異世界に美少女の姿で転生してしまい心が折れてしまいそうです

鬼松 野兵衛

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第1話 状況確認は命より大事です

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 召喚された暦の目の前に突然現れたのは床一面に敷き詰められた赤い絨毯に、石の壁、見上げれば金でできているのであろうシャンデリアが吊るされている。しかし、華やかさという言葉は微塵もなく、長い間放置され風化してボロボロに朽ちており、夜の暗さもあいまって非常に気味が悪かった。おそらく中世ヨーロッパで作られた貴族の館なのだろう。
  
 「おいおい、なんでスタート地点が廃墟型ダンジョンの中なんだよ。ちょっとは人のことを考えろとあれほど言っただろあのポンコツ神め」

 転移前、ミノリエルは確かこう言っていた。〝ブラックリゾートによく似た異世界に送ってあげる〟と、あのゲームは空想上の中世ヨーロッパを舞台に剣と魔法を使い、数多の魔物と戦っていく王道RPGだ。つまるところ、安全な
ホームタウン以外はほぼ確実に魔物が出るということになる。これが本当のゲームだったのならば、初期装備でも楽に倒せる魔物しか出てこないのだろうが、世界となると最悪、モンスターは出ますけど人族のパラメータは前世の一般人と変わらないので逃げ回ってくださいね、ということも十分にありうる。人を女の姿に転生させるような神だけにその点信用するわけには……ってあれ? そう言えば今僕の身体って完全に女のなのか? 反射的に着ている衣服に手を掛けそうになり、すんでのところで堪える。待つんだ僕、いくら気になることとはいえ命の掛かったダンジョンの中でそれはいけないだろう。今やるべきことは手持ち装備の確認と周囲の警戒だろ。一度深呼吸して気持ちを落ち着かせる。危ないところだった。転生というモノが存在することを小説やアニメで見聞きしていたが実際自分の身に降りかかるとこんなに恐ろしいモノだったとは、やはり空想とリアルは違うな。手持ちの武器は細身のレイピアに、防具は――コルセットか?やたらと胸のあたりが苦しく圧迫感がある。

 「…………」

 ――ちょっとだけならいいか。
 装備の確認は重要だが、構造を知ることも重要だ、果たしては今の自分の身体の現状がどうなっているのかも知ることはとても重要度が高い。それに、このダンジョンを生きて出られないれない可能性だってあるんだ。やるべきことはやっておかないと後悔する。前世では結局彼女できなかったからそっちの経験全然ないしな。ごくりと喉が鳴った。転生とは言ってみれば他人の身体を自由に使っているようなものだ。そして今目の前には十代半ばから後半にであろう少女の身体が一つ。現実世界で女子中高生に今から行うことをすれば警察沙汰だが、自分自身にするのであれば問題ないだろう。コルセットの間あら小さく柔らかい手を滑りこませ、ブラウスのボタンを外し、胸元へ手を差し込んだ。

 「やばい、乳首こりこりしてる。だけど胸はそんなに柔らかくないな……」

 元々貧乳設定にしていたためボリュームには乏しいようだ。残念ながらきつく縛られたコルセットのせいで直に見ることはできない。それはまぁ動画で見たことがあるから今は良しとしよう。問題は下の方だ。元はゲームのキャラクターだから防具と呼べないような薄っぺらいスカートを履いている。ミノリエルは僕の思考からこの身体を構築したというが、まさか衣服や装備に至るまでゲームのそれを模倣して作成するとは、本気ガチの戦闘を行う時重傷を負って死んだらどう責任を持つつもりなのか。しかし今は感謝しよう、なんたってからな。若干息が荒くなっているように思えるが、いつ襲われるかもしれないという緊張感から来るものだろう。けして興奮しているわけではない。紳士な僕に限ってそんな事態になることはあり得ない。薄い布地を捲り上げるとフローランスな良い香りが鼻孔をくすぐる。これが女性用下着の臭いか、男物とは段違いだぜ。べ、別に僕は変態的なことをしるわけじゃないですよ。単純に装備の確認しているだけですからね本当に。誰に伝えるでもない言い訳を叫んでいると暦は違和感を覚えた。

 「おい嘘だろ、ここまで来てかそんなのありか……まじか、まじなのか……」
  
 屋敷の壁に据え付けられた大きなガラスの向こうで雷が鳴った。
 暗闇に包まれていた部屋の中に光が差し込み辺りが一瞬明るくなったが、暦はそんあ事を気にしている余裕はない。
 震える手の平を懸命に動かし、その違和感の正体を確かめるべく最後の力を振り絞る決断を下した。
 
 「――ついてんじゃん」

 女性物の下着に手を伸ばした暦はその中心にそびえるに触れ、地面に膝をついた。
 
 「え、なんで? なんであのポンコツ神はこんな中途半端なことするの? 面も女なら履いてる下着も全部女性モンだよ? 絶対完璧に女になったと勘違いするじゃん。てことはなに? 僕は男の乳触って興奮してたわけ?」もはや紳士というには汚れ過ぎた暦の精神的ダメージは極限を迎えていた。「MPってメンタルポイントの略称だったっけ? 今の僕じゃ魔法使える気がしないや……」
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