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十年ぶりの再会 編
スッキリできましたか?
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「二人とも、そろそろ自分を許していいんですよ」
彼の言葉を聞き、尊さんも宮本さんもハッとした表情をする。
「二人とも、篠宮怜香の被害者です。そしてお互いに『傷つけてしまった』と深く後悔している。……でもこうして遺恨を解決した以上、もう引きずるのはやめましょう」
知樹さんに言われ、尊さんと宮本さんは見つめ合ったあとに、ぎこちなく笑った。
「そうですよ! あとは幸せに向かってアクセル全開なんです。『ごめんなさい』を言ったあとは、楽しい事だけ考えないと」
トントンと尊さんの背中を叩いて言うと、彼はクシャッと笑った。
「そうだな」
私たちの様子を見て、宮本さんは安心したように笑った。
「朱里さんはそうやって、速水くんを引っ張り上げてくれたんだね」
彼女に言われ、私は微笑んで首を左右に振った。
「お互いです。私もどん底にいた時、尊さんに救われました」
「そっか。お互い、なくてはならない存在なんだね。私たちもだよ」
そう言って宮本さんは夫の腕を組み、知樹さんは照れくさそうに笑った。
そのあと、名残惜しいながらも私たちはお別れしてホテルに戻る事にした。
最後に一応、お互いの住所や電話番号、メールアドレスなどの連絡先を交換する。
SNSのIDではなく、あえてアナログ寄りな情報というのが、今の私たちにとって適切な距離感なんだろう。
そして改めて、今後は〝夏目凜〟〝篠宮尊〟として呼び合う事を決めた。
知樹さんは近くのコインパーキングに車を停めていたらしく、駅まで送ってくれた。
「じゃあ、元気で」
「ありがとうございました」
車の中から手を振る夏目夫妻に、私たちも「ありがとうございました」と手を振り返す。
ミニバンが走り去ったあと、私はテールランプを目で追いかける。
「行こう」
尊さんに言われ、私は駅直結のホテルに向かって歩き出した。
**
「はぁ……」
観光して疲れたのもあるし、気疲れと言ったら失礼かもしれないけれど、精神的にも疲労を感じて私はベッドに倒れ込む。
尊さんも同様にベッドに仰向けになり、溜め息をつく。
そのまま、お互い黙っていたけれど、私はモソリと尊さんのほうを見て尋ねた。
「スッキリできましたか?」
「……そうだな。ずっと胸の奥でつかえていたものは取れた気がする」
「なら良かった」
私は微笑み、足をすりあわせて靴を脱ぎ、ズリズリと移動して仰向けになる。
「……朱里はどうだった? 嫌じゃなかったか?」
旅行前に不安定になっていたのを思い出してか、尊さんは気を遣ってくれる。
「うん、大丈夫ですよ」
私は返事をしたあと、天井を見ながらポツポツと自分の想いを語っていく。
「……確かに、尊さんがただ一人好きになった素敵な人だから、『敵わないんじゃないか』って不安になっていました。私だったら凜さんみたいな目に遭って、同じような結論を出せたか分かりません。……だから余計に彼女を尊敬したし、魅力的な人だなって思いました。……美人だし」
「俺の今の好みは、朱里みたいな女だけど」
「んふふ、ありがとうございます」
私は笑ったあと、溜め息をついて目を閉じる。
「……不安だったけど、彼女の側には知樹さんがいて、二人の絆はしっかりしている。お子さんもいて、凜さんはここで幸せに暮らしているんだと分かりました。……もしも彼女が尊さんを元彼扱いしたり、私にちょっとでもマウントをとったら、嫌な気持ちになっていたと思います。……でも彼女はそんな様子、おくびにも出さなかった。本当に人に配慮できる、素敵な人です」
そこで私は目を開け、尊さんのほうを向いて笑いかけた。
「だから、好きになっちゃいました。さっぱり爽やかな人で、一緒にいると心地いい。凜さんは、私に対して尊さんの今のパートナーだから……と遠慮を持っているかもしれないけど、少なくとも私は彼女さえOKなら仲良くしたい。そう感じました」
尊さんは少しの間黙っていたけど、静かに息を吐く。
「……そう思ってもらえて良かった。……でも、本来なら与えるべきじゃない負担も感じさせてしまったし、今回は付き合わせて悪かった」
「ううん! 半分ぐらいは本場のお好み焼きが目的でしたし」
そう言うと、尊さんは「ぶふっ」と噴き出して笑い始めた。
彼の言葉を聞き、尊さんも宮本さんもハッとした表情をする。
「二人とも、篠宮怜香の被害者です。そしてお互いに『傷つけてしまった』と深く後悔している。……でもこうして遺恨を解決した以上、もう引きずるのはやめましょう」
知樹さんに言われ、尊さんと宮本さんは見つめ合ったあとに、ぎこちなく笑った。
「そうですよ! あとは幸せに向かってアクセル全開なんです。『ごめんなさい』を言ったあとは、楽しい事だけ考えないと」
トントンと尊さんの背中を叩いて言うと、彼はクシャッと笑った。
「そうだな」
私たちの様子を見て、宮本さんは安心したように笑った。
「朱里さんはそうやって、速水くんを引っ張り上げてくれたんだね」
彼女に言われ、私は微笑んで首を左右に振った。
「お互いです。私もどん底にいた時、尊さんに救われました」
「そっか。お互い、なくてはならない存在なんだね。私たちもだよ」
そう言って宮本さんは夫の腕を組み、知樹さんは照れくさそうに笑った。
そのあと、名残惜しいながらも私たちはお別れしてホテルに戻る事にした。
最後に一応、お互いの住所や電話番号、メールアドレスなどの連絡先を交換する。
SNSのIDではなく、あえてアナログ寄りな情報というのが、今の私たちにとって適切な距離感なんだろう。
そして改めて、今後は〝夏目凜〟〝篠宮尊〟として呼び合う事を決めた。
知樹さんは近くのコインパーキングに車を停めていたらしく、駅まで送ってくれた。
「じゃあ、元気で」
「ありがとうございました」
車の中から手を振る夏目夫妻に、私たちも「ありがとうございました」と手を振り返す。
ミニバンが走り去ったあと、私はテールランプを目で追いかける。
「行こう」
尊さんに言われ、私は駅直結のホテルに向かって歩き出した。
**
「はぁ……」
観光して疲れたのもあるし、気疲れと言ったら失礼かもしれないけれど、精神的にも疲労を感じて私はベッドに倒れ込む。
尊さんも同様にベッドに仰向けになり、溜め息をつく。
そのまま、お互い黙っていたけれど、私はモソリと尊さんのほうを見て尋ねた。
「スッキリできましたか?」
「……そうだな。ずっと胸の奥でつかえていたものは取れた気がする」
「なら良かった」
私は微笑み、足をすりあわせて靴を脱ぎ、ズリズリと移動して仰向けになる。
「……朱里はどうだった? 嫌じゃなかったか?」
旅行前に不安定になっていたのを思い出してか、尊さんは気を遣ってくれる。
「うん、大丈夫ですよ」
私は返事をしたあと、天井を見ながらポツポツと自分の想いを語っていく。
「……確かに、尊さんがただ一人好きになった素敵な人だから、『敵わないんじゃないか』って不安になっていました。私だったら凜さんみたいな目に遭って、同じような結論を出せたか分かりません。……だから余計に彼女を尊敬したし、魅力的な人だなって思いました。……美人だし」
「俺の今の好みは、朱里みたいな女だけど」
「んふふ、ありがとうございます」
私は笑ったあと、溜め息をついて目を閉じる。
「……不安だったけど、彼女の側には知樹さんがいて、二人の絆はしっかりしている。お子さんもいて、凜さんはここで幸せに暮らしているんだと分かりました。……もしも彼女が尊さんを元彼扱いしたり、私にちょっとでもマウントをとったら、嫌な気持ちになっていたと思います。……でも彼女はそんな様子、おくびにも出さなかった。本当に人に配慮できる、素敵な人です」
そこで私は目を開け、尊さんのほうを向いて笑いかけた。
「だから、好きになっちゃいました。さっぱり爽やかな人で、一緒にいると心地いい。凜さんは、私に対して尊さんの今のパートナーだから……と遠慮を持っているかもしれないけど、少なくとも私は彼女さえOKなら仲良くしたい。そう感じました」
尊さんは少しの間黙っていたけど、静かに息を吐く。
「……そう思ってもらえて良かった。……でも、本来なら与えるべきじゃない負担も感じさせてしまったし、今回は付き合わせて悪かった」
「ううん! 半分ぐらいは本場のお好み焼きが目的でしたし」
そう言うと、尊さんは「ぶふっ」と噴き出して笑い始めた。
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