タロットチートで生き残る!…ことが出来るかなあ

新和浜 優貴

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本編

17,代わりの私

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「ミリアはまだ満足に動けない。クレイのやつは街から姿を消した。残ったのは俺たちだけだった。ミリアを救えるのは俺たちだけだったんた」
「救える……とは?」
「エルフ族が作る薬にね、どんな傷でも治すことができるって言われてるものがあるんだ。ギルはそれを手に入れようって言うんだ」

 おお、エルフとかってやっぱりいるんだ。今はそこに反応してる場合じゃないけど、やっぱり気になるよね。
  薬っていうと、ポーションとかエリクサー的な何かかな?  一生ものの傷って濁してはいたけど、きっともう使いものにならないくらい傷ついてるってことだよね……。多分、欠損レベルの。

「だがレベッカは断ってパーティは解散、冒険者を辞めると言って去っていった。何か考えがあったのかは分からねえ。薬は眉唾ものだし、あっても絶対高い。俺らみたいな冒険者じゃ手の届く金額じゃないかもしれねえ。それでも出来ることはしたかった。レベッカにも協力してもらいたかったが、冒険者を辞めるってんなら仕方ない。あの魔物と戦ったんだ、正直そう思うのは仕方ないと思う。だがよ、そう言って去っていったやつが他のやつとパーティ組んで冒険者を続けてるんだ。どう考えたって納得いかねえだろうが!」

  ギルさんが声を荒らげる。正直、ギルさんがここまで怒るのは仕方ないと思う。レベッカには感謝してるけど、私とパーティ組むのは筋が通らないというかなんというか。

「……私がアンジュと最初に出会ったとき、この子は暴漢に襲われてたんだ。助けたあとに身の上話を聞いて思ったんだ。ああ、ミリアと似てるなって」

  自嘲するように、レベッカが笑う。
  レベッカは私をミリアさんの代わりにしてたんだ。守れなかったミリアさんの代わりに、私を守ろうって考えたんだろうな。だからあんなに強引というか、グイグイ来てたのかな。

「だから守ってやろうってか?  一度守れなかったが、それには目を瞑って別のやつを守って満足しようって腹か。見上げた根性だよ」

  ギルさんに冷たく言われ、レベッカは俯いて唇を噛んでる。私は助けてもらったし、色々感謝はしてるけど、擁護は出来ないし、しない。誰かの代わりにされるのはやっぱりいい気分じゃ無いから。

「ギル、アンジュ。本当にすまない」
「謝ってどうにかなることじゃないだろ……」

  この件に関しては私は部外者だし、二人の気持ち、どっちもわからなくないから何も言えない。ギルさんは諦めずに頑張ろうって考えで、レベッカは今度こそはって考え。でもギルさんのは現実的じゃないし、レベッカのはただの自己満足だからあんまり共感はできない。多分私にそういう経験が無いからなんだろうけど。
  でも、二人ともミリアさんを助けたい、助けたかったっていうのは同じなんだよね。……どうにか、出来るかな。

「ギルさん、ミリアさんに会うことは出来ますか?」
「会ってどうする」
「少し話をしてみたいんです」

  ギルさんはしばらく私を見つめたあと、ため息をついて立ち上がった。

「分かった、ついて来い。レベッカ、お前もだ」
「ありがとうございます」
「……ああ」

  レベッカは血の気の引いた、真っ白な顔だったけど、なんとか立ち上がれるみたいだった。背中に手を添えて、少し支えてあげる。

「ありがとう、アンジュ。でも、私にこんなことをする必要はないよ」
「私たちはパーティでしょ」

  予想通り、レベッカは私に助けられるのを拒もうとする。私はレベッカに助けられたから、その分を返してるだけなんだし、素直に助けられてほしい。

「……すまない。ありがとう」

  ゆっくりだけど、そのまま私たちはギルさんについて行った。ギルさんは一度私たちの方を見たけど、何も言わずに歩き続けてた。
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