タロットチートで生き残る!…ことが出来るかなあ

新和浜 優貴

文字の大きさ
16 / 97
本編

15,レベッカの過去(おととい)

しおりを挟む

  次の日も私たちは冒険者ギルドに来ていた。ただ今日は難しくない討伐クエストを受けるつもりだ。レベッカが理由ではあるんだけど……。

「さあ、早く行こうアンジュ。今すぐにでも戦いたくて仕方ない」
「少し落ち着いてよ。そんなに急がなくても魔物は逃げないって」

  そう、昨日の夜から、というか昨日城下町に帰ってきた時からレベッカは力をあり余してるみたいなのだ。十中八九、キオウ様の指輪が原因だよなあ。タイミング的にもそうだし。

「本当にあの魔導師様には素晴らしいものをいただいた。次お会いした時にも感謝の気持ちを伝えなければ」

  本人もこう言ってるしね……。なんでも体の中からどんどん力が湧いてくる感じがするらしい。
  そうそう、キオウ様のことをレベッカは魔導師だと勘違いしてる。訂正はしてない。私が正気か疑われそうだし。
  そんなこんなで冒険者ギルドに到着っと。私たちが中に入った瞬間、入口の横に、ドガーン、と何かが飛んできた。何事かと思って見てみると、革鎧を着た男の人が倒れてる。

「Eランクのザコが調子乗ってんじゃねえぞ!」

  怒鳴り声の方を見ると、赤髪の男の人がこちらを睨みつけていた。あー、あの人とトラブってぶっ飛ばされちゃったのか。うん、関わらない方がいいね。私倒れてる人以下のFランクだし。
  二人の間を横切らないように、大回りをしてクエストが貼ってある掲示板、クエストボードに向かおうとしたら。

「おい。そこの黒髪の女」

  絡まれました。黒髪の女なんて私しかいないよね……。レベッカみたいに黒に近い色の人はけっこういたけど、真っ黒な人はまだ見たことないし。
  なるべく怒りを買わないよう、こう、にこやかに対応しよう。

「私ですか?」
「そうだ。お前その女とどういう関係だ?」
「その女というと……」

  ちらり、とレベッカを見る。レベッカはまるで他人だと言い張るかのように明後日の方を向いてた。一体何したのレベッカ。

「一応パーティを組んでます」
「パーティ?  お前、他所から来た冒険者か?」
「いえ、この前冒険者になったばかりです」

  素直に答えると、レベッカがすごいショックを受けたような顔で私を見てくる。そんな顔をされても私はどうしたらよかったのさ。

「レベッカぁ……。聞いてた話と随分違うみてえだがどういう事だ……?」

  赤髪の男の人が笑顔でレベッカに詰め寄って行く。顔は笑顔なのにこめかみに青筋が浮かんでるから、絶対怒ってる。怖い。

「いや、ちょっと色々あってね。その子と一緒にパーティを組むことにしたんだよ」
「それが二年もパーティを組んだ仲間を蹴って冒険者を辞めると言ったやつの台詞か。なるほど、俺たちよりついこの前冒険者になったばかりのやつの方がパーティを組みたいと思ったわけだ」

  レベッカ冒険者辞めようと思ってたの!?  もしかして私がチンピラに絡まれてた時って、冒険者を辞めるって言った後の話?

「ごめん……」
「謝ってんじゃねえよ……」

  俯いて謝るレベッカと、悔しそうに唸る赤髪さん。うーん、私ここに居づらい!  そして入口でする話でもない!

「……とりあえず、場所を変えませんか?  こんなところじゃあれですし」
「……そうだね。そうしようか、ギル」
「ああ」

  赤髪さんはギルって名前なのか。なんにせよ、付いてきてくれるみたい。何故か私が先導することになってるけど、場所は裏の酒場でいいかな。離れすぎることなく、騒ぎになってもそこまで迷惑にならなさそうで、二人が話してる間一人で待てる場所なんて、そこくらいしか思いつかない。
  出来れば穏便に話が終わるといいんだけどどうなるのかなあ。

しおりを挟む
感想 88

あなたにおすすめの小説

異世界に転移したらぼっちでした〜観察者ぼっちーの日常〜

キノア9g
ファンタジー
※本作はフィクションです。 「異世界に転移したら、ぼっちでした!?」 20歳の普通の会社員、ぼっちーが目を覚ましたら、そこは見知らぬ異世界の草原。手元には謎のスマホと簡単な日用品だけ。サバイバル知識ゼロでお金もないけど、せっかくの異世界生活、ブログで記録を残していくことに。 一風変わったブログ形式で、異世界の日常や驚き、見知らぬ土地での発見を綴る異世界サバイバル記録です!地道に生き抜くぼっちーの冒険を、どうぞご覧ください。 毎日19時更新予定。

最低のEランクと追放されたけど、実はEXランクの無限増殖で最強でした。

みこみこP
ファンタジー
高校2年の夏。 高木華音【男】は夏休みに入る前日のホームルーム中にクラスメイトと共に異世界にある帝国【ゼロムス】に魔王討伐の為に集団転移させれた。 地球人が異世界転移すると必ずDランクからAランクの固有スキルという世界に1人しか持てないレアスキルを授かるのだが、華音だけはEランク・【ムゲン】という存在しない最低ランクの固有スキルを授かったと、帝国により死の森へ捨てられる。 しかし、華音の授かった固有スキルはEXランクの無限増殖という最強のスキルだったが、本人は弱いと思い込み、死の森を生き抜く為に無双する。

敵に貞操を奪われて癒しの力を失うはずだった聖女ですが、なぜか前より漲っています

藤谷 要
恋愛
サルサン国の聖女たちは、隣国に征服される際に自国の王の命で殺されそうになった。ところが、侵略軍将帥のマトルヘル侯爵に助けられた。それから聖女たちは侵略国に仕えるようになったが、一か月後に筆頭聖女だったルミネラは命の恩人の侯爵へ嫁ぐように国王から命じられる。 結婚披露宴では、陛下に側妃として嫁いだ旧サルサン国王女が出席していたが、彼女は侯爵に腕を絡めて「陛下の手がつかなかったら一年後に妻にしてほしい」と頼んでいた。しかも、侯爵はその手を振り払いもしない。 聖女は愛のない交わりで神の加護を失うとされているので、当然白い結婚だと思っていたが、初夜に侯爵のメイアスから体の関係を迫られる。彼は命の恩人だったので、ルミネラはそのまま彼を受け入れた。 侯爵がかつての恋人に似ていたとはいえ、侯爵と孤児だった彼は全く別人。愛のない交わりだったので、当然力を失うと思っていたが、なぜか以前よりも力が漲っていた。 ※全11話 2万字程度の話です。

アイテムボックスの最も冴えた使い方~チュートリアル1億回で最強になったが、実力隠してアイテムボックス内でスローライフしつつ駄竜とたわむれる~

うみ
ファンタジー
「アイテムボックス発動 収納 自分自身!」  これしかないと思った!   自宅で休んでいたら突然異世界に拉致され、邪蒼竜と名乗る強大なドラゴンを前にして絶対絶命のピンチに陥っていたのだから。  奴に言われるがままステータスと叫んだら、アイテムボックスというスキルを持っていることが分かった。  得た能力を使って何とかピンチを逃れようとし、思いついたアイデアを咄嗟に実行に移したんだ。  直後、俺の体はアイテムボックスの中に入り、難を逃れることができた。  このまま戻っても捻りつぶされるだけだ。  そこで、アイテムボックスの中は時間が流れないことを利用し、チュートリアルバトルを繰り返すこと1億回。ついにレベルがカンストする。  アイテムボックスの外に出た俺はドラゴンの角を折り、危機を脱する。  助けた竜の巫女と共に彼女の村へ向かうことになった俺だったが――。

猫好きのぼっちおじさん、招かれた異世界で気ままに【亜空間倉庫】で移動販売を始める

遥風 かずら
ファンタジー
【HOTランキング1位作品(9月2週目)】 猫好きを公言する独身おじさん麦山湯治(49)は商売で使っているキッチンカーを車検に出し、常連カードの更新も兼ねていつもの猫カフェに来ていた。猫カフェの一番人気かつ美人トラ猫のコムギに特に好かれており、湯治が声をかけなくても、自発的に膝に乗ってきては抱っこを要求されるほどの猫好き上級者でもあった。 そんないつものもふもふタイム中、スタッフに信頼されている湯治は他の客がいないこともあって、数分ほど猫たちの見守りを頼まれる。二つ返事で猫たちに温かい眼差しを向ける湯治。そんな時、コムギに手招きをされた湯治は細長い廊下をついて歩く。おかしいと感じながら延々と続く長い廊下を進んだ湯治だったが、コムギが突然湯治の顔をめがけて引き返してくる。怒ることのない湯治がコムギを顔から離して目を開けると、そこは猫カフェではなくのどかな厩舎の中。 まるで招かれるように異世界に降り立った湯治は、好きな猫と一緒に生きることを目指して外に向かうのだった。

眺めるだけならよいでしょうか?〜美醜逆転世界に飛ばされた私〜

波間柏
恋愛
美醜逆転の世界に飛ばされた。普通ならウハウハである。だけど。 ✻読んで下さり、ありがとうございました。✻

『異世界に転移した限界OL、なぜか周囲が勝手に盛り上がってます』

宵森みなと
ファンタジー
ブラック気味な職場で“お局扱い”に耐えながら働いていた29歳のOL、芹澤まどか。ある日、仕事帰りに道を歩いていると突然霧に包まれ、気がつけば鬱蒼とした森の中——。そこはまさかの異世界!?日本に戻るつもりは一切なし。心機一転、静かに生きていくはずだったのに、なぜか事件とトラブルが次々舞い込む!?

狼になっちゃった!

家具屋ふふみに
ファンタジー
登山中に足を滑らせて滑落した私。気が付けば何処かの洞窟に倒れていた。……しかも狼の姿となって。うん、なんで? 色々と試していたらなんか魔法みたいな力も使えたし、此処ってもしや異世界!? ……なら、なんで私の目の前を通る人間の手にはスマホがあるんでしょう? これはなんやかんやあって狼になってしまった私が、気まぐれに人間を助けたりして勝手にワッショイされるお話である。

処理中です...