タロットチートで生き残る!…ことが出来るかなあ

新和浜 優貴

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本編

89,交渉

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「なっ!?  ……お許しを」
「あ、それは駄目よ。私は構わないけど、アンちゃんが嫌がるだろうから」

  私がぽけーっとしている間に、ダンタリアンがルルリカさんの口の中に手を突っ込んだ。

「何してるの!?」
「自害の阻止よ。ほら、毒みっけ」

  そう言ってダンタリアンは手を引き抜く。黒い粒を指でつまんで、そのまま仮面の下の口に放り込んだ。

「え!  それ毒なんじゃ」
「毒よ?  人にはね。私からしたらビター気味のチョコみたいなものよ。あんまり美味しいものじゃないけどねぇ」
「そ、そうなんだ」

  うーん、相変わらず謎だなあダンタリアンは。悪魔ならみんなこんな感じなのかな。流石に教授も毒を食べたりはしないと思うけど、どうなんだろう。

「それじゃあ改めて……。ルルリカちゃん、あなたはここで何をしてるの?」

  ダンタリアンの質問に黙り込むルルリカさん。さっきより目は虚ろで、表情も放心してるみたいに見えるけど……、大丈夫なのかなこれ。

「んー、この子かなりとんでもない訓練してるわねぇ……。外的刺激だけじゃなくて内的刺激もほとんど無くせるようにしてる」
「どういうこと?」
「簡単に言えば自分の意思で仮死状態になれるって感じかしらね?」
「何それ!?  大変じゃん!」
「落ち着いてアンちゃん。大丈夫よ」

  ダンタリアンがそっとルルリカさんの頬に触れる。すると、すぐにルルリカさんの顔に生気が戻った。

「……貴様、何をした」
「ちょっとしたおまじないよ。さて、ルルリカちゃんさっきの質問に答えてちょうだい?」
「ふざけたことを……!  答える気は無い!」

  なんだか、見るからに冷静さを失ってるんだけど、ダンタリアンが何かしたんだよねこれ。口調とかも明らかに変わってるし……。

「つれないわねぇ。ま、いいんだけど。アンちゃん、この子は魔導王国のスパイよ。元々は帝国で怪しい動きをしてる連中がいたからその調査だったらしいけど、アンちゃんたちが王国から来てから、監視を主にしてたみたいね」
「監視?  なんで私たちを?」
「王国が戦争を仕掛けてきそうだったからでしょう?  そんな時にアンちゃんたちが王国と仲のいい帝国に来たんだもの、もしかしたら魔導王国に不利になるように帝国で動くんじゃないかって思われてたみたいよ?  それに、元々調べてたことに関してもアンちゃんたちが関わってるんじゃないかと思われてたみたい。……あと、アンちゃんが王宮から出てきたことも知ってるみたいねぇ」

  な、なんか色々と衝撃的な言葉が飛び出てる気がする。えっと、つまりどういう事だ?  情報量が多い!

「あー、ダンタリアンさん、でいいのかな?  つまり、私たちは帝国を魔導王国と戦争させようと煽るために王国から来たと思われていたということかい?」
「タリアちゃん、でいいわ。その通りよレヴィちゃん。一応疑いは晴れかけてたみたいだけどねぇ」
「レヴィちゃんとは私のことか……?  ま、まあ、ともかく。アンジュが王宮と関わりがあることを知っているということは、魔導王国は王国にもルルリカさんのような人を送り込んでるということかい?」
「ええ、そうみたいよ。結構前からそっちはいるみたいねぇ」

  えっと……、つまり魔導王国は王国と帝国にスパイを送り込んで情報を集めてるってことだよね。それだったら知りたいことを代わりに教えられたらなんとなるかな。

「あの、ルルリカさん」

  ぐったりと項垂れてるルルリカさんに声をかけてみると、すごい冷たい目で睨みつけてくる。

「王国が魔導王国との戦いのために何を準備したかって知ってますか」

  そう言うとルルリカさんの目に、少し光が宿ったように見えた。

「それを教えて、ルルリカさんのことも言わないので、戦わないようにすることは出来ないですか?」
「……それが本当である保証はありません」
「保証になるかは分かりませんけど……、私はその準備に巻き込まれた人間です。ただ、私は王国の望んでいた力は持っていなかったので追い出されたんですけどね」

  ルルリカさんは黙って聞いてる。聞くだけ聞いてくれるって感じかな。

「王国が魔導王国に対抗するために用意したのは人間です。三人の力を持った男女。その人達に魔王と戦争中だから助けて欲しい、そう言って戦わせようとしてるみたいです」
「……その三人の力は何か分かりますか」
「加護の力なら分かります。少年は剣が得意で雷と光、治癒の魔法が使えます。あと、味方の力も強くできるはずです。女性は全部の魔法を使えます。攻撃、補助、回復、全部です。最後に男性は弓が得意で、闇の魔法が使えます。あと、薬と毒の扱いが得意とかだったはずです」

  私の言葉を聞いたルルリカさんは考え込むようにまた俯いた。もう下ろしても大丈夫かな、ダンタリアンを見ると頷いたからロゥさんに頼む。
  ルルリカさんは下ろされた後も口元を手で押さえて考えてるみたいだった。

「アンジュ、その……。良かったの?  魔導王国に伝わっちゃうんじゃない?」
「まあ、うん。でも、それならそれでいいかなって。困るのは王国だろうし」
「アンジュがいいならいいんだけど……。アンジュって王国に追われてるんだよね」
「え?  うん、そうだよ」
「アンジュがその三人のことを魔導王国に伝えたって知られたら……もっとまずいんじゃ?」

  ……そうじゃん!  そうだよ、ダメじゃん。しかも、王国が困るだけじゃなくて沙夜香さんたちまでピンチになるんじゃ……。それはまずい!

「ルルリカさん!」
「アンジュさん、さっき魔王と戦争中だから助けて欲しいと言ったと言いましたよね?」
「あ、はい。言いました」
「それはいつですか?」
「えっと……今から大体三ヶ月くらい前ですかね」
「そうですか……」

  自分で言っておいてなんだけど、三ヶ月くらいしか経ってないのか……。なんか時間が経つのが早いなあ。もう一年くらい経ってると思ってた。

「アンジュさん、その人達は洗脳などをされている可能性はありますか?」
「洗脳ですか?  いや、ないと思いますけど……」
「では、その方達と面識は?」
「一応あります。自己紹介した程度ですけど」
「それならば……」

  また考え込むルルリカさん。何を考えてるのかよく分からないけど……、とりあえず沙夜香さんたちが危ない目に合わないようにお願いはしとかないと。

「えっと、ルルリカさん」
「アンジュさん、あなた、一度魔導王国まで来ることは可能ですか?」
「……え?」
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