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通勤路を少し外れた通りに、小洒落たカフェがある。レンガ造りのレトロで落ち着いた内装が素敵なお店だ。
年配のベテランマスターが淹れてくれるブルーマウンテンを飲みながら、ゆっくりと本を読んで過ごす。もちろんブラックだ。
これが日々忙しいOLである私の、休日の過ごし方である。
…ごめんなさい、嘘です。
いや、このお店が素敵なのは本当だ。
ただし私が飲むのは専ら甘いカフェオレであり、これ淹れてくれている気の優しいおじさんがベテランなのかどうかはさして興味がない。
手には外国人作家の名著を持っているが、内容はあまり頭に入ってこない。
入ってきても、主人公の男が想い人へのねちねちしたラブレターのような日記を認めるばかりで、全く面白くない。何だこれ。
しばらくすると、カランカラン、と軽い音が店内に鳴り響く。
一人の青年が入ってきた。
「ああ、いらっしゃい」
その青年は、呼びかけるおじさんの穏やかな声に似合う優しい顔つきをしている。
私がつまらない本を片手にこの場所で貴重な休日を過ごす理由は、彼だ。
半年ほど前からここの常連で、隣町の大学に通う三年生らしい。いつも窓際の定席で、小難しそうな本を読んでいる。
木の椅子に腰掛け、文庫のページをめくる瞬間を眺める。空気は既にカフェオレよりも甘く苦い。これを恋と言わず何と言得よう。
外は穏やかに晴れて、色素の薄い猫っ毛が柔らかな初春の日差しにに透けていた。
つまらない本のページをめくる指先などとうの昔に動かない。
日が傾き、彼が店を出たのを確認すると、私もカフェオレを淹れてくれたマスターに軽く挨拶をして、帰途に着く。今日も不毛で、幸せな一日だった。
あまりに魅惑的な彼の横顔を眺めた日の夜は、自分宛てに手紙を書く。
「彼が好き。狂おしいほど。」
年配のベテランマスターが淹れてくれるブルーマウンテンを飲みながら、ゆっくりと本を読んで過ごす。もちろんブラックだ。
これが日々忙しいOLである私の、休日の過ごし方である。
…ごめんなさい、嘘です。
いや、このお店が素敵なのは本当だ。
ただし私が飲むのは専ら甘いカフェオレであり、これ淹れてくれている気の優しいおじさんがベテランなのかどうかはさして興味がない。
手には外国人作家の名著を持っているが、内容はあまり頭に入ってこない。
入ってきても、主人公の男が想い人へのねちねちしたラブレターのような日記を認めるばかりで、全く面白くない。何だこれ。
しばらくすると、カランカラン、と軽い音が店内に鳴り響く。
一人の青年が入ってきた。
「ああ、いらっしゃい」
その青年は、呼びかけるおじさんの穏やかな声に似合う優しい顔つきをしている。
私がつまらない本を片手にこの場所で貴重な休日を過ごす理由は、彼だ。
半年ほど前からここの常連で、隣町の大学に通う三年生らしい。いつも窓際の定席で、小難しそうな本を読んでいる。
木の椅子に腰掛け、文庫のページをめくる瞬間を眺める。空気は既にカフェオレよりも甘く苦い。これを恋と言わず何と言得よう。
外は穏やかに晴れて、色素の薄い猫っ毛が柔らかな初春の日差しにに透けていた。
つまらない本のページをめくる指先などとうの昔に動かない。
日が傾き、彼が店を出たのを確認すると、私もカフェオレを淹れてくれたマスターに軽く挨拶をして、帰途に着く。今日も不毛で、幸せな一日だった。
あまりに魅惑的な彼の横顔を眺めた日の夜は、自分宛てに手紙を書く。
「彼が好き。狂おしいほど。」
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