53 / 97
本編
52,遭遇
しおりを挟む「どうするよ、レベッカ。東に一つ、西に二つ。全部一気にとは行かねえぞ」
「どうするも何も、行くしかない。二手に別れよう。西の二つは距離も近いから私とアンジュで行く。東はギルたちがお願い」
「わかった。気をつけろよ」
そう言ってギルさんたちは走り出した。私たちも別の信号弾に向けて走り出す。
すぐに金属同士がぶつかるような甲高い音や、何かが倒れるような、叩きつけるような音、叫び声なんかが聞こえてきた。茂みを抜けると五人くらいの冒険者と、冒険者より一回り大きい、やせ細った猿みたいな魔物の姿があった。
「まずは私が切り込む。アンジュは怪我人のフォローを最初にお願い!」
「わかった!」
言うが早いか、レベッカは冒険者と切り結んでる魔物に向かって切りかかっていった。
私は私の仕事をしよう。怪我人は二人。一人は軽傷だけど、もう一人の傷はかなり重い。放っておいたらまずい。
「悪魔! 教授、お願い!」
「承知した」
怪我をした二人は教授に任せて、レベッカたちの援護に向かう。戦ってる魔物は妙に手足が長くて、灰色の肌をしてる。背を向けてるから今なら奇襲も出来るかな。
「隠者、力」
小声で自分を強化して、まっすぐ魔物へ突っ込む。自分の体重も加えて、魔物目掛けて最上段から全力でククリナイフを振り下ろす。当たった、そう思ったけど、寸前で魔物の爪に阻まれた。魔物の肩の辺りを蹴って、距離を取る。
「アハハ、ハハハ、ハハ」
魔物は、やけにガサガサした耳障りな声で笑って、ゆっくり振り向いた。こちらに向けられた魔物の顔は、恐怖に引き攣り、醜く歪んではいるけど、はっきりと人間の顔だとわかった。
「何、こいつ……」
「アハハ、ハハハハ!」
狂った笑い声を上げながら魔物は私に襲いかかってきた。鋭い爪を振り回す度に木や地面が抉られ、切り裂かれてく。そんな爪に当たるなんて冗談じゃない。ククリナイフで滑らせるように攻撃を凌ぐ。
「はっ!」
レベッカが魔物の背後から切りかかるけど、魔物は後ろに目でもついてるみたいに爪で剣を受け止める。
私たちが攻撃してる合間を縫って、他の冒険者の人が矢を射ったり、魔法を放ったりするけど、どれも避けられてしまう。
幸い怪我をする人は出てないけど、魔物に疲れてる様子はないし、このままじゃジリ貧だよ。
「アンジュ、ロゥ殿を呼べる!?」
「少し隙を作ってくれれば大丈夫!」
「了解!」
そう叫ぶとレベッカは魔物と私の間に入って、思いっきり魔物に剣を振り下ろした。爪で防がれるけど、そのまま押し込んで魔物と鍔迫り合いしてるみたいになった。
「吊るされた男!」
「御意」
ロゥさんが手をかざすと、どこからともなく現れた縄が魔物に向かっていく。何本かは爪で切り飛ばされたけど、その度に縄の数は増えて、魔物を縛り上げた。
「今だ! 全員かかれ!」
レベッカの声に合わせて冒険者全員で攻撃を仕掛ける。切り裂かれ、射られ、貫かれ、燃やされ、魔物は一瞬だけ体を震わせると動かなくなった。
10
あなたにおすすめの小説
お飾りの妻として嫁いだけど、不要な妻は出ていきます
菻莅❝りんり❞
ファンタジー
貴族らしい貴族の両親に、売られるように愛人を本邸に住まわせている其なりの爵位のある貴族に嫁いだ。
嫁ぎ先で私は、お飾りの妻として別棟に押し込まれ、使用人も付けてもらえず、初夜もなし。
「居なくていいなら、出ていこう」
この先結婚はできなくなるけど、このまま一生涯過ごすよりまし
クラス転移したけど、皆さん勘違いしてません?
青いウーパーと山椒魚
ファンタジー
加藤あいは高校2年生。
最近ネット小説にハマりまくっているごく普通の高校生である。
普通に過ごしていたら異世界転移に巻き込まれた?
しかも弱いからと森に捨てられた。
いやちょっとまてよ?
皆さん勘違いしてません?
これはあいの不思議な日常を書いた物語である。
本編完結しました!
相変わらず話ごちゃごちゃしていると思いますが、楽しんでいただけると嬉しいです!
1話は1000字くらいなのでササッと読めるはず…
異世界へ誤召喚されちゃいました 女神の加護でほのぼのスローライフ送ります
モーリー
ファンタジー
⭐︎第4回次世代ファンタジーカップ16位⭐︎
飛行機事故で両親が他界してしまい、社会人の長男、高校生の長女、幼稚園児の次女で生きることになった御剣家。
保険金目当てで寄ってくる奴らに嫌気がさしながらも、3人で支え合いながら生活を送る日々。
そんな矢先に、3人揃って異世界に召喚されてしまった。
召喚特典として女神たちが加護やチート能力を与え、異世界でも生き抜けるようにしてくれた。
強制的に放り込まれた異世界。
知らない土地、知らない人、知らない世界。
不安をはねのけながら、時に怖い目に遭いながら、3人で異世界を生き抜き、平穏なスローライフを送る。
そんなほのぼのとした物語。
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
異世界に転移したら、孤児院でごはん係になりました
雪月夜狐
ファンタジー
ある日突然、異世界に転移してしまったユウ。
気がつけば、そこは辺境にある小さな孤児院だった。
剣も魔法も使えないユウにできるのは、
子供たちのごはんを作り、洗濯をして、寝かしつけをすることだけ。
……のはずが、なぜか料理や家事といった
日常のことだけが、やたらとうまくいく。
無口な男の子、甘えん坊の女の子、元気いっぱいな年長組。
個性豊かな子供たちに囲まれて、
ユウは孤児院の「ごはん係」として、毎日を過ごしていく。
やがて、かつてこの孤児院で育った冒険者や商人たちも顔を出し、
孤児院は少しずつ、人が集まる場所になっていく。
戦わない、争わない。
ただ、ごはんを作って、今日をちゃんと暮らすだけ。
ほんわか天然な世話係と子供たちの日常を描く、
やさしい異世界孤児院ファンタジー。
【完結】スーパーの店長・結城偉介 〜異世界でスーパーの売れ残りを在庫処分〜
かの
ファンタジー
世界一周旅行を夢見てコツコツ貯金してきたスーパーの店長、結城偉介32歳。
スーパーのバックヤードで、うたた寝をしていた偉介は、何故か異世界に転移してしまう。
偉介が転移したのは、スーパーでバイトするハル君こと、青柳ハル26歳が書いたファンタジー小説の世界の中。
スーパーの過剰商品(売れ残り)を捌きながら、微妙にズレた世界線で、偉介の異世界一周旅行が始まる!
冒険者じゃない! 勇者じゃない! 俺は商人だーーー! だからハル君、お願い! 俺を戦わせないでください!
ボクが追放されたら飢餓に陥るけど良いですか?
音爽(ネソウ)
ファンタジー
美味しい果実より食えない石ころが欲しいなんて、人間て変わってますね。
役に立たないから出ていけ?
わかりました、緑の加護はゴッソリ持っていきます!
さようなら!
5月4日、ファンタジー1位!HOTランキング1位獲得!!ありがとうございました!
異世界に転移してしまった私、古民家をもらったのでカフェを始めたら大盛況。国王陛下が頻繁に来るのですが、どうしたらいいですか?
来栖とむ
ファンタジー
ブラック企業で疲れ果てた30歳の元OL・美里(みさと)が転移した先は、見渡す限りの深い森。
そこで彼女が授かったのは、魔女の称号……ではなく、一軒の**「日本の古民家」**だった!
亡き祖母が遺したその屋敷には、異世界では失われたはずの「お醤油」「お味噌」「白いお砂糖」という禁断の調味料が眠っていて――。
「えっ、唐揚げにそんなに感動しちゃうの?」
「プリン一口で、国王陛下が泣いちゃった……!?」
おにぎり、オムライス、そして肉汁溢れるハンバーグ。
現代日本の「当たり前」が、この世界では常識を覆す究極の美食に。
お掃除のプロな親子や、お忍びの王様、さらにはツンデレな宮廷料理人まで巻き込んで、
美味しい香りに包まれた、心もお腹も満たされるスローライフが今、始まります!
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる