リトライさせていただきます!〜死に戻り令嬢はイケメン神様とタッグを組んで人生をやり直す事にした〜

ゆずき

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216話 荷造り

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「準備と言われても持っていく物がそんなに無いんだよなぁ」

 レナードさんが王宮に戻ってきたらすぐにでも出発するとレオンから伝えられた。荷造りをして待っていようと思ったけれど、私が王宮に持ち込んだ私物って殆ど無いんだよね。
 お世話になってひと月以上になるので、部屋の中にはかなり物が増えている。特に王妃様から頂いたお洋服の数が凄まじい。そろそろクローゼットの中に収まりきらなくなっていた。部屋着からパーティードレスに渡り種類も多いので洋装店が開けてしまいそう。それに続いてネックレスやブローチ、コサージュなどの宝飾類の量もかなりのものだった。これらは主にジェラール陛下から頂いた物。さすがにこんなにたくさんの贈り物を一度に自宅へ持ち帰るのは不可能だ。

 王宮に来たばかりの頃……陛下と王妃様から毎日のように高価な贈り物が届けられて、私は右往左往しっぱなしだったっけ。そんな様子を見兼ねたレオンがおふたりを止めてくれたので、贈り物攻撃はだいぶ落ち着きを見せている。それでもまだ多いと思ってるけど。
 部屋の内装も最初とは随分変わっていた。もともと来賓用の部屋だったから、豪華で煌びやかで広さも充分。何不自由なく快適に過ごしていたのだ。変更など必要無かった。それなのに……それはゆっくりと静かに実行されていったのだ。
 身の回りの小物類から始まり、デザインや色が私好みの物にどんどん入れ替えられる。タンスやベッド……大型の家具もしっかりと対象に含まれていた。贈り物と同じでやり過ぎだった。こちらもレオンに止めて貰おうとしたのだけど、何故かレオンは部屋に関してはノータッチを貫いた。最終的には王宮に私の部屋が出来るのだと知らされて目が点になる。
 フィオナ姉様の件があったからだろうけど、私が快適に過ごせるようにと物凄く気を遣われていた。レオンはできるだけ私の側にいてくれたし、友人のリズまで連れてきてくれたのだ。正に至れり尽くせり……
 それでも家が恋しくなる時はあった。自分の置かれた状況が不安で眠れなくなることも……でもなんとかやってこれたのは支えてくれた皆のおかげだ。長いようであっという間のこのひと月……本当に色んなことがあった。
 家に帰れて嬉しいはずなのに、しんみりとした気分になってしまう。今回帰れることになったのは、事件の調査のためにレオンが私の家に行くからだ。警護上の理由で私はそれに同行する形になっただけ。それが終わったらまた王宮に戻るのに――

「あれ……?」

 王宮で過ごしたひと月を振り返り、感慨に浸っていたのだけど……ふと、違和感のようなものを覚えて思考が停止してしまう。

「私……戻る必要あるのかな。姉様は今リブレールにいるのに」

 当たり前のようにこれからも王宮で生活する自分を想像していた。でも、事件が解決してしまえば私が王宮に留まる理由がなくなってしまうのではないだろうか。
 私が王宮で過ごすことになった発端はフィオナ姉様が体調を崩してしまったからだ。伝染病の可能性まで疑われていたらしく、万が一に備えての処置だったとレオンから聞いた。その後、姉様の不調は精神的なものだと判断され、伝染病の疑いは早々に晴れたのだ。それでも姉様の不安定な状態は続いており、刺激しないようにと私の帰宅は延期になるばかり。そんな最中さなか、島で魔法使いが絡んだ襲撃事件が起きてしまい、一時的に帰ることさえも禁じられてしまったのだ。
 レオンは病の疑いが有る姉様と私が接触することを良しとしなかった。でも現在姉様は保養のためにリブレールに向かったので家にはいない。つまり、事件関連の心配ごとが無くなれば、私が帰宅しても問題ないということになる。
 解決したらなんて、口で言うのは簡単だ。そんな容易いものじゃない。しかし、具体的に私はいつまで王宮にいればいいのか……今まで明確にしてこなかったものをはっきりさせるのは必要なことだと思う。理由が無くなった状態でずるずると居座るのはよくない。そこはきっちりしておかないと。せめて期間くらいは設けて……折を見てレオンと相談してみよう。
 周囲のみんながあまりに良くしてくれたので、私もそれに慣れ切ってしまっていた。無意識にまた戻って来ようとしていたのだから。
 王宮に私の私室を作って下さるという計画はもうしばらく待って頂こう。それはこれから先、私がレオンの婚約者として堂々と胸を張って言えるようになってからでも遅くはない。






 荷造りを再開することにした。『とまり木』のみんなに買って貰ったバングルとアンクレット。このふたつは身に付けて帰ることにする。アクセサリーではなくお守りだと聞いたし、特にバングルはレオンとお揃いだからできるだけ側に置いておきたかった。後はリズとジェフェリーさんから貰った本とブックマーカー。そして使用人達へのお土産。散々悩んだ結果、これらが私の手荷物となった。
 レオンに言われた通り『準備』を終えて、私は部屋で待機する。これでいつ呼び出しがかかっても大丈夫だ。しばらくの間そうしていると、図ったかのようにピッタリなタイミングで部屋の扉がノックされたのだった。

「姫さーん、もう支度出来た?」

「ルイスさん! はい、今終わったところです」

 私を呼びに来てくれたのはルイスさんだ。彼は私が扉が開くのを待たずに会話を続けた。心なしか声が上擦っているような……困惑しているように感じた。

「姫さん、リズが帰ってきたよ。レナードの代わりに」

「えっ……リズが? どうして」

 ルイスさんが口にしたのは思いもよらぬ言葉だった。レナードさんの代わりにリズが帰ってきたのだと。セドリックさんからの報告書が届いたのは数刻前のことだ。この短い間に一体何が起きたのだろうか。
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