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そうして、私とエデンは夫婦になった
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「俺は現在の西の魔王。名はエデンだ」
「エデン!? ……楽園?」
「そう……なるだろう、な。普通は」
あからさまに肩を落とす魔王さま――、エデンさまを見て、私はついクスクスと笑ってしまった。なんだか彼がとっても可愛らしく思えたのだ。
「おかしいだろう? 魔王なのに名前がエデンだなんて。悪魔の頂点たる魔王も、幼いころは名前で悩んでいたこともある。
さて、勝負だぞアメリア。俺がこのゲームに勝ったら、取りあえずは妻になってもらう」
「えぇ!?」
気が緩んでいた所でとんでもないことを言われ、私は思わず、すっとんきょうな声を上げていた。
結婚! ですって!? 魔王さまと!?
「いつまでも魔王の客人でいる訳にもいくまい」
「そ……それもそうなのですが……」
ほとほと困ってしまった私は、胸の前で赤毛をクルクルと指先に巻きつける。
「では等価交換といこう。妻になれば、この城を自由に歩いていいし、望む時に望むことをさせてやろう」
「うーん……。はい……」
提示された内容は、ほんらい人に許された自由な行動だ。でも私が魔王さまのお城に生贄として来たことを考えると、それは本来なら手の届かないほどの優遇に思える。
かくして私は魔王さまと記念すべき一戦目をし、見事に負けたのだった。
顔が良くて頭もいいとは、さすが魔王さまです。
**
その夜は与えられた部屋でお姫さまのようなナイトドレスを着て、フカフカのベッドで眠った。
翌朝はどこで焼いたのか焼き立てのパンに新鮮なサラダ、美味しいスープにミルクという朝食だ。
いつのまにか部屋にあったトルソーには、どこかの国のお姫さまが着るような立派なウェディングドレス――けれど黒――が着せられていた。
この早さでドレスを用意できるのも魔法の力なのよね。世の中のお針子さんは職を失いそうだわ。
ドレスを見ながら思ったのは、これに腕を通してしまえばもう元には戻れないこと。
元に戻れないといっても、空中に浮いたお城にいるなら戻りようもないんだけれど。
「不安ですか?」
それを察したのか、イグニスさんが私を見てくる。
「……正直に言えば不安がないとは言い切れません。魔王さまがいい方だと分かっていても、まだ怖いと思ってしまう自分がいるんです」
「環境が変わって不安になる気持ちはお察しします。ですがときには環境もろともご自身を変える勇気も必要です。
なにより正式に魔王さまの妻となれば、あなたはこの城の女主になり、私の主にもなります。そうすればこの城でも過ごしやすくなるのではないですか?」
きっとイグニスさんの言う通り、このまま軟禁のような生活を送り続けるのなら、いつか自分が爆発するなり病んでしまうのは目に見えている。
だったら今はいうことを聞いて、ある程度の自由を手に入れた方がいいのではないかと思った。
生贄として村を出た以上戻れないし、物理的にも戻れない。
加えて私には母さんを探したいという目標がある。突然消えてしまった母さんを探せるのは、人ならざる力を持った魔王さましかいない気がする。
だから私は、魔王さまとの結婚を決意した。
**
そして、お城の一番上の空中庭園のようなホールで、天井にあるステンドグラスから七色の光が差し込むなか、私と魔王さまは式を挙げた。
立ち会うのはイグニスさんだけという状況で、指輪の交換をしてキスをする。
彼の整いすぎる顔が近づくとき、私は体ごと心臓が爆発するのではと思った。
けれど少し冷たい指先が私の唇をなぞったあとに訪れたのは、柔らかい唇の感触だった。
初めてキスというものをして、男性の――魔王さまの唇がこんなにも柔らかいということに感動した私は、青い目をパチクリと見開いたままという失態を犯した。
「……目を開いたままだったのか」
「……申し訳ございません」
間違えていたのかな? と思うと恥ずかしく、うつむきかけた私の顎を魔王さまの長い指が捉え、またキスをする。
「では今日よりよろしく頼む。わが妻よ」
「は……、はい。魔王さま」
「夫なのだから名前で呼べ」
「エ……エデンさま」
「様はいらん」
「エデン」
「よろしい」
そうして、私とエデンは夫婦になった。
「エデン!? ……楽園?」
「そう……なるだろう、な。普通は」
あからさまに肩を落とす魔王さま――、エデンさまを見て、私はついクスクスと笑ってしまった。なんだか彼がとっても可愛らしく思えたのだ。
「おかしいだろう? 魔王なのに名前がエデンだなんて。悪魔の頂点たる魔王も、幼いころは名前で悩んでいたこともある。
さて、勝負だぞアメリア。俺がこのゲームに勝ったら、取りあえずは妻になってもらう」
「えぇ!?」
気が緩んでいた所でとんでもないことを言われ、私は思わず、すっとんきょうな声を上げていた。
結婚! ですって!? 魔王さまと!?
「いつまでも魔王の客人でいる訳にもいくまい」
「そ……それもそうなのですが……」
ほとほと困ってしまった私は、胸の前で赤毛をクルクルと指先に巻きつける。
「では等価交換といこう。妻になれば、この城を自由に歩いていいし、望む時に望むことをさせてやろう」
「うーん……。はい……」
提示された内容は、ほんらい人に許された自由な行動だ。でも私が魔王さまのお城に生贄として来たことを考えると、それは本来なら手の届かないほどの優遇に思える。
かくして私は魔王さまと記念すべき一戦目をし、見事に負けたのだった。
顔が良くて頭もいいとは、さすが魔王さまです。
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その夜は与えられた部屋でお姫さまのようなナイトドレスを着て、フカフカのベッドで眠った。
翌朝はどこで焼いたのか焼き立てのパンに新鮮なサラダ、美味しいスープにミルクという朝食だ。
いつのまにか部屋にあったトルソーには、どこかの国のお姫さまが着るような立派なウェディングドレス――けれど黒――が着せられていた。
この早さでドレスを用意できるのも魔法の力なのよね。世の中のお針子さんは職を失いそうだわ。
ドレスを見ながら思ったのは、これに腕を通してしまえばもう元には戻れないこと。
元に戻れないといっても、空中に浮いたお城にいるなら戻りようもないんだけれど。
「不安ですか?」
それを察したのか、イグニスさんが私を見てくる。
「……正直に言えば不安がないとは言い切れません。魔王さまがいい方だと分かっていても、まだ怖いと思ってしまう自分がいるんです」
「環境が変わって不安になる気持ちはお察しします。ですがときには環境もろともご自身を変える勇気も必要です。
なにより正式に魔王さまの妻となれば、あなたはこの城の女主になり、私の主にもなります。そうすればこの城でも過ごしやすくなるのではないですか?」
きっとイグニスさんの言う通り、このまま軟禁のような生活を送り続けるのなら、いつか自分が爆発するなり病んでしまうのは目に見えている。
だったら今はいうことを聞いて、ある程度の自由を手に入れた方がいいのではないかと思った。
生贄として村を出た以上戻れないし、物理的にも戻れない。
加えて私には母さんを探したいという目標がある。突然消えてしまった母さんを探せるのは、人ならざる力を持った魔王さましかいない気がする。
だから私は、魔王さまとの結婚を決意した。
**
そして、お城の一番上の空中庭園のようなホールで、天井にあるステンドグラスから七色の光が差し込むなか、私と魔王さまは式を挙げた。
立ち会うのはイグニスさんだけという状況で、指輪の交換をしてキスをする。
彼の整いすぎる顔が近づくとき、私は体ごと心臓が爆発するのではと思った。
けれど少し冷たい指先が私の唇をなぞったあとに訪れたのは、柔らかい唇の感触だった。
初めてキスというものをして、男性の――魔王さまの唇がこんなにも柔らかいということに感動した私は、青い目をパチクリと見開いたままという失態を犯した。
「……目を開いたままだったのか」
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間違えていたのかな? と思うと恥ずかしく、うつむきかけた私の顎を魔王さまの長い指が捉え、またキスをする。
「では今日よりよろしく頼む。わが妻よ」
「は……、はい。魔王さま」
「夫なのだから名前で呼べ」
「エ……エデンさま」
「様はいらん」
「エデン」
「よろしい」
そうして、私とエデンは夫婦になった。
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