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秀真とのデート
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「しゅ、秀真さんも格好いいですよ」
「ありがとうございます」
二人は札幌駅で待ち合わせをして、時刻は昼前なのでこれから駅中のレストランに入ってランチをとろうか、という話になった。
ひとまず札幌駅に直結している百貨店に入り、レストラン街に向かう。
フロアを一通り回ったあと、秀真が「うなぎ、好きですか?」と尋ねてきた。
「大好きです」
「じゃあ、うなぎにしましょうか」
彼は即決してしまい、二人で暖簾をくぐって店内に入る。
やがて店員に席に案内され、おしぼりで手を拭いた。
「洋子さんはその後お元気なんですね?」
「はい。いつもよりペースを落としていますが、日課のウォーキングもまた始めたそうです。『体力がないと何も始まらない』って」
「確かに。食事と運動で体力をつけるのは、何より大事です」
その後、しばらく洋子の話をし、一旦会話が収まる。
「花音さんはどう過ごしてましたか?」
「え?」
急に自分の話になり、花音はドキッと胸を高鳴らせる。
「家族が手術するとなれば心配でしょうし、心身共に疲れていないか東京から心配していました」
そう言う秀真の表情は真剣だ。
「お気遣いありがとうございます。手術についてはお医者様にお任せするしかないですし、私はただ待ってるしかできません。……ただ、祖母が無事に戻って来た時はホッとしましたね」
秀真は花音を見て、優しく微笑む。
そして手を伸ばし、ポンポンと花音の頭を撫でてきた。
「頑張りましたね」
(わ……っ)
男性から〝頭ポンポン〟などされた事がなく、花音は分かりやすく赤面してゆく。
「頑張ったご褒美にうなぎをご馳走しますから、思う存分食べてください」
悪戯っぽく笑った秀真を見て、花音は胸の高鳴りを隠す事ができない。
そのあとせっかくうな重と肝吸いが出たというのに、味も、会話の内容も頭にろくに留まらなかった。
「実は、札幌に別宅があるんです。たまに使う程度なんですが、家に行けばゆっくり話せると思いますが、どうします? 二人きりが嫌なら、もちろん外で話しても構いません」
食事が終わったあと秀真に提案され、花音は驚いた。
「札幌に家があるんですね? 凄い……」
「ええ。祖父の物なんですが。宮の森にあります」
宮の森と言えば、札幌市中央区の中でも高級住宅街として有名だ。
すぐ近くには北海道神宮のある円山公園があるし、星つきのフレンチレストランなどもある。
(正直、家で二人きりっていうのは緊張するけど……。でも、このまま外で飲食しても、秀真さんばかりにお金を使わせてしまう)
最初に出会った時のタクシー代からだが、いつも秀真ばかり金を払っていて、花音はまともに支払えていなかった。
それが心苦しく、自宅でならもう少し気軽に話せるかもと思った。
「分かりました。ぜひお邪魔したいと思います」
「じゃあ、移動しましょうか」
最初に言った通り、うな重代は秀真が払ってくれた。
礼を言って百貨店を出て、札幌駅前からタクシーに乗る。
途中、秀真は「札幌は京都みたいに何条何丁目と碁盤の目にできているから、比較的地理を覚えやすいですよね」と言っていた。
花音からすれば、憧れの京都と同じと言われるのが恐縮で、札幌民の代表でもないのに照れてしまう。
やがてタクシーは十五分ほどで宮の森に着き、閑静な住宅街の中にある豪邸前に着いた。
中央区という土地柄、家々は密集しているように建っている。
そんな中、瀬ノ尾家の別邸は広い庭付きの戸建てだ。
家そのものも大きめで、立派な邸宅と言っていい。秀真は玄関前でキーケースの中から「どれだったかな」と鍵を探し、少ししてからこの家の鍵で玄関を開いた。
「どうぞ」
招かれて中に入ると、別邸と言ってしばらく来ていない割には、ちっとも埃っぽくない。
「定期的に掃除やメンテナンスを頼んでいるので、それほど傷んでいないと思います。でも家は人が住まないと駄目になりやすいって言いますからね。なるべく来たいとは思っているんですが……」
「お邪魔します……」
靴を脱ぐと、秀真が出してくれたスリッパに足を入れる。
「ありがとうございます」
二人は札幌駅で待ち合わせをして、時刻は昼前なのでこれから駅中のレストランに入ってランチをとろうか、という話になった。
ひとまず札幌駅に直結している百貨店に入り、レストラン街に向かう。
フロアを一通り回ったあと、秀真が「うなぎ、好きですか?」と尋ねてきた。
「大好きです」
「じゃあ、うなぎにしましょうか」
彼は即決してしまい、二人で暖簾をくぐって店内に入る。
やがて店員に席に案内され、おしぼりで手を拭いた。
「洋子さんはその後お元気なんですね?」
「はい。いつもよりペースを落としていますが、日課のウォーキングもまた始めたそうです。『体力がないと何も始まらない』って」
「確かに。食事と運動で体力をつけるのは、何より大事です」
その後、しばらく洋子の話をし、一旦会話が収まる。
「花音さんはどう過ごしてましたか?」
「え?」
急に自分の話になり、花音はドキッと胸を高鳴らせる。
「家族が手術するとなれば心配でしょうし、心身共に疲れていないか東京から心配していました」
そう言う秀真の表情は真剣だ。
「お気遣いありがとうございます。手術についてはお医者様にお任せするしかないですし、私はただ待ってるしかできません。……ただ、祖母が無事に戻って来た時はホッとしましたね」
秀真は花音を見て、優しく微笑む。
そして手を伸ばし、ポンポンと花音の頭を撫でてきた。
「頑張りましたね」
(わ……っ)
男性から〝頭ポンポン〟などされた事がなく、花音は分かりやすく赤面してゆく。
「頑張ったご褒美にうなぎをご馳走しますから、思う存分食べてください」
悪戯っぽく笑った秀真を見て、花音は胸の高鳴りを隠す事ができない。
そのあとせっかくうな重と肝吸いが出たというのに、味も、会話の内容も頭にろくに留まらなかった。
「実は、札幌に別宅があるんです。たまに使う程度なんですが、家に行けばゆっくり話せると思いますが、どうします? 二人きりが嫌なら、もちろん外で話しても構いません」
食事が終わったあと秀真に提案され、花音は驚いた。
「札幌に家があるんですね? 凄い……」
「ええ。祖父の物なんですが。宮の森にあります」
宮の森と言えば、札幌市中央区の中でも高級住宅街として有名だ。
すぐ近くには北海道神宮のある円山公園があるし、星つきのフレンチレストランなどもある。
(正直、家で二人きりっていうのは緊張するけど……。でも、このまま外で飲食しても、秀真さんばかりにお金を使わせてしまう)
最初に出会った時のタクシー代からだが、いつも秀真ばかり金を払っていて、花音はまともに支払えていなかった。
それが心苦しく、自宅でならもう少し気軽に話せるかもと思った。
「分かりました。ぜひお邪魔したいと思います」
「じゃあ、移動しましょうか」
最初に言った通り、うな重代は秀真が払ってくれた。
礼を言って百貨店を出て、札幌駅前からタクシーに乗る。
途中、秀真は「札幌は京都みたいに何条何丁目と碁盤の目にできているから、比較的地理を覚えやすいですよね」と言っていた。
花音からすれば、憧れの京都と同じと言われるのが恐縮で、札幌民の代表でもないのに照れてしまう。
やがてタクシーは十五分ほどで宮の森に着き、閑静な住宅街の中にある豪邸前に着いた。
中央区という土地柄、家々は密集しているように建っている。
そんな中、瀬ノ尾家の別邸は広い庭付きの戸建てだ。
家そのものも大きめで、立派な邸宅と言っていい。秀真は玄関前でキーケースの中から「どれだったかな」と鍵を探し、少ししてからこの家の鍵で玄関を開いた。
「どうぞ」
招かれて中に入ると、別邸と言ってしばらく来ていない割には、ちっとも埃っぽくない。
「定期的に掃除やメンテナンスを頼んでいるので、それほど傷んでいないと思います。でも家は人が住まないと駄目になりやすいって言いますからね。なるべく来たいとは思っているんですが……」
「お邪魔します……」
靴を脱ぐと、秀真が出してくれたスリッパに足を入れる。
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