タロットチートで生き残る!…ことが出来るかなあ

新和浜 優貴

文字の大きさ
54 / 97
本編

53,別個体

しおりを挟む

「こいつは一体なんなんだ……?」

  冒険者の一人が倒れた魔物を見つめてつぶやく。確かに、この魔物は一体なんなんだろう。ギルドカードの図鑑の中にも、人の顔をした魔物がいるなんてのはなかった。それに、なんだか凄い嫌な感じがする。

「考えるのはあと。今は救援に向かう。ここに来たのは私たちだけ?」
「あ、ああ。あんたらだけだ」
「そうか……。アンジュ、これからもう一つの信号弾のとこに行くよ。あなた達もついてきて」
「わかった。教授とロゥさんも着いてきて」

  走り出してすぐ、別の信号弾のパーティが見つかった。既に助けは来てたみたいで、十人前後いるけど、まだ戦ってる最中だ。金属音や人の叫び声が聞こえる。

「アンジュ、さっきと同じように!」
「わかった!  二人ともお願い!」
「怪我人は任せたまえ。レディは魔物を」
「ご用命とあらば」

  枝や蔓を切り払いながら音のする方へ突き進む。すると、ばっ、と開けたところに出る。そこには戦ってる冒険者と、さっきと同じような魔物が
  驚いて一瞬足が止まってしまう。今は固まってる場合じゃない。まずは怪我した人から魔物を引き剥がさないと。一気に二体は無理。それなら、遠い方はロゥさんに任せて私は近い方を。

「行くよ、レベッカ!  ロゥさんは奥のをお願い!」
「はっ!」

  そのまま魔物に向かって走るけど、なんか、さっきの魔物とは違う。肌の色はさっきのと同じような灰色だけど、髪の毛が長くて胸の辺りが膨らんでる。もしかして、女の魔物……なのかな。魔物に男女があるのかはわからないけど。
  切り結んでた冒険者が弾かれて、尻もちを着いてしまう。その冒険者目掛けて振り下ろされた爪と冒険者の間に割り込ませるようにククリを振り上げる。  ギャリッ、という耳障りな音と一緒に火花が散った。本当に金属みたいな爪だ。

「だあっ!」

  レベッカが魔物に切りかかる。魔物は避けて私たちと距離を取った。

「今のうちに向こうに!」

  そう言って教授の方を指さす。この人もさっきので腕をやられたみたいだから、まずは怪我を直してもらおう。

「アハハ、ハハ?」

  魔物が首を傾げる。ちょっと滑稽にも見える動きを恐怖で固まった顔がやってるせいで、不気味というよりおぞましく感じてしまう。
  魔物は一瞬身を屈めると、こちらに飛びかかってきた。けど、どこからか現れた縄に縛られて、空中に磔になる。

「お待たせ致しました」
「ありがとう、ロゥさん!」

  お礼を言って、そのまま魔物の首を狙ってククリを振り抜く。魔物は首を深く切り裂かれて、ビクン、と痙攣すると、全身から力が抜けたみたいになって動かなくなった。

「ロゥさん、下ろしてあげて」
「御意」

  地面に横たえられた魔物の目を閉じてあげる。よくわからないけど、こうしてあげなきゃいけないって、そう思った。

「レディ、怪我人は皆治しておいた。命に及ぶ傷を負った者はいなかったようで死人は出ていない」
「わかった。ありがとう、教授」

  こっちはロゥさんのおかげでなんとかなったけど、ギルさんたちは大丈夫かな。この魔物たち、かなり強かったけど。ロゥさんがいなかったら結構危なかったと思う。

「レベッカ、ギルさんたちの所に向かおう。ここはもう大丈夫だと思うし」
「そうだね、合流してから探索を続けよう。もう戦いは終わってるだろうから、急ぎすぎない程度にね」
「あの魔物、強かったけど急がなくて大丈夫なの?」

  私がそう言うとレベッカがニヤリと笑う。

「大丈夫だよ、ギルは私より強いもの。それに、森の中のミリアは強いよ」
「レベッカがそう言うなら大丈夫なんだろうけど……」

  心配なものは心配だなあ。逸る気持ちをレベッカに抑えられながら、私たちはギルさんたちと合流しようと森の中を歩いて行った。
  
しおりを挟む
感想 88

あなたにおすすめの小説

最低のEランクと追放されたけど、実はEXランクの無限増殖で最強でした。

みこみこP
ファンタジー
高校2年の夏。 高木華音【男】は夏休みに入る前日のホームルーム中にクラスメイトと共に異世界にある帝国【ゼロムス】に魔王討伐の為に集団転移させれた。 地球人が異世界転移すると必ずDランクからAランクの固有スキルという世界に1人しか持てないレアスキルを授かるのだが、華音だけはEランク・【ムゲン】という存在しない最低ランクの固有スキルを授かったと、帝国により死の森へ捨てられる。 しかし、華音の授かった固有スキルはEXランクの無限増殖という最強のスキルだったが、本人は弱いと思い込み、死の森を生き抜く為に無双する。

アイテムボックスの最も冴えた使い方~チュートリアル1億回で最強になったが、実力隠してアイテムボックス内でスローライフしつつ駄竜とたわむれる~

うみ
ファンタジー
「アイテムボックス発動 収納 自分自身!」  これしかないと思った!   自宅で休んでいたら突然異世界に拉致され、邪蒼竜と名乗る強大なドラゴンを前にして絶対絶命のピンチに陥っていたのだから。  奴に言われるがままステータスと叫んだら、アイテムボックスというスキルを持っていることが分かった。  得た能力を使って何とかピンチを逃れようとし、思いついたアイデアを咄嗟に実行に移したんだ。  直後、俺の体はアイテムボックスの中に入り、難を逃れることができた。  このまま戻っても捻りつぶされるだけだ。  そこで、アイテムボックスの中は時間が流れないことを利用し、チュートリアルバトルを繰り返すこと1億回。ついにレベルがカンストする。  アイテムボックスの外に出た俺はドラゴンの角を折り、危機を脱する。  助けた竜の巫女と共に彼女の村へ向かうことになった俺だったが――。

猫好きのぼっちおじさん、招かれた異世界で気ままに【亜空間倉庫】で移動販売を始める

遥風 かずら
ファンタジー
【HOTランキング1位作品(9月2週目)】 猫好きを公言する独身おじさん麦山湯治(49)は商売で使っているキッチンカーを車検に出し、常連カードの更新も兼ねていつもの猫カフェに来ていた。猫カフェの一番人気かつ美人トラ猫のコムギに特に好かれており、湯治が声をかけなくても、自発的に膝に乗ってきては抱っこを要求されるほどの猫好き上級者でもあった。 そんないつものもふもふタイム中、スタッフに信頼されている湯治は他の客がいないこともあって、数分ほど猫たちの見守りを頼まれる。二つ返事で猫たちに温かい眼差しを向ける湯治。そんな時、コムギに手招きをされた湯治は細長い廊下をついて歩く。おかしいと感じながら延々と続く長い廊下を進んだ湯治だったが、コムギが突然湯治の顔をめがけて引き返してくる。怒ることのない湯治がコムギを顔から離して目を開けると、そこは猫カフェではなくのどかな厩舎の中。 まるで招かれるように異世界に降り立った湯治は、好きな猫と一緒に生きることを目指して外に向かうのだった。

眺めるだけならよいでしょうか?〜美醜逆転世界に飛ばされた私〜

波間柏
恋愛
美醜逆転の世界に飛ばされた。普通ならウハウハである。だけど。 ✻読んで下さり、ありがとうございました。✻

40歳のおじさん 旅行に行ったら異世界でした どうやら私はスキル習得が早いようです

カムイイムカ(神威異夢華)
ファンタジー
部長に傷つけられ続けた私 とうとうキレてしまいました なんで旅行ということで大型連休を取ったのですが 飛行機に乗って寝て起きたら異世界でした…… スキルが簡単に得られるようなので頑張っていきます

学校ごと異世界に召喚された俺、拾ったスキルが強すぎたので無双します

名無し
ファンタジー
 毎日のようにいじめを受けていた主人公の如月優斗は、ある日自分の学校が異世界へ転移したことを知る。召喚主によれば、生徒たちの中から救世主を探しているそうで、スマホを通してスキルをタダで配るのだという。それがきっかけで神スキルを得た如月は、あっという間に最強の男へと進化していく。

『異世界に転移した限界OL、なぜか周囲が勝手に盛り上がってます』

宵森みなと
ファンタジー
ブラック気味な職場で“お局扱い”に耐えながら働いていた29歳のOL、芹澤まどか。ある日、仕事帰りに道を歩いていると突然霧に包まれ、気がつけば鬱蒼とした森の中——。そこはまさかの異世界!?日本に戻るつもりは一切なし。心機一転、静かに生きていくはずだったのに、なぜか事件とトラブルが次々舞い込む!?

クラス転移したけど、皆さん勘違いしてません?

青いウーパーと山椒魚
ファンタジー
加藤あいは高校2年生。 最近ネット小説にハマりまくっているごく普通の高校生である。 普通に過ごしていたら異世界転移に巻き込まれた? しかも弱いからと森に捨てられた。 いやちょっとまてよ? 皆さん勘違いしてません? これはあいの不思議な日常を書いた物語である。 本編完結しました! 相変わらず話ごちゃごちゃしていると思いますが、楽しんでいただけると嬉しいです! 1話は1000字くらいなのでササッと読めるはず…

処理中です...