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第5話 消えた学生証 2幕
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「今日はあのボロボロの自転車には乗ってないんですね」
小吉が僅かな敵対心を出したような言い方をする。実際に出ていたかどうかは定かではない。
「あれは昨日、君たちに捨てるように頼んだだろう?」
「ガラクタをを拾い集めてボロボロの自転車を作り上げる仕事じゃないんですね」
これは間違いなく敵対心があるように思えてくる。
「探偵を何だと思っているんだい。確かに、散り散りになってしまった婚姻届をかき集めてジグゾーパズルよろしく復元させたことはあったが。あれはある意味過去一辛い仕事だった。」賀茂は太陽も何も出ていないのに顔の前に手をかざし眩しそうな顔をして過去の激務を回顧していた。変な人だ。
「ところで、2日連続でこんな何もないところに、何の用なんですか?」
僕は純然たる率直な疑問を賀茂に投げつけた。
「まさか、あんたも調査か?」
小吉が横槍を入れてくる、薄々気づいてはいたけど、どうやら小吉はこの男があまり好きではないらしい。
「まあ、調査といえば調査だね・・・ん?あんた、も?」
「えぇ、僕たちもある探し物をしていて・・・」
そういえばこの人は探偵だし、昨日バラバラになった自転車を捨てた義理がある。この人に頼んでみるのもありなのではないか。
「ほう、探し物かい?どれ、その道のプロに聞かせておくれよ、何を探してるんだい?」
「学生証だよ」小吉が仏頂面をして答える。
「君、私のこと嫌いかな?まあいいか。学生証ね、カードの類は拾われている可能性が高い。まあその後に悪用される危険性もあるから何ともいえないのだが・・・。でも、学生証ならたいていの人間からしたら拾ったところでそれほど役に立たない。交番にはいってみたのかい?」
「いえ、これから行こうとしていたんです」
「そうか、それなら行ってみるといい」
「何だ、その道のプロとか言いながら俺たちと同じ結論しか出せてないじゃないか」
小吉が不満を垂れ流す。もっと面白い解決方法をよこせと言っているようだ。
「ふむ、そうか。ではわかったこうしよう。交番になかったら、見つかるまで私も君たちに付き合ってあげよう。昨日の借りもあるしな。」小吉に憎まれ口を叩かれても顔色ひとつ変えずに涼しい顔をして返してくる。何というか、大人の余裕がある。
「わかりました、では、早速交番にいきましょう!」
僕は交番のある方角を指差しながら歩き出そうとする。
「いや、私はこの辺りで待っているよ。私の調査もあるしな。」
賀茂は、露骨に交番にいくことを避けているように見えた。そういえば、警察と探偵は商売敵のようなものになるのだろうか。何にしろ、無理やり連れていく事に何のメリットはない。この男にもすることがあるのだろう。2人で行く事にしよう。
「はあ、そうですか、わかりました。行こう、小吉」
「逃げないでくださいよ」
「もちろん、逃げも隠れもしないさ」
小吉は最後まで憎まれ口を叩いていた。
---------------------------------------------------------
「賀茂さんのこと、嫌いなのかい?」
僕はさっきの会話中、ずっと思っていたことを小吉にきいた。
「嫌いとか好きとかを判断するのはまだ早すぎるだろう。ただ、単純に信じられないだけだ」
「信じられない?」
「あぁ、あの賀茂という男、全身を薄い自己フィルターで守っているように見えるだろ?誰もがきているようなスーツ姿で、飄々としていて、発言もどこか曖昧だ。明らかに何かを隠そうとしている。」
「それは・・・そういう仕事だし、守らなければいけない秘密はたくさんあるんじゃないか」
「そうかもな、でもだからと言って信じる理由にはならない」
小吉はすっかり日の落ちた暗い歩道を歩きながら真っ直ぐな口調でそう言った。小吉のこの疑り深さは好ましく思っていた。
簡単に人を信用してはいけない。
それはそうだろう、と思っている人もたくさんいるかもしれないが実際のところ、できるかどうかはまた別の問題だ。初対面の人間を信用せずに敵意を見せつけるのは容易いことではない。適当に仲良くしているフリをして穏便に済ます人の方が多いのではないか。小吉は「俺はあんたを信用しない」と言っているかのような態度で接しているからそれだけでも稀有な存在だ。それが吉と出るか凶と出るか、というところはあるが。
「確かに、それはそうだな」
賀茂と別れてから5 分ほどで僕たちは交番に到着した。交番に来たのはいつぶりだろうか。小学生の時に近所の公園に隣接していたテニスコートで拾った1万円を届けた時以来かな。そういえば、あの時の1万円はどうなったのだろうか。拾い主は何割かもらえるんだったかな。なんて考えていると気づけば小吉がお巡りさんとすでに話していた。
「学生証?どんなものだい?」
メガネをかけた中年のお巡りさんが少し眠いのか、ローテンションで聞いてくる。
「僕持ってます。これと同じものです」僕は自分の学生証を見せた。
「ん~、届いていないなあ。1週間くらい遡ってみても、届いた記録はないよ」
警察官が拾得物管理帳とでも書かれていそうなファイルをペラペラめくりながら低いテンションのまま言った。
「そうで」
「そうですか!わかりました、では、失礼します!」
小吉が僕の言葉を遮って急に声色を変えて口を開いた。かと思うとすぐに交番を出ていった。
「あ、ちょ、君!」
お巡りさんもさすがに驚いたのか、声が急に大きくなった。
「すみません、これ、僕の電話番号です。もし届いたら連絡してください」
「あ、あぁ・・・」
僕も逃げるように交番を後にして、小吉を追いかける。
「どうしたんだよ小吉、急に元気になったな」
小走りで小吉に追いつき歩幅を合わせる。
「何を言っているんだ大治、これであの男の力がわかるじゃないか」
小吉はRPGゲームで一度負けたボスにレベル上げをして再度挑む少年のような顔をしていた。
「どんだけあの男を目の敵にしたいんだよ・・・」
小吉はあの男を試すことができるのがなんだかんだ嬉しいのだろう。来た時よりも2倍近い早さで賀茂の元へ戻った。
小吉が僅かな敵対心を出したような言い方をする。実際に出ていたかどうかは定かではない。
「あれは昨日、君たちに捨てるように頼んだだろう?」
「ガラクタをを拾い集めてボロボロの自転車を作り上げる仕事じゃないんですね」
これは間違いなく敵対心があるように思えてくる。
「探偵を何だと思っているんだい。確かに、散り散りになってしまった婚姻届をかき集めてジグゾーパズルよろしく復元させたことはあったが。あれはある意味過去一辛い仕事だった。」賀茂は太陽も何も出ていないのに顔の前に手をかざし眩しそうな顔をして過去の激務を回顧していた。変な人だ。
「ところで、2日連続でこんな何もないところに、何の用なんですか?」
僕は純然たる率直な疑問を賀茂に投げつけた。
「まさか、あんたも調査か?」
小吉が横槍を入れてくる、薄々気づいてはいたけど、どうやら小吉はこの男があまり好きではないらしい。
「まあ、調査といえば調査だね・・・ん?あんた、も?」
「えぇ、僕たちもある探し物をしていて・・・」
そういえばこの人は探偵だし、昨日バラバラになった自転車を捨てた義理がある。この人に頼んでみるのもありなのではないか。
「ほう、探し物かい?どれ、その道のプロに聞かせておくれよ、何を探してるんだい?」
「学生証だよ」小吉が仏頂面をして答える。
「君、私のこと嫌いかな?まあいいか。学生証ね、カードの類は拾われている可能性が高い。まあその後に悪用される危険性もあるから何ともいえないのだが・・・。でも、学生証ならたいていの人間からしたら拾ったところでそれほど役に立たない。交番にはいってみたのかい?」
「いえ、これから行こうとしていたんです」
「そうか、それなら行ってみるといい」
「何だ、その道のプロとか言いながら俺たちと同じ結論しか出せてないじゃないか」
小吉が不満を垂れ流す。もっと面白い解決方法をよこせと言っているようだ。
「ふむ、そうか。ではわかったこうしよう。交番になかったら、見つかるまで私も君たちに付き合ってあげよう。昨日の借りもあるしな。」小吉に憎まれ口を叩かれても顔色ひとつ変えずに涼しい顔をして返してくる。何というか、大人の余裕がある。
「わかりました、では、早速交番にいきましょう!」
僕は交番のある方角を指差しながら歩き出そうとする。
「いや、私はこの辺りで待っているよ。私の調査もあるしな。」
賀茂は、露骨に交番にいくことを避けているように見えた。そういえば、警察と探偵は商売敵のようなものになるのだろうか。何にしろ、無理やり連れていく事に何のメリットはない。この男にもすることがあるのだろう。2人で行く事にしよう。
「はあ、そうですか、わかりました。行こう、小吉」
「逃げないでくださいよ」
「もちろん、逃げも隠れもしないさ」
小吉は最後まで憎まれ口を叩いていた。
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「賀茂さんのこと、嫌いなのかい?」
僕はさっきの会話中、ずっと思っていたことを小吉にきいた。
「嫌いとか好きとかを判断するのはまだ早すぎるだろう。ただ、単純に信じられないだけだ」
「信じられない?」
「あぁ、あの賀茂という男、全身を薄い自己フィルターで守っているように見えるだろ?誰もがきているようなスーツ姿で、飄々としていて、発言もどこか曖昧だ。明らかに何かを隠そうとしている。」
「それは・・・そういう仕事だし、守らなければいけない秘密はたくさんあるんじゃないか」
「そうかもな、でもだからと言って信じる理由にはならない」
小吉はすっかり日の落ちた暗い歩道を歩きながら真っ直ぐな口調でそう言った。小吉のこの疑り深さは好ましく思っていた。
簡単に人を信用してはいけない。
それはそうだろう、と思っている人もたくさんいるかもしれないが実際のところ、できるかどうかはまた別の問題だ。初対面の人間を信用せずに敵意を見せつけるのは容易いことではない。適当に仲良くしているフリをして穏便に済ます人の方が多いのではないか。小吉は「俺はあんたを信用しない」と言っているかのような態度で接しているからそれだけでも稀有な存在だ。それが吉と出るか凶と出るか、というところはあるが。
「確かに、それはそうだな」
賀茂と別れてから5 分ほどで僕たちは交番に到着した。交番に来たのはいつぶりだろうか。小学生の時に近所の公園に隣接していたテニスコートで拾った1万円を届けた時以来かな。そういえば、あの時の1万円はどうなったのだろうか。拾い主は何割かもらえるんだったかな。なんて考えていると気づけば小吉がお巡りさんとすでに話していた。
「学生証?どんなものだい?」
メガネをかけた中年のお巡りさんが少し眠いのか、ローテンションで聞いてくる。
「僕持ってます。これと同じものです」僕は自分の学生証を見せた。
「ん~、届いていないなあ。1週間くらい遡ってみても、届いた記録はないよ」
警察官が拾得物管理帳とでも書かれていそうなファイルをペラペラめくりながら低いテンションのまま言った。
「そうで」
「そうですか!わかりました、では、失礼します!」
小吉が僕の言葉を遮って急に声色を変えて口を開いた。かと思うとすぐに交番を出ていった。
「あ、ちょ、君!」
お巡りさんもさすがに驚いたのか、声が急に大きくなった。
「すみません、これ、僕の電話番号です。もし届いたら連絡してください」
「あ、あぁ・・・」
僕も逃げるように交番を後にして、小吉を追いかける。
「どうしたんだよ小吉、急に元気になったな」
小走りで小吉に追いつき歩幅を合わせる。
「何を言っているんだ大治、これであの男の力がわかるじゃないか」
小吉はRPGゲームで一度負けたボスにレベル上げをして再度挑む少年のような顔をしていた。
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