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お、し、お、き
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「ホラホラ、働キナヨ~」
シオンが魔力を込めた小さな人形が、ダラダラと家事をする私を急き立てる。甲高い声は正直耳障りで、この人形が導入された次の日には街で耳栓を購入してきた。
「サボッテンジャナイヨ~」
「働いてるし」
煽るような言い方をするシオン人形にボソッと言い返してはみるものの、テキパキと体を動かす気にはなれなくてずっと流し場を磨いているんだから、シオン人形の言うことは的を射ている。分かってる。
二人暮らしに広すぎるこの家は、掃除をするのにも半日かかる。ただでさえ広いのに物が散乱しているのだから、たまったものではない。
「物が多すぎるのが悪いのよ」
なんの気なしにただ吐いた私の悪態に、シオン人形はパカッと口を開いて停止した。木でできた操り人形に水色の毛糸をくっつけただけという危ういバランスのシオン人形は、喋っていても怖いけれど黙るともっと怖い。
どうしたのかと声をかけようとすると、シオン人形は目を白黒させてカタカタと震えだした。「ひっ」と思わず声を漏らした私に、キキキキカタカタと奇妙に頭と腕を振りながら詰め寄ってきたかと思うと、猛然と言葉を紡ぎ出す。
「オ言葉ダケド、僕ハキチント片付ケテルヨ。散ラバッタ粉ヤラ液体ヤラ、果テニハパンツマデソコラ辺ニ落トシテ文字通リ尻拭イ紛イノコトヲサセテルノハドコノドナタダイ?」
私の足元にまとわりついて、「セクハラダナンテ言ワセナイヨ、寧ロ、強制的ニパンツヲ視界ニ入レサセルソノ行為コソ逆セクハラッテヤツダロ、ソウダロウ?」とかなんとか言葉を続けるシオン人形は、もはやホラーだ。
「ごめん!ごめんってば!私が悪かった働くから!許して!」
「ソウダ、分カレバイインダ、大体君ハ、今オシオキ中ダッテコトヲ忘レテヤシナイカイ?僕ハ今疲レテルナカ必死コイテ睡眠薬ヲ作ッテルヨ、コレダッテ君ノ尻拭イダゾ、普通弟子ガ師匠ニ尽クシテ教エヲ仰グンジャナイノカイ、何デ僕ハ君ノパンツヲ片付ケタリシテルンダイ、君ガ僕ノパンツヲ片付ケルベキナンジャナイノカイ…」
「ストップ、ストップ!」
「止マラナイヨ、止メラレナイヨ!」
「あああああああ!!」
頭がおかしくなる前に、これをどうにかして貰わないといけない。
私の尻拭いをしてくれているシオンには申し訳ないけど、このクレイジー人形の止め方が分からない。
とにかくシオン人形の胴を両手でガッと掴む。「何ヲスル!掃除ヲシロ!」と私の指を噛みちぎりそうな勢いで歯をカチカチ鳴らしながら喚くものだから、噛みつかれないようにシオン人形を体から極力離して保持する。
想像よりもずっと重かった人形をシオンの元へ持っていこうと一歩足を踏み出した時だった。バキャンッ!と弾けるような音がしたかと思うと、シオン人形がズンッと重くなった。
「なにこれ!?なにこれ!?」
焦って人形から手を離しそうになったが、離れなかった。
離れなかったのだ。手が人形にくっついている。人形は慌てふためく私を馬鹿にするように、「キキキキキ!キキキキキキ!」と喚き笑っている。
どうしよう、どうしようとパニックになった時に出てくる言葉は、五歳の時と何も変わっていない。
「シオン!シオン!」
バキャンッ!
「マルカ!?」
泣きそうになりながら叫ぶと、バキャンッ!と弾けるような音と同時に必ずシオンが現れるのだ。
五歳の時と、何も変わっていない。
シオンが魔力を込めた小さな人形が、ダラダラと家事をする私を急き立てる。甲高い声は正直耳障りで、この人形が導入された次の日には街で耳栓を購入してきた。
「サボッテンジャナイヨ~」
「働いてるし」
煽るような言い方をするシオン人形にボソッと言い返してはみるものの、テキパキと体を動かす気にはなれなくてずっと流し場を磨いているんだから、シオン人形の言うことは的を射ている。分かってる。
二人暮らしに広すぎるこの家は、掃除をするのにも半日かかる。ただでさえ広いのに物が散乱しているのだから、たまったものではない。
「物が多すぎるのが悪いのよ」
なんの気なしにただ吐いた私の悪態に、シオン人形はパカッと口を開いて停止した。木でできた操り人形に水色の毛糸をくっつけただけという危ういバランスのシオン人形は、喋っていても怖いけれど黙るともっと怖い。
どうしたのかと声をかけようとすると、シオン人形は目を白黒させてカタカタと震えだした。「ひっ」と思わず声を漏らした私に、キキキキカタカタと奇妙に頭と腕を振りながら詰め寄ってきたかと思うと、猛然と言葉を紡ぎ出す。
「オ言葉ダケド、僕ハキチント片付ケテルヨ。散ラバッタ粉ヤラ液体ヤラ、果テニハパンツマデソコラ辺ニ落トシテ文字通リ尻拭イ紛イノコトヲサセテルノハドコノドナタダイ?」
私の足元にまとわりついて、「セクハラダナンテ言ワセナイヨ、寧ロ、強制的ニパンツヲ視界ニ入レサセルソノ行為コソ逆セクハラッテヤツダロ、ソウダロウ?」とかなんとか言葉を続けるシオン人形は、もはやホラーだ。
「ごめん!ごめんってば!私が悪かった働くから!許して!」
「ソウダ、分カレバイインダ、大体君ハ、今オシオキ中ダッテコトヲ忘レテヤシナイカイ?僕ハ今疲レテルナカ必死コイテ睡眠薬ヲ作ッテルヨ、コレダッテ君ノ尻拭イダゾ、普通弟子ガ師匠ニ尽クシテ教エヲ仰グンジャナイノカイ、何デ僕ハ君ノパンツヲ片付ケタリシテルンダイ、君ガ僕ノパンツヲ片付ケルベキナンジャナイノカイ…」
「ストップ、ストップ!」
「止マラナイヨ、止メラレナイヨ!」
「あああああああ!!」
頭がおかしくなる前に、これをどうにかして貰わないといけない。
私の尻拭いをしてくれているシオンには申し訳ないけど、このクレイジー人形の止め方が分からない。
とにかくシオン人形の胴を両手でガッと掴む。「何ヲスル!掃除ヲシロ!」と私の指を噛みちぎりそうな勢いで歯をカチカチ鳴らしながら喚くものだから、噛みつかれないようにシオン人形を体から極力離して保持する。
想像よりもずっと重かった人形をシオンの元へ持っていこうと一歩足を踏み出した時だった。バキャンッ!と弾けるような音がしたかと思うと、シオン人形がズンッと重くなった。
「なにこれ!?なにこれ!?」
焦って人形から手を離しそうになったが、離れなかった。
離れなかったのだ。手が人形にくっついている。人形は慌てふためく私を馬鹿にするように、「キキキキキ!キキキキキキ!」と喚き笑っている。
どうしよう、どうしようとパニックになった時に出てくる言葉は、五歳の時と何も変わっていない。
「シオン!シオン!」
バキャンッ!
「マルカ!?」
泣きそうになりながら叫ぶと、バキャンッ!と弾けるような音と同時に必ずシオンが現れるのだ。
五歳の時と、何も変わっていない。
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