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親友の恋 編
「違う」
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「えっ?」
思わずドキッとして恵の顔をよく見ると、キュッと唇を引き結んで涼さんから頑なに目を逸らし、真っ赤になっている。
――これは!
思わず涼さんのほうを見ようとすると、恵は「違うから!」と大きな声で言い、私の顔を両手で挟んでグイッと自分のほうを向かせる。
「あぐっ」
振り向こうとした力と恵の力がせめぎ合い、私はくぐもったうめき声を漏らす。
そんな私を見て恵は泣く寸前の顔で息を震わせながら吸い、「あり得ない!」と言って部屋を出て行った。
「あっ! 恵! これからレストランだよ!」
私は慌てて恵を追いかけようとしたけれど、涼さんが優しく肩に手を置いて制止してきた。
「尊、朱里ちゃん、先にレストラン行ってて。俺は彼女を追いかけてあとから行くから」
彼は苦笑いして言ったあと、カードキーとお財布、スマホをポケットに入れて部屋を出て行った。
「あー……」
私は閉じたドアを見て、間延びした声を漏らす。
「もしかして……、もしかするのかもな?」
後ろで尊さんが立ちあがった気配がし、彼はこちらに歩み寄ってポンと私の肩に手を置く。
「……どうなんだろう。こんな事初めて」
私は溜め息をつき、ポツポツと語り出す。
「恵が男性にあんな反応を見せる事なんてなかったんです。今までだって、学生時代に部活前にクラスで堂々と着替える男子を見ていたし、男性の裸に慣れていない訳じゃないです。それに、私が昭人と付き合っている傍ら、恵も何度かためしに男の人と付き合ってみた事はあったらしいです。……でも『やっぱ無理』って二週間も経たず別れていましたけど」
「……なるほど」
尊さんは涼さんのベッドに腰かけ、頷く。
「恵が言うには『男が自分を好きになって、自分を気にしてメッセージを送ってくるのを見るだけで、気持ち悪くて堪らない』みたいです。……でも基本的な恋愛対象が男性なのは確かだし、私の事が好きだと言っても、セックスしたいとまでは思わないみたいです」
それを聞き、尊さんは少し安堵したのか小さく溜め息をつく。
「私については、『ただ一緒にいて、時々抱き締めて、大切にしたいし、大切にされたい』という望みを持っているみたいで、私もなるべくその希望に添えるようにしています。たまに酔っぱらった時とか、気持ちが盛り上がって触れるだけのキスをされる事もあったけど、尊さんと付き合うようになってからはなくなりました」
彼は息を吐き、私の腕を引っ張ると自分の膝の上に座らせた。
「……中村さんも複雑な過去持ちだし、ちゃんと男に目を向けられるようになるまで、時間がかかったのかもな。……異性にトラウマができると、どうしてもフィルターができる。『こいつは自分を傷つけるかもしれない』っていう怯えが根底にあって、異性と付き合う事に慎重になると思う。……でも、涼は違うって本能で分かったのかな」
「……だといいな」
私はお腹の前に回った尊さんの手を何とはなしに触り、親友を想って小さく笑う。
「涼さんが応える見込みはどれぐらいですか?」
尋ねると、尊さんは「うーん……」と少し考えてから言った。
「正直、涼は経験豊富だ。学生時代の段階で大体の事は済ませたし、女性側からのアプローチが多すぎて、供給過多になって〝満腹〟状態が続いている。今まであいつに近づいた女性が求めるのは、ハイクラスのデートをして美形の彼氏に愛される事だった。『十人と付き合えば、十人ともがそうだった』って言ってた。だから『もしかしたら例外がいるかもしれないけど、もうあまり自分からは求めたくない』と言って、女性と付き合う以外に楽しい事を求めるようになった」
想像通りの事を聞き、私はコクンと頷く。
「だからその分、初対面であいつを嫌がる中村さんに興味を持ったのは事実だ。今日、アトラクションを回っている間も、俺にちょいちょい『彼女、どんな人?』って聞いてたよ。深い話は避けたけど、基本的な情報は教えておいた。……で、言い方は悪いけど、今まで涼が避けてきたタイプの女性じゃないと分かって、余計に興味を抱いたみたいだった」
「恵って都会でキラキラしてるより、ソロキャンするの好きですもんね。男性に媚びるタイプじゃないですし」
タイミングが合う時は私も恵とキャンプするけれど、私に用事がある時は一人でフラッとあちこち行っているみたいだ。
「……うまくいくといいなぁ。涼はその気になったらいつでも結婚相手を見つけられるけど、『なるべく気の合う人を見つけたい』とは言っていたから」
「ですねぇ……」
頷くと、「そろそろレストランに向かうか」と言われて部屋を出た。
**
思わずドキッとして恵の顔をよく見ると、キュッと唇を引き結んで涼さんから頑なに目を逸らし、真っ赤になっている。
――これは!
思わず涼さんのほうを見ようとすると、恵は「違うから!」と大きな声で言い、私の顔を両手で挟んでグイッと自分のほうを向かせる。
「あぐっ」
振り向こうとした力と恵の力がせめぎ合い、私はくぐもったうめき声を漏らす。
そんな私を見て恵は泣く寸前の顔で息を震わせながら吸い、「あり得ない!」と言って部屋を出て行った。
「あっ! 恵! これからレストランだよ!」
私は慌てて恵を追いかけようとしたけれど、涼さんが優しく肩に手を置いて制止してきた。
「尊、朱里ちゃん、先にレストラン行ってて。俺は彼女を追いかけてあとから行くから」
彼は苦笑いして言ったあと、カードキーとお財布、スマホをポケットに入れて部屋を出て行った。
「あー……」
私は閉じたドアを見て、間延びした声を漏らす。
「もしかして……、もしかするのかもな?」
後ろで尊さんが立ちあがった気配がし、彼はこちらに歩み寄ってポンと私の肩に手を置く。
「……どうなんだろう。こんな事初めて」
私は溜め息をつき、ポツポツと語り出す。
「恵が男性にあんな反応を見せる事なんてなかったんです。今までだって、学生時代に部活前にクラスで堂々と着替える男子を見ていたし、男性の裸に慣れていない訳じゃないです。それに、私が昭人と付き合っている傍ら、恵も何度かためしに男の人と付き合ってみた事はあったらしいです。……でも『やっぱ無理』って二週間も経たず別れていましたけど」
「……なるほど」
尊さんは涼さんのベッドに腰かけ、頷く。
「恵が言うには『男が自分を好きになって、自分を気にしてメッセージを送ってくるのを見るだけで、気持ち悪くて堪らない』みたいです。……でも基本的な恋愛対象が男性なのは確かだし、私の事が好きだと言っても、セックスしたいとまでは思わないみたいです」
それを聞き、尊さんは少し安堵したのか小さく溜め息をつく。
「私については、『ただ一緒にいて、時々抱き締めて、大切にしたいし、大切にされたい』という望みを持っているみたいで、私もなるべくその希望に添えるようにしています。たまに酔っぱらった時とか、気持ちが盛り上がって触れるだけのキスをされる事もあったけど、尊さんと付き合うようになってからはなくなりました」
彼は息を吐き、私の腕を引っ張ると自分の膝の上に座らせた。
「……中村さんも複雑な過去持ちだし、ちゃんと男に目を向けられるようになるまで、時間がかかったのかもな。……異性にトラウマができると、どうしてもフィルターができる。『こいつは自分を傷つけるかもしれない』っていう怯えが根底にあって、異性と付き合う事に慎重になると思う。……でも、涼は違うって本能で分かったのかな」
「……だといいな」
私はお腹の前に回った尊さんの手を何とはなしに触り、親友を想って小さく笑う。
「涼さんが応える見込みはどれぐらいですか?」
尋ねると、尊さんは「うーん……」と少し考えてから言った。
「正直、涼は経験豊富だ。学生時代の段階で大体の事は済ませたし、女性側からのアプローチが多すぎて、供給過多になって〝満腹〟状態が続いている。今まであいつに近づいた女性が求めるのは、ハイクラスのデートをして美形の彼氏に愛される事だった。『十人と付き合えば、十人ともがそうだった』って言ってた。だから『もしかしたら例外がいるかもしれないけど、もうあまり自分からは求めたくない』と言って、女性と付き合う以外に楽しい事を求めるようになった」
想像通りの事を聞き、私はコクンと頷く。
「だからその分、初対面であいつを嫌がる中村さんに興味を持ったのは事実だ。今日、アトラクションを回っている間も、俺にちょいちょい『彼女、どんな人?』って聞いてたよ。深い話は避けたけど、基本的な情報は教えておいた。……で、言い方は悪いけど、今まで涼が避けてきたタイプの女性じゃないと分かって、余計に興味を抱いたみたいだった」
「恵って都会でキラキラしてるより、ソロキャンするの好きですもんね。男性に媚びるタイプじゃないですし」
タイミングが合う時は私も恵とキャンプするけれど、私に用事がある時は一人でフラッとあちこち行っているみたいだ。
「……うまくいくといいなぁ。涼はその気になったらいつでも結婚相手を見つけられるけど、『なるべく気の合う人を見つけたい』とは言っていたから」
「ですねぇ……」
頷くと、「そろそろレストランに向かうか」と言われて部屋を出た。
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