タロットチートで生き残る!…ことが出来るかなあ

新和浜 優貴

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本編

52,遭遇

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「どうするよ、レベッカ。東に一つ、西に二つ。全部一気にとは行かねえぞ」
「どうするも何も、行くしかない。二手に別れよう。西の二つは距離も近いから私とアンジュで行く。東はギルたちがお願い」
「わかった。気をつけろよ」

  そう言ってギルさんたちは走り出した。私たちも別の信号弾に向けて走り出す。
  すぐに金属同士がぶつかるような甲高い音や、何かが倒れるような、叩きつけるような音、叫び声なんかが聞こえてきた。茂みを抜けると五人くらいの冒険者と、冒険者より一回り大きい、やせ細った猿みたいな魔物の姿があった。

「まずは私が切り込む。アンジュは怪我人のフォローを最初にお願い!」
「わかった!」

  言うが早いか、レベッカは冒険者と切り結んでる魔物に向かって切りかかっていった。
  私は私の仕事をしよう。怪我人は二人。一人は軽傷だけど、もう一人の傷はかなり重い。放っておいたらまずい。

悪魔デビル!  教授、お願い!」
「承知した」

  怪我をした二人は教授に任せて、レベッカたちの援護に向かう。戦ってる魔物は妙に手足が長くて、灰色の肌をしてる。背を向けてるから今なら奇襲も出来るかな。

隠者ハーミットストレングス

  小声で自分を強化して、まっすぐ魔物へ突っ込む。自分の体重も加えて、魔物目掛けて最上段から全力でククリナイフを振り下ろす。当たった、そう思ったけど、寸前で魔物の爪に阻まれた。魔物の肩の辺りを蹴って、距離を取る。

「アハハ、ハハハ、ハハ」

  魔物は、やけにガサガサした耳障りな声で笑って、ゆっくり振り向いた。こちらに向けられた魔物の顔は、恐怖に引き攣り、醜く歪んではいるけど、はっきりとだとわかった。

「何、こいつ……」
「アハハ、ハハハハ!」

  狂った笑い声を上げながら魔物は私に襲いかかってきた。鋭い爪を振り回す度に木や地面が抉られ、切り裂かれてく。そんな爪に当たるなんて冗談じゃない。ククリナイフで滑らせるように攻撃を凌ぐ。

「はっ!」

  レベッカが魔物の背後から切りかかるけど、魔物は後ろに目でもついてるみたいに爪で剣を受け止める。
  私たちが攻撃してる合間を縫って、他の冒険者の人が矢を射ったり、魔法を放ったりするけど、どれも避けられてしまう。
  幸い怪我をする人は出てないけど、魔物に疲れてる様子はないし、このままじゃジリ貧だよ。

「アンジュ、ロゥ殿を呼べる!?」
「少し隙を作ってくれれば大丈夫!」
「了解!」

  そう叫ぶとレベッカは魔物と私の間に入って、思いっきり魔物に剣を振り下ろした。爪で防がれるけど、そのまま押し込んで魔物と鍔迫り合いしてるみたいになった。

吊るされた男ハングドマン!」
「御意」

  ロゥさんが手をかざすと、どこからともなく現れた縄が魔物に向かっていく。何本かは爪で切り飛ばされたけど、その度に縄の数は増えて、魔物を縛り上げた。

「今だ!  全員かかれ!」

  レベッカの声に合わせて冒険者全員で攻撃を仕掛ける。切り裂かれ、射られ、貫かれ、燃やされ、魔物は一瞬だけ体を震わせると動かなくなった。
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