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本編
33,どうしてそうなった
しおりを挟む「こんばんは。ガインさんナイフ直りました?」
そろそろいい時間だろうと、ガインさんのお店に入ると、ガインさんが優しそうな顔をして女の人の肩に手を置いてた。
「……お邪魔しましたー」
「ちょっと待て! 入れ」
見なかったことにしようとしたのに、ガインさんに入るように言われてしまった。大人しく中に入る。
こんな場面に出くわすなんてついてないなあ。気まずい。レベッカも居心地が悪いみたいでそわそわしてる。
すると突然女の人が私にぶつかるようにしがみついてきた。
「えっ、なに!? 私はただのお客さんですよ!」
「アンジュ様! 今すぐ、今すぐお逃げください!」
なんでこの人私のこと知ってるの!? ん、なんかこの人見たことがある気が……。
「このままではアンジュ様は幽閉されてしまいます! ですから何とぞお逃げください!」
すごい勢いで泣きながら女の人がまくし立てる。
幽閉って何!? 私何かした!? ……あれ、この人もしかして。
「ナイフ入れてくれたメイドさん?」
「覚えていらしたのですか!?」
おお、やっぱりそうだ。近くで見たらあの時のメイドさんだ。でもなんでここに?
「ちったあ落ち着け。嬢ちゃん、そいつは俺の姪っ子だ。異母兄弟の娘だがな。そいつのナイフを嬢ちゃんが売りに来たから前々から話はしてたんだ。しかし、嬢ちゃんも面倒なことになったなあ」
「し、失礼いたしました」
ガインさんの言葉でメイドさんが少し落ち着いてみたいだった。この人がガインさんの姪っ子? まったく似てないよ。異母兄弟だから当たり前なのかもしれないけど。
そんなことより、一体何がどうして私が幽閉なんて話になったの?
「今アンジュ様は、戦闘のない辺境の屋敷にかくまわれていることになっております。ですがそれが嘘だと勇者様がたが気づいてアンジュ様を探し始めたのです。それに神官長様が気づきまして……。嘘を真実にするため、勇者様よりも早くアンジュ様を見つけ出し、捕らえようとしておられます」
なんっじゃそりゃあぁ!? 完全にただの自業自得じゃない! 雇いたくないって放り出しておいて、かっこつけて嘘ついて、バレそうになったら捕らえるだ? 冗談じゃないよ!
「あー、よく分からないけど、とりあえずアンジュは逃げなきゃ捕まるってことなんだよね?」
「はい。捕まってしまうと、最悪牢へ入れられてしまいます。良くてもどこかの屋敷に軟禁されてしまうと思います」
うん、逃げよう。軟禁程度ならまだいいけど、牢に入れられる可能性があるなんて。というかあのじじいなら普通に牢屋にぶち込んできそう。
それに……。私が捕まらなければあのじじいの嫌がらせになるよね! ふっふっふ、私が捕まらないことにいらいらして、いつ勇者に『 私を追い出したのはメルドですぅ』って言われるかびくびくすればいいさ!
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