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本編
14,女教皇の力
しおりを挟む城下町に帰ってきた頃には、空が暗くなり始めてた。思ったより長い時間森の中、というかリュウセン様たちのところにいたみたい。とりあえずギルドでクエストの完了手続きをして、子鹿のあくび亭に帰ることにした。ご飯も頼んでるからね。
この時間のギルドはあんまり人がいないみたいで、整理券じゃなく普通にカウンターで受付してるみたい。アドニスさんが空いてるみたいだし、そのままアドニスさんにお願いしよう。
「アドニスさん、クエスト完了の手続きお願いします」
「はい、承りました。剣葉草の納品だね、一応束じゃなくても換金は出来るから納品する分を出してもらえるかな?」
「分かりました。これが納品分の剣葉草です」
そう言って私はリュックから八束の剣葉草を取り出す。どうだ! ここまで採ってくるのはなかなかいないんじゃないかな。平均とか知らないけど。
「おお、こんなに! 一つ、二つ……、八束も採れたんだね! すごいな、普通の倍以上だよ」
普通の倍以上! いやー、それは嬉しい。これもウェアウィードのおかげだよ。あの子たちと仲良くなれてよかった。
「それじゃあこれを識別の魔道具にかけてと。……あれ、この束だけ剣葉草じゃない?」
「え、本当ですか?」
「うん、この束だけ別の物だってなってる。でも、これは識別の魔道具だからこれが何かまではわからないんだ」
うーん、魔法も万能じゃないのか。あれ、報酬はどうなるんだろう。一束分もらえなくなっちゃうのかな。
「とりあえずこれを換金するなら、ギルドが一旦預かることになる。そして後日鑑定師に査定してもらってから換金って形になるんだけど、どうする?」
「鑑定出来れば今でもいいんですか?」
私の言葉にアドニスさんがタレ目を困った様に細める。
「出来るなら、だけど……。アンジュさんは鑑定できるの? 加護を持ってないと習得がかなり難しい魔法だけど……」
「出来ますよ。ちょっと特殊ですけど」
胸ポケットにしまってたタロットカードにそっと触れる。リュウセン様にもらった力を早速使う時だ。
「女教皇」
女教皇には知性とか英知とか、他には神秘なんて意味がある。他にもいろんな意味があるけど、リュウセン様はその力を高めてくれた。物や人の鑑定能力、それが女教皇のアルカナの力だ。
知りたいと思った物のちょっと手前に、その鑑定結果の文字が浮かび上がる。これは私しか見えないらしい。
「緑刃草。剣葉草とよく似ているけど、こちらの方が茎が細い。薬効は剣葉草よりも強く、半分に薄めても剣葉草と同じ程度の効果が出る。だそうです」
「そんなに詳しくわかるのか! 確かに少し特殊だね。緑刃草はギルドの買取リストの中にあるから問題なく換金できるよ」
識別の魔道具で緑刃草だって確認してもらって、そのまま買取ってもらった。緑刃草は剣葉草よりも高くて一束で銀貨四枚ももらえた。薬効が倍だからお金も倍くらいかと予想してたけど、緑刃草は珍しいみたいで、ちょっと多かった。しめて、金貨一枚と銀貨四枚、銅貨五枚。金貨は銀貨にしてもらって、宿代を引いたあと、銀貨三枚ずつを個人のお金、残りはパーティの物を買う用のお金にすることにした。
色々あって少し疲れたけど、自分が頑張って稼いだお金って嬉しいなあ。まあレベッカとウェアウィードのおかげなんだけどさ。
よし、明日からも頑張って稼いで、早くお風呂付きの家に住むぞ!
リュウセン様とキオウ様にお祈りを捧げて、その日はベッドに倒れ込むようにして眠りについた。
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