【R-18・連載版】部長と私の秘め事

臣桜

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ケアンズ最終日 編

いざ、帰国の途へ

「涼子さんはミトコと百合しないんですか?」

 私が救済措置を出すと、涼さんは物凄い嫌な顔をする。

「……百合と薔薇の交配種って、物凄いモンスターになりそうじゃない?」

「どちらも匂いが強いでしょう」

 涼さんの言葉を聞いて恵が言い、彼はガックリと項垂れる。

「謎かけじゃないんだから……」

「朱里、他にも欲しい物があるなら、どんどんいっとけ。アイシャドウも、デート用とオフィス用と、何パターンかいっとけ」

 尊さんはコスメの棚を見て言う。

「もう沢山あるんですよう」

「備えあれば憂いなしだろ」

「コスメがありすぎて、あまり緊急事態にはならないんですが……」

「恵ちゃん、コアラの毛皮のバッグいっとく?」

「興味ないです。涼さんの腰巻きでも探したらどうですか? ほら、マオリ族の……ハカ? あれやったら似合いそう」

 私はニュージーランドの選手がラグビー前にやる舞踊を思い出し、ぶふっと噴き出す。

「恵ちゃんは俺と戦いたいのかな?」

 涼さんに言われ、私と恵は顔を見合わせたあと、カゴを置いて両手を上げ、べーと舌を出す。

「ちょっと~! 尊! うちの恋人が威嚇するレッサーパンダみたいで可愛いんだけど!」

 まさかの全力のハカ(真似)が、レッサーパンダになってしまった。

 尊さんは私の両手を恋人繋ぎで握り、手を下ろさせつつ体を密着させてくる。

「……で? 威嚇したあとは? 可愛い舌見せつけて」

 そう言われると、何だか急にエッチな事をしてしまった気持ちになった。

「かっ、考えすぎですよ! ミトコのエッチ!」

 プンと横を向いてカゴを持った私は、恵に「行こ」と促した。





 なんとか買えるだけ買ったあとは、尊さんも涼さんも特に欲しい物がないらしく、寄付ボックスにボーン! とお金を入れてきた。

「……凄い……。買い物より物凄くお金を使った気持ち……」

「マジ分かる。寄付にこんな金額突っ込んだ事ないよ……。手が震える……」

 そんな私と恵は、尊さんと涼さんが定期的に結構な額を、色んな所に寄付しているのを知らない。

 二人とも褒章やら木杯やら持っていると聞かされるのは、またあとでの事だ。

 その後、私たちはラウンジに行ってフライト時間まで待ち、搭乗時間になって日本の航空会社の機体に乗り込んだ。

「はぁ……、やっと帰れる。凄く楽しかったから『やっと』なんて言うの失礼だけど、なんだかホッとする」

 ビジネスクラスのシートに座って言うと、隣の席の尊さんが笑う。

「分かるよ。俺も国内外問わず、旅行に出た最終日は『やっと帰れる』って思うから」

「尊さんほどの達人でもそうなんですね」

「世界中、色んな魅力的なところがあるけど、やっぱり自分の家以上に寛げる所はないな」

「ですねー」

 頷いた私は、あの三田の豪邸マンションをすっかり自宅と思っている自分に、思わず微笑む。

 まだまだセレブ生活には慣れないけれど、少しずつ時間をかけて尊さんとの暮らしを〝普通〟と思えるようになりたい。

(でもいまだに、こんなに格好いい人と豪邸で暮らしているなんて信じられないし、毎日ウキウキワクワクなんだよな)

『美人は三日で飽きる』とか、どんな豪邸に住んでも慣れれば日常になるとか言われているけれど、私はまだまだ楽しめそうだ。

 三田のあの家で目覚めて、横を見れば世界一大好きな人がいる。

 家の中は快適だし、ご飯は美味しいし、町田さんとも上手くやれている。

 出勤する時は、まだ慣れない秘書業務に緊張したり、失敗したらどうしようという不安もある。

 でも副社長秘書として個室があって、同僚は笹島さんだけという環境は恵まれている。

 本来なら初期のエミリさんみたいに、秘書課からの嫌がらせを受けてもおかしくない。

(今後も何もないとは言いきれないけど、今のところは大丈夫と思っていいのかな。何かあったら笹島さんが対応してくれるって言ったし。……でも、頼りっぱなしもいけないよね)

 とはいえ、尊さんや笹島さんからも『揉め事になりそうだったら、すぐ男に任せる事』と言い含められている。

(日常に戻っても、また頑張っていこう。その前に、帰ってから一休みしたら、速水家の皆さんと温泉だ)

 白浜温泉も東京からは結構離れているけれど、ケアンズと比べると気軽なものに思える。

(でも、今度は速水家の皆さんと一緒だし、認めてもらえているとはいえ、失敗しないように気をつけないと)

 そう思いながら、私はウェルカムドリンクを受け取って「Thank you」と微笑んだ。
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