タロットチートで生き残る!…ことが出来るかなあ

新和浜 優貴

文字の大きさ
56 / 97
本編

55,変容

しおりを挟む

「もっといるとは思ったけど、ここまでたァ思ってねえんだがな!」
「ギル、口より手を動かしてくれる!?」
「二人とも!  軽口叩いてる場合じゃないよ!」

  ギルさんの予想は見事に的中した。少しだけ森の奥に進んだだけなのに、私たちは見事に灰色の魔物に囲まれて、絶賛ピンチ中。正面から三体来たと思ったらいくら、右から左からわらわらとやってきて、また正面から現れるみたいなのを繰り返してる。負傷したら後ろに下がっていくせいで、何体を相手にしてるか全くわからない。というか、いくらなんでも多すぎないかな!  魔物の波が止まる気配がないんだけど!

「青き茨よ強き茨よ、敵を捕らえる楔とならん!  ウェッジソーン・ランペイジ!」

  ミリアさんが叫ぶと、地面からたくさんの茨が出てきて、魔物たちに絡みついていく。魔物も茨から逃れようと必死にもがくけど、もがく度に棘が深く突き刺さってる。爪で切ろうともしてるけど、どんなに勢いよく切りつけても茨はビクともしてない。抵抗虚しく、魔物達は茨に絡め取られて動けなくなっていった。

「すごい……」
「ミリアは植物に力を借りる魔法が得意なんだよ。木精霊と花精霊の加護を持ってるからね」
「なるほど、だからこんなことが……」
「と言っても万能ではないわよ?  植物の力が少ないところだと威力は落ちるから。それより、今のうちに進みましょう。私たちでこれだと、囮になってる方はどうなってるか分からないわ」

  ミリアさんの言葉に頷いて歩を進めるけど、囮の方にあの魔物が行ってるとは思えないんだよなあ。ただなんとなくそう思っただけだけだから、加護を信じるならだけど。でも、一体、二体で信号弾を上げてたパーティが集まっても、あの数相手じゃあまるで手も足も出ないと思うから信号弾の一つでも上がると思うんだけどなあ。
  相手するのが大変すぎて撃てないだけっていうのも考えられる。下手するともうやられてるってことも。それだと囮も何もないから大丈夫だといいんだけど。
  ……今、私は何を考えた?  他のパーティの人がやられてるかもしれない、それで、そうだとしたら。囮の、意味がない、って。

「アンジュ?」

  はっ、とレベッカに呼ばれて我に返る。

「大丈夫?  顔色が悪いよ」
「ごめん、大丈夫。少し嫌な想像しちゃっただけだから」
「そう?  でも、きつかったらちゃんと言ってね。これは心配じゃなく、私たちの命のためでもあるから。弱った人を守りながら戦う余裕は正直無いからね」
「うん、わかった」

  やっぱり、最近少しずつ自分が変わってきてる気がする。人の命を軽んじるような、命に価値を付けるような、そんな自分になってる。泥水がじわじわと布に染み込んでくみたいに、私がどんどん侵食されてるような錯覚を覚える。私は、私のままでいられてるのかな。

「みんな、止まって。あれを見て」

  レベッカの指さす先を見ると、三人の人影が見えた。一人は跪いてて、その前に二人が立ってる。二人は結構な身長差があるみたいで、頭一つ分くらい違いそう。大きい方は魔人なのかな。頭から角が生えてる。小さい方は人間みたいだけど……。

「あいつら、何してんだ……?」
「わからない。もう少し様子を見てみよう」

  すると、魔人が懐から何か取り出した。取り出したものは瓶か何かだったみたいで、中の液体を跪いた人にかけた。液体をかけられた人が蹲ったかと思うと、ぼこり、とその人の背中が弾けるように膨らんだ。
  ぼこり、ぼこり。少しずつその人の体は膨らんで、灰色の異形の姿になった。私たちが、さっきまで倒してきた魔物の姿に。
しおりを挟む
感想 88

あなたにおすすめの小説

猫好きのぼっちおじさん、招かれた異世界で気ままに【亜空間倉庫】で移動販売を始める

遥風 かずら
ファンタジー
【HOTランキング1位作品(9月2週目)】 猫好きを公言する独身おじさん麦山湯治(49)は商売で使っているキッチンカーを車検に出し、常連カードの更新も兼ねていつもの猫カフェに来ていた。猫カフェの一番人気かつ美人トラ猫のコムギに特に好かれており、湯治が声をかけなくても、自発的に膝に乗ってきては抱っこを要求されるほどの猫好き上級者でもあった。 そんないつものもふもふタイム中、スタッフに信頼されている湯治は他の客がいないこともあって、数分ほど猫たちの見守りを頼まれる。二つ返事で猫たちに温かい眼差しを向ける湯治。そんな時、コムギに手招きをされた湯治は細長い廊下をついて歩く。おかしいと感じながら延々と続く長い廊下を進んだ湯治だったが、コムギが突然湯治の顔をめがけて引き返してくる。怒ることのない湯治がコムギを顔から離して目を開けると、そこは猫カフェではなくのどかな厩舎の中。 まるで招かれるように異世界に降り立った湯治は、好きな猫と一緒に生きることを目指して外に向かうのだった。

40歳のおじさん 旅行に行ったら異世界でした どうやら私はスキル習得が早いようです

カムイイムカ(神威異夢華)
ファンタジー
部長に傷つけられ続けた私 とうとうキレてしまいました なんで旅行ということで大型連休を取ったのですが 飛行機に乗って寝て起きたら異世界でした…… スキルが簡単に得られるようなので頑張っていきます

学校ごと異世界に召喚された俺、拾ったスキルが強すぎたので無双します

名無し
ファンタジー
 毎日のようにいじめを受けていた主人公の如月優斗は、ある日自分の学校が異世界へ転移したことを知る。召喚主によれば、生徒たちの中から救世主を探しているそうで、スマホを通してスキルをタダで配るのだという。それがきっかけで神スキルを得た如月は、あっという間に最強の男へと進化していく。

男子高校生だった俺は異世界で幼児になり 訳あり筋肉ムキムキ集団に保護されました。

カヨワイさつき
ファンタジー
高校3年生の神野千明(かみの ちあき)。 今年のメインイベントは受験、 あとはたのしみにしている北海道への修学旅行。 だがそんな彼は飛行機が苦手だった。 電車バスはもちろん、ひどい乗り物酔いをするのだった。今回も飛行機で乗り物酔いをおこしトイレにこもっていたら、いつのまにか気を失った?そして、ちがう場所にいた?! あれ?身の危険?!でも、夢の中だよな? 急死に一生?と思ったら、筋肉ムキムキのワイルドなイケメンに拾われたチアキ。 さらに、何かがおかしいと思ったら3歳児になっていた?! 変なレアスキルや神具、 八百万(やおよろず)の神の加護。 レアチート盛りだくさん?! 半ばあたりシリアス 後半ざまぁ。 訳あり幼児と訳あり集団たちとの物語。 〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜 北海道、アイヌ語、かっこ良さげな名前 お腹がすいた時に食べたい食べ物など 思いついた名前とかをもじり、 なんとか、名前決めてます。     *** お名前使用してもいいよ💕っていう 心優しい方、教えて下さい🥺 悪役には使わないようにします、たぶん。 ちょっとオネェだったり、 アレ…だったりする程度です😁 すでに、使用オッケーしてくださった心優しい 皆様ありがとうございます😘 読んでくださる方や応援してくださる全てに めっちゃ感謝を込めて💕 ありがとうございます💞

狼になっちゃった!

家具屋ふふみに
ファンタジー
登山中に足を滑らせて滑落した私。気が付けば何処かの洞窟に倒れていた。……しかも狼の姿となって。うん、なんで? 色々と試していたらなんか魔法みたいな力も使えたし、此処ってもしや異世界!? ……なら、なんで私の目の前を通る人間の手にはスマホがあるんでしょう? これはなんやかんやあって狼になってしまった私が、気まぐれに人間を助けたりして勝手にワッショイされるお話である。

解呪の魔法しか使えないからとSランクパーティーから追放された俺は、呪いをかけられていた美少女ドラゴンを拾って最強へと至る

早見羽流
ファンタジー
「ロイ・クノール。お前はもう用無しだ」 解呪の魔法しか使えない初心者冒険者の俺は、呪いの宝箱を解呪した途端にSランクパーティーから追放され、ダンジョンの最深部へと蹴り落とされてしまう。 そこで出会ったのは封印された邪龍。解呪の能力を使って邪龍の封印を解くと、なんとそいつは美少女の姿になり、契約を結んで欲しいと頼んできた。 彼女は元は世界を守護する守護龍で、英雄や女神の陰謀によって邪龍に堕とされ封印されていたという。契約を結んだ俺は彼女を救うため、守護龍を封印し世界を牛耳っている女神や英雄の血を引く王家に立ち向かうことを誓ったのだった。 (1話2500字程度、1章まで完結保証です)

おっさん武闘家、幼女の教え子達と十年後に再会、実はそれぞれ炎・氷・雷の精霊の王女だった彼女達に言い寄られつつ世界を救い英雄になってしまう

お餅ミトコンドリア
ファンタジー
 パーチ、三十五歳。五歳の時から三十年間修行してきた武闘家。  だが、全くの無名。  彼は、とある村で武闘家の道場を経営しており、〝拳を使った戦い方〟を弟子たちに教えている。  若い時には「冒険者になって、有名になるんだ!」などと大きな夢を持っていたものだが、自分の道場に来る若者たちが全員〝天才〟で、自分との才能の差を感じて、もう諦めてしまった。  弟子たちとの、のんびりとした穏やかな日々。  独身の彼は、そんな彼ら彼女らのことを〝家族〟のように感じており、「こんな毎日も悪くない」と思っていた。  が、ある日。 「お久しぶりです、師匠!」  絶世の美少女が家を訪れた。  彼女は、十年前に、他の二人の幼い少女と一緒に山の中で獣(とパーチは思い込んでいるが、実はモンスター)に襲われていたところをパーチが助けて、その場で数時間ほど稽古をつけて、自分たちだけで戦える力をつけさせた、という女の子だった。 「私は今、アイスブラット王国の〝守護精霊〟をやっていまして」  精霊を自称する彼女は、「ちょ、ちょっと待ってくれ」と混乱するパーチに構わず、ニッコリ笑いながら畳み掛ける。 「そこで師匠には、私たちと一緒に〝魔王〟を倒して欲しいんです!」  これは、〝弟子たちがあっと言う間に強くなるのは、師匠である自分の特殊な力ゆえ〟であることに気付かず、〝実は最強の実力を持っている〟ことにも全く気付いていない男が、〝実は精霊だった美少女たち〟と再会し、言い寄られ、弟子たちに愛され、弟子以外の者たちからも尊敬され、世界を救って英雄になってしまう物語。 (※第18回ファンタジー小説大賞に参加しています。 もし宜しければ【お気に入り登録】で応援して頂けましたら嬉しいです! 何卒宜しくお願いいたします!)

クラス転移したら種族が変化してたけどとりあえず生きる

あっとさん
ファンタジー
16歳になったばかりの高校2年の主人公。 でも、主人公は昔から体が弱くなかなか学校に通えなかった。 でも学校には、行っても俺に声をかけてくれる親友はいた。 その日も体の調子が良くなり、親友と久しぶりの学校に行きHRが終わり先生が出ていったとき、クラスが眩しい光に包まれた。 そして僕は一人、違う場所に飛ばされいた。

処理中です...