サマーナイトパーティ

言ノ葉征

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第14話 チュートリアル

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 僕たちはそれから急遽組むことになったパーティ3人で大学に向かうことにした。その道中、改めてお互いのことを知り合う時間になった。聞けば彼女も僕たちと同じ大学の学生で年も同じのようだ。バス停で探偵ものの小説を読んでいるときに美鈴さんに声をかけられたらしい。そんなものでスカウトのようなものをしてもいいものなのだろうか。僕たちも案外適当に選ばれたのかもしれない。選ばれたのは小吉か。

「へえ、それじゃあ、2人はお互いのことをよく知っているのね」
「まあ、俺とあんた、大治とあんたの関係に比べたら知っているだろうね」小吉は基本的に初対面の人間には素っ気無いのだが、本人に特に自覚はないらしい。僕も最初は無愛想で掴みどころがないやつだと思ってた。

「あんたじゃない」瀬奈が少し冷たく言う。
 彼女のことはまだ全くわからないが、今のところ普通の女の子のように見える。一つ分かったことといえば、彼女は話している人の方をちゃんと見て会話をする。ちゃんと話を聞いてくれているように感じる。小学生くらいの頃によく先生に注視されていたような記憶がるがそんなものはどうでもいいだろうと思っていたため、実際にこうして真っ直ぐな瞳を向けられて話をするとあの時の先生の言葉を素直に聞かなかった自分を少し悔いた。

 彼女につられてか、僕も彼女の方を見て話そしていると、よく見たた彼女は左目の下に小さな黒子があることに気付いた。目元に黒子がある人はそれがチャームポイントになったりするのだろうが、彼女の場合はそれほど目立つものではなかった。気づく人は気づくだろうと言う程度だ。だが、彼女と話したら彼女のこの接し方や話し方に引き込まれて、自ずと気付いてしまうような気もする。

「じゃあ、なんて呼べばいいんだよ」小吉が前を向いたまま言う。
「瀬奈でいいわ」瀬奈が間髪いれずに答える。せなと読んで欲しいのだろうか。
「そっか、じゃあ瀬奈って呼ばせてもらうよ、瀬奈。俺のことも小吉でいい」
「ありがとう、小吉」

 初対面の女性を下の名前で呼ぶのは僕からすると少しハードルが高いことのように感じてしまうのだが小吉はそう言うことは気にしない。ましてや今回は相手がそう呼んでと申し出ているのだ。その点について聞いても「何でだよ、向こうがそう呼んでって言ってるじゃないか」と当たり前のように返してくるだろう。

「じゃあ、あなたのことは大治って呼んだらいいかしら?」
「あぁ、いいよ」
 一瞬僕も瀬奈と呼ぼうと思ったが躊躇ってしまった。やはり慣れていないのだろう。

「ところで、この最初の依頼、どうなんだ。俺たちで解決できるのか。人探しと言ってしまえばそれまでだけど、手がかりが少ないし、そう簡単ではなさそうだ」小吉が本題に入るかのような口調で僕たちに投げかける。

「それはそうだけど、初回なんだし、きっとそんなに期待されてないだろうから、できることやればいいんじゃないかな」僕も同じようなことは思っていたが完璧にこなす必要はないとも思っていた。

「けれど、これで私たちの資質を試されているのだとしたら何かしらの功績は残さないと」

「瀬奈は探偵になりたいのかい?」自然と瀬奈と呼ぶことができて安心している自分がいる。

「なりたいと思ったことはなかったけど、憧れてはいたわ。子供の頃からミステリーが好きで、その類の物語にはよく触れてきたの。ただ、自分がなるとかそういう視線では考えたことなかったから美鈴さんに声をかけてもらった時は驚いたわ。まさかね私が、ってね。」瀬奈は少し冗談っぽくそう言った。

「じゃあ、もしうまくいったらこのまま探偵に?」小吉が興味なさげに聞く。

「そこまで考えているわけではないけど、面白そうではあるわよね。それに、私、大学に友達と呼べるような人がほとんどいなくて、特に所属している部活やサークルもないから、何かしら所属できるものがあるって、同じ目的のために活動している人たちがいるのって少し安心するのかも。だから、美鈴さんの誘いにも乗ったし。」少し俯きがちに答える。

「そっか、まあ、そんなもんだよな。全くあの人たちは、急すぎるんだよな、色々と」そういう小吉の口調は普段より少し明るく感じた。小吉もきっと何か別のドラマが人生に起きていることが嫌ではないようだ。

「そう言えば、あなたたちを連れてきた賀茂さん、だっけ?どんな人なの?」今度は瀬奈が聞いてくる。

「くも」小吉は一言だけ、そう言った。僕には何となく分かったが何も知らない人にそれではわからないだろう。

「え?」
 瀬奈は虫?空に浮かんでいる方?と小さい独り言を呟いていたが、まもなくクスッとして「なるほどね」と言っていた。

 特別無愛想な印象もなかったが、彼女が笑ったのを初めて見たような気がした。
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