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247話 信用(1)
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ルーイ先生に言われた通りに、預かった手紙をメーアレクト様の元へ送った。エリスならリオラド神殿に到着するまで1時間もかからない。早ければ本日中に返事が届くかもしれない。先生はメーアレクト様と連絡を取って何をなさるつもりなのか……
拘束しているニュアージュの二人組に取り引きを持ちかけるとは聞いている。先生が具体的な内容を教えてくれないので、俺は気を揉んでいるのだ。先生を信頼してはいるが、もう少し情報を開示して欲しい。俺の協力が必要だというのなら尚のこと……
「先生、手紙をエリスに届けさせました」
「サンキュー、レオン」
手紙を送って先生の部屋に戻ると、ベッドの上に寝転がっている彼に出迎えられた。痛み止めの効果が薄まって座っているのがつらくなったのだろう。軽傷とは聞いているが、無理をさせてはいけない。
こんな状態でニュアージュの人間と対面させてよいものか……先生の言葉に押されて許可してしまったが、早まったかもしれない。
「メーアの返事がくるまでちょっと休憩。レオンもセディも休める時に休みなさいよ」
「貴方ってひとは本当にマイペースですね。いや、神たちの特性なのか……神々には誰かの都合に合わせて行動するという意識が希薄なんでしょう」
「セドリックくん……俺を遠回しにディスってるのかい? 自分勝手だってはっきり言いなさいな!!」
先生のすぐそばにはセドリックが寄り添っていた。なじるような言葉を吐きつつも、彼の体に毛布をかけてやっている。ごく自然に世話を焼いているな。もう隠す気がないのだろうか。先生は最初からオープンだったので今更なんだけど、セドリックの方はかなり往生際が悪く抗っていたのに。
このふたりの恋愛事情については静観するつもりでいたけど、セドリックが先生に振り回されて調子を崩していたので、余計なお節介を焼いてしまうこともあった。そんなふたりが俺が知らない間に何がどうなったのか、上手くまとまったようだ。
セドリックの奴……口では否定的なことばかり言っていたが、体に先生の魔力の名残が感じられる。ただ側にいるだけでああはならない。頻繁に身体同士を触れ合わせるなどしない限りはな。
先生がセドリックを力ずくでどうこうできるとは思えないから……つまりそういう事なんだろう。
生まれて初めて魔力の気配が分かることが嫌になった。身近な者たちの情事の痕跡など見つけたくはない。先生は俺が魔力を感知して、状況を把握していることに気付いている。それでも配慮なんてしてくれないのだから困った方だ。
セドリックは相当早い段階で先生に惹かれていた。先生は俺ですら見たことがないようなセドリックの表情をたくさん引き出してくれる。自分の一番の側近がまさか神と情を交わすことになるなんてと、複雑な感情が沸かないわけではない。でも、その反面……なるべくしてなった結果だとも思うのだ。
俺はこれまで通りに適度な距離感を保ちつつ、ふたりを見守ることに決めた。きっと今後も様々な問題が彼らの前に立ち塞がるのだろう。相談に乗るくらいはしてやってもいい。
さて、思考が脱線してしまった。ふたりの関係については先生が後日報告してくれるそうだから、こちらから詮索するのはやめよう。それよりも今はやるべき事がある。
「先生、あなたの指示には従いますが、俺は具体的にどんなお手伝いをするのでしょう。事前に知らせておいて下さらないと、本番で失敗するかもしれませんよ」
「ああ、それね。色々あるけど、レオンにやって欲しいのは……」
先生が話を始めようとしたその時だった。部屋の扉をノックする音によって彼の言葉は遮られてしまう。一体誰が……
俺と先生……そして、セドリックの3人は顔を見合わせた。真っ先に動いたのはセドリックだ。扉から離れるよう俺に手で合図を送ると、訪問者の正体を確認するために部屋の外に向かって呼びかけた。
「誰だ?」
「……突然申し訳ありません。リズです。ルーイ先生とセドリックさんに急ぎお伝えしたいことがあって参りました。聞いて頂けますでしょうか」
「リズさんっ……」
それは俺たちがよく知っている人物だった。クレハの侍女であり、友人でもある少女。訪問者の正体が判明した途端、室内に漂っていた緊張感が緩んだ。リズならこの部屋に招き入れても何の問題もないだろう。話の途中ではあったが、急ぎの知らせだと言うのでリズの方を優先しよう。先生と俺は互いに頷き合う。
「セディ、リズちゃんを入れてあげて」
先生の指示に従い、セドリックが扉を開けた。『失礼致します』という言葉と共に、リズが部屋に入ってくる。室内にいるのは先生とセドリックだけだと思い込んでいたのだろう。先生が寝ているベッドのすぐ横に俺がいることに気付いて、リズは目を見開いて驚愕の表情を浮かべた。
「レ、レオン殿下っ……!? こちらにいらっしゃったのですか」
「捜査の報告と先生のお見舞いにね。ああ、楽にしていい」
慌てて頭を下げる彼女を制止する。俺がいるとリズが話をしづらいかもしれないな。そろそろクレハの所にも行こうと思っていたし、俺は一旦席を外そうか……
「リズも先生に話があるんだろう。俺はお暇するから、気にしないで」
「あっ……いえ、その……待って下さい」
気を使ったつもりだったが、俺が席を外そうとするとリズは焦ったように声を上げた。ただならぬ雰囲気を感じ取った俺たちは身を引き締める。部屋には再び張り詰めた空気が漂った。
「レオン殿下にも聞いて頂きたいです。とても大切なことなんです……お願いします」
リズの話は俺にも関係があるようだ。リズの懇願がとても切羽詰まったものだったので、断ることが出来なかった。クレハの所に行くのも、先生との打ち合わせの続きも……リズの話を聞いてからにするとしよう。
拘束しているニュアージュの二人組に取り引きを持ちかけるとは聞いている。先生が具体的な内容を教えてくれないので、俺は気を揉んでいるのだ。先生を信頼してはいるが、もう少し情報を開示して欲しい。俺の協力が必要だというのなら尚のこと……
「先生、手紙をエリスに届けさせました」
「サンキュー、レオン」
手紙を送って先生の部屋に戻ると、ベッドの上に寝転がっている彼に出迎えられた。痛み止めの効果が薄まって座っているのがつらくなったのだろう。軽傷とは聞いているが、無理をさせてはいけない。
こんな状態でニュアージュの人間と対面させてよいものか……先生の言葉に押されて許可してしまったが、早まったかもしれない。
「メーアの返事がくるまでちょっと休憩。レオンもセディも休める時に休みなさいよ」
「貴方ってひとは本当にマイペースですね。いや、神たちの特性なのか……神々には誰かの都合に合わせて行動するという意識が希薄なんでしょう」
「セドリックくん……俺を遠回しにディスってるのかい? 自分勝手だってはっきり言いなさいな!!」
先生のすぐそばにはセドリックが寄り添っていた。なじるような言葉を吐きつつも、彼の体に毛布をかけてやっている。ごく自然に世話を焼いているな。もう隠す気がないのだろうか。先生は最初からオープンだったので今更なんだけど、セドリックの方はかなり往生際が悪く抗っていたのに。
このふたりの恋愛事情については静観するつもりでいたけど、セドリックが先生に振り回されて調子を崩していたので、余計なお節介を焼いてしまうこともあった。そんなふたりが俺が知らない間に何がどうなったのか、上手くまとまったようだ。
セドリックの奴……口では否定的なことばかり言っていたが、体に先生の魔力の名残が感じられる。ただ側にいるだけでああはならない。頻繁に身体同士を触れ合わせるなどしない限りはな。
先生がセドリックを力ずくでどうこうできるとは思えないから……つまりそういう事なんだろう。
生まれて初めて魔力の気配が分かることが嫌になった。身近な者たちの情事の痕跡など見つけたくはない。先生は俺が魔力を感知して、状況を把握していることに気付いている。それでも配慮なんてしてくれないのだから困った方だ。
セドリックは相当早い段階で先生に惹かれていた。先生は俺ですら見たことがないようなセドリックの表情をたくさん引き出してくれる。自分の一番の側近がまさか神と情を交わすことになるなんてと、複雑な感情が沸かないわけではない。でも、その反面……なるべくしてなった結果だとも思うのだ。
俺はこれまで通りに適度な距離感を保ちつつ、ふたりを見守ることに決めた。きっと今後も様々な問題が彼らの前に立ち塞がるのだろう。相談に乗るくらいはしてやってもいい。
さて、思考が脱線してしまった。ふたりの関係については先生が後日報告してくれるそうだから、こちらから詮索するのはやめよう。それよりも今はやるべき事がある。
「先生、あなたの指示には従いますが、俺は具体的にどんなお手伝いをするのでしょう。事前に知らせておいて下さらないと、本番で失敗するかもしれませんよ」
「ああ、それね。色々あるけど、レオンにやって欲しいのは……」
先生が話を始めようとしたその時だった。部屋の扉をノックする音によって彼の言葉は遮られてしまう。一体誰が……
俺と先生……そして、セドリックの3人は顔を見合わせた。真っ先に動いたのはセドリックだ。扉から離れるよう俺に手で合図を送ると、訪問者の正体を確認するために部屋の外に向かって呼びかけた。
「誰だ?」
「……突然申し訳ありません。リズです。ルーイ先生とセドリックさんに急ぎお伝えしたいことがあって参りました。聞いて頂けますでしょうか」
「リズさんっ……」
それは俺たちがよく知っている人物だった。クレハの侍女であり、友人でもある少女。訪問者の正体が判明した途端、室内に漂っていた緊張感が緩んだ。リズならこの部屋に招き入れても何の問題もないだろう。話の途中ではあったが、急ぎの知らせだと言うのでリズの方を優先しよう。先生と俺は互いに頷き合う。
「セディ、リズちゃんを入れてあげて」
先生の指示に従い、セドリックが扉を開けた。『失礼致します』という言葉と共に、リズが部屋に入ってくる。室内にいるのは先生とセドリックだけだと思い込んでいたのだろう。先生が寝ているベッドのすぐ横に俺がいることに気付いて、リズは目を見開いて驚愕の表情を浮かべた。
「レ、レオン殿下っ……!? こちらにいらっしゃったのですか」
「捜査の報告と先生のお見舞いにね。ああ、楽にしていい」
慌てて頭を下げる彼女を制止する。俺がいるとリズが話をしづらいかもしれないな。そろそろクレハの所にも行こうと思っていたし、俺は一旦席を外そうか……
「リズも先生に話があるんだろう。俺はお暇するから、気にしないで」
「あっ……いえ、その……待って下さい」
気を使ったつもりだったが、俺が席を外そうとするとリズは焦ったように声を上げた。ただならぬ雰囲気を感じ取った俺たちは身を引き締める。部屋には再び張り詰めた空気が漂った。
「レオン殿下にも聞いて頂きたいです。とても大切なことなんです……お願いします」
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