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本編
15,レベッカの過去(おととい)
しおりを挟む次の日も私たちは冒険者ギルドに来ていた。ただ今日は難しくない討伐クエストを受けるつもりだ。レベッカが理由ではあるんだけど……。
「さあ、早く行こうアンジュ。今すぐにでも戦いたくて仕方ない」
「少し落ち着いてよ。そんなに急がなくても魔物は逃げないって」
そう、昨日の夜から、というか昨日城下町に帰ってきた時からレベッカは力をあり余してるみたいなのだ。十中八九、キオウ様の指輪が原因だよなあ。タイミング的にもそうだし。
「本当にあの魔導師様には素晴らしいものをいただいた。次お会いした時にも感謝の気持ちを伝えなければ」
本人もこう言ってるしね……。なんでも体の中からどんどん力が湧いてくる感じがするらしい。
そうそう、キオウ様のことをレベッカは魔導師だと勘違いしてる。訂正はしてない。私が正気か疑われそうだし。
そんなこんなで冒険者ギルドに到着っと。私たちが中に入った瞬間、入口の横に、ドガーン、と何かが飛んできた。何事かと思って見てみると、革鎧を着た男の人が倒れてる。
「Eランクのザコが調子乗ってんじゃねえぞ!」
怒鳴り声の方を見ると、赤髪の男の人がこちらを睨みつけていた。あー、あの人とトラブってぶっ飛ばされちゃったのか。うん、関わらない方がいいね。私倒れてる人以下のFランクだし。
二人の間を横切らないように、大回りをしてクエストが貼ってある掲示板、クエストボードに向かおうとしたら。
「おい。そこの黒髪の女」
絡まれました。黒髪の女なんて私しかいないよね……。レベッカみたいに黒に近い色の人はけっこういたけど、真っ黒な人はまだ見たことないし。
なるべく怒りを買わないよう、こう、にこやかに対応しよう。
「私ですか?」
「そうだ。お前その女とどういう関係だ?」
「その女というと……」
ちらり、とレベッカを見る。レベッカはまるで他人だと言い張るかのように明後日の方を向いてた。一体何したのレベッカ。
「一応パーティを組んでます」
「パーティ? お前、他所から来た冒険者か?」
「いえ、この前冒険者になったばかりです」
素直に答えると、レベッカがすごいショックを受けたような顔で私を見てくる。そんな顔をされても私はどうしたらよかったのさ。
「レベッカぁ……。聞いてた話と随分違うみてえだがどういう事だ……?」
赤髪の男の人が笑顔でレベッカに詰め寄って行く。顔は笑顔なのにこめかみに青筋が浮かんでるから、絶対怒ってる。怖い。
「いや、ちょっと色々あってね。その子と一緒にパーティを組むことにしたんだよ」
「それが二年もパーティを組んだ仲間を蹴って冒険者を辞めると言ったやつの台詞か。なるほど、俺たちよりついこの前冒険者になったばかりのやつの方がパーティを組みたいと思ったわけだ」
レベッカ冒険者辞めようと思ってたの!? もしかして私がチンピラに絡まれてた時って、冒険者を辞めるって言った後の話?
「ごめん……」
「謝ってんじゃねえよ……」
俯いて謝るレベッカと、悔しそうに唸る赤髪さん。うーん、私ここに居づらい! そして入口でする話でもない!
「……とりあえず、場所を変えませんか? こんなところじゃあれですし」
「……そうだね。そうしようか、ギル」
「ああ」
赤髪さんはギルって名前なのか。なんにせよ、付いてきてくれるみたい。何故か私が先導することになってるけど、場所は裏の酒場でいいかな。離れすぎることなく、騒ぎになってもそこまで迷惑にならなさそうで、二人が話してる間一人で待てる場所なんて、そこくらいしか思いつかない。
出来れば穏便に話が終わるといいんだけどどうなるのかなあ。
10
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