タロットチートで生き残る!…ことが出来るかなあ

新和浜 優貴

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本編

13,リュウセン様とキオウ様

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「……そろそろ終わりにしとこうか」

  私がお茶を飲み終わったのを見計らって、占術神様が話を切り上げてくれる。タロットカードの話はまだ半分くらいしか聞けてないけど、直感で分かるって言ってたしレベッカのところにもどってあげたい。

「色々とありがとうございました、えっと……そう言えばお二人のお名前はなんて言うんですか?」
「私たちに名前は無いんです。そうですね、せっかくですから名前を付けてくれませんか?」
「私がですか!?」
「ええ、私も加護と力を与えた訳ですし、その代わりです」

  占術神様がいたずらっぽく笑う。神様に名前とか、変な名前じゃ失礼だけど、普通の名前でも申し訳ない気がする。まず神様の名前を人が考えるとか不敬じゃないのかな。

「あまり気負うことはありません。あだ名のようなものと考えればいいんです」
「そう言われましても……。安易なものでも構いませんか?」
「ええ、構いません」

  安易でいいなら、占術の神様で、後ろで一つ縛りになってる髪の毛が流れる水みたいだから、流占りゅうせんなんてどうだろうか。リュウセン様。そこはかとなく神様っぽいような気のせいなような。植物神様はウェアウィードの王様みたいだったし、おじいさんだし、オウって音は使いたいなあ。植物だから樹……。キオウ様かな。

「決まりましたか?」
「はい。占術神様がリュウセン様、植物神様がキオウ様です」
「リュウセン……。ありがとう、良い名だ」
「キオウか、感謝する杏子よ。そろそろ送ろう、友人が待ちくたびれてるだろうからの」
「あ、はい。よろしくお願いします」

  キオウ様がさっきみたいな光の柱を出す。

「それではさようなら、杏子。君のこれからに幸多からんことを」
「本当にありがとうございました、リュウセン様。お元気で」

  もう一度リュウセン様にお礼を言って、柱の中に入った。前が見えないほど眩しくて、少しの浮遊感が私を襲う。
  
「アンジュ!」
「わぷっ」

  森の中に戻ってくると、レベッカに抱きつかれた。かなり心配させちゃってたみたいだ。

「ごめんね、心配かけちゃって」
「いいんだ、無事でよかった」

  レベッカをなだめようと頭を撫でてると、キオウ様が柱の中から現れた。

「相当心配させてしまったようだの。すまない」

  レベッカは今度は剣を抜かないで、キオウ様に向き直った。
  
「 いえ、アンジュも無事ですし、謝罪は必要ありません。先程のような魔法を使える方ですからさぞ高名な魔導師の方でしょうし、危害を加えるつもりではないことも理解しました」

  綺麗な礼をするレベッカ。よかった、キオウ様が怪しい人じゃないってことはわかってくれてたみたい。

「迷惑をかけたのは事実じゃ。詫びといってはなんだがこれをやろう。ウェアウィードの面倒をみてくれたお礼も兼ねての」

  そう言って、キオウ様は木でできた指輪をレベッカに手渡した。綺麗な緑色の石のはまった、濃い茶色の指輪だ。レベッカがそれを光にかざすと、石に反射した光が木漏れ日みたいに彼女を照らした。

「お主は剣士のようだからの。役にたつじゃろう」
「ありがたくいただきたいと思います」

  キオウ様は頷くと、私の方を向いた。

「杏子、これからのお主の人生が実りあるものになるよう祈っておる」
「ありがとうございます、キオウ様」
「ではな」

  その言葉を言い終わるのとほぼ同時に、キオウ様は風に溶けるように消えていった。ウェアウィードたちが少し寂しそう。

「私達も帰ろっか」
「ああ」

  たくさんのウェアウィードたちに見送られて、私たちはトリスリア王国の城下町に向かって帰っていった。
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