リトライさせていただきます!〜死に戻り令嬢はイケメン神様とタッグを組んで人生をやり直す事にした〜

ゆずき

文字の大きさ
4 / 302

3話 再試行(3)

しおりを挟む
「クレハ・ジェムラート、お前は18の誕生日に死亡した」 

 ルーイ様は喋りながら懐に手を差し入れて、ごそごそとまさぐっている。探し物をしているようだ。それはそうと、そんな事さらっと言わないで下さいよ。分かってはいたけれど断言されるとショックだ。

「やっぱり死んでたんですね……私」

「そう。でも、俺がお前の未来を変えた。正確に言うなら変えるチャンスを与えたと言うべきかな。おっ! あったあった」

 彼は見つかった探し物を私の目の前に差し出した。

「これは……」

「見覚えあるだろ?」

 ルーイ様の手の平には、花の形を模した古いブローチが乗せられていた。私が亡くなった祖母から貰ったものだ。しかし、中央に装飾されていた宝石が無くなっている。

「――っつ!!」

 頭がズキリと痛む。そうだ……あの時、私が襲われた時に宝石は割れてしまったのだった。

「どうして……ルーイ様がこれを?」

「俺はね……このブローチに付いてた石の中に300年間閉じ込められていたんだよ。お前が石を割ってくれたおかげで外に出る事ができたんだ。いや~、本当に感謝してる。本来なら後700年は拘束される筈だったんだからな!」

 私の肩をバシバシと叩いて、ルーイ様は嬉しそうに笑っている。痛い……

「あの、別に私が故意に割ったわけではないのですが……って聞いてないですね」

 宝石が割れたのは偶然で、まさかその中に神様が閉じ込められていたなんて知る由もない。けれどルーイ様は、細かいことは気にするなとばかりに話を続ける。

「久しぶりの娑婆の空気は最高だったね。とにかくすこぶる機嫌が良かった俺は、自由にしてくれた人間の望みを叶えてやろうと思ったわけだ」

 ルーイ様はその場でしゃがみ込むと、私に目線を合わせた。綺麗な紫色の瞳が真っ直ぐに見つめている。そして、緩く弧を描いた口元が開く――

「死にたくない」

 彼がそう呟いた直後、先ほどよりも激しい頭痛に襲われる。頭の中に映像が流れ込んできた。刺された胸の傷……大量の血液……うつ伏せになって倒れている自分……壊れたブローチ……

 怖い、痛い、寒い、苦しい。

 嫌だ……誰か……たすけて…………

 痛む頭を抑えながらうずくまった。様々な感情が一気に溢れ出して、どうにかなってしまいそうだ。ルーイ様はゆっくりと私に向かって手を伸ばした。その手が優しく頬に触れたかと思うと、そのまま親指で目尻を軽く擦る。

「お前の……その強い思いは俺に届いた……」

 目から生温かい滴がこぼれて、どんどん頬を濡らしていた。張っていた糸がぷつりと切れたように、私はその場で声を上げて泣き崩れた。










「しかし、困った事に俺には死者を生き返らせる力は無かった。怪我ならある程度は治すことができるけど、失われた命を元に戻すことは不可能だ。どうしたものかと悩んだんだが……いい事を思い付いたんだ。クレハ・ジェムラートの死という出来事自体が、起こらないようにしてしまえばいいってな」

 パチン!

 ルーイ様が再度指を鳴らした。

「お嬢様!! 大丈夫ですか!」

 扉の向こうからモニカの声がする。周囲に音が戻った。私は扉越しに彼女へ呼びかける。

「モニカ、大丈夫です! 驚かせてごめんなさい」

「停止させていた時間を再び動かしたんだよ」

「時間を……止めていた……?」

 そんなことが……この人は時間を自由に操れるというの? 時間……ふと、今の自分の姿を思い出す。

「まさか……」

「そう、もう分かったね」

 バンッと大きな音が鳴ってバルコニーに面した窓が勢いよく開いた。外から風がいっきに室内へ流れ込み、目を閉じてしまう。

「10年だ。お前が命を落とした日から、俺は10年時を戻した」

 目を開けると、ルーイ様は部屋の外……バルコニーの手摺りの上に立っていた。私は急いで追いかけ、バルコニーへ出た。彼は太陽を背にしてこちらを見下ろしている。

「運命を変える――なんて、到底容易なことではないけれど、お前の頑張り次第ではもしかしたらって事もあるかもしれない」

「運命を変える……」

「そうだ、クレハ・ジェムラート。助けてくれた礼だ。お前に一度だけリトライさせてやる。死にたくないなら自分の力で未来を書き換えるんだ」

 彼はそう言うと後ろに振り返り、手摺りから勢いよく空に向かって飛び上がる。

「10年後の君に明るい未来が訪れるよう、精々足掻いてくれたまえ。では、健闘を祈る!」

 パチン!

 ルーイ様が指を鳴らす。次の瞬間、彼の姿は跡形もなく消えてしまった。

「嘘でしょ……子供の時代からやり直せっていうの……」

 バルコニーに取り残された私はその場に座り込み、ルーイ様が消えた後の何もない空間を見つめ続けた。部屋の外で必死に私を呼んでいるモニカの事をすっかり忘れて……
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

私の作るおにぎりが、騎士団の士気を異常に上げています(犯人は副団長)

星乃和花
恋愛
おにぎりを配っただけで、騎士団の士気が異常値になりました。 団長は警戒、監察部は呪術検査、国まで動きかけるのに――副団長だけが平然と断言。 副団長「彼女のご飯は軍事物資です」 私「えっ重い」 胃袋で落ちた策略家副団長の“最適化溺愛”に巻き込まれ、気づけば専属補給係(=婚約)寸前!? ほのぼの爆笑&甘々の騎士団ラブコメです。 (月水金21:00更新ー本編16話+後日談6話)

死に戻ったら、私だけ幼児化していた件について

えくれあ
恋愛
セラフィーナは6歳の時に王太子となるアルバートとの婚約が決まって以降、ずっと王家のために身を粉にして努力を続けてきたつもりだった。 しかしながら、いつしか悪女と呼ばれるようになり、18歳の時にアルバートから婚約解消を告げられてしまう。 その後、死を迎えたはずのセラフィーナは、目を覚ますと2年前に戻っていた。だが、周囲の人間はセラフィーナが死ぬ2年前の姿と相違ないのに、セラフィーナだけは同じ年齢だったはずのアルバートより10歳も幼い6歳の姿だった。 死を迎える前と同じこともあれば、年齢が異なるが故に違うこともある。 戸惑いを覚えながらも、死んでしまったためにできなかったことを今度こそ、とセラフィーナは心に誓うのだった。

3歳で捨てられた件

玲羅
恋愛
前世の記憶を持つ者が1000人に1人は居る時代。 それゆえに変わった子供扱いをされ、疎まれて捨てられた少女、キャプシーヌ。拾ったのは宰相を務めるフェルナー侯爵。 キャプシーヌの運命が再度変わったのは貴族学院入学後だった。

何も言わずメイドとして働いてこい!とポイされたら、成り上がり令嬢になりました

さち姫
恋愛
シャーリー・サヴォワは伯爵家の双子の妹として産まれた 。実の父と双子の姉、継母に毎日いじめられ、辛い日々を送っていた。特に綺麗で要領のいい双子の姉のいつも比べられ、卑屈になる日々だった。 そんな事ある日、父が、 何も言わず、メイドして働いてこい、 と会ったこともないのにウインザー子爵家に、ポイされる。 そこで、やっと人として愛される事を知る。 ウインザー子爵家で、父のお酒のおつまみとして作っていた料理が素朴ながらも大人気となり、前向きな自分を取り戻していく。 そこで知り合った、ふたりの男性に戸惑いながらも、楽しい三角関係が出来上がっていく。 やっと人間らしく過ごし始めたのに、邪魔をする家族。 その中で、ウインザー子爵の本当の姿を知る。 前に書いていたいた小説に加筆を加えました。ほぼ同じですのでご了承ください。 また、料理については個人的に普段作っているのをある程度載せていますので、深く突っ込むのはやめてくださいm(*_ _)m 第1部の加筆が終わったので、ここから毎日投稿致しますm(_ _)m

「婚約破棄された転生令嬢ですが、王城のメイド五百人に慕われるメイド長になりました。なお元婚約者は私のメイドに土下座中です」

まさき
恋愛
社畜OLとして過労死した私は、異世界の令嬢・アリア・ヴェルナーに転生した。 目が覚めたら、婚約破棄されていた。 理由は「地味で面白みがない」から。 泣く暇もなかった。翌朝、王城のメイド採用面接に向かった。 最初は鼻で笑われた。雑用係からのスタートだった。 でも——前世で叩き込まれた仕事術と、一人ひとりの話を聞く姿勢で、少しずつメイドたちが集まってきた。 厨房が変わった。リネンが変わった。王城全体が変わっていった。 そして就任スピーチで宣言した。 「500人全員の名前を、覚えます」 冷酷と噂される王太子は、静かに見ていた。 悪役令嬢は妨害を仕掛けてきた。 元婚約者は——後悔し始めていた。 婚約破棄された令嬢が、500人に慕われるメイド長になるまでの物語。 なお元婚約者は、私のメイドたちの前で土下座中です。

「お前を愛する事はない」を信じたので

あんど もあ
ファンタジー
「お前を愛することは無い。お前も私を愛するな。私からの愛を求めるな」 お互いの利益のために三年間の契約結婚をしたアヴェリンとロデリック。楽しく三年を過ごしたアヴェリンは屋敷を出ていこうとするのだが……。

バッドエンド予定の悪役令嬢が溺愛ルートを選んでみたら、お兄様に愛されすぎて脇役から主役になりました

美咲アリス
恋愛
目が覚めたら公爵令嬢だった!?貴族に生まれ変わったのはいいけれど、美形兄に殺されるバッドエンドの悪役令嬢なんて絶対困る!!死にたくないなら冷酷非道な兄のヴィクトルと仲良くしなきゃいけないのにヴィクトルは氷のように冷たい男で⋯⋯。「どうしたらいいの?」果たして私の運命は?

女性が少ない世界に転生した控えめ伯爵令嬢、なぜか五人の婚約候補に選ばれて少しずつ恋を知っていきます

ノッポ
恋愛
女性が極端に少ない異世界に転生した私は、気づけば伯爵令嬢になっていた。 前世は日本で普通に生きていたせいか、貴族令嬢らしい強気な振る舞いがどうしても苦手。 社交界デビューを迎えても、「どうして私が選ばれるの?」と戸惑うばかりだった。 けれど今年デビューする高位令嬢はわずか三人。 家同士の思惑も重なり、騎士団長家の息子、宰相子息、魔術師団長の息子、幼なじみの侯爵子息、そして英雄騎士―― 五人の若きエリートとのお見合いが次々と始まってしまう。 遠慮がちで控えめな性格は、この世界では珍しく、気づけば少しずつ距離を縮めていく彼ら。 異世界での恋愛に戸惑う日々。けれど出会いを重ねるたびに、私は少しずつ変わっていく――。 女性希少世界で、自分の幸せを選べるようになるまでの逆ハーレム恋愛ファンタジー。

処理中です...