【R-18】魔王の生贄に選ばれましたが、思いのほか溺愛されました

臣桜

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魔王の生贄に選ばれたようです

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 青空に子供たちの声が響き、私の世界は祝福に包まれているように思えた。

 シスターの作ってくれたケーキはおいしくて、ささやかながらのご馳走は私たち孤児院の子供に一時の盛り上がりを与えてくれる。

「誕生日おめでとう! アメリア!」

 私のことを姉のように慕ってくれているリジーが花冠を作ってくれ、その厚意に私は笑顔で応える。

「ありがとう、リジー! 私今日はお姫さまになれた気分よ!」

 辺境の村にある小さな修道院は、孤児院もかねている。

 そこで私、アメリア・アンナ・マリアは、本日十八の誕生日を迎えた。

 生まれた時から捨て子という、孤児オブ孤児の私だけれど、優しいシスターに拾われて「愛される者」という意味の名前も与えられた。

 神を信じるようにとしつけられながら、この歳までスクスク育ててもらえた。

 名前と孤児である事とのくい違いは、ややありそうな気もしないでもない。
 でも私は自分の名前を気に入っているし、たった今みんなに祝福されてとっても幸せなので、すべて良し!

 村長が特別にと呼んでくれた流しの芸人たちが、楽器を奏でたり目の前で技の細かい切り絵を作ってくれている。

 折りたたまれていた紙が細かくハサミで切られていたかと思うと、目の前でそれが美しいレースになって広がった。
 そのとたん、小さい子たちはキャアッと声をあげて喜んでいた。

 ふふ、よかったなぁ。

 私の誕生日だから私が一番嬉しいつもりだけれど、みんながこうやって喜んでくれていると、この幸せをおすそ分けできたみたいな気持ちになれる。

「みんな! たくさん食べてね!」

 今日からお酒が飲める私は、ブドウ酒をちょっぴり口にしていい気分になっている。

 気が大きくなってそう声を上げた時だった――。

 晴れている空の彼方で太陽がもう一つできたようにピカッと光ったかと思うと、その光はぐんぐんとこっちに飛んでくる。

 ちょっと待って……? 流れ星かしら?

 いや、でも流れ星でもあの光の量にぶつかったら、死んでしまうんじゃないの?

 浮かれていた気持ちはどこへやら、その光を前に棒立ちになっていると、他の子たちがキャーッと悲鳴を上げて混乱しだした。

 和やかな誕生日会は、わけのわからない光の登場で一気に恐慌状態になってしまう。
 ボーッとしていた私も我にかえり、小さい子たちを避難させようと周囲を見た。

 すると夢見がちでいつも一人でフラフラしている子が、修道院の敷地のはずれに一人でいるのを発見した。

「エリカ! 危ないからみんなの所においで!」

 必死になって叫び、私は猛然とダッシュをする。

 下草が生えている上に影が走り、シロツメクサが揺れた。
 流星が落ちてきたかのように辺りは謎の光に照らされ、私は悲鳴を上げながら抱えたエリカを飼育小屋の陰へ突き飛ばした。

「アメリアーッ!」

 遠くで誰かが叫んで、泣いている子もいたような気がする。

 私、これで死ぬんだろうか……?

 目の前に迫りくる光に照らされてそう思った時――。

 光は私にぶつかる寸前でワッと八方に散り、いくつもの小さな光に分かれたそれは私のまわりに何かの模様を刻みつけてゆく。

「何!? 何なの!?」

 私は怯えて自分をかき抱きながら、足元を見る。

 光は草を焦がしながら私の足もとに魔法陣のような『何か』を刻んでゆく。
 最後に私を中心にパァッと青白い光が天へ向かって立ちのぼってゆくと、その謎の光は一気に消えていった。

「なん……なの」

 呆然としてドクドクと鼓動を打つ胸に手を当てると、私はその場にへたり込んだ。

「あれは……」

 私のお祝いに出席してくれていた村の人たちが、顔を見あわせてざわめく。
 彼らは私の足元の模様を見たり指さしているけれど、遠くてなにを言っているのかは分からない。

 けれど彼らの表情から、これが「とても良くないもの」であることだけは分かった。

 やがて神妙な面持ちのシスターがやってきた。

 座り込んでいる私に視線を合わせるようにしゃがみ、私の目を見つめて言う。

「アメリア、あなたは魔王の生贄に選ばれたわ」

 ショック状態にある私は、追い打ちをかけるようなその言葉が、どんな意味を持つのか問いただす余裕はなかった。


 ただ残酷なほど青い空を見上げて、「神よ……」とつぶやくしかできないでいた。
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