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懺悔
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「すまない。ありがたくいただく」
「アメリア、傷は治していただいたの? 大丈夫?」
「あ……、はい」
シスターに言われて額に手を当てると、エデンに舐められて少し濡れているものの、傷跡はないし押してみても痛みはない。
「どうもありがとうございます。魔王さま。……それでアメリア、何がどうなったの? どうして私に謝るの」
シスターは通路をはさんで反対側に座り、私に優しく問う。
私は隣に座ったエデンを気にしつつ、心の底にあるものを少しずつ打ちあけた。
生贄として魔王の城に行けば、素晴らしい環境ととても優しい魔王が待っていて、私は妻として迎えられたこと。
それに応えたいと思ったけれど、私は孤児であるコンプレックスから自信が持てず逃げ出してしまったこと。
村に戻ったらみんなが豹変して追われてしまったこと。
エデンに助けられて――神さまの前で、イチャイチャしてしまったこと。
色んなことが凝縮された濃厚な夜に私は混乱していた。
けれどいつもシスターに悪戯の反省をしている時のように心の中で懺悔しながら伝えていると、自分の心が整理されていくのを感じていた。
少し沈黙があって、私はステンドガラスから差しこむ冴え冴えとした月の光を見る。
が、最初に沈黙を破ったのはエデンだった。
「イグニスから話は聞いた。俺がお前の心の闇をカバーしきれず、すまない。お前を大切に思っていることを……もっとストレートに伝えれば良かったのか……。お前が孤児だということを俺はなにも気にしていないし、この孤児院で愛されて育ったのならお前はきっといい母になれる。それでは駄目か?」
「でも私……、ただの孤児の村娘なんです。私がエデンのようなすばらしい人に愛される理由が分からないんです」
私の心の闇は――コンプレックスは容易には晴れない。
自信を持ちたいと願い続けても、十八年つちかった劣等感はなかなか私を解放してくれないのだ。
「では――、俺のことは信じられぬか?」
「エデンを?」
「俺が人を襲わないで守っていること。生贄を殺すために要求したのではないこと。お前を愛していると言って妻にし、その肌を愛でたこと……。全部、信じられないか?」
紫暗に戻ったエデンの目は私を優しく見つめ、私を怖がらせないためのその色を見た瞬間、私は無意識に彼を傷つけていたかもしれないことに気がついた。
本来なら角や羽、尻尾を持っていて血の色の目が自然体なエデンなのに、ここまで人の姿に近づく努力をしてまで、私のことを思ってくれている。
そんな真心があって、彼を優しいと感じたことは今まで数えきれないぐらいにあったのに――、私はなにを考えていたんだろう。
初対面の時だって、気絶したふりをした私を放置しないで抱き起してくれた。
その時から彼の優しさは始まっていたのに――。
ううん。ずっと見守ってくれていたと言っていたのに。
彼はこの大陸ごと、その優しさで包んでいたのに――。
「……信じます。あなたが優しいことや、あなたが私を想ってくださっていること、信じます」
「ではその俺が惚れたお前のことも、お前自身がちゃんと信じてやるんだ」
エデンは優しく笑い、大きな手が私の頭をわしわしと撫でてくれる。
「うーっ……」
不覚にもその優しさに私は泣き出してしまい、ココアをベンチに置いてエデンにすがりついた。そんな私を、シスターと神さまが月明りのなか見守ってくれていた。
**
「魔王さま、この子をこれからもお願いしてもよろしいでしょうか? この村は、この子にとって少し住みづらい場所になってしまったかもしれません。私や孤児院の子供たちは国からの援助を受けた存在ですが、生贄とされて村から一度出た身であるアメリアは、辛い事実ですが村人から受け入れられないかもしれません」
私が泣き止んだあと、シスターはそう言ってエデンに頭を下げる。
彼女の言う通りつらい事実だけれど、私ももう村の人たちと元通りに接することができるとは思えない。
彼らの優しさが上辺だけではなかったのは分かっているけれど、心の底から私を想ってくれている人は案外少ないということも知ってしまった。
「アメリア、傷は治していただいたの? 大丈夫?」
「あ……、はい」
シスターに言われて額に手を当てると、エデンに舐められて少し濡れているものの、傷跡はないし押してみても痛みはない。
「どうもありがとうございます。魔王さま。……それでアメリア、何がどうなったの? どうして私に謝るの」
シスターは通路をはさんで反対側に座り、私に優しく問う。
私は隣に座ったエデンを気にしつつ、心の底にあるものを少しずつ打ちあけた。
生贄として魔王の城に行けば、素晴らしい環境ととても優しい魔王が待っていて、私は妻として迎えられたこと。
それに応えたいと思ったけれど、私は孤児であるコンプレックスから自信が持てず逃げ出してしまったこと。
村に戻ったらみんなが豹変して追われてしまったこと。
エデンに助けられて――神さまの前で、イチャイチャしてしまったこと。
色んなことが凝縮された濃厚な夜に私は混乱していた。
けれどいつもシスターに悪戯の反省をしている時のように心の中で懺悔しながら伝えていると、自分の心が整理されていくのを感じていた。
少し沈黙があって、私はステンドガラスから差しこむ冴え冴えとした月の光を見る。
が、最初に沈黙を破ったのはエデンだった。
「イグニスから話は聞いた。俺がお前の心の闇をカバーしきれず、すまない。お前を大切に思っていることを……もっとストレートに伝えれば良かったのか……。お前が孤児だということを俺はなにも気にしていないし、この孤児院で愛されて育ったのならお前はきっといい母になれる。それでは駄目か?」
「でも私……、ただの孤児の村娘なんです。私がエデンのようなすばらしい人に愛される理由が分からないんです」
私の心の闇は――コンプレックスは容易には晴れない。
自信を持ちたいと願い続けても、十八年つちかった劣等感はなかなか私を解放してくれないのだ。
「では――、俺のことは信じられぬか?」
「エデンを?」
「俺が人を襲わないで守っていること。生贄を殺すために要求したのではないこと。お前を愛していると言って妻にし、その肌を愛でたこと……。全部、信じられないか?」
紫暗に戻ったエデンの目は私を優しく見つめ、私を怖がらせないためのその色を見た瞬間、私は無意識に彼を傷つけていたかもしれないことに気がついた。
本来なら角や羽、尻尾を持っていて血の色の目が自然体なエデンなのに、ここまで人の姿に近づく努力をしてまで、私のことを思ってくれている。
そんな真心があって、彼を優しいと感じたことは今まで数えきれないぐらいにあったのに――、私はなにを考えていたんだろう。
初対面の時だって、気絶したふりをした私を放置しないで抱き起してくれた。
その時から彼の優しさは始まっていたのに――。
ううん。ずっと見守ってくれていたと言っていたのに。
彼はこの大陸ごと、その優しさで包んでいたのに――。
「……信じます。あなたが優しいことや、あなたが私を想ってくださっていること、信じます」
「ではその俺が惚れたお前のことも、お前自身がちゃんと信じてやるんだ」
エデンは優しく笑い、大きな手が私の頭をわしわしと撫でてくれる。
「うーっ……」
不覚にもその優しさに私は泣き出してしまい、ココアをベンチに置いてエデンにすがりついた。そんな私を、シスターと神さまが月明りのなか見守ってくれていた。
**
「魔王さま、この子をこれからもお願いしてもよろしいでしょうか? この村は、この子にとって少し住みづらい場所になってしまったかもしれません。私や孤児院の子供たちは国からの援助を受けた存在ですが、生贄とされて村から一度出た身であるアメリアは、辛い事実ですが村人から受け入れられないかもしれません」
私が泣き止んだあと、シスターはそう言ってエデンに頭を下げる。
彼女の言う通りつらい事実だけれど、私ももう村の人たちと元通りに接することができるとは思えない。
彼らの優しさが上辺だけではなかったのは分かっているけれど、心の底から私を想ってくれている人は案外少ないということも知ってしまった。
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