17 / 97
本編
16,銀の剣
しおりを挟む酒場に移動してきた私たちだけど、とっても気まずい空間が出来た。私は邪魔だろうからと言って二人にしようとしたら。
「ここにいて。お願い」
「当事者が邪魔なわけねえだろうが。座れ」
逃がしてもらえませんでした。でもレベッカもギルさんも全く話さないし、私は事情が分からないから何も話せないしで酒場なのにお通夜みたいな雰囲気になってる。
このままじゃ埒が明かないし、私が話すしかないかあ。
「とりあえず、事情を説明してもらってもいいですか?」
「……自分で説明しろレベッカ。こいつに出会う前と、こいつに出会ってからを。俺と、こいつに」
レベッカは小さく頷くと、ぽつぽつと話し始めた。
「私はアンジュと出会う前、パーティを組んでいたんだ。このギルと斥候のクレイ、魔法使いのミリア、重戦士のガイル、そして私。五人のパーティで銀の剣と名乗っていた」
レベッカとミリアさんが女性で、他の三人が男の人かな。男女トラブル……、って訳じゃないよね。
「ある日、私たちはクエストに出たんだ。いつもの私たちならなんてことのない、簡単なクエストだった。けど、クエストの途中にとんでもない化け物が出てきたんだ。本来ならそんなところに出るはずもない魔物が」
そこで一旦レベッカが黙り込む。何かをこらえるみたいに奥歯を噛み締めてた。ギルさんもレベッカと同じように歯を食いしばって、手が白くなるほど強く拳を握ってる。やっぱり、誰かが……。
「ギリギリだったけど、なんとか戦いにはなってた。けど、ガイルが強烈な攻撃を食らって瀕死になった時、クレイが、逃げたんだ」
あー……、逃げちゃったのかあ。私はまだ死ってことを感じたことはないけど、やっぱり死ぬのが怖かったんだろうな。仲間を見捨ててでも生きたい、っていうのはちょっとよく分からないけど。
「その結果、前線が崩れた。私は剣士だけど、持っている加護は闘士の加護だ。剣の扱いが長けてるわけでも、身体能力が高い訳でもない」
「……俺も同じようなもんだ。槍士の加護はあるからレベッカより多少ましって程度だ。戦い自体、守護者の加護を持っていたガイルがいたからこそなんとか凌げていたようなもんだしな」
うーんと、守ることが得意なガイルさんがやられちゃったから、魔物の攻撃に耐えられる人がいなくなったってことか。色々加護の名前も出てきたけど、覚えられる気がしないし、続きを聞こう。
「そのあと、私とギルは吹き飛ばされ、魔物はミリアを狙った。ミリアはひどい……ひどい傷を負った」
「腕と、顔にな。どっちも一生ものの傷だ。だが、それだけですんでよかった。ガイルの命のおかげだ」
「じゃあガイルさんは……」
私が訊くと、二人とも悔しそうな顔で小さく頷いた。亡くなったのか……。二人の話からして、ミリアさんをかばってって感じだよね。
輪廻転生がこっちにあるかわからないけど、ガイルさんの次の人生が素晴らしくなりますように。管轄外な気がするけど、お願いしますリュウセン様。
10
あなたにおすすめの小説
異世界に転移したらぼっちでした〜観察者ぼっちーの日常〜
キノア9g
ファンタジー
※本作はフィクションです。
「異世界に転移したら、ぼっちでした!?」
20歳の普通の会社員、ぼっちーが目を覚ましたら、そこは見知らぬ異世界の草原。手元には謎のスマホと簡単な日用品だけ。サバイバル知識ゼロでお金もないけど、せっかくの異世界生活、ブログで記録を残していくことに。
一風変わったブログ形式で、異世界の日常や驚き、見知らぬ土地での発見を綴る異世界サバイバル記録です!地道に生き抜くぼっちーの冒険を、どうぞご覧ください。
毎日19時更新予定。
最低のEランクと追放されたけど、実はEXランクの無限増殖で最強でした。
みこみこP
ファンタジー
高校2年の夏。
高木華音【男】は夏休みに入る前日のホームルーム中にクラスメイトと共に異世界にある帝国【ゼロムス】に魔王討伐の為に集団転移させれた。
地球人が異世界転移すると必ずDランクからAランクの固有スキルという世界に1人しか持てないレアスキルを授かるのだが、華音だけはEランク・【ムゲン】という存在しない最低ランクの固有スキルを授かったと、帝国により死の森へ捨てられる。
しかし、華音の授かった固有スキルはEXランクの無限増殖という最強のスキルだったが、本人は弱いと思い込み、死の森を生き抜く為に無双する。
40歳のおじさん 旅行に行ったら異世界でした どうやら私はスキル習得が早いようです
カムイイムカ(神威異夢華)
ファンタジー
部長に傷つけられ続けた私
とうとうキレてしまいました
なんで旅行ということで大型連休を取ったのですが
飛行機に乗って寝て起きたら異世界でした……
スキルが簡単に得られるようなので頑張っていきます
学校ごと異世界に召喚された俺、拾ったスキルが強すぎたので無双します
名無し
ファンタジー
毎日のようにいじめを受けていた主人公の如月優斗は、ある日自分の学校が異世界へ転移したことを知る。召喚主によれば、生徒たちの中から救世主を探しているそうで、スマホを通してスキルをタダで配るのだという。それがきっかけで神スキルを得た如月は、あっという間に最強の男へと進化していく。
『異世界に転移した限界OL、なぜか周囲が勝手に盛り上がってます』
宵森みなと
ファンタジー
ブラック気味な職場で“お局扱い”に耐えながら働いていた29歳のOL、芹澤まどか。ある日、仕事帰りに道を歩いていると突然霧に包まれ、気がつけば鬱蒼とした森の中——。そこはまさかの異世界!?日本に戻るつもりは一切なし。心機一転、静かに生きていくはずだったのに、なぜか事件とトラブルが次々舞い込む!?
クラス転移したけど、皆さん勘違いしてません?
青いウーパーと山椒魚
ファンタジー
加藤あいは高校2年生。
最近ネット小説にハマりまくっているごく普通の高校生である。
普通に過ごしていたら異世界転移に巻き込まれた?
しかも弱いからと森に捨てられた。
いやちょっとまてよ?
皆さん勘違いしてません?
これはあいの不思議な日常を書いた物語である。
本編完結しました!
相変わらず話ごちゃごちゃしていると思いますが、楽しんでいただけると嬉しいです!
1話は1000字くらいなのでササッと読めるはず…
男子高校生だった俺は異世界で幼児になり 訳あり筋肉ムキムキ集団に保護されました。
カヨワイさつき
ファンタジー
高校3年生の神野千明(かみの ちあき)。
今年のメインイベントは受験、
あとはたのしみにしている北海道への修学旅行。
だがそんな彼は飛行機が苦手だった。
電車バスはもちろん、ひどい乗り物酔いをするのだった。今回も飛行機で乗り物酔いをおこしトイレにこもっていたら、いつのまにか気を失った?そして、ちがう場所にいた?!
あれ?身の危険?!でも、夢の中だよな?
急死に一生?と思ったら、筋肉ムキムキのワイルドなイケメンに拾われたチアキ。
さらに、何かがおかしいと思ったら3歳児になっていた?!
変なレアスキルや神具、
八百万(やおよろず)の神の加護。
レアチート盛りだくさん?!
半ばあたりシリアス
後半ざまぁ。
訳あり幼児と訳あり集団たちとの物語。
〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜
北海道、アイヌ語、かっこ良さげな名前
お腹がすいた時に食べたい食べ物など
思いついた名前とかをもじり、
なんとか、名前決めてます。
***
お名前使用してもいいよ💕っていう
心優しい方、教えて下さい🥺
悪役には使わないようにします、たぶん。
ちょっとオネェだったり、
アレ…だったりする程度です😁
すでに、使用オッケーしてくださった心優しい
皆様ありがとうございます😘
読んでくださる方や応援してくださる全てに
めっちゃ感謝を込めて💕
ありがとうございます💞
狼になっちゃった!
家具屋ふふみに
ファンタジー
登山中に足を滑らせて滑落した私。気が付けば何処かの洞窟に倒れていた。……しかも狼の姿となって。うん、なんで?
色々と試していたらなんか魔法みたいな力も使えたし、此処ってもしや異世界!?
……なら、なんで私の目の前を通る人間の手にはスマホがあるんでしょう?
これはなんやかんやあって狼になってしまった私が、気まぐれに人間を助けたりして勝手にワッショイされるお話である。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる