リトライさせていただきます!〜死に戻り令嬢はイケメン神様とタッグを組んで人生をやり直す事にした〜

ゆずき

文字の大きさ
200 / 302

199話 共犯(2)

しおりを挟む
 何かの比喩表現でもなく、『共犯』という単語の意味をそのまま受け取るなら同一の犯罪に関与している者たちの事を指す。僕がエルドレッドの共犯? こいつとは知り合ったばかりだ。犯罪どころか行動を共にしたことすらろくにない。共犯だなどと言われる筋合いは全くないぞ。

「こいつ何言ってんだって顔してるねー」

「実際そう思ってるからな。百歩譲って友人は認めてやっても、お前がやらかした悪さの片棒まで担いでやるつもりはないよ」

 友人になったからといって共犯扱いされるのは断固として拒否だ。こいつがどんな悪事を働いたかは知らないけど、僕には関係のないことだ。巻き込むなとはっきり告げた。突き放すような態度を見せてもエルドレッドは平然としており、堪えた風には見えない。憎たらしい。

「だからー、これからじゃなくて既になってるんだってばぁ……カミルくん。君はオレの親友だし、共犯なの」

 エルドレッドは膝の上に乗せていた紙の蝶をひとつ手に取った。先ほどこの白い蝶は、彼が魔法を使う時に用いる道具なのだと説明を受けたけれど。

「どうしてオレが会ったことの無いクレハお嬢様の顔を知っているのかって? 答えは簡単。この魔法を使ったからさ」

 彼が手にしている蝶が薄っすらと輝きだした。ただの紙でしかなかったそれが宙に浮かぶ。そして、さながら本物の蝶のようにひらひらと僕たちの周りを飛び回ったのだ。

「この蝶を通してコスタビューテ王宮にいらっしゃるクレハお嬢様のお顔を拝見させて頂きました。噂通りお美しい方で……一発で分かったよね」

「千里眼……」

「そう。でも安心して。ほんとに顔を見ただけ。それ以外は何もしていないからさ」

 淡い黄色の光を纏いながら空中を漂う蝶。エルドレッドの魔法……千里眼は遠く離れた場所の景色を見る事が出来るという。でも待てよ。確かエルドレッドは……

「お前、見たい場所にはあらかじめその蝶を置いておく必要があるって言っただろ。まさかコスタビューテの王宮に入ったことがあるのか」

 こいつの話を信じるならそういうことになるけど……あり得ないな。島へと繋がる橋を渡ることだって無理だろう。僕ですら父さんと同伴でなければ許可証が必要なほどに厳しい警備体制を敷いているのだ。放浪の外国人であるこいつが入れるわけがない。

「オレは無いよ。オレはね……」

 エルドレッドは王宮に入ったことはない。じゃあ、誰か別の……こいつの知り合いで王宮に出入りできるような立場の人間がいるのか。
 エルドレッドは僕の顔をじっと見つめている。またこの気持ちの悪い笑顔だ。人を小馬鹿にしたようなムカつく顔。本当に焦れったい。言いたいことがあるならはっきりと言えば――

「まさか……」

  はっと息を呑む。身に覚えのないことだったけど、エルドレッドは僕をこう呼んでいる。『共犯』だと。

「エルドレッド、お前……僕にこの蝶を運ばせたのか?」

 1度思い至ってしまったら、もうそうとしか考えられない。比較的簡単に王宮に出入りができて、クレハに目通りが許される人間。己がそれに該当する限られた者であるのを失念していた。こいつの知り合いというポジションがまだしっくりきていないせいなのか、無意識に自分を除外していたのだ。

「ご明察。お前の外套のポケットにこっそりとね。無事に王宮まで運ばれるかどうかは賭けだったけど。運が味方してくれたみたいだ」

 王都に帰るまでの道中はクレハのことで頭が一杯だった。一刻も早く彼女に会って婚約の真偽を確かめようと躍起になっていたのだ。注意力が散漫になっていたのは否めない。しかし、衣服の中にそんな物を入れられていたなんて……
 僕が王宮についた頃を見計らってポケットから抜け出し、チャンスが来るまで物陰に隠れていたのだという。制限のある魔法でこれをやるのは大変だったとか……そんなの知るか。

「もし蝶が見つかったとしてもただの紙切れにしか見えないし、あれだけでオレの魔法と結び付けるなんて不可能だよ。カミルさえ黙っていればバレることはない」

「……だから共犯か。なんて事してくれたんだよ……」

 これはれっきとしたスパイ行為だ。王宮の内部を盗み見るなんて許されるわけがない。自分はその幇助をしたことになる。知らなかったでは済ませられない。

「さっきも言ったけど、クレハお嬢様を見てみたかっただけなんだって。カミルのことも心配だったしさ……悪気はこれぽっちも無かったんだよ」

 ショックを受けている僕を見て、罪悪感が芽生えたのだろうか。さっきまでへらへらしていたエルドレッドが、焦ったように言い訳を並べたてる。お前の意図とか関係ない。盗み見をした行為自体が問題なんだよ……

「僕はこの国の宰相の息子なんだ。立場を考えてくれよ……もし誰かに知られでもしたら」

「お前が自分から言わなきゃ大丈夫だって。それに、王宮に持ち込んだ蝶ではもう千里眼は使えない。このあいだから何度も試してるけど失敗するんだ。きっと蝶が見つかって捨てられてしまったんだと思う」

 目の代わりとなる蝶が破れたり、燃やされたりなどで傷つけられてしまうと千里眼は使えなくなるそうだ。過去の行いを無かったことには出来ないが、これ以上エルドレッドが王宮内を覗き見することは防げたようで少しだけ安心した。

「もう二度とこんな軽率な真似はするな。お前だって旅先で捕まりたくはないだろ。親が泣くぞ」

「そんな簡単に捕まってやるつもりもないんだけどね。親のことは置いとくとして……今回はカミルを巻き込んじゃったし、これからは自重するよ」

 魔法は凄い。でもそれを過信しすぎではないだろうか。コスタビューテにも魔法使いがいる。その筆頭がディセンシア家だ。普通の人間ならともかく、同じ魔法使いである彼らが、王宮内で使われた魔法に気づかないとは言い切れないのではないか。
 エルドレッドはバレるわけないと高を括っているけど、僕はこいつのように楽観的に考えることは出来なかった。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

私の作るおにぎりが、騎士団の士気を異常に上げています(犯人は副団長)

星乃和花
恋愛
おにぎりを配っただけで、騎士団の士気が異常値になりました。 団長は警戒、監察部は呪術検査、国まで動きかけるのに――副団長だけが平然と断言。 副団長「彼女のご飯は軍事物資です」 私「えっ重い」 胃袋で落ちた策略家副団長の“最適化溺愛”に巻き込まれ、気づけば専属補給係(=婚約)寸前!? ほのぼの爆笑&甘々の騎士団ラブコメです。 (月水金21:00更新ー本編16話+後日談6話)

死に戻ったら、私だけ幼児化していた件について

えくれあ
恋愛
セラフィーナは6歳の時に王太子となるアルバートとの婚約が決まって以降、ずっと王家のために身を粉にして努力を続けてきたつもりだった。 しかしながら、いつしか悪女と呼ばれるようになり、18歳の時にアルバートから婚約解消を告げられてしまう。 その後、死を迎えたはずのセラフィーナは、目を覚ますと2年前に戻っていた。だが、周囲の人間はセラフィーナが死ぬ2年前の姿と相違ないのに、セラフィーナだけは同じ年齢だったはずのアルバートより10歳も幼い6歳の姿だった。 死を迎える前と同じこともあれば、年齢が異なるが故に違うこともある。 戸惑いを覚えながらも、死んでしまったためにできなかったことを今度こそ、とセラフィーナは心に誓うのだった。

3歳で捨てられた件

玲羅
恋愛
前世の記憶を持つ者が1000人に1人は居る時代。 それゆえに変わった子供扱いをされ、疎まれて捨てられた少女、キャプシーヌ。拾ったのは宰相を務めるフェルナー侯爵。 キャプシーヌの運命が再度変わったのは貴族学院入学後だった。

何も言わずメイドとして働いてこい!とポイされたら、成り上がり令嬢になりました

さち姫
恋愛
シャーリー・サヴォワは伯爵家の双子の妹として産まれた 。実の父と双子の姉、継母に毎日いじめられ、辛い日々を送っていた。特に綺麗で要領のいい双子の姉のいつも比べられ、卑屈になる日々だった。 そんな事ある日、父が、 何も言わず、メイドして働いてこい、 と会ったこともないのにウインザー子爵家に、ポイされる。 そこで、やっと人として愛される事を知る。 ウインザー子爵家で、父のお酒のおつまみとして作っていた料理が素朴ながらも大人気となり、前向きな自分を取り戻していく。 そこで知り合った、ふたりの男性に戸惑いながらも、楽しい三角関係が出来上がっていく。 やっと人間らしく過ごし始めたのに、邪魔をする家族。 その中で、ウインザー子爵の本当の姿を知る。 前に書いていたいた小説に加筆を加えました。ほぼ同じですのでご了承ください。 また、料理については個人的に普段作っているのをある程度載せていますので、深く突っ込むのはやめてくださいm(*_ _)m 第1部の加筆が終わったので、ここから毎日投稿致しますm(_ _)m

「婚約破棄された転生令嬢ですが、王城のメイド五百人に慕われるメイド長になりました。なお元婚約者は私のメイドに土下座中です」

まさき
恋愛
社畜OLとして過労死した私は、異世界の令嬢・アリア・ヴェルナーに転生した。 目が覚めたら、婚約破棄されていた。 理由は「地味で面白みがない」から。 泣く暇もなかった。翌朝、王城のメイド採用面接に向かった。 最初は鼻で笑われた。雑用係からのスタートだった。 でも——前世で叩き込まれた仕事術と、一人ひとりの話を聞く姿勢で、少しずつメイドたちが集まってきた。 厨房が変わった。リネンが変わった。王城全体が変わっていった。 そして就任スピーチで宣言した。 「500人全員の名前を、覚えます」 冷酷と噂される王太子は、静かに見ていた。 悪役令嬢は妨害を仕掛けてきた。 元婚約者は——後悔し始めていた。 婚約破棄された令嬢が、500人に慕われるメイド長になるまでの物語。 なお元婚約者は、私のメイドたちの前で土下座中です。

「お前を愛する事はない」を信じたので

あんど もあ
ファンタジー
「お前を愛することは無い。お前も私を愛するな。私からの愛を求めるな」 お互いの利益のために三年間の契約結婚をしたアヴェリンとロデリック。楽しく三年を過ごしたアヴェリンは屋敷を出ていこうとするのだが……。

バッドエンド予定の悪役令嬢が溺愛ルートを選んでみたら、お兄様に愛されすぎて脇役から主役になりました

美咲アリス
恋愛
目が覚めたら公爵令嬢だった!?貴族に生まれ変わったのはいいけれど、美形兄に殺されるバッドエンドの悪役令嬢なんて絶対困る!!死にたくないなら冷酷非道な兄のヴィクトルと仲良くしなきゃいけないのにヴィクトルは氷のように冷たい男で⋯⋯。「どうしたらいいの?」果たして私の運命は?

女性が少ない世界に転生した控えめ伯爵令嬢、なぜか五人の婚約候補に選ばれて少しずつ恋を知っていきます

ノッポ
恋愛
女性が極端に少ない異世界に転生した私は、気づけば伯爵令嬢になっていた。 前世は日本で普通に生きていたせいか、貴族令嬢らしい強気な振る舞いがどうしても苦手。 社交界デビューを迎えても、「どうして私が選ばれるの?」と戸惑うばかりだった。 けれど今年デビューする高位令嬢はわずか三人。 家同士の思惑も重なり、騎士団長家の息子、宰相子息、魔術師団長の息子、幼なじみの侯爵子息、そして英雄騎士―― 五人の若きエリートとのお見合いが次々と始まってしまう。 遠慮がちで控えめな性格は、この世界では珍しく、気づけば少しずつ距離を縮めていく彼ら。 異世界での恋愛に戸惑う日々。けれど出会いを重ねるたびに、私は少しずつ変わっていく――。 女性希少世界で、自分の幸せを選べるようになるまでの逆ハーレム恋愛ファンタジー。

処理中です...