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本編
36,キオウ様にご挨拶
しおりを挟む出発してからそれほど経たず、セリゼの森に入った。歩いた時の半分より短い時間でついた気がする。馬車ってこんなものなのかなと思ったら、レベッカ曰く普通の馬車よりも速いらしい。
まあ神様からもらった力で呼び出せるようになった馬車なんだし、普通よりは速くてもおかしくはないよね。なんてったって本物の戦車も出せるんだから。
そうだ、リュウセン様たちに挨拶しよう。拠点を移すし、改めてお礼も言いたい。
「みんな、少し寄り道してもいい? リュウセン様たちに挨拶したいんだ」
「それなら私もついて行きたい。キオウ様に指輪のお礼を言いたいから」
レベッカはついてくるみたいだけど、ギルさんたちは馬車に残るみたい。ミリアさんは魔法使い的にキオウ様たちにあいたいみたいだったけど、ギルさんに止められてた。
キオウ様と初めて会った剣葉草の群生地に行くと、既にキオウ様がいた。ウェアウィードに囲まれ、いや、埋もれて。
「お久しぶりです、キオウ様」
「ああ、元気そうで何よりじゃ」
普通に挨拶したけどすごいシュールだなあ。顔は出てるけどそれ以外が全部ウェアウィードに包まれてる。多分胡座なんだろうけど、ウェアウィードが多すぎて座ってることしかわからない。
「先日は名乗ることもせずに申し訳ございませんでした。私はアンジュの友人のレベッカと申します。以前賜った指輪の礼を改めて申し上げに参りました」
レベッカが膝まづいてキオウ様に頭を下げる。私普通にお辞儀しただけだよ。私も同じようにした方がいいかな。そろそろと姿勢を下げてると、キオウ様に止められた。
「杏子よ、形だけのものは虚しいものじゃ。相手を思いやる姿勢であれば、どんなものであろうとそれは尊ばれるものじゃよ」
そう言われて私は背筋を伸ばす。正直ちゃんとはわからなかったけど、多分相手への思いがしっかりしてれば大丈夫ってことかな。
確実に言えるのはさっきみたいなへっぴり腰の怪しい動きはふさわしくないってことだね。
「杏子よ、恐らくリュウセンに用があったんじゃろうがあやつは留守じゃ。伝言を預かっておる」
そう言ってキオウ様がカードを取り出す。私のタロットカードと同じ柄で、表には愚者の絵が描いてあると思ったら、ちょっと違う。旅人の姿がどうみてもリュウセン様だこれ。もしかして作ったのかな。
なんて思っているとカードの中のリュウセン様が浮かび上がった。そのままのサイズで。なんか少しかわいい。
「やあ、杏子。驚いたかな? そうであると少し嬉しい。君の世界の占いはとても面白い発展をしている。タロットカードを一枚、試しに作ってみたら面白くてね。私も欲しくなったんだ。材料を集めるために少し留守にするよ。またいずれ会えることを願っているよ」
なんか……、なんかキャラが違う。あの丁寧で落ち着いた雰囲気はどこへいったのか、テンションが高くて少し子供っぽい。
「まあ、そういうわけじゃな。人が変わったように見えるかもしれんが……、それがあやつの素じゃ。この前は第一印象が大切だとかで神様であることを強調しようとしてたようだからのう」
おおう……、なんかリュウセン様のイメージが崩れていく……。でも少し親しみやすい感じはするかな?
「お主らはこれから帝国へ向かうんじゃろ。気をつけてな」
「知ってたんですか?」
「皆が教えてくれるからの」
そう言ってあたりを見渡すキオウ様。皆って……木のこと? 植物の神様ってそんなこともできるんだ。
「さすがですね、キオウ様」
「まあ、儂はそれを司る者だからの」
「では私たちはそろそろお暇します。こちらウェアウィードたちとどうぞ」
そう言ってドライフルーツの袋とパンを渡す。
「おお、ありがとうの。また何かあれば来るといい」
「はい、またいずれ。リュウセン様が戻ってきたら、元気でやっています、とお伝えください」
「わかった、伝えておこう」
そのあとウェアウィードたちともお別れして、帝国への道筋に戻った。
しかし、タロットカードの材料かあ。やっぱり紙って貴重なのかな? 留守にするって言ってたけど、どこかに手に入れに行ってるってことだよね。神様が旅をするって考えると、少し面白い。
タロットカードにもかなり興味を持ってるみたいだったし、次に会えたときにたくさん話が出来るといいなあ。
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