タロットチートで生き残る!…ことが出来るかなあ

新和浜 優貴

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本編

44,掘り出し物だけど…

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  木々の調べ亭は一階が食堂で、二階が宿になってるみたいで、何人かのお客さんがご飯を食べてた。

「いらっしゃい。食事かしら、それとも宿泊?」

  受付の奥から女の人が……、頭に耳ついてる!  ということはこの人は獣人なのかな。なんの獣人なんだろう。三角のとんがった耳だから猫か犬かなあ。髪が亜麻色のショートカットで、なんとなく犬っぽい気がする。

「宿泊です。アリシアさんからの紹介で来ました」
「あら、そうなのね。部屋はいくつ取る?」
「二人部屋を二つ。……でいいかな?」

  レベッカが振り向いて確認してくる。私はいつもレベッカと同じ部屋だったし、ギルさんたちは同じ家に住んでるし、いいんじゃないかな。
  私たちが頷いたのを見て、レベッカが改めて二人部屋を二つお願いする。

「わかったわ。じゃあ奥の向かいの部屋を使ってね。代金は一日銀貨一枚と銅貨五枚。ご飯は食堂で食べるか、外で買ってくるかしてね。私の名前はルルリカ、よろしく」
「『金の竪琴』のレベッカです。アンジュ、ギル、ミリアとの四人パーティです」
「よろしくね、みなさん」

  そう言って笑ったルルリカさんの姿がブレて、姿。思わず目を擦ってもう一度見るけど、特に変なことはない。なんだろう、今の。

「どうしたのアンジュ?」
「え、いや。なんでもないよ」

  部屋は小鹿のあくび亭と同じくらい綺麗で、ベッドが二つとサイドテーブル、クローゼットが置いてあるシンプルな部屋だった。

「このあとはどうするの?」
「そうだね……。中途半端な時間だけど、夕飯まで少し中央街を見て回ろうか」
「じゃあギルさんたちも誘おう」

  と、思って誘ったけどギルさんたちは宿に残るみたいだった。ギルさんは寝るかららしいけど、ミリアさんはギルドから誰か来たときのために残ってくれるみたい。あとで何かしらのお礼をしよう。あ、お土産買ってくればいいかな?
  中央街は話にあった通り、人間以外の人も沢山いた。割合的には獣人の人が多いかな?
  獣人にもかなり色んな人がいるみたいで、ルルリカさんみたいな猫か犬みたいな耳がある人もいれば、上半身がライオンの人、あとは顔や腕に鱗がついてる人なんかもいた。

「やっぱり珍しい?」

  レベッカが少し笑いながら聞いてくる。もしかして笑われるくらい物珍しそうにしてたかな。
 
「うん。私がいたところには人間しかいなかったから」
「なるほどね」

  まあ厳密に言えば魔法とか加護なんてのもなかったから、この世界にいる人みんなが私の常識だった人間とは違うんだけどね。
  そのまま歩いてると、元々多かった人がもっと増えてきた。ほとんどぶつかりながら歩いてる。

「お、人が多いと思ったらちょうどマーケットがやってるみたい。少し見ていこうか」

  なんでこんなに人が多いのかと思ったら、マーケットをやってたみたい。元々お店をもってる人が出店を出したり、旅をしている商人なんかが出店を出してたりする。
  値切りとかの交渉もできたりするけど、私は苦手なんだよなあ。普通やるんだろうけど、相場より少し高いくらいならいいかなって思っちゃう。
  マーケットを見てると、ふと一つのお店が目に止まった。アジアンテイストって言ったらいいのかな、そんな感じの布の上にアクセサリーを並べてる。店主というか、商人の人はスカーフを目深にかぶって顔を隠してる。怪しいというよりはミステリアスに感じる。

「いらっしゃい。何か見ていく?」

  商人さんは少し低いけど、妙に色っぽい声の女の人だった。

「じゃあ少し見てもいいですか?」
「ええ、どうぞ」

  そこまで高くなければミリアさんのお土産にいいかな。うーん……。うん?  この指輪、青みがかった銀に藍色の石がはまってて綺麗。綺麗だけど……、これ、こんなところで売っていいものなのかな。これ多分魔法の指輪だよね?  レベッカの物よりは弱いとは思うけど、それでもかなり強い。

「すいません、これって」
「ああ、それですか?  それでしたら銀貨三枚でお譲りしますよ。なぜかずっと売れ残ってるんですよね」

  銀貨三枚!?  絶対安すぎるよ。というか、お金で売っていいものじゃないと思うんだけど……。

「うん、いいんじゃない?  値段も手頃だし、気に入ったなら買った方がいいよ。また会えるとは限らないし」
「じゃあ……、買います。でもさすがに心苦しいのでこのネックレスと合わせて金貨一枚で」
「金貨!?  いやいや、払い過ぎですよお嬢さん。合わせてもせいぜいその半分です」
「いやいや、私はそのくらいの価値があると思ったんです!  どうか払わせてください!」

  いやいやいや、としばらくやり取りをしたあと、レベッカの提案で銀貨八枚で買うことになった。

「お買い上げありがとうございます。また会ったときにもぜひご贔屓に、アンジュさん」
「いえいえ、こちらこそありがとうございました」

  商人さんにお礼を言ってマーケットの人混みに戻っていく。
    いい買い物って喜ぶべきなんだろうけど、罪悪感がすごいなあ。正直金貨一枚でも全くと言っていいほど釣り合ってないのに、銀貨八枚なんて……。うう、胃がしくしくしてきた。とりあえず、指輪は鑑定をして、大丈夫だったらミリアさんに渡すことにしよう。
  ……あれ、私って名前言ったっけ?  レベッカに呼ばれたの聞いてたのかな?
  
                                                         ※

「さすが、あの二人のお気に入りね。まさか勘であの指輪を選ぶなんて」

  スカーフを目深にかぶった女が呟いた言葉は、マーケットの喧騒に掻き消される。
  パチリ、と女が指を鳴らすと並べていたアクセサリーも、その下にあった布も一瞬で消える。しかし、周りの人はみなその光景に疑問を持っていないようで、何事もなかったかのように歩いている。

「あれは相性がいいで片付けていいものなのかしらね……。ほとんど人間やめてる気配がしたけど」

  女が立ち上がってつま先で地面を叩く。すると、線、点、丸、多角形、様々なものが重なり、混ざり合い、ただ一定の秩序が保たれているような不思議な円が地面に現れた。円はゆっくり回りながら、徐々に輝いていく。

「まあ、これで私は義理を通したし、あとはゆっくり見物するとするわ。あなたのこれからに幸多からんことを。入江杏子さん」

  強く光が瞬いたかと思うと、女の姿は消えていた。けれど周りの人は足を止めず、友人たちとの会話や、店での値切りを止めることもない。何もなかったかのように、いつもの日常を送っていた。
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