持ちしているそうです。聴罪の代理以外の仕事もしているのなら、接触を図るのはそこまで難しいことではないはずです」
「……とは言え、この情報をくれたテレンスという子供はシャロンと知り合いだったからこそ、それほど警戒することなく協力してくれたのだろう。上手い具合に少女たちに会うことができたとしても、テレンスと同じように話をしてくれるとは限らない。難しい交渉になるかもしれないが、それでもやるのか? クレハ」
「もちろんです。引き続き私にやらせて下さい」
「分かった。でも決して無理はするな。少しでも不穏な気配を察知したらすぐに中止すること。何か行動を起こす時は必ず先生やシャロンたちに相談すること……いいか?」
レオンは最初に聖堂を訪問する際にしたのと全く同じ注意を行った。これはきっと私の調査が終わるまでずっと言われ続けるのだろう。彼の気持ちは痛いほど伝わってくる。心配で堪らないと……それでも私を止めることなく許可を出してくれるのだ。
「はい。充分に注意して調査にあたります」
「うん、そうして。相手も警備隊の奴らより、クレハのような同性の子供の方が警戒心を解きやすいだろうけど……俺が本当は君を行かせたくないと思っていることは、常に頭の隅に入れておくこと」
「……はい」
その後はルーイ様が私に代わって話をしてくれた。マードック司教様とのやり取りや、懺悔室の中を調べたこと……
なんとか無事に報告を終えることができて、胸を撫で下ろす。事件の全貌を明らかにするにはもう少し頑張らないといけないけど、このネルとティナというふたりの少女を調べることで真実に一気に近付くことができるはずだ。
「情報提供をしてくれたテレンスの話ですと、ふたりの少女が聴罪の代理を行っていた期間は……かれこれ一年以上にもわたるそうです」
「一年!? そんなに長期間ですか!!」
ミシェルさんとセドリックさんが驚きの声を上げた。これほど長い期間だと代理は数回程度の話ではなく、常習化していたということになるのだ。
「テレンスから見た少女たちの印象になりますが、悪い事をしているという感覚は無さそうだったと……。悩みを聞いてるだけでお金が貰えるから楽な仕事だと語っていたらしいです」
「はぁ……マードックが聞いたらブチ切れそうだな」
「ちなみにテレンスは少女たちから聴罪の内容や訪れた信徒についての詳細は教えて貰えなかったとの事でした。その辺りはバルカム司祭がちゃんと口止めをしていたみたいですね」
「代理をしていること自体も口止めしとかなきゃダメだろ。司祭はアホなんかな。あっ、でもマードックはこの件については知らなそうだったな。知っていたのは一部の子供たちだけだったのか」
「守秘義務の重要性なんて、神官ではないその少女たちには分からないでしょうからね。仲の良い友人間ではついうっかり喋ってしまったというところでしょう」
私もこの話を聞いた時、レオンと同じことを考えた。少女たちは神官ではない。こちらもテレンスのように交渉のやり方によっては、情報を提供をしてくれるだろうと思っている。
「レオン。この少女たちがもしニコラさんと関わっていたとしたら、後に罪に問われることはあるのでしょうか?」
「そうだな……ニコラ・イーストンとどのようなやり取りをしていたかにもよるが、現在判明している事柄だけなら罰するのは難しいんじゃないかな」
「悪いのは代理をさせていた司祭になるだろ。子供たちにはそれが違反であると判断する能力はなかった。あったとしても立場上断ることが出来なかったと見なされる可能性が高いね」
聴罪の代理だけなら子供たちは咎められない。レオンもルーイ様もクラヴェル兄弟と同じ見解だ。
「まさか子供がニコラさんを誑かしたとは思えませんしね。クレハ様の仰る通り、懺悔室での様子を探るならバルカム司祭本人を突くよりは代理をしていた少女たちの方から攻めるのがいいかもしれません」
『子供はないだろう』……私も死に戻りを経験してなかったら、きっとミシェルさんと同じ意見だったと思う。でも、私とルーイ様はその少女たちもしっかり黒幕の候補として疑っていたのだ。寧ろ子供が一番怪しいとすら思っている。しかし、この少女たち……ネルとティナに関しては、テレンスに色々と話をしていたことからその可能性が低くなってきている。
もし、ネルとティナがニコラさんを焚き付けた犯人ならば、彼女と接点を作る場であった懺悔室での仕事を、テレンスに漏らすはずがないのだ。自分たちに疑いの目が向けられるかもしれないのに、そんな危険をわざわざ冒す必要がない。
「それじゃあ、次にリアン大聖堂に行く時はその女の子たちをメインに調べてみるってことで……」
「ルーイ先生。バルカム司祭が不在の今、聴罪は別の神官が担っているのですよね? つまり、代理の仕事はありません。それでも少女たちは聖堂に来てくれるのでしょうか。さすがに養護施設まで押しかけるわけにはいきませんし……」
「あー….…そうか。タイミングが大事になるな」
「少女たちは聖堂内で複数の仕事を掛け持ちしているそうです。聴罪の代理以外の仕事もしているのなら、接触を図るのはそこまで難しいことではないはずです」
「……とは言え、この情報をくれたテレンスという子供はシャロンと知り合いだったからこそ、それほど警戒することなく協力してくれたのだろう。上手い具合に少女たちに会うことができたとしても、テレンスと同じように話をしてくれるとは限らない。難しい交渉になるかもしれないが、それでもやるのか? クレハ」
「もちろんです。引き続き私にやらせて下さい」
「分かった。でも決して無理はするな。少しでも不穏な気配を察知したらすぐに中止すること。何か行動を起こす時は必ず先生やシャロンたちに相談すること……いいか?」
レオンは最初に聖堂を訪問する際にしたのと全く同じ注意を行った。これはきっと私の調査が終わるまでずっと言われ続けるのだろう。彼の気持ちは痛いほど伝わってくる。心配で堪らないと……それでも私を止めることなく許可を出してくれるのだ。
「はい。充分に注意して調査にあたります」
「うん、そうして。相手も警備隊の奴らより、クレハのような同性の子供の方が警戒心を解きやすいだろうけど……俺が本当は君を行かせたくないと思っていることは、常に頭の隅に入れておくこと」
「……はい」
その後はルーイ様が私に代わって話をしてくれた。マードック司教様とのやり取りや、懺悔室の中を調べたこと……
なんとか無事に報告を終えることができて、胸を撫で下ろす。事件の全貌を明らかにするにはもう少し頑張らないといけないけど、このネルとティナというふたりの少女を調べることで真実に一気に近付くことができるはずだ。
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