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カジノ 編
勝負の時
「勝ちますように」
私は尊さんの背後に立ち、両手をかざして念を送る。
「……勝ちますように」
すると恵も同様にして、振り向いた涼さんにニコッと笑われていた。
尊さんも涼さんも、全額プレイヤーに賭けた。
(わぁ……、これ、バンカーが勝ったら二人で大負けだ)
これまでのゲームで、私たちはともかく、尊さんと涼さんはそれなりの勝ちを積み重ねている。
最初、彼らが五万円近くチップに変えたお金は、慣れなのか運なのか分からないけれど、三十万円近くに膨れ上がっていた。
それに加えて、私たちのなけなしのチップがプラスされている。
自分の分はどうでもいいけど、総額三十万以上を全部スると思うと、怖くて堪らない。
「うわぁ……、アアアア……」
私はバックンバックン心臓を高鳴らせ、恵の手をギュッと握る。
「マジ心臓に悪い。もう二度とカジノ来ない」
恵もまた、顔色を悪くしてブツブツ文句を言っていた。
やがて、バンカーとプレイヤーに二枚ずつカードが配られ――、オープン!
(プレイヤーは!?)
息を呑んでカードを見ると、なんと、6と3の9、ドンピシャ!
「よしっ!」
「っしゃ!」
尊さんと涼さんはハイタッチし合い、私と恵はお互いを抱き締め合ってヘナヘナと崩れ落ちてしまった。
「マジもうやだやだやだやだやだやだやだやだやだやだ……」
「心臓口から出る死ぬ死ぬ死ぬ死ぬ死ぬ死ぬ死ぬ……」
しゃがみ込んでいる私たちを見て、尊さんと涼さんは笑顔で笑い飛ばす。
「なーにやってるんだよ。ほれ、立て」
尊さんは私の腋の下に手を入れ、ヒョイッと立たせる。
隣では恵も同様にされていた。
「しかし意外と儲けたなぁ……」
「今回は運が良かったね。恵ちゃん達がいたからかな」
「かもな。幸運のお猫様、ってね」
「恵ちゃん、ゲン担ぎに今度カジノ行く時も一緒にいて?」
「ぜってぇ嫌です」
「わあ、即答」
そのあと、私たちはキャッシャーへ行き、男性陣がチップを現金に換えるのを見守る。
「……彼らはさ、大金を動かすのに慣れてるかもしれないけど、私たちはホントこういうの駄目だよね」
疲弊しきった恵が言い、私は頷く。
「私、一時スマホゲームに嵌まってて、ちょっと課金しちゃった時期があったんだけど、その時は望むもののためにお金を使ってるからいいやって思えたけど、結局そのお金があったらコスメ買えるし、ちょっといいランチも食べられるし、勿体ないなって思ってやめたんだよね。……ガチャってギャンブルみたいなものって言うじゃない。人によっては意味のある散財でも、やっぱり勿体ない気持ちはあって。……その金額でも『あー、やっちゃった……』って思う庶民が、彼らみたいに何万円も思いきり良く賭けたりできないよね」
「本当にノミの心臓だから、きつい……。もう二度と来たくない」
「だね。社会見学はもういいや」
はぁー……、と大きな溜め息をついた時、二人が戻ってきた。
「お待たせ、帰るか」
「はい」
「恵ちゃん、尊と話してたんだけど、帰るまでにカジノで儲けたお金で思い出に残る物を買おうか」
「なんすか、それ」
恵が目を瞬かせると、涼さんはいい笑顔で言う。
「ちょうどホテルの近くにはハイブランドのショップもある事だし、手元には六十万近くのお金があるので、バッグとか服とか靴とかね」
「いや、いいっす」
「朱里は欲しいもんあるよな?」
……尊さんの圧が強い。
ここで何も要らないというのも悪いかと思い、私は「うーん、うーん」と考えてから必死に答えを絞り出す。
「……リップとか、香水とか?」
「せっかくだから、もっと大きいもんいけよ」
トンと背中を叩かれ、私は困って恵と顔を見合わせた。
私は尊さんの背後に立ち、両手をかざして念を送る。
「……勝ちますように」
すると恵も同様にして、振り向いた涼さんにニコッと笑われていた。
尊さんも涼さんも、全額プレイヤーに賭けた。
(わぁ……、これ、バンカーが勝ったら二人で大負けだ)
これまでのゲームで、私たちはともかく、尊さんと涼さんはそれなりの勝ちを積み重ねている。
最初、彼らが五万円近くチップに変えたお金は、慣れなのか運なのか分からないけれど、三十万円近くに膨れ上がっていた。
それに加えて、私たちのなけなしのチップがプラスされている。
自分の分はどうでもいいけど、総額三十万以上を全部スると思うと、怖くて堪らない。
「うわぁ……、アアアア……」
私はバックンバックン心臓を高鳴らせ、恵の手をギュッと握る。
「マジ心臓に悪い。もう二度とカジノ来ない」
恵もまた、顔色を悪くしてブツブツ文句を言っていた。
やがて、バンカーとプレイヤーに二枚ずつカードが配られ――、オープン!
(プレイヤーは!?)
息を呑んでカードを見ると、なんと、6と3の9、ドンピシャ!
「よしっ!」
「っしゃ!」
尊さんと涼さんはハイタッチし合い、私と恵はお互いを抱き締め合ってヘナヘナと崩れ落ちてしまった。
「マジもうやだやだやだやだやだやだやだやだやだやだ……」
「心臓口から出る死ぬ死ぬ死ぬ死ぬ死ぬ死ぬ死ぬ……」
しゃがみ込んでいる私たちを見て、尊さんと涼さんは笑顔で笑い飛ばす。
「なーにやってるんだよ。ほれ、立て」
尊さんは私の腋の下に手を入れ、ヒョイッと立たせる。
隣では恵も同様にされていた。
「しかし意外と儲けたなぁ……」
「今回は運が良かったね。恵ちゃん達がいたからかな」
「かもな。幸運のお猫様、ってね」
「恵ちゃん、ゲン担ぎに今度カジノ行く時も一緒にいて?」
「ぜってぇ嫌です」
「わあ、即答」
そのあと、私たちはキャッシャーへ行き、男性陣がチップを現金に換えるのを見守る。
「……彼らはさ、大金を動かすのに慣れてるかもしれないけど、私たちはホントこういうの駄目だよね」
疲弊しきった恵が言い、私は頷く。
「私、一時スマホゲームに嵌まってて、ちょっと課金しちゃった時期があったんだけど、その時は望むもののためにお金を使ってるからいいやって思えたけど、結局そのお金があったらコスメ買えるし、ちょっといいランチも食べられるし、勿体ないなって思ってやめたんだよね。……ガチャってギャンブルみたいなものって言うじゃない。人によっては意味のある散財でも、やっぱり勿体ない気持ちはあって。……その金額でも『あー、やっちゃった……』って思う庶民が、彼らみたいに何万円も思いきり良く賭けたりできないよね」
「本当にノミの心臓だから、きつい……。もう二度と来たくない」
「だね。社会見学はもういいや」
はぁー……、と大きな溜め息をついた時、二人が戻ってきた。
「お待たせ、帰るか」
「はい」
「恵ちゃん、尊と話してたんだけど、帰るまでにカジノで儲けたお金で思い出に残る物を買おうか」
「なんすか、それ」
恵が目を瞬かせると、涼さんはいい笑顔で言う。
「ちょうどホテルの近くにはハイブランドのショップもある事だし、手元には六十万近くのお金があるので、バッグとか服とか靴とかね」
「いや、いいっす」
「朱里は欲しいもんあるよな?」
……尊さんの圧が強い。
ここで何も要らないというのも悪いかと思い、私は「うーん、うーん」と考えてから必死に答えを絞り出す。
「……リップとか、香水とか?」
「せっかくだから、もっと大きいもんいけよ」
トンと背中を叩かれ、私は困って恵と顔を見合わせた。
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