【R-18・連載版】部長と私の秘め事

臣桜

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十年ぶりの再会 編

スッキリできましたか?

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「二人とも、そろそろ自分を許していいんですよ」

 彼の言葉を聞き、尊さんも宮本さんもハッとした表情をする。

「二人とも、篠宮怜香の被害者です。そしてお互いに『傷つけてしまった』と深く後悔している。……でもこうして遺恨を解決した以上、もう引きずるのはやめましょう」

 知樹さんに言われ、尊さんと宮本さんは見つめ合ったあとに、ぎこちなく笑った。

「そうですよ! あとは幸せに向かってアクセル全開なんです。『ごめんなさい』を言ったあとは、楽しい事だけ考えないと」

 トントンと尊さんの背中を叩いて言うと、彼はクシャッと笑った。

「そうだな」

 私たちの様子を見て、宮本さんは安心したように笑った。

「朱里さんはそうやって、速水くんを引っ張り上げてくれたんだね」

 彼女に言われ、私は微笑んで首を左右に振った。

「お互いです。私もどん底にいた時、尊さんに救われました」

「そっか。お互い、なくてはならない存在なんだね。私たちもだよ」

 そう言って宮本さんは夫の腕を組み、知樹さんは照れくさそうに笑った。





 そのあと、名残惜しいながらも私たちはお別れしてホテルに戻る事にした。

 最後に一応、お互いの住所や電話番号、メールアドレスなどの連絡先を交換する。

 SNSのIDではなく、あえてアナログ寄りな情報というのが、今の私たちにとって適切な距離感なんだろう。

 そして改めて、今後は〝夏目凜〟〝篠宮尊〟として呼び合う事を決めた。

 知樹さんは近くのコインパーキングに車を停めていたらしく、駅まで送ってくれた。

「じゃあ、元気で」

「ありがとうございました」

 車の中から手を振る夏目夫妻に、私たちも「ありがとうございました」と手を振り返す。

 ミニバンが走り去ったあと、私はテールランプを目で追いかける。

「行こう」

 尊さんに言われ、私は駅直結のホテルに向かって歩き出した。



**



「はぁ……」

 観光して疲れたのもあるし、気疲れと言ったら失礼かもしれないけれど、精神的にも疲労を感じて私はベッドに倒れ込む。

 尊さんも同様にベッドに仰向けになり、溜め息をつく。

 そのまま、お互い黙っていたけれど、私はモソリと尊さんのほうを見て尋ねた。

「スッキリできましたか?」

「……そうだな。ずっと胸の奥でつかえていたものは取れた気がする」

「なら良かった」

 私は微笑み、足をすりあわせて靴を脱ぎ、ズリズリと移動して仰向けになる。

「……朱里はどうだった? 嫌じゃなかったか?」

 旅行前に不安定になっていたのを思い出してか、尊さんは気を遣ってくれる。

「うん、大丈夫ですよ」

 私は返事をしたあと、天井を見ながらポツポツと自分の想いを語っていく。

「……確かに、尊さんがただ一人好きになった素敵な人だから、『敵わないんじゃないか』って不安になっていました。私だったら凜さんみたいな目に遭って、同じような結論を出せたか分かりません。……だから余計に彼女を尊敬したし、魅力的な人だなって思いました。……美人だし」

「俺の今の好みは、朱里みたいな女だけど」

「んふふ、ありがとうございます」

 私は笑ったあと、溜め息をついて目を閉じる。

「……不安だったけど、彼女の側には知樹さんがいて、二人の絆はしっかりしている。お子さんもいて、凜さんはここで幸せに暮らしているんだと分かりました。……もしも彼女が尊さんを元彼扱いしたり、私にちょっとでもマウントをとったら、嫌な気持ちになっていたと思います。……でも彼女はそんな様子、おくびにも出さなかった。本当に人に配慮できる、素敵な人です」

 そこで私は目を開け、尊さんのほうを向いて笑いかけた。

「だから、好きになっちゃいました。さっぱり爽やかな人で、一緒にいると心地いい。凜さんは、私に対して尊さんの今のパートナーだから……と遠慮を持っているかもしれないけど、少なくとも私は彼女さえOKなら仲良くしたい。そう感じました」

 尊さんは少しの間黙っていたけど、静かに息を吐く。

「……そう思ってもらえて良かった。……でも、本来なら与えるべきじゃない負担も感じさせてしまったし、今回は付き合わせて悪かった」

「ううん! 半分ぐらいは本場のお好み焼きが目的でしたし」

 そう言うと、尊さんは「ぶふっ」と噴き出して笑い始めた。
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