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158話 お出かけ
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「もう10時かぁ。レナードさん、みんなそろそろウチに着いたでしょうか」
王宮から私の家までは1時間くらいかかる。出発したのが9時前だったので、何事もなければ到着しているはずだ。
「そうですね。丁度いま挨拶をしている頃なんじゃないでしょうか。心配ですか?」
「うーん……はい」
「私とルイスが余計なことを言ったせいですね。申し訳ありません……」
『胸騒ぎがする』というクラヴェルご兄弟の発言……それを受けたせいかは分からないけど、レオンとセドリックさんは念入りに出発前の確認をしていた。
調査に行く場所が私の家ということもあってか、みんな心配をさせないようにと、私の前では相当に気を使ってくれていたのだった。
「いいえ、もしもの事に備えるのは大切なことです。ルーイ様なんてちょっと楽しそうだったから、忠告して貰えて良かったです」
「おや、クレハ様もなかなかに手厳しい」
「みんな無事に帰ってきて頂かないと困りますもの」
待つ事しか出来ないのが歯痒い。しかし、自分が行ったところで邪魔にしかならない……悲しいことに。
私とレナードさんは今、王宮の図書館にいる。レオンは座学の時間で、あちらにはルイスさんが付き添っている。普段であれば、王宮内でここまでレオンに護衛がぴったりくっ付いていることはない。数日寝込んだ事で、周りが過保護になっているそうだ。当事者のレオンはというと、もう何ともないから普段通りにして欲しいとぼやいていた。
「クレハ様、気晴らしに王宮の外に行ってみましょうか?」
「行きたいです!! でも、いいのですか?」
図書館には、司書のフィネルさんが仕入れてくれた面白そうな本がたくさんある。ジャンルは多岐に渡り、私の好きなローズ物語のような恋愛系を始め、ミステリーや冒険小説など……。以前、セドリックさんがお願いしてくれたおかげだ。
フィネルさんは家族に私やリズと同じ年頃の子供がいるそうで、ローズ物語の事も知っていた。彼と本の感想を熱く語り合ったのは記憶に新しい。
いつもならこれらの本達に集中できるのだけど、調査に行ったルーイ様達が気がかりで、内容が頭に入ってこなかった。レナードさんの提案は、そんな私にとってうってつけのものだった。
「私も同行致しますし……殿下のお勉強が終わるまでの少しくらいなら大丈夫ですよ。島内にある雑貨屋などを覗いてみましょう」
「島のお店……」
「利用しているのは主に使用人達なので、扱っている商品は手頃で質素な物が多いですが……」
「見たいです! 連れて行って下さい、レナードさん」
一度行ってみたいと思っていた。王宮に行く時は、それらのお店は馬車で素通りしてしまうから……。私の反応が予想通りだったのだろう。レナードさんは、にこりと笑う。
「それでは準備をして行きましょうか。読みかけの本は貸し出し手続きをして、クレハ様のお部屋にお持ちしますね」
「はい、お願いします」
本棚から持って来たは良いが、ほとんど読むことが出来なかった。本は落ち着いたらゆっくり読むことにしよう。
読書は終わりだ。予定を変更して島内の商店巡りをすることになったので、私とレナードさんは図書館を後にした。
島の中にあるお店の数は10程度だそうだ。日用品や生活雑貨をメインに、お酒や煙草などの嗜好品も取り扱っている。月に一度、町から品物が搬入され、身元のしっかりした専属の商人が販売をしているのだという。
このようなお店がある理由は、一度島に入ってしまうと町に戻るのが困難になるためだ。リザベット橋を渡る手続きには時間がかかる。それは使用人達も例外ではなく、顔パスが通用するのはごく一部の限られた役職の人だけなんだって……。ちなみに『とまり木』の方達は、その限られた人間に含まれている。
「あの……レナードさん。このドレス……とても素敵ですけれど、この場ではちょっと……いや、かなり浮いてますよね?」
「そんなことないですよ。クレハ様は今日も世界で一番可愛いです」
冗談で流されてしまった。王宮から商店のある場所はとても近いので、外出というよりはお庭に散歩に行く感覚に近い。私達はのんびりと目的地へ向かおうとしたのだけど……その途中でばったりと王妃様に遭遇したのだった。
お出かけするのにその格好は地味過ぎると、王妃様からご指摘を受ける。私はあれよあれよという間にお着替えさせられてしまった。綺麗なライラック色のドレス……また見たことのないドレスが出てきた。もう衣装の数をかぞえるのはやめよう。
ピカピカに着飾った私を見て、王妃様はうんうんと頷いた。合格を頂けたようです。満足気な王妃様に見送られ、私達はようやく王宮から出ることが出来た。
「島のお店に行くだけなのだから、部屋着のままで良かったのでは……?」
「まあまあ。クレハ様を着飾るのは、王妃殿下の最近の楽しみのひとつですので……どうかご容赦ください。それに、とてもよくお似合いですよ」
王妃様が私のために用意してくださったのだから、ありがたく受け取らなくては失礼だよね。疎いなりにお洒落にも気を配ろうと決めたじゃないか。照れ臭いけど、褒めて頂いたら素直に嬉しいと伝えないと……
「ありがとうございます。実は……今まで自分から進んでこういう華やかなドレスは着てこなかったんです。だから、戸惑っているだけで決して嫌ではないのですよ」
「それなら良かった。殿下もルイスも不在ですし、こんな可愛いクレハ様を私だけが独り占めできるなんて役得ですね」
レナードさん……私に対しての言動がリズとちょっと被ってるんだよな。大仰というか何というか……反応に困っちゃう。そんな私の心境を知ってか知らずか、彼はとても楽しそうな様子だった。遊ばれてるのかな……私。
王宮から私の家までは1時間くらいかかる。出発したのが9時前だったので、何事もなければ到着しているはずだ。
「そうですね。丁度いま挨拶をしている頃なんじゃないでしょうか。心配ですか?」
「うーん……はい」
「私とルイスが余計なことを言ったせいですね。申し訳ありません……」
『胸騒ぎがする』というクラヴェルご兄弟の発言……それを受けたせいかは分からないけど、レオンとセドリックさんは念入りに出発前の確認をしていた。
調査に行く場所が私の家ということもあってか、みんな心配をさせないようにと、私の前では相当に気を使ってくれていたのだった。
「いいえ、もしもの事に備えるのは大切なことです。ルーイ様なんてちょっと楽しそうだったから、忠告して貰えて良かったです」
「おや、クレハ様もなかなかに手厳しい」
「みんな無事に帰ってきて頂かないと困りますもの」
待つ事しか出来ないのが歯痒い。しかし、自分が行ったところで邪魔にしかならない……悲しいことに。
私とレナードさんは今、王宮の図書館にいる。レオンは座学の時間で、あちらにはルイスさんが付き添っている。普段であれば、王宮内でここまでレオンに護衛がぴったりくっ付いていることはない。数日寝込んだ事で、周りが過保護になっているそうだ。当事者のレオンはというと、もう何ともないから普段通りにして欲しいとぼやいていた。
「クレハ様、気晴らしに王宮の外に行ってみましょうか?」
「行きたいです!! でも、いいのですか?」
図書館には、司書のフィネルさんが仕入れてくれた面白そうな本がたくさんある。ジャンルは多岐に渡り、私の好きなローズ物語のような恋愛系を始め、ミステリーや冒険小説など……。以前、セドリックさんがお願いしてくれたおかげだ。
フィネルさんは家族に私やリズと同じ年頃の子供がいるそうで、ローズ物語の事も知っていた。彼と本の感想を熱く語り合ったのは記憶に新しい。
いつもならこれらの本達に集中できるのだけど、調査に行ったルーイ様達が気がかりで、内容が頭に入ってこなかった。レナードさんの提案は、そんな私にとってうってつけのものだった。
「私も同行致しますし……殿下のお勉強が終わるまでの少しくらいなら大丈夫ですよ。島内にある雑貨屋などを覗いてみましょう」
「島のお店……」
「利用しているのは主に使用人達なので、扱っている商品は手頃で質素な物が多いですが……」
「見たいです! 連れて行って下さい、レナードさん」
一度行ってみたいと思っていた。王宮に行く時は、それらのお店は馬車で素通りしてしまうから……。私の反応が予想通りだったのだろう。レナードさんは、にこりと笑う。
「それでは準備をして行きましょうか。読みかけの本は貸し出し手続きをして、クレハ様のお部屋にお持ちしますね」
「はい、お願いします」
本棚から持って来たは良いが、ほとんど読むことが出来なかった。本は落ち着いたらゆっくり読むことにしよう。
読書は終わりだ。予定を変更して島内の商店巡りをすることになったので、私とレナードさんは図書館を後にした。
島の中にあるお店の数は10程度だそうだ。日用品や生活雑貨をメインに、お酒や煙草などの嗜好品も取り扱っている。月に一度、町から品物が搬入され、身元のしっかりした専属の商人が販売をしているのだという。
このようなお店がある理由は、一度島に入ってしまうと町に戻るのが困難になるためだ。リザベット橋を渡る手続きには時間がかかる。それは使用人達も例外ではなく、顔パスが通用するのはごく一部の限られた役職の人だけなんだって……。ちなみに『とまり木』の方達は、その限られた人間に含まれている。
「あの……レナードさん。このドレス……とても素敵ですけれど、この場ではちょっと……いや、かなり浮いてますよね?」
「そんなことないですよ。クレハ様は今日も世界で一番可愛いです」
冗談で流されてしまった。王宮から商店のある場所はとても近いので、外出というよりはお庭に散歩に行く感覚に近い。私達はのんびりと目的地へ向かおうとしたのだけど……その途中でばったりと王妃様に遭遇したのだった。
お出かけするのにその格好は地味過ぎると、王妃様からご指摘を受ける。私はあれよあれよという間にお着替えさせられてしまった。綺麗なライラック色のドレス……また見たことのないドレスが出てきた。もう衣装の数をかぞえるのはやめよう。
ピカピカに着飾った私を見て、王妃様はうんうんと頷いた。合格を頂けたようです。満足気な王妃様に見送られ、私達はようやく王宮から出ることが出来た。
「島のお店に行くだけなのだから、部屋着のままで良かったのでは……?」
「まあまあ。クレハ様を着飾るのは、王妃殿下の最近の楽しみのひとつですので……どうかご容赦ください。それに、とてもよくお似合いですよ」
王妃様が私のために用意してくださったのだから、ありがたく受け取らなくては失礼だよね。疎いなりにお洒落にも気を配ろうと決めたじゃないか。照れ臭いけど、褒めて頂いたら素直に嬉しいと伝えないと……
「ありがとうございます。実は……今まで自分から進んでこういう華やかなドレスは着てこなかったんです。だから、戸惑っているだけで決して嫌ではないのですよ」
「それなら良かった。殿下もルイスも不在ですし、こんな可愛いクレハ様を私だけが独り占めできるなんて役得ですね」
レナードさん……私に対しての言動がリズとちょっと被ってるんだよな。大仰というか何というか……反応に困っちゃう。そんな私の心境を知ってか知らずか、彼はとても楽しそうな様子だった。遊ばれてるのかな……私。
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